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長谷川安人「右京之介巡察記」

 京橋にて。「日本映画史横断⑥ 東映時代劇の世界Part 2」特集。63年、東映京都。
 このデヴュー年に長谷川は、4作も撮った。しかし、翌年、翌々年は1作のみ。以降は、ゼロ。TVドラマの世界に、行った。
 非常に落差の激しい三年間だが、この間、いったい何があったのだろうか。

長谷川安人(はせがわ やすと、1922年1月17日 - 2001年1月5日)は、日本の映画監督。<ウィキペディアより>
広島県庄原市出身。1940年京城高等工業学校中退後、新興キネマ大泉撮影所に助監督として入社。1941年満州映画協会に移籍、翌1942年北京・華北電影公司と渡り歩く。同年から応召入隊。
戦後復員し1948年、東横映画京都撮影所に助監督として入社。マキノ雅広、佐々木康、加藤泰らに付く。1963年『柳生武芸帳 片目水月の剣』を初監督。その後『十七人の忍者』『集団奉行所破り』など計六本の劇場用で集団殺陣を活写、とりわけ『十七人の忍者』は、集団抗争時代劇のはしりとしてカルトムービー化している。
1965年からテレビに活躍の場を移し『銭形平次』シリーズ230本他、『大江戸捜査網』『必殺仕事人』『徳川の女たち』などのテレビドラマやCM作品を手掛けた。
劇場公開映画
柳生武芸帳 片目水月の剣(1963年)←今回未上映
十七人の忍者(1963年)←感想駄文済み
集団奉行所破り(1963年)←感想駄文済み 快作
右京之介巡察記(1963年)←本作
紫右京之介 逆一文字斬り(1964年)←前年作の続編だから、新作としては、実質ゼロ 今回未上映
忍法忠臣蔵(1965年)←今回未上映
テレビドラマ
銭形平次(フジテレビ)
大江戸捜査網(テレビ東京)
必殺仕事人(朝日放送)
素浪人 月影兵庫(テレビ朝日)
素浪人 花山大吉(テレビ朝日)
緋剣流れ星お蘭(テレビ朝日)
徳川の女たち(フジテレビ) (引用終わり)

 今回の特集では、お邪魔ビンラディンさんご指摘のとおり、6本中3本を上映。結局大成しなかった新人監督としては、破格の扱いだ。TVに転進したのは、工藤栄一も大嫌いだと公言する、東映仁侠映画への、忌避だろうか。
 <大陸育ち>としては、日本的情緒そのものの、任侠世界が、合わなかったのだろうか。それとも・・・・。

e0178641_9165827.jpg右京之介巡察記(92分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
諸藩の政道を調査する巡察使・瀬名伝右衛門は、老中・酒井雅楽頭(小沢)らの陰謀によって切腹させられる。伝右衛門の子・市太郎は復讐を誓いながら秩父忍者の道鬼(東野)の下で修業を重ね、成人を迎えるが…。橋蔵が父子2役を演じ、翌年には続篇『柴右京之介 逆一文字斬り』が作られた。
1963(東映京都)(監)長谷川安人(原)南條範夫(脚)髙田宏治(撮)わし尾元也(美)白根徳重(音)小杉太一郎(出)大川橋藏、北条きく子、千原しのぶ、三島ゆり子、岸本教子、三島雅夫、曽根晴美、原健策、薄田研二、北村和夫、大坂志郎、小沢栄太郎、東野英治郎

 映画の前半は、父・大川橋蔵が、上司ふたりとともに、地方の藩を「巡察」するが、北村和夫ら上役は適当に調査し、賄賂饗応三昧。一方カタブツの父・大川は、賄賂を拒否し、まじめに地方の不正を暴きにかかる。
 穏便に事を収めたい藩・幕府・上役には、邪魔なことこの上ない。外様藩お取りつぶし政策と矛盾するが、時代によって幕府の゛政策も違うというところか。
 この時代の東映のセクシー担当、北条きく子が人身御供として、父・橋蔵に差し出されるが、据え膳喰うは男の恥とばかり、拒否。恥を忍んで、わが身を投じたのに拒否され、もう後戻りできないと、北条きく子自害。
 主役なのに娘を自害させ、その幼い弟に「姉のカタキ!」と斬りつけられると、少年の片腕を、斬り飛ばす。

 このお色気趣味、ザンコク趣味は、穏便な、大人から子供まで夢中にさせた、東映娯楽時代劇の、一線を越えている。
 時代の変わり目に、立ち会った新人監督らしさで、今見ると、なんでもないこういうシーンでも、当時の東映スタッフ、大御所スタアたちには、伝統の東映流娯楽時代劇の正道を外した者と、忌避されたのだろうか。
 それが原因で、「あいつの映画には出ない」とか言われて、4本1本1本、以降ゼロと、なったの、だろうか。だとしたら、そういう時代の制約?が、意欲的な新人監督から、活躍の場を奪った、ことに、なる。で、アルなら、残念なことだ。

