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三隅研次「婦系図」

 京橋にて。「映画監督 三隅研次」特集。62年、大映京都。
 三隅流女性映画、快作の一本。あと1回の上映。
 ただし、雷蔵・万里昌代のカップルの話より、サイドストーリーの、木暮実千代・三條魔子おやこの話に、この映画化は5回というが、どの映画を見ても、つい泣いてしまう。再見の本作でも、ついついもらい泣き。

e0178641_8405569.jpg婦系図(99分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
1962(大映京都)(監)三隅研次(原)泉鏡花(脚)依田義賢(撮)武田千吉郎(美)内藤昭(音)伊福部昭(出)市川雷藏、万里昌代、船越英二、三條魔子、水戸光子、木暮実千代、千田是也、片山明彦、伊達三郎、石黒達也、藤原礼子、近江輝子
身分違いの恋を綴った「婦系図」の5度目の映画化。新東宝で「グラマー女優」として活躍していた万里昌代は、同社倒産後に大映へと移籍し、本作のお蔦役の好演によって新派/時代劇女優としての資質を開花させた。また本作は三隅が依田義賢と初めて組んだ作品でもあり、2人は以後も女性映画の名作を生み出していく。

 雷蔵・万里昌代パートの欠点は、恩ある先生との心理的三角関係が、もたらす緊張、意地の張り合いが、通俗心理としても、異常?心理としても、説得力に欠ける点にあるのだろう。
 ようは、気まぐれ暴君の、無理無体が、悲劇の原因なのだが、その無茶振りを、千田是也は、好演している。自分の気まぐれな振る舞いが、いかに他人に影響を及ばすか、まったく無頓着な暴君。
 そして、頭はよいが、スリ出身なのに、ストリート・ワイズに欠ける雷蔵。
 芸者としての粋、おんなとしての意地、つまり明治的ヤンキーの突っ張り主義、それが極めて情緒的な自己犠牲志向と結びついて、万里昌代も雷蔵も、甘美な陶酔の毒に浸っているかのように、見える。
 いわば、このカップルは、ふたりながら、完結した自己世界に閉じこもったジャンキーなのだ。ぼくには、そのように見える。

 いっぽう、世間知マスター(笑)木暮実千代は、生まれてすぐ手放した娘と、再会する。
 純真無垢な三條魔子は、その事実を、知らない。
 いわば世間の垢を知り尽くした女が、世間の穢れなどほとんど知らない初心な娘と、遭遇する。
 純真無垢な娘の、知らない者の強みを天然で発した、そのいちいちの振る舞いに、ただひたすらおろおろするしかない知りすぎた女の、呆然。これが、泣かずに、いられようか。

 そう万里昌代の悲劇は、中途半端さに、あったのか。中途半端に世間を知っていて、しかもまだ、純情さが、ある。
 この中途パンパが、始末に悪い。イッちゃなんだが、もっと小ずるく立ち回って、ストリートワイズに欠ける雷蔵を適時リードしてやれば、また展開は変わっていたかもしれない。姉さん女房になれば、よかったのだ。
 まあ、それでは、紅涙を絞る悲恋悲劇には、ならないか。

 さて本作では、原作改変により、水戸光子・片山明彦親子が登場。息子の嫁にと、三條魔子に御執心。この、小ずるい親子が、それなりの罰を受けるのに、弟子カップルを悲劇に叩き込んだ恩師・千田是也が、何のきずひとつ負わないのは、片手落ちであろう。
 そこが、このドラマの、弱いところ。

 なお、未来の嫁候補をあさりに、この親子、良家の子女が通う、女学校に授業参観(笑)、浅ましく娘たちをねめ回して、三條魔子に白羽の矢。
 で、魔子の学友エキストラの中に、ひとり目立つ顔、これがどう見ても藤村志保にしか、見えない。
 藤村志保といえば、
1.1962.04.06 破戒  大映京都  ... お志保
2.1962.07.01 斬る  大映京都  ... 山口藤子
3.1962.07.15 鯨神  大映東京  ... エイ
4.1962.08.12 長脇差忠臣蔵  大映京都
5.1962.09.01 青葉城の鬼  大映京都  ... 三沢はつ
6.1962.12.01 忍びの者  大映京都  ... マキ
7.1963.01.03 新選組始末記  大映京都  ... 志満 (以上、日本映画データベース)

