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山田洋次「家族はつらいよ」はつらいよ

 16年、松竹。松竹創立120周年記念作品のひとつなんだそうな。
 なんだか、心が弱っているとき(笑)どっかんどっかんの、ハリウッドアクション映画は、ちとしんどい。
 ということで、そういうときに、毒にもクスリにもならない山田洋次作品が、たまたまあったので(笑)見に行きました。
 ホントーに、微温的で(笑)弱った心にも、低刺激(笑)で、うれしい。おかゆみたいな映画(笑)。
 こういう弱った心の日に、傑作なんて、見たくないよなあ、という心の欲求にもド・ストライク。さりとて、むかむかする駄作でもいかんよね、というときに、まあほどほどのプログラムピクチャアが、あることの幸せ。
 そうなんだよね、それがプログラムピクチャアというものでは、あるんだなあ、としみじみ。
 おもしろい、といえば、おもしろい。
 つまらない、といえば、つまらない。
 そういう映画も、大事なのよ(笑)。

e0178641_2562670.jpg「家族はつらいよ」 <Movie WalkerHPより>
巨匠・山田洋次監督が『男はつらいよ』シリーズ以来ひさびさに手がけるコメディ。突然の両親の離婚問題に揺れる子供たちら8人が繰り広げる騒動を描き出す。橋爪功と吉行和子が離婚の危機を迎えた熟年夫婦を演じるほか、西村雅彦、夏川結衣といった『東京家族』で一家を演じた8人のキャストが再集結し、別の家族を演じている。

 そして、今回の山田脚本は、ある意味小津を真似た、「あてがき」をしようという発想だと、思う。
 といっても。
 吉行和子の役は、なくなったイケメン流行作家を兄に持つ妹、とか、ニヤニヤ笑いのドクターに笑福亭鶴瓶とか、まあ、ホントにショーもない、あてがきともいえないようなあてがきで。
 うなぎ屋の出前持ちが寅さんの歌を歌ったり、吉行が通うカルチャースクールに、山田の「東京家族」上映会ポスターが張ってあったり、橋爪の部屋のTV前に「男はつらいよ」のDVDが何枚もあったり、まあこういうのを、山田はくすぐりと思っているのかもしれないが。
 うーん、芸のないくすぐりは、くすぐりとは、感じられんのだよねー。

 本作の大美点は、橋爪功大ワンマンショー! 少なくとも日本アカデミー賞には、確実に主演男優でノミネートされるだろう。
 いやあ、橋爪が、こんなに芸達者だとは、知らなかった!
 そのかるみのある演技、時に頑固親父、時にちゃらい笑いの軽薄親父、硬軟自在の演技で、楽しませてくれる。こんな、味な演技が出来る方とは、思いもしませんでした、と、お見逸れの土下座(笑)。
 蒼井優の演技力がすばらしいのは当たり前だが、その恋人・妻夫木聡の「古典的二枚目」ぶりもグッド。
 板についた時代錯誤。

 で、吉行和子だが。うーん(笑)。吉行和子は、二十代前半の新人の頃から、味も面白味もまったく感じない女優さんで。清楚な若い女優さんなら、格別の演技も格別の魅力もなくても、それなりにスクリーンで輝けるのだが、そういうオーラが、一切、なかったように、思う。
 往時の日活良心派映画で、若い娘の特権をまったく生かしきれていない謎の女優さんなのであった。
 これまた当時の日活娯楽映画で、姉御肌のいい女を一手に引き受けていた感のある渡辺美佐子と並ぶ、ぼく的に日活二大どうでもいい女優なのであった。
 本作でも、当然のように、なんの輝きも、ない。年をとってもとらなくても、なんの輝きも、ない。
 ファンの皆様、ごめんなさい。反論、お待ちしております。

 なお、家族全員集合の家族会議のために、
家族7人分のうな重上を夏川結衣が頼む→
義弟・妻夫木の彼女・蒼井優が来宅、当然一人分足りなくなる→
たぶん、一人分の追加があるべき→
義父・橋爪が倒れ、食事会自体が、崩壊