 映画の話に戻すと、ということで、父・橋蔵は、濡れ衣を着せられ、寄って集って、取り殺される。
 その「濡れ衣」役は、千原しのぶ、橋蔵に会って、一分弱の会話ののち、次のシーンでは、もう死体役。居合わせた橋蔵に殺人の嫌疑が掛けられ捕縛のち処刑。千原しのぶ、最小の出番で、即死。

 父・橋蔵の忠実なる老下僕・大坂志郎に育てられた少年が、成人して。子・橋蔵。この子の活躍が、映画の後半。
 父のときは、色黒メイク、濃いひげメイク、子となると、白面の美青年、と一人二役を差別化。
 子・橋蔵のガールフレンド・岸本教子が、なかなか可愛い新人女優で。その後あまり聞かない名前だが、東映の女優としては、きわめて地味な芸名で、本名だろうか。

 立ち回りシーンも面白いし、祭りのシーンも良、立山連峰実写も美しく、しかしいずれにせよ、父の復讐を誓う場面で終わり、後篇に引き継がれるので、後篇の上映も、待たれる。てか、見たい。

 なお本作とは関係ないが、先ほど据え膳喰うは男の恥と、書いた。
 ほんらいは、据え膳喰わぬは男の恥が定番(現在では死語か)。しかしぼくは昔っから、疑問で(笑)。日本的美意識(笑)から言えば、据え膳喰うのは男の本能(笑)で、あって(笑)喰わないから「恥」って、何ナノ(笑)、と。据え膳だよ据え膳。むしろ、それを何のためらいもなく(笑)喰っちゃうことこそ、日本的美意識からいったら、恥なんじゃないか、と。
 健さんが、据え膳食いますか、と。
 切支丹バテレンの子・眠狂四郎なら、食うだろう。あいつは、半分毛唐で外道だからさ。妄言多謝。
e0178641_918894.jpg

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。 
 ゼヒこちらで、長谷川のホンペン最終作「忍法忠臣蔵」を、検索してみてほしい。
 かつて長谷川が助監督としてついた加藤泰と、常連・高田宏治が強力にサポートしたと思しい共同脚本のモト、主演は外様・丹波哲郎と、どう見ても空気を読まなそうな(笑)天然女優・桜町弘子を除くと、笑っちゃうくらいノースタア。これ、ゼヒ見て、ホントに笑えるくらいよ(笑)。スタアから、干されてるなあ、と。

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by mukashinoeiga | 2015-06-25 09:13 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

山下耕作「大喧嘩(おおでいり)」

 京橋にて。「日本映画史横断⑥ 東映時代劇の世界Part 2」特集。64年、東映京都。
 まずは、下に引用した紹介文を、お読みいただきたい。

大喧嘩(おおでいり)(94分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
大川橋蔵が『関の彌太ツペ』に刺激を受け、山下監督に依頼したとされる作品。浅間山の噴煙をのぞむ甲州・小田井宿に、草鞋を履いていた勝場一家の秀次郎(大川)が3年ぶりに帰ってきてみると、行く末を誓った女(十朱)は弟分(穂高)の女房になり、一家は抗争の火種を抱えていた…。
1964(東映京都)(監)山下耕作(脚)村尾昭、鈴木則文、中島貞夫(撮)鈴木重平(美)富田次郎(音)木下忠司(出)大川橋蔵、丹波哲郎、河原崎長一郎、十朱幸代、入江若葉、松浦築枝、加藤嘉、穂高稔、徳大寺伸、片岡栄二郎、藤木錦之助、鈴木金哉、西村晃、金子信雄、阿波地大輔、川浪公次郎

 山下耕作「関の彌太ッペ」63年の、ような、しみじみと泣ける人情モノを、イメージして、橋蔵は、話を持っていったのだろうか。持ち込まれた山下は、頭を、かかえただろうね。
 つまり錦ちゃんと橋蔵は、同じアイドル・スタアでも、まったく資質が、違う。
 どちらが、いい悪いという問題ではなく、錦ちゃんは、明朗な明るさとともに、しっとりとした情緒も、かもし出せる。世話物には、絶好に、はまる逸材。
 ところが、橋蔵は、あまりにからりと晴れ上がっていて、影が、ない。天性のアイドル。
 いや本人にしてみたら、オレだって快晴一本やりじゃあ、ないぞ、といいたいかもしれないが、曇りの橋蔵も、雨の橋蔵も、橋蔵が演じたら、たちまち曇天の空に、陽の光が、さす。それくらい、橋蔵の強度は、強い。
 言葉を変えると、錦ちゃんは、サドもマゾも、どちらも、いける。橋蔵は、徹底して、マゾが、似合わない。
 錦ちゃんと違って、あまりにイケメンすぎた悲劇で。

 頭を抱えた、山下の、あるいはプロデューサーの、失策(と、いっていい)は、脚本を、「関の彌太ッペ」成沢昌茂のような、文芸映画のテダレではなく、村尾昭、鈴木則文、中島貞夫に丸投げ?したことだろう。
 村尾はともかくとして、あとの二人、特に鈴木則文が、おそらく、なみだ涙の人情モノを、徹底的に、ずっこけさせる(笑)。