 デヴュー作「破戒」をはじめ、この年には実質7本の映画を撮影している、この年の新人女優だ。いっぽう本作は、1962年2月21日公開とのこと。一種のスクリーンテスト的な、あるいは小手調べ的な、エキストラ起用なのか。
 三隅は気に入ったのかどうか、それとも大映京都イチオシの新人女優として使わされたのか、不明だが、「斬る」 「青葉城の鬼」「新選組始末記」と、最多3本も起用。特に「斬る」の冒頭を独占する藤村志保のすばらしさ。また、同作には、万里昌代も。

 感想駄文済みの三隅「大菩薩峠」でも、卑怯な小ずるい男を好演した片山が、本作でも小狡さ発揮。父・島耕二も、若き日に小ずるい小悪党色魔を好演していたが、さすが、親子、といっていいものか(笑)。
 水戸光子の不吉な娘に、藤原礼子。出てきたとたんに、その無表情が、不吉そのもの。藤原礼子といえば、代表作は、感想駄文済みの増村保造「爛(ただれ)」か。田宮二郎をトコトン追い詰める藤原の怪獣ぶりは、忘れられない。
 こういう不吉顔の女優を、それなりに遇しているのが、大人の大映たるゆえんで。

三隅研次監督『婦系図』 お蔦と主税の別れ


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by mukashinoeiga | 2016-01-24 08:41 | 三隅剣児女なみだ川と大魔剣 | Trackback(5) | Comments(3)

瑞穂春海「明日の幸福」

 阿佐ヶ谷にて。「昭和家庭日乗 わたしのかぞく」特集。55年、東京映画=東宝。
 この特集も、ほとんど見ているので、数少ない作を落穂ひろい。
 頑固親父がいて、息子夫婦がいて、孫夫婦がいる。
 頑固親父が中心となる、三世代同居の大家族モノ、絶対の安定感。
 こういうホームドラマ・コメディは、日本映画の絶対的安定感や。ナイス。

e0178641_2318464.jpg明日の幸福 1955年(S30)/東京映画/白黒/87分 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:瑞穂春海/原作:中野実/脚本:長瀬喜伴/撮影:三村明/美術:小島基司/音楽:斎藤一郎
■出演:上原謙、木暮実千代、小泉博、久我美子、小堀誠、水谷八重子、天津敏、三宅邦子、賀原夏子
三世代が住む大物政治家の邸宅で、家宝のハニワが欠けているのを発見。壊したのはまさか…ワタシ!?自分の不始末と思い込んだ女たちが、ばれないようにこっそり修理しようとするが…。コント風な物語を巧くまとめあげたハートウォーミングな一篇。

 祖母・水谷八重子は、祖父・小堀誠に、絶対服従。
 母・木暮実千代は、父・上原謙に、愚痴を言いつつ、従う。
 新婚の若妻・久我美子は、夫・小泉博に甘えつつ、でも、姑・大舅・大姑に遠慮がある。
 そこから、展開するドタバタ。ああ、楽しい(笑)。
 思うに、日本的コメディは、親和的ホームドラマで、最高の微温的(笑)コメディを、獲得する。そのひとつか。
 老壮青、男と女の、各カップルの、食い違いの、楽しさ。
 原作中野実といえば、木下恵介「女の園」の原作「人工楽園」?は、あまりにド下手な/生硬な実験小説、しかしなぜか映画の原作ものも多い。生硬かつ俗情との結託、なのか。うーん。この映画の原作も、読んでみたい興味は、あるが。果たして。
◎追記◎上記記述には、事実の誤りがあります。下記コメント欄で、お邪魔ビンラディンさんからご指摘がありました。ご指摘に多謝。

 祖父・小堀誠、例によって、頑固親実父ぷりが絶品。
 祖母・水谷八重子の、ドタバタも、愛らしい。
 上原・木暮の安定感。久我の実家の母に、三宅邦子。松竹出身の、この、安定感。グッド。
 若いカップル・小泉博、久我美子の、不安定さも、それはそれで、好ましい。グッド。

