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小田基義「三太と千代の山」

 神保町にて。「夏休み特別企画・昭和の子供たち」特集。52年・新理研映画=大日本相撲協会映画部。配給新東宝。
 本作も、山々を睥睨しながら「おらあ三太だ」と、例のせりふを吐く少年、当時の人気ラジオドラマの映画化3作目、とのこと。
 デジタル素材による上映で、若干のちらつき感、白黒の明暗に、些細なバグ感あり。 
 地方巡業にやってきた、千代の山一行と仲良くなる、子供たちを描くが。当時の人気力士が、大勢出演。
 なお、いっしゅん細身の長身力士が弟子たちの中に写るが、ジャイアント馬場か? ちがうか。
 しかし、少年ドラマなのに、本作の、左幸子は、日本映画史上、最低最悪の悪女だろう(笑)。
 そもそも、初登場シーンからして、とても、子供映画のノリとはいえまい(笑)。
 山村ののどかな小学校の校庭で、子供たちが話し合っていると、その背後に、突然、うすく姿を現し、やがて姿かたちもくっきりして、子供たちと<会話>して、また、するすると消えていく。ユウレイかい、と思わせて、実は、寿退職した元担任の左幸子を、子供たちが回想しているだけなのだが。
 そして、<本体>の、初登場シーンも、子供映画の規範を、超えているように、思う。
 滝つぼがあって、豊かに広がる湖、夏であり、子供たちの格好の遊び場だが、ある日子供たちが通りかかると、なんとすっぽんぽんで泳ぐ女体あり。いや、よく見ると水着着用だが、これが色が白くて、水の中で優雅に泳ぐサマは、ホントに裸同然のように見える。
 水から上がると、子供たちに、「懐かしくて、泳いじゃった。いい気持ちねー」って、あんた。
 子供映画で、水着登場の女教師って。
 後日、校長あてで、三太に手紙が来る。
 どうやら、泳いでいる最中に、結婚指輪を湖中に落としたらしい。そこで、泳ぎの得意な三太に、こっそり、探して欲しいという依頼。三太、大好きな先生の依頼に目を輝かせ、「校長先生、その手紙、見せて」と頼むが、「いや、いや、これは」と、校長なぜかあわてて、手紙を隠す。
 なに、この子供映画で、<大人の事情>的展開は。
 前後の会話から察するに、どうやら新婚ながら、左幸子は、夫と仲が悪いようだ。新婚で、仲がよろしくない上に、結婚指輪をなくしては、夫から、なんと言われることやら。事実、水から上がった左巻子、違った、左幸子は、たまたま通りがかった校長にひそひそ話、つい涙ぐむという、<大人の事情>を、子供たちに、垣間見せたもの。
 三太、毎日張り切って、もぐりにもぐって、指輪探し。しかし、湖底の石ころの中から、小さな指輪を探すなんて、まったくの不可能事では、ないか。
 ある日とうとう、岩の間に足を挟まれ、危うく溺死状態。足に、大怪我。
 ところが、左幸子、ちゃっかり次の手紙で、「湖でなくしたと思っていたら、家の中から、指輪、出てきたわ。ごめんねー」って、あんた。
 大事な指輪のはずなのに、このうっかりさは。
 三太、足の怪我のおかげで、千代の山から、一人だけもらった、両国国技館の招待券が、使えない。楽しみにしていた、国技館の大相撲に、行けない、その子供のつらさ。その原因が、左幸子の、うっかり、とは。
 それでも、なお左幸子を敬愛する三太は、東京に住む左幸子に、「先生、ぼくの代わりに大相撲、見てください」と、手紙、子供にとっては大事なプラチナ・チケットを同封して、送る。
 大相撲千秋楽当日、足の包帯をさすりながら、ラジオで実況中継を聞く三太。今頃は、先生、この大一番を、ナマで見てるんだろうなあ」と、目を輝かせていると・・・・。
 なんと、そのお茶の間に、左幸子が、夫を連れて、登場!
「えー、先生、相撲は・・・・」と、驚く三太少年を尻目に、相撲のすの字も、プラチナ・チケットのチの字も言わずに、夫と仲良さげに、「三太君、先生のために怪我したんだってねー、ごめんねー」と。 
 仲を取り戻し、夫と、いかにもラブラブで、幸福そうな左幸子。
 何も、このプラチナ・チケットの当日に、帰郷しなくても。
 かくて、少年の夢をずたずたにしつつ、幸福そうな左幸子で、映画は、エンド。
 三太に対する、何のフォローもなく、映画は、終わる。
 千代の山は大一番で勝って、優勝だが。
 たぶん、左幸子は、絶対に左巻き日教組教師だろうが(断言)、「三太と千代の山」というタイトルだけに、このセンミツな展開は・・・・。脚本は、山本嘉次郎、木村英一だが。

 なお、この「夏休み特別企画・昭和の子供たち」特集は、いつもの神保町とは違って、比較的若い人を、ほとんど見かけず。元・昭和の子供たちである、ぼくのようなジジババが、ちらりほらり。しかも、熱夏とあって、ジジババも、外出しにくいわけだ。
 子供映画といっても、文部省・日教組ご推薦的な、教育映画臭がする映画が多い印象。
 これでは、若い人は、まして子供は、来ないわな。頼みのジジババも、外に出たがらないだろうし。いつもより、客が少ない印象で、企画としては、失敗か。
 「昭和の子供たち」よりも、「昭和のきれいなおねえさん」やら「昭和のイケメン」やら、もっと、<肉食系>の企画のほうが、よろしかったのでは。

●追記●肝心の千代の山だが、いわゆる<スポーツ選手のシロウト演技>としては、かなり好感度大。いい人なんだろうな、というのが伝わってくる。

by mukashinoeiga | 2010-08-29 08:58 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)