 本作での橋蔵の敵役は、素浪人・丹波哲郎。このタンテツが、まるで石井輝男映画の、明日死能まんまのニヒル素浪人、いやどちらもタンテツが演じているのだから、まったくクリソツで、ニヒルを通り越して、とにかく人を斬って斬って斬りまくるクレイジー侍。
 とくに「依頼人の黒幕」金子信雄を、あっさり瞬殺するシーンには、場内に爆笑というか失笑というか。
 やはりタンテツが、調子いい軽輩やくざ・西村晃を、タンテツが蛇蝎のごとく嫌う虫けらゆえに、「ついでに」斬り殺す際も、西村晃が「やっぱり運がなかった」とか、間抜けなシにぎわのセリフで、コメディ感を増す。

 さらに、ラストに延々と続く大喧嘩(おおでいり)シーンが、本作に橋蔵が期待したであろう、しみじみ感を、徹底して、奪っていく(笑)。
 橋蔵たちが、走る走る走る。相手の組の連中も、走り回り、まるでラグビーのスポーツ感満載。
 中途ハンパながら、この年の前後に、顕著になった、東映集団抗争時代劇の様相を呈す。
 青々とした稲のの田んぼ、田植えしたばかりの、まだ下草のような稲のなかでの立ち回り。橋蔵も、エキストラに蹴りを入れられたり、大奮戦。
 ラグビーみたいなスポーツ感は、後年、中島や工藤の映画が得意としたところだから、おそらくこのシーンは、助監督の、たぶん鈴木、中島あたりが、大部分撮ったのでは、ないか。
 少なくとも橋蔵が絡まないエキストラのみのシーンは、そうだろう。
 中途半端なのは、流麗なカラー映像ゆえであり、助監督は「本気」だとしても、監督がそこまで「ノレ」なかったのだろう。

 当初の企画が、「関の彌太ッペ」由来だとしても、出来た映画は、かように、ねじまくっていく。鈴木や中島の時代になっていく。
 天性の時代劇アイドル(現代劇が、まったく似合わない)橋蔵は、お茶の間のTVと舞台に、移行していかざるを得ないだろう。

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by mukashinoeiga | 2015-05-10 09:10 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

佐伯清「花笠若衆」「天竜母恋い笠」工藤栄一

 京橋にて。「日本映画史横断⑤ 東映時代劇の世界」特集。
 どちらも、美空ひばり主演。他愛ない/アッパレな娯楽作。58・60年、東映京都。
 スタアひばりの快にあふれている。
 「花笠若衆」では、双子の姉妹を、一人二役で。姉のほうは、普段は男装している。
 「天竜母恋い笠」では、姉弟を、一人二役。こちらの弟は、女性の男装というわけではなく、完全な男という設定で、ひばりが演じている。
 この2本に限らず、おそらく東映時代劇で、ほとんどのひばり映画は、ひばりの「男装」シーンを展開している。世に下町のナポレオン、下町の玉三郎というキャッチコピーがあるが、ひばりこそまさしく下町の宝塚であったわけだ。
 ではいったいなぜ、ひばりが男役を得意とし、また観客衆もこれを支持し、東映も多産したのか。

花笠若衆 (88分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
美空ひばりの芸能生活十周年を記念して、母でマネージャーの加藤喜美枝が書いた小説を映画化。ひばりが三万石の大名の息女・千代姫と、男伊達・江戸家吉三(実は千代姫と双子の雪姫)を鮮やかに演じ分け、その魅力を最大限に発揮している。現在も絶大な人気を誇る1本。
1958(東映京都)(監)佐伯清(原)加藤喜美枝(脚)中田竜雄(撮)三木滋人(美)川島泰三(音)米山正夫(出)美空ひばり、櫻町弘子、堺駿二、大河内傳次郎、柳永二郎、星十郎、吉田義夫、沢村宗之助、清川荘司、大川橋藏

天竜母恋い笠 (89分・35mm・カラー)<フィルムセンターHPより>
やくざ稼業に憧れる材木商信濃屋の跡とり息子・新太郎(美空)は、人殺しの濡れ衣を着せられ、背後に信濃屋乗っ取りの企みがあることを知る。美空ひばりが得意の2役を演じる股旅ものだが、後に『十三人の刺客』(1963)を発表する工藤栄一の初期作品としても興味深い。
1960(東映京都)(監)工藤榮一(原)瀨戸口寅雄(脚)棚田吾郎(撮)鷲尾元也(美)井川徳道(音)米山正夫(出)美空ひばり、若山富三郎、星美智子、品川隆二、山形勲、田中春男、加賀邦男、黒川弥太郎