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「兄さんの愛情」に次ぐ東京映画の作品で、中野実の舞台劇から「チャッカリ夫人」の長瀬喜伴が脚色、 「新婚たくあん夫婦」の瑞穂春海が監督する。撮影は「消えた中隊」の三村明、音楽は「川のある下町の話」の斎藤一郎の担当。出演者は「恋風街道」の小堀誠、「伊津子とその母」の水谷八重子、「女の一生(1955)」の上原謙、「伊太郎獅子」の木暮実千代、「恋化粧」の小泉博、「兄さんの愛情」の久我美子、三宅邦子などである。

 なんなんだ、 「新婚たくあん夫婦」 (笑)。見てみたいぞ(笑)。
 と、Movie Walkerで検索したら、大びっくり!

瑞穂春海「新婚たくあん夫婦」1954年
 間借り生活一年の末、目白三平と妻光子は、光子の女学校先輩竹内マリ子の好意で借家ながらも二人だけの新居を持つ事が出来た。ところが三平は・・・・(以下略)
 ナナなんと、笠智衆、佐野周二&望月優子の「目白三平」シリーズの、前段に、佐田啓二&桂木洋子の「目白三平」ものが、あったとは! 見てみたいぞ、佐田の目白三平モノ!
 (たとえば)阿佐ヶ谷のモーニングで、「目白三平」シリーズ、見てみたいぞ(笑)。
 しかし、なんだって、桂木洋子が望月優子?(笑)。

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by mukashinoeiga | 2015-11-17 23:19 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(4)

千葉泰樹「女の鬪ひ(闘い)」高峰三枝子木暮実千代

 京橋にて。「映画監督 千葉泰樹Yasuki Chiba Retrospective」特集。49年、新東宝=竹井諒プロ。
 冒頭カンパニーロゴは、配給・東宝、製作・新東宝、竹井諒プロの3枚看板、日本メジャー映画で、かくもカンパニーロゴが重複するのは、珍しい。特に東宝と新東宝のクレジットが並ぶのは、ぼくの記憶では、見たのは、初めて? 
 東宝日輪マーク(と、いうのか?)と、新東宝鐘マークが続く珍景。
 
 実際は独立プロの製作を買い取った新東宝が、自立配給が出来ず、モト会社の東宝に泣きついたといった所?
 で、東宝も、新東宝ができたせいで、作品不足、渡りに船、というところ? 一見、ウィンウィンに見えるも、実際は、三方一両損か知らん。
 さらに言えば、この新東宝=東宝映画の、ダブルヒロインは戦前松竹以来の高峰三枝子、木暮実千代、そしてふたりをホンロウする細川俊夫を含めれば、主なスタアは非東宝系。
 この頃の、安定していない東宝系では、よくあることだが。

e0178641_2215765.jpg女の鬪ひ (75分・16mm・白黒) <フィルムセンターHPより>
由美子(高峰)は結婚したばかりの夫(細川)に恋人がいたと知り、その相手である映子(木暮)に会いに行くが、追いかけた夫は交通事故死してしまう。だが夫と恋人を失った二人の女性は、その後、奇妙な縁で結ばれていくことになる。千葉はもつれ合う恋愛関係の果てに希望を見出す女性の強さを強調している。
1949(新東宝=竹井諒プロ)(監)千葉泰樹(脚)八住利雄(撮)小原讓治(美)河野鷹思(音)齋藤一郎(出)高峰三枝子、木暮實千代、山村聰、河津淸三郎、三村秀子、瀧花久子、久保春二、山室耕、若月輝夫、冬木京三、細川俊夫