 ここら辺の「喜劇としてのおいしい展開」が、まったく回収されもせず、ああダメだなあ、と。
 ラスト近くに、橋爪がTVで小津「東京物語」を見ている、って、いったいこれまで何人が「東京物語」を見ているんだ、何の工夫もなく、小津に頼るのは、いい加減やめていただきたい。
◎追記◎実は、本作で一番笑ったのは、

吉行「マミヤノリコさんね。ノリコはどういう字?」
蒼井「ケンポウのケンです」

 うわっ(笑)。小津がらみでマミヤノリコといえば、ふつう紀子以外は考えられないのだが、さすが九条狂(笑)。どんな小さいスペースにも、ボールを突っ込んでくるなあ(笑)。
 近年永遠の左翼キャンペーンガール吉永小百合とのコラボで、ヒット作、話題作を作ってきた山田だが、本作では、珍しく左翼臭がないと、安心していたのに(笑)。
 まあ、トイ民主主義的な家族会議なるものにも、そしてその民主主義的な集まりのなかで「実質的」な家長・橋爪が心筋梗塞で倒れるという願望的暗喩にも、左翼臭はありありなのだが(笑)。
 腐っても左翼。すずめ百まで左翼忘れず、というところか。


『家族はつらいよ』 予告編

山田洋次監督「大笑いして見てもらえる」橋爪功らキャストが集結! 映画「家族はつらいよ」完成報告会見1

SMAP×SMAP 2016年2月29日

妻夫木聡&実力派俳優が来店で意外…!橋爪功の不器用な愛情表現が暴走して…中居も本­気で照れる?▽新ライバル登場!PちゃんvsGちゃん!?▽冬の女王・広瀬香美

 橋爪(なんと成瀬!)、吉行、妻夫木、蒼井のデヴュー作フッテージが出てくるのも、お楽しみ。トークでも、橋爪最高だ(笑)。

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by mukashinoeiga | 2016-04-11 02:56 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(4) | Comments(0)

山田洋次「東京家族」について2

★この駄文の前文★
 というわけで、山田版「東京家族」では、当ブログで問題にした、「東京物語」突っ込みどころも、本当にきれいに、解消させている。
 で、さらにいえば、小津「東京物語」の聖女・原節子を、前半と後半で、ふたりの人物に分けたのが、「東京家族」最大の、「工夫」だろう。
 前半パートでは、「東京物語」不在の二男・昌二を、山田洋次風にカスタマイズした次男・昌次として、登場させ、紀子=ハラセツの代役としている。
 後半パートでは、昌次(妻夫木)と紀子(蒼井優)のカップルふたりがかりで、「東京物語」紀子(ハラセツ)の代役。
 しかも昌次(妻夫木)には、部分的に「東京物語」三男(大坂志郎)と次女(香川京子)の役割も担わせている。
 さらにいえば、香川的役割を、隣に住む女子中学生と、その母親にも、担わせ、物語に含みを持たせる。
 名作の脚色として、これは、完璧な素晴らしさと、いえる。

 なぜ、こんな複雑な再構成が必要かというと、理由は2点あると思う。
1 現代を生きる女優に、「東京物語」原節子の「聖女」ぶりは、はっきり言って再現不可。
 「ふがいない長男」(山村聡→西村雅彦)「ガラッパチな長女」(杉村春子→中島朋子)優しい夫(中村伸郎→林家正蔵)優しい家庭婦人(三宅邦子→夏川結衣)は、現在でも、リアリティを持って描けるが、「聖女」原節子だけは、再現不可能。
 あれは、あの時代の、原節子と小津安二郎のコラボが生んだ、「奇跡」なのだから。
 ハラセツ的役割に、蒼井優を持ってきた。これを最初に聞いたとき、うーん、山田洋次慧眼と、うなったものだ。ベストではないものの(そんなもの、現代女優では、いない。当時だって、原節子しかいなかったのだし)次善の選択として、原節子とはぜんぜんキャラが違う、蒼井優を持ってきたのは、すばらしい。
 しかし、その蒼井優だって、全編出ずっぱりでは、「めっきがはげてしまう」のは必然。そういう時代なんだから。だから、ためにためて、後半まで、出さない。これは、正しい。