 ちなみに両作ともタイトルに「笠」の字。東映的には時代劇の表象か。しかもお祭り系町奴モノや股旅ものを、指し示す一字か。
 さて、モンダイはひばりの声と顔だろうか。
 高音も低音も、どちらも可。
 顔は、女性としては、男顔。しかし、モチロン本来は女だから、当然(笑)女性役もイケル。
 この特性をさらに生かすのが、ひばりの多彩な表情力。声の表情も顔の表情も、多彩な引き出しがあり、しかもそのすべてに華やかさがある。
 これを生かさない手はない。
 しかも東映時代劇では、スタアの一人二役はお家芸だ。
 「一心太助」モノでは、まったく無関係な将軍(吉宗だか綱吉だか)と、一心太助というまったくの別人を、錦ちゃんが同時に演じている。あいだに大久保彦左衛門を挟んで、将軍錦ちゃんと、太助錦ちゃんの、奇妙な三角関係が、平然と存在するこの不可思議。
 このシュールさは、ドラマとしては、不条理だが、ヴァラエティーショーとしては、大正解。一粒で二度おいしい、ファンにはとてもうれしい。主演の太助錦ちゃんを見にきたら、おまけで将軍錦ちゃんも付いてきたよ、とちょっと、お得。ボーナストラックというべきか。特典映像というべきか。本誌に対する別冊付録というべきか。
 このちょっとお得なおまけ感にあふれているのが、錦ちゃんだけでない、モチロンひばり映画だ。
 本来は歌手なのだが、もちろんエンターティナーひばりは、演技もイケル。しかも華やかなスタア性は抜の群。
 ステージの宝塚では、娘役と男役を同一タレントが演じることはできないが、ナニ、映画なら、合成や代役を使って、同時に存在することも可能だ。
 なら、やるしかないだろ、一人二役。
 しかも、多少ムリでも、男と女をともに演じられるは、まさにひばり専売特許だ。ひばりにしか、出来ない
 なら、やるしかないだろ、一人で、男と女の二役。
「お譲、たのむぜ。全国のひばりファンが、まってるんだぜ」
「おうっ、まかしとけってんだ」
「お譲、変幻自在はひばりの専売だぜー、期待してるよー」
「おうっ、あたぼうよ」

 なお「天竜母恋い笠」で、男のはずのひばりが刺青を入れるシーンで、ちらりと胸のふくらみが見え、「花笠若衆」でラスト、祭りの山車で歌う男装ひばり、高く上げた手をふるシーンで、ひばりのわきの下が見えるが、江戸時代の設定なのに、腋毛を剃っている、ワキの甘さ(笑)。
 こういう、男役なんだけど、ちょこっと女性性も垣間見せる、その按配が、ひばり。
 「花笠若衆」の若殿・大川橋蔵も、相変わらず、水もしたたるいい男。

◎追記◎たいしたことのない感想駄文なので、おまけ。
美空ひばり - 20周年(1967)  江利チエミ 中村メイコ

美空ひばりを語る1 立川談志&上岡龍太郎

美空ひばり 江利チエミ 雪村いづみ

こちらは25周年の時らしい。
 結局、英語翻案の歌の歌手だったふたりは、ひばりと比べるでなく、ヒット曲を残してはいない。

美空ひばり 『お祭りマンボ』 '52.12.29

リンゴ追分


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by mukashinoeiga | 2015-02-12 12:41 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

小沢茂弘「赤い影法師」

 京橋にて。「日本映画史横断⑤ 東映時代劇の世界」特集。61年、東映京都。あと1回上映。
 深夜、家康の寝所を庭から警護する服部半蔵(近衛十四郎)が、忍び込んだ忍者を撃退、あとを追う。忍者と格闘、胸をむんずとつかむと、やわらかい。
「貴様、女かっ」
 そのまま、押し倒して、のしかかる。
 お子様ファンも多い、東映時代劇としては、異色の展開だ。
 この一回の交合で出来た子が、松方弘樹・・・・ではなくて、もちろん大川橋蔵。
 母忍者・木暮実千代の指導よろしく、立派な若忍者に成長して、実父・服部半蔵に、相対していく忍者合戦だ。
 しかし女忍者・木暮実千代弱すぎ(笑)。斯界有名?忍者服部半蔵に、のしかかられては、駆け出しの女忍者としては、腰から砕けたか(笑)忍者なのにほぼ無抵抗。

e0178641_741956.jpg赤い影法師 (90分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
講談で知られる「寛永御前試合」を軸に、忍術と武術が激突するアクション満載の忍者映画。将軍家光の命を狙う忍者若影(大川橋蔵)と、実の父服部半蔵(近衛)が、石田三成の軍資金の隠し場所を記した剣をめぐり攻防を繰り広げる。柴田錬三郎の原作らしく、エロティクな描写も盛りこまれている。
1961(東映京都)(監)小沢茂弘(原)柴田錬三郎(脚)比佐芳武(撮)吉田貞次(美)井川徳道(音)鈴木静一(出)大川橋蔵、木暮実千代、近衛十四郎、平幹二朗、大川恵子、花柳小菊、黒川弥太郎、品川隆二、里見浩太郎、東野英治郎、沢村訥升、山城新伍、大河内伝次郎、大友柳太朗