 いい加減なチャラ男の夫・細川に、結婚前からの愛人・木暮がいることを知り、新婚初夜を拒絶する高峰。いきなり夫は交通事故死。千葉泰樹「羽織の大将」でも、ある主要人物が交通事故。ぶつかるシーンもそれなりに描写。
 ここら辺を間接描写で済ませるのが成瀬。
 冬の映画であり、主演女優ふたりは、コートで着膨れの、おでぶさん。終戦直後という事情なのか、たぶんアメリカ製の既製服コートで、サイズ微妙、というコートか。
 食糧難ということもあるのか、「ふくよか」なヒロインが珍重されて。特に高峰のバストもふくよか(笑)。
 というところしか、見所はないのは、お得意のユーモアもない凡庸メロドラマゆえか。
 「二人の女」の対立を得意とする成瀬に任せたほうがよかった素材。

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by mukashinoeiga | 2014-12-28 06:32 | 千葉泰樹 ヤスキ節の愉しさ | Trackback | Comments(0)

清水宏「暁の合唱」

 渋谷にて。「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」特集。41年、松竹大船。
 かなりぼろぼろの、全篇コマが飛び飛び、ナンセ監督クレジットもない、ずたずたプリントだが、それでも廃棄されずに、上映されて、見られることのうれしさ。何度目かの再見作。
 戦後の妖艶派セクシー担当からは想像もつかない、さわやかティーンぶりの木暮実千代と、のほほん好青年のサブリンの、主演コンビの、愛らしさ。
 そして、これは原作どおりなのだが、この愛らしい主演コンビが、それぞれ別の人と結ばれ、コンビ同士は、ほのかに想い合いつつ、決して結ばれないシニカルさも、そこはかとなくいい。

『暁の合唱(16mm)』公開:1941年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:清水宏
主演:木暮実千代、佐分利信、坂本武、吉川満子、沖田儀一、川崎弘子、近衛敏明、日守新一
家族のため進学を諦めてバスの運転手になろうと決めた朋子。だが、会社の都合で車掌になることに…。むっつり運転手(佐分利)と朋子(木暮実千代)のやりとりも楽しく、当時の田舎の風景や人情も素晴らしい傑作。当時では珍しい職業婦人を描いた革新的な作品でもある。

 清水宏としては、定期バス運転手・上原謙主演の清水宏「有りがたうさん」36年、松竹で鳴らした。で、バスものは、任せておけ、ということか。
 なお、戦後59年には清水宏「母のおもかげ」大映で、水上バス運転手・根上淳を主人公にしたが、これはあまり関係がない(笑)。ただ、3作とも大快作なり。

 新人養成には厳しい上司でありつつ、基本のほほんな、のんきなサブリン。いざ仕事となると、厳しい目を木暮に向ける。
 清く、正しく、美しく、を体現する少女・木暮実千代の、好ましさ。ああ、ふたりとも、いいなあ(涙目)。
 戦後、大人の女として<熟した>木暮実千代と、サブリンは、いくつかのコラボの共演。その原点ともいうべき、好ましさ。
 かれ彼女を穏やかに見守るのが、川崎弘子。そのつつましさが、戦前松竹悲恋メロドラマ女優の華々しさよりも、いかにも彼女らしくて、いい。その義弟の映画館館主に、近衛敏明。

 なお、本原作はその後二度リメイクされている。
 63年東宝版、鈴木英夫監督、 星由里子、黒部進、宝田明版は、見ている。後半に嵐夜のバス決行アクション編があって、これを清水版がオミットしたのは、いかにものほほん清水宏らしい。
 未見の55年大映版は、枝川弘監督、香川京子、根上淳、高松英郎版。ヒロインの中学生の弟・銀次郎に、石橋蓮司。うーん、見てみたい(笑)。

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by mukashinoeiga | 2014-11-07 01:39 | しぃみず学園清水宏おぼえ書 | Trackback | Comments(2)