2 山田洋次としては、映画には、やはり「ずっこけオトコ」は、ほしいところ。寅さんとまでは言わないが、少々は「はみ出し男」がほしい。
 「東京物語」で言えば、大坂志郎がそれに近いが、しかし、妙に感慨にふける大坂志郎では、山田洋次のお眼鏡違い。山田的ずっこけオトコには、程遠い。小津さんも、突貫小僧などで、ずいぶん飛ばしてるではないか。
 ということで「山田洋次映画」には欠かせない、ずっこけオトコでもって、「聖女」原節子を代行させよう、という決断を、おそらくにんまりしつつ、思いついたはずだ山田洋次(笑)。
 「聖女」へのかなわぬ恋心(現代の映画では、とうてい原節子を再現できないという絶対的失恋)、現代に生きる映画作家である俺は、永遠に原節子に小津安二郎に、失恋し続けなければならないのだ、という断念。で、ある、ならば、「聖女」の役割を、「永遠の失恋男」=寅さんの、現代青年版、ただしイケメン妻夫木に代行させる。いかにも山田洋次的で、しかも素晴らしい。

 そういう「東京物語」にはない、新しいキャラを創造するとき、「まだ、戦争から帰ってこない/帰ってこれない不在の二男」という「遊休施設」その再活性化とは、にくいことを思いついたものだ。「原節子の不在の夫」に「原節子の役割」を負担させる。すばらしい。

 さて、前文で触れた、「東京物語」の突っ込みどころ
 あんなにやさしい、まるで「生き神様」(笑)みたいな美老人・笠智衆は、なぜ子供たちに、嫌われているのか、特に、なぜ長女・杉村春子は、激しくきつく笠智衆を罵倒するのか。
 さらに言えば、山村聡を激しく罵倒する中学生息子の怒りの強度。なじみの常連客・東野を、その友人の前で罵倒する居酒屋おかみ・桜むつ子の、しゃれや冗談でない執拗さ。どう見ても、接客業の規律から、完全に逸脱している。
 小津映画は、一般的には「静かな退屈な(低刺激の)ドラマ」といわれるが、登場人物が、いったん怒り出すと、しゃれや冗談でない強度の怒髪となる、いつでもそうだ。喜怒哀楽のほかの部分では、さまざまなグラデーションを穏やかに描写する小津映画が、こと「怒」に関しては、常にマックスに振り切った「一本調子」。
 「戸田家の兄妹」の佐分利信、「秋刀魚の味」の岩下志麻、「早春」の淡島千景、「東京物語」「お早よう」の子供たち。
いつも小津映画をみるたびに思う。不思議なことだと思う。
 それを、「東京物語」の一般評、「親を粗略に扱う子供たちの不人情」「世の無常」と、安易に言い切ってしまうのは、いつもぼくにとっては、不自然だった。
 で、そういう「東京物語」の不自然、説明不足を、すべて丁寧かつ合理的に解消したのが、「東京家族」の脚色だろう。
 この脚本は、何度も言うように、素晴らしい。
 だが、結果として出来た映画「東京家族」は。
 丁寧かつ合理的な説明が、映画に豊穣をもたらすかというと、そうでもないのね(笑)。
 むしろ潔いまでに説明省略、不自然、非合理のきわみの小津映画が、光り輝くのは、なぜか。
 結果的に、「東京物語」を秀才が頭でお勉強して、リクリエートしてしまいましたの、図。
 しかし、山田洋次は、よく「負け戦」を戦った。それは、ほめて、あげたい。
 俳優については、蒼井優、夏川結衣、妻夫木、吉行和子はグッド。西村雅彦、中島朋子、橋爪功は、「ちょいと」微妙。「わが母の記」の出演陣に、見劣りする。 

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by mukashinoeiga | 2013-02-05 10:47 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(2)