 かの有名な「寛永御前試合」のサイド・ストーリー、服部半蔵に近衛十四郎、やんちゃ旗本白柄組の暴れん坊・水野十郎左衛門に平幹二朗、なぎなたの使い手遠藤由利に大川恵子(こちらも橋蔵にメロメロで女アスリートの誇りもどこへやら)、春日局に花柳小菊 (この特集、お局様といえば、必ず花柳小菊の感あり(笑)。好きだから、文句はないぞ)、柳生宗矩に大河内傳次郎、徳川家光に沢村訥升、柳生十兵衛に大友柳太朗、柳生新太郎に里見浩太朗、鴨甚三郎に東野英治郎(ギャラの割に出番が少ないせいか、冒頭ナレーションも担当)、菅沼新八郎に山城新伍、いずれも名に覚えのある時代劇オールスタアを、これまた東映時代劇オールスタアが演じる快感!
 これらオールスタアに対抗する母子忍者・橋蔵、木暮実千代。
 美形ゆえ、忍者なのに、ほとんど顔を隠さない橋蔵(笑)。でも、橋蔵なら、許す(笑)。
 大川恵子も、襲い掛かる忍者に抵抗するも、その忍者が顔布を取って、橋蔵の顔が現れると、とたんにメロメロ、ってわかりやすさ(笑)。
母忍者・木暮実千代は、実は石田三成の娘、姫から下忍への転身、しかも敵方徳川の側の服部半蔵に、からだを開く。ぷにぷにの二の腕に、石田三成の隠し埋蔵金の謎絵図を彫り物にされていて、例によっていい加減な、ほとんど意味のない解釈で謎解かれる刺青図なのだが、彫られている場所が場所なので、木暮の腋毛も見える。
 現代の女優さんは、時代劇、さらに言えば昭和30年代以前の役を演じるのに、脇がつるっつるの脇の甘さは何とか、してもらいたいものだが。

 柴田錬三郎原作ゆえのエロティシズムを、東映健全時代劇としては、(現在の視点から見て)ほんの少々程度の「隠し味」に使うも、いささか中途半端。そのほとんどを忍者合戦に使い、健全は維持する。
 だが、合戦の合間の、父子対面、かつて押し倒した者、押し倒された者の対面が続き、服部半蔵(近衛)ビミョー。柳生十兵衛・大友柳太朗に、あのいかにも誠実な声で、「半蔵どの、心中お察し申す」 と同情されるや、場内失笑(笑)。
 そういうビミョー感を含みつつ、橋蔵やっぱりヒーロー役者。
 (現在の視点からいわせてもらえば)この若き橋蔵に、お耽美モノの一本も、あってほしかった(笑)。個人的に相手役の一人(笑)には、大友柳太朗を所望(笑)。大友柳太朗、友の字に点とは、いつもながらのことながら、謎だが(笑)。

東映城のチャンバラスターよ永遠に

2014/09/04 に公開
片岡千恵蔵・大川橋蔵・大友柳太郎・進藤英太郎

どっきりカメラ安岡力也若山富三郎山城新伍ヤクザ
.
2014/09/03 に公開
どっきりの名作。亡くなられた方が多数出演。

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by mukashinoeiga | 2015-01-25 13:47 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

佐々木康「若さま侍捕物帖」

 神保町にて。「絢爛豪華!東映美剣士列伝――東千代之介と大川橋蔵」特集。60年、東映京都。1月9日(金)まで上映中。
 大晦日深夜の悪事に始まって、お正月中のエピソードが連打され、華やかな歌と踊りにあふれ、そして何より大川橋蔵の華やかな笑顔と、さわやかで流麗な立ち居振る舞いもすがすがしく、いかにもお正月映画らしい、あらまほしさ。
 ザ・お正月映画を、お正月に見る。ああ、にこにこ。
 早くも来年の話で恐縮だが、来年のお正月には、どこぞの名画座かで、お正月映画特集を、やってくれないか。さぞかし気分晴れ晴れ日本バレな特集になると思うよ。
 その特集には、やはり、橋蔵は、欠かせませんな。日本晴れ男の粋と華こそ橋蔵だ。

若さま侍捕物帖 <神保町シアターHPより>
S35('60)/東映京都/カラー/シネスコ/1時間24分
■監督:佐々木康■原作:城昌幸■脚本:結束信二/■撮影:山岸長樹■音楽:万城目正■美術:吉村晟■出演:大川橋蔵、桜町弘子、三田佳子、山形勲、花園ひろみ、千秋実、三島雅夫、坂東好太郎
橋蔵の当たり役である若さま侍シリーズの第8作。江戸城お毒見役の死に端を発した連続殺人事件の裏にひそむ大陰謀に若さまが挑む。歌あり、踊りあり、立ち回りあり、橋蔵の魅力満載。

 女優陣も華やか。コミカル・焼きもち焼きな桜町弘子、三田佳子、花園ひろみ、藤田佳子、歌手・岡田ゆり子など盛りだくさん。ただ本作の三田佳子、花園ひろみは、細すぎて?私の好みには、合わず(笑)。お正月映画なのだから、ここは丘ひろみなどふくよかさがこのましからん(笑)。
 もちろん花柳小菊は、いついかなるときでもグッド。