佐々木啓祐「春雷」川崎弘子夏川大二郎木暮実千代田中絹代

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。43年、松竹大船。
e0178641_18271697.jpg 夏川大二郎は、上野駅で東北から尋ねてくる許嫁・川崎弘子を待っている。
 その川崎は、電車内で、近衛敏明からの一方的な求愛に大迷惑、逃げ出すように汽車を降りる。
 川崎が一本汽車を遅らせたために、待ちぼうけの夏川、代わりに旧知の令嬢・木暮実千代が駅のホームで、男に言い寄られているのを、助け、川崎の代わり?に、積極的アプローチ(図々しいともいう)令嬢を、アパートに連れ帰る。
 やっとの思いで夏川のアパートを訪ねた川崎は、彼の部屋のベッドに寝そべる木暮を発見、愕然となる。夏川は、再度駅に川崎を迎えに行って留守。
 バチバチ火花を散らす女ふたり、といっても、一方的に木暮がだけど。川崎に取って代わろうとする小暮は、意地悪く夏川のカノジョのふり。
 ビビった川崎は、夜の町をうろうろ。あとをつけてきた近衛は、すばやく川崎にスリより、「夏川ってひどい男ですねー。とりあえず、今夜泊まるとこ、ないんじゃないですか」と、無理やりピックアップ。
 かくて嫌い抜いた近衛の、女に、川崎は、なってしまう。
 いっぽう、気のいい夏川に使い込みまでさせて、小暮は贅沢三昧。
 二つのセクハラが同時発生して、女と男の運命が、行き違う。
 気の弱い女と男が、気の強い男と女に、いいようにホンロウされ、食いものにされる。
 一方的な振る舞いの近衛と木暮も悪いが、例によって超気弱の川崎弘子と、いい加減で典型的松竹ダメ男の夏川も、また、弱すぎる、というところで。
 偶然と必然が交差するメロドラマ。
 携帯のない時代のこととて、「一度すれ違ったら、再会するのは、困難」な典型的松竹メロ。
 そして、再会する時は、それぞれ別のパートナーを連れていて、その再会は必ず悲劇。
本作にはメロドラマの快がたっぷり詰まっている。

 しかしながら、本作の最大の特徴(笑)は、色悪の近衛がデブなのはともかく、二枚目の夏川もデブ。恋敵どおしがともにデブ、ってインド映画か。

古き花園  松竹大船映画「春雷」主題歌


e0178641_18292585.jpg春雷 (73分・35mm・白黒) <フィルムセンターHPより>
佐々木啓祐監督が、大衆小説家・加藤武雄の同名小説を映画化。東京で働く井出慎之助(夏川)の元に、故郷の許嫁・志津子(川崎)が訪ねてきた。だが、父親が事業に失敗して自殺し、音楽の道を絶たれた英子(木暮)もまた上京しており、井出は彼女を支えることを選んでしまう。本作でも出演時間は僅かながら、笠智衆が悪役に扮している。
'39(松竹大船)(監)佐々木啓祐(原)加藤武雄(脚)柳井隆雄(撮)渡辺建次(美)浜田辰夫(音)早乙女光(出)夏川大二郎、三井秀男、川崎弘子、木暮実千代、田中絹代、藤野秀夫、葛城文子、近衛敏明、廣瀨徹、笠智衆、松井潤子、黒田達夫、奈良真養

 前に、佐々木康「風の女王」感想駄文にて、以下のように書きました。

 なお、終盤近く、道行く高杉早苗を呼び止め、説教する役に、ワンシーンのみ出演の田中絹代。
 大物女優の、ノンクレジットのカメオ出演とは、珍しく、絹代が出ると、軽くどよめく場内。
 出番の脇役女優が何らかの事情で駄目になり、たまたま撮影所にいた絹代が、「あら、ワタシでよければ」と、いうことだろうか。珍しい。

 この田中絹代登場は、「風の女王」ではなくて、本作「春雷」の、間違い。しかも、カメオではなくて、特別出演のクレジットあり。たぶん、当時たまたまからだが空いてた絹代が、小さい役でもあたしを出してよ、といったのではないかしらん。まったく似たようなストーリー、登場人物だから、ついつい混同してしまいました。妄言多謝。
しかしよくよく考えてみるとおそらく、当時木暮のような反社会的?あばずれ(笑)を、主人公にすることは、そのような風潮を助長することで、風紀上よろしくない、と。で、こんなあばずれが「勝ち逃げ」する脚本をエクスキューズすべく、急きょ「釘を刺す」役を追加。「風紀係」みたいな役には生真面目な絹代が最適、しかも大物女優をわざわざ特別出演させることで、より「風紀係」の重みも増す。てなことかしらん。
 松竹は決して、こんなアバズレ認めてないんですよ、絹代ちゃんもぷんぷん怒ってますよ、と言い訳しながら、当時は抑圧されていた女性観客たちに、女の「可能性」を示して、魅せる。当初は、大物女優気まぐれの代役かと思ったが、これはこれで松竹のかなりの深謀遠慮なのかも(笑)。
 典型的二枚舌外交というべきか。