★色々鑑賞録 若さま侍捕物帖★
 番頭は、珍しく悪役ではない沢村宗之助ですね。しかし、丸顔の彼が、馬面・伊藤雄之助と兄弟とは、信じられまへん(笑)。

 ああ、それにしても大川橋蔵。
 毎度毎度見るたびに、水もしたたるいい男、華やかな若様ぶり、その華と粋にため息。
 存在自体が、傑作だよねぇ。

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by mukashinoeiga | 2015-01-09 01:17 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

佐々木康「曾我(曽我)兄弟 富士の夜襲」中村錦之助東千代之介大友柳太朗大川橋蔵月形龍之介片岡千恵蔵高千穂ひづる北大路欣也

 神保町にて。「絢爛豪華!東映美剣士列伝――東千代之介と大川橋蔵」特集。56年、東映京都。1月9日(金)まで上映中。
e0178641_8134974.png 神保町シアターでは、2015年1月3日(土)~30日(金)に上記特集を上映している。いっぽうフィルムセンターは、1月6日(火)~2月15日(日)に「東映時代劇の世界」特集。
 傾向的にも、作品的にも、モロにかぶっておる。
 そういえば、この前の京橋の千葉泰樹特集に、阿佐ヶ谷は、作品的にもかぶる加東大介特集を、ぶつけて?きた。
 フィルムセンターの年間計画はあらかじめ発表されているので避けようとすれば、避けられる。
 名画座人口は、きわめて少なく、名画座はニッチ産業の最たるものだ。普通、競合企画は避けないか? それとも「相乗効果」を狙っているのか。いや、あるのか「相乗効果」(笑)。
 そもそも名画座に通うファン自体が少なく、都内を移動して別劇場にはしごするような、マニアックなファンは、さらに、少ないはずだ。
 それとも他館の企画など考えに入れず、独自の企画で良しとしているのか。
 素人考えとしては、東映をA館がやるなら、B館は松竹なり東宝なり日活なり大映を、とりあえず、考えたほうが、「住み分け」が、出来るのだろうと、思うのだが?
 それとも、あるのか「相乗効果」(笑)。
◎追記◎ひとさまのブログ(しかもコメント欄★若さま侍捕物帖 ( 映画レビュー)-古狸奈の「思い出映画館★)を勝手に引用するのは気が引けるが、

1月3日から9日の週、神保町シアターで上映されますよ。
1月は神保町シアターとフィルムセンターの2ヵ所で、橋蔵さんの映画が上映されるので飛んで行きたいのですが、神戸住まいの私には1ヵ月間、家を空けるのは無理。残念ながら「若さま侍」は見られないのです。
でも1月後半は息子の家を拠点に、ばっちり通おうと思っています。お目にかかれるといいですね。(引用終わり)
 あるのかも「相乗効果」。一館ならともかく、二館でもとなると、ファンとしてはいかざるをえないでしょう、ということか。

 ディアドスティーニの分冊誌が高倉健追悼を同時進行するように、今、東映が脚光を浴びているシンクロニシティか。閑話休題。
 ということで、本作。

曾我兄弟 富士の夜襲 <神保町シアターHPより>
S31('56)/東映京都/カラー/スダンダード/1時間51分
■監督:佐々木康■原案:五都宮章人■脚本:八尋不二■撮影:三木滋人■音楽:万城目正■美術:鈴木孝俊■出演:中村錦之助、東千代之介、大友柳太朗、大川橋蔵、月形龍之介、片岡千恵蔵、高千穂ひづる
日本三大仇討ちのひとつとされる「曾我兄弟の仇討」を若手オールスターで映画化。曾我祐成(千代之介)、時致(錦之助)の兄弟が18年の歳月を費やし、亡き父の仇である工藤祐経(月形)を討つ。

 
 中村錦之助が美少年といっていいのか。いや、美少年だ(笑)。
 ちょっと、目を見張る。「稚児」呼ばわりされるのも納得。
 ただし、演技をすると、特にクライマックス、源頼朝(片岡千恵蔵)相手に声高らかに主張する際は、明らかにヨロキン調の萌芽。
 しかし当時、錦ちゃんが人気になるのもむべなるかな。
 千代之介、錦之助の曽我兄弟、幼少時は植木基晴・植木千恵兄妹が演じ、企画には植木照男の名がある。実質「御大」のプロデュース、というか、息のかかった作品か。
 これは、たぶん、高齢化して、主役の座を後輩に譲っていく過程での、「美しい禅譲」の演出か。
 幼い曽我兄弟の死罪を宣言する頼朝・片岡千恵蔵。しかし重臣・大友柳太朗の進言で思いとどまる。

 頼朝の子・頼家に北大路欣也少年。彼が登場すると、客席の誰かが「キンヤ」と、つぶやく。
 考えてみると彼が唯一の現役なんだなあ。くりくりっとした目に、おもかげがある。
 頼朝の富士山麗での狩りに同行する、うそつき韓国やうそつき朝日新聞風に言えば、従軍慰安婦というのか、遊女・高千穂ひづる、遊び女・三笠博子が、兄弟を心情的にサポートする。
 そつのない佐々木康演出により感銘は薄いが、橋蔵も顔を見せる豪華版。助監督に加藤泰。

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by mukashinoeiga | 2015-01-07 23:55 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(12) | Comments(0)

伊藤大輔「この首一万石」大川橋蔵水原弘江利チエミ香川良介

 池袋にて。「時代劇浪漫 東映60周年 東映時代劇の華/大川橋蔵・東千代之介・大友柳太郎」特集。63年、東映京都。
e0178641_19275368.jpg 見始めて数十秒で、ムム、これはっ!! この春見て、ここにも感想書いた森一生「槍おどり五十三次」46年、大映京都と同じ話。
 さては、森一生作品の出来に不満を感じた?脚本・伊藤大輔が、大川橋蔵のアイドル脱皮作品を東映に求められたときに、この、昔のシナリオが適当、と思ったのか。
 それくらい、ほぼ同じ話なのに、森一生作品と違って、コクがあってキレがある。ラストの歌舞伎由来の一瞬のアクションも、決った。いやいや、それ以外のアクション演出も、森一生演出の比ではないかと。
 そして、この時代としては、精一杯のスプラッタ描写(いや、今から見れば、ほとんど血のりでごまかした程度のちゃらいスプラッタなのだが)が、その演出センスは、時代を超えて、ほんとうに、素晴らしい。
 橋蔵も、脱アイドルの(軽い)汚れ役で、可能性を感じる役だが、しかし、まだ、本人も東映もアイドルとしての、未練を残しつつだから、中途半端。TV「銭形平次」まで、とうとう橋蔵は、アイドル路線を捨て去ることはなかった。本人の資質を考えるとそれは正解なのだが。
 特筆すべきは、水原弘の素晴らしさ。橋蔵に同情しつつ、最後は、武士の体面により、橋蔵を裏切る役。日活映画などで、現代劇に出るときは、へらへらちゃらちゃらした、所詮は人気歌手の、お付き合い演技でしかないのだが、伊藤の演出よろしきなのか、かっきりした端正な武士の所作作法が意外とはまったのか、なかなかの好演。へらへらした歌手演技の水原弘が、これほどサムライ演技にハマるとは。本作一番のオドロキ。素晴らしや水原弘。
 香川良介は、確か「槍おどり」では弱小藩メンバー、今回は強大藩幹部では。ゆいいつの二作出演か。いや、藤原釜足もそうではなかったか。例によって記憶違いか。
 「槍おどり」で、信じがたい二重あごヒロイン・喜多川千鶴、その役は、江利チエミに引き継がれた。東映お姫様女優あまたいる中で、なぜ江利チエミ。
 おそらく、この役は、一応主人公の恋人役なのだが、実質の出番は、あまりに少ない。それゆえ、橋蔵が旅に出ると、完全にお役ごめん、それではあまりにナニなので、たまたま旅先で出会う宿場女郎が、瓜二つ、という一人二役。しかし、それでも、撮影は、一応ヒロイン役なのに、ほんの数日で済んでしまうだろう役。それゆえ、忙しい人気歌手には、最適だったのか。
 伊藤大輔の、平常運転の底力。


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by mukashinoeiga | 2011-08-06 21:53 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(8) | Comments(0)