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by mukashinoeiga | 2014-03-23 10:24 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(1) | Comments(6)

清水宏「霧の音」上原謙木暮実千代浪花千栄子見明凡太郎柳永二郎坂本武

 京橋にて。「(再映)よみがえる日本映画~映画保存のための特別事業費による」特集。56年、大映京都。
 ほんとうに、素晴らしい。
 豊穣、の一語。
e0178641_2225770.jpg 戦後の清水宏は低迷していた、というのが、<映画史>の定説だが、その低迷しているはずの清水宏作品を一本一本見るたびに、映画的豊かさを感じる作品ばかりだ。
 本作も、まさに、その通り。
 たしかに、戦前松竹の花形監督・大清水の華やかさ・清新さはないかもしれんが、この映画的豊かさは、ナンなんだ。
 山奥の、山小屋。最初は、大学所属の植物研究の寮のようなもの。それを改装して、浦辺粂子・坂本武が管理する、一種の秘境宿のような山小屋宿になり、そこにやってくる客たちのドラマ。
 「簪」「按摩と女」のような、温泉宿コメディーの系譜につながる、大快作。そのシンプル系。
 三年おきの、中秋の名月の日に、展開される、上原謙と小暮実千代のあえやかな出会いと、秘めやかなすれ違い。
 互いに逢いたい、再会したい二人なのに、同じ宿にいながら、その姿をすれ違い、かの姿は視線に入らない。
 その、人物のすれ違い、入れ替わりが、単純ながら、素晴らしい。
 木暮の同僚芸者・浪花千栄子が、酔いつぶれて、早く帰るには、ちゃんと理由がある。浪花とその道連れが消えることによって、上原と木暮がふたりきりになる。
 上原の娘が病気になるには、ちゃんと理由がある。上原の旧友・見明凡太郎を苦手とする、柳永二郎が、「あたし、その子の看病するわ」という木暮を、いや、見明がいるから、行ってはいけないと言い、木暮が上原と出会うのを、無意識に阻害する。
 あまりにかっきりしたお話、おそらく舞台劇が元かと推測されるが(原作北条秀司、脚本依田義賢)、従来の、軽快ノンシャランな清水映画とはティストが違うが、何、こんなものもお手の物という清水だ。
 宿のオヤジに、坂本武。ああ、戦前松竹清水映画に多数出演の坂本武(宿屋の主人といえば、坂本武だ)が、年で、終始居眠りしているという、爺さんキャラ。その、終始居眠りしているがゆえに、ドラマが転がってしまう、いや、逆だ、転がり損ねてしまう、という、なんという素晴らしさ。
 そして当然、戦前松竹メロ絶対のエース・上原謙も、どの戦後映画よりも疲れ果て、くたびれた顔を見せるのも、ちゃんとわけがある。戦前松竹メロのファンとしては、深く感動する。
 もちろん、小暮も、戦前松竹以来の女優。冒頭、上原謙の大学教師の助手として、戦後作品としては、珍しく素人女性として登場。戦後の木暮の素人女性役は珍しく、そっけない化粧の彼女は、貫地谷しほり似。意外であった。
 そして、特筆すべきは、縦移動の素晴らしさが語られる清水宏だが、横移動もいいのは、ご承知の通り。特に屋内における、横移動の生理的快感は、清水宏ならでは。
 なお、屋内における横移動は、ぼくの知る限り、清水宏と鈴木清順にとどめをさす。ほかの監督のも見たかもしれないが、記憶に残るのは、このふたり。
◎追記◎もちろん、小暮は、木暮の、ケアレスミス。すいません。


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by mukashinoeiga | 2011-10-17 22:39 | しぃみず学園清水宏おぼえ書 | Trackback | Comments(0)