松田・小沢「新吾十番勝負 第一部・第二部 総集版」

 池袋にて。「時代劇浪漫 東映60周年 東映時代劇の華/大川橋蔵・東千代之介・大友柳太郎」特集。59年、東映京都。正式監督名は、松田定次・小沢茂弘のふたり表記。
 全7作シリーズの最初の二作(同じ59年の3月8月に公開)の、総集版という名の総集編。
 見る前に、おばさまたちの「小学校三年で『新吾十番勝負』見て、橋蔵さんのファンになったの」という声も聞こえて、ここら辺は、新文芸坐ならではの、ほのぼのさ。ま、ほかの名画座では、こういうほのぼのな会話は、なかなか聞こえてきませんね。神保町も、阿佐ヶ谷も、渋谷も、京橋も、三原橋も、<アタマ>で、あるいは<マニアック>に、特集、作ってますからね。真のミーハー映画は、新文芸坐にしか、かからない。いや、たとえば浅草でかかっても、ミーハーはあんまり見に行きませんからね、浅草は。
 ミーハー最後の砦が、新文芸坐。
 で、うーん、当時の子供の女の子なら、ときめくわ、橋蔵。元祖ジャニーズ系。かっこよくて、きれいで、清潔なフェロモンむんむんfor少女。
 でも、大人が見ると、なかなか生臭い話で。
 大名行列。笠が風に飛ばされたので、思わず行列の前に飛び出した商人。無礼者、と若殿(橋蔵、後の徳川吉宗)に無礼打ち。のちに、その娘(長谷川裕見子)手代(岡田英次)は、橋蔵に、敵討ちと、刀を向ける。
 えー。大名の若君に、商人風情が、敵討ちー? なんちゅう、でたらめじゃー。ま、ここら辺が、お子様向けたるゆえんか。
 ここから、映画は、いきなり<成瀬巳喜男的展開>。自分に短刀向けて敵討ちの長谷川裕見子、当て身で気絶させて、その顔を見ると、「美しい」。そのまま、側室にし、子を産ませると、正室にしてしまう。で、後の吉宗ですから、そのまま、将軍の正妻に。
 自分の父親を殺した男の、子を産み、いわゆる日本のファーストレディーになる。いや、もちろん当時は<ファーストレディー>という概念は、ないが。
 いっぽう、長谷川裕見子が生んだ子(当然若者に成長すると、橋蔵の二役)は、長谷川裕見子に恋する手代の岡田英次がかどわかし、山奥の道場(山形勲や岡田英次が師範代)で、すくすく育つ。
 東映時代劇お得意の貴種流離譚。山奥の山猿な剣術小僧が、実は、将軍の御落胤。しかも、スタアの一人二役。ああああ、大衆の欲望に忠実な、作劇術。演じるのは、水も滴る美男子・大川橋蔵。ああああ、小学三年生女子なら、確実にほれてまうで。
 その後も怒涛の展開。二本分の映画を、一本にまとめたもんだから、東映時代劇にありがちな冗長な部分は、全てカット。快調に飛ばして、面白い。
 なお、橋蔵の幼馴染・桜町弘子が大活躍も、後半(第二部部分)では、大川恵子にチェンジ。東映は「仁義なき闘い」シリーズでも、平気でレギュラー役者変更があるからなあ。
 しかし、この映画の桜町弘子は、例によって、最高に可愛い。桜町弘子というのは、ブサ可愛い女優ナンバーワンではないかしらん。大川恵子に変わっては、ほとんどチョイ役の扱いだ。
 しかし、ここで、簡単に変えられちゃうのも、桜町弘子が、あんまり重きを置かれていない証拠で。桜町弘子ファントしては、いつもなんか、軽い扱いなのが、気になるんだよなあ(笑)。
 なお、橋蔵・ヤング吉宗が、成長すると、吉宗役は、大友柳太郎に。目張りも濃く、お目めばっちりだが、ま、大友も、よく見れば、イケメンかも知れぬが、橋蔵>大友は、チョイ苦しい。もっとも吉宗夫人は、そのまま長谷川裕見子。老けメイクもせず、女優は二十年たっても、しわもなし。ここら辺は、お約束で。
 後半、鹿島神宮も登場。新吾、悪代官・吉田義夫を退治、実母・長谷川裕見子に、初のお目見え。
 ここの鹿島神宮部分は、実際のロケか。素朴な昔のままの鹿島神宮。
 いやいや、低予算東映が、京都からわざわざ鹿島にロケ行くか。もちろん京都のどこぞでのロケに決まっている。
 特徴的な鳥居あたりのみ、過去映像フッテージ。その他、大人数の大名行列とかも、おそらく倉庫から引っ張り出した過去フッテージ。この時代から、安上がり・実際的な東映で。でも、たとえ過去映像でも、鹿島神宮の昔の映像が見られて、満足満足。
 橋蔵の親子対面を、自分の利のために阻止する悪老中・薄田研二。いやー、相変わらずの、絶品悪役マスクだなあ。その、憎々しげな顔は、芸術的。太い眉も、大きな目・鼻も、うすいくちびるも、まさに、ナチュラルボーン悪役。こんな憎々しげな顔も、才能だよな。橋蔵とは違った意味で、美しい薄田研二。ほかの映画よりも、その美しいアップを、より拝める。眼福。
 その薄田老中が、雪の日、坂下門から下城し、そこへただ一人、その行列に襲い掛かる橋蔵。 この描写が、まんま「桜田門外之変」とクリソツ。雪、門から一般道へ、、その描写、画質は、近年の佐藤純弥作品とほとんど同じ構図ながら、より凝縮されて、濃厚。お見事。
 実際の桜田門と違い、東映ヒーロー映画だから、橋蔵一人が斬り込み、自分は手傷も追わず、ついに駕籠から老中を連れ出し、薄田研二も自ら刀をふるい、橋蔵に討たれる。ああ、娯楽映画の一典型。
 若き美青年の大阪商人に、山城新吾。なお、第二部について検索したら、アラタマ、五月みどりも出演だが、総集版には、見えないような。


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by mukashinoeiga | 2011-08-03 23:54 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(4)

大島渚「天草四郎時貞」大川橋蔵

 京橋にて。「映画監督 大島渚」特集。62年、東映京都。
e0178641_21421177.jpg 大島唯一の東映作品。時代劇はこれと「御法度」くらいか(例の「忍者武芸帖」は未見)。
 島原の、キリシタン農民たちが、キリシタン弾圧と、苛酷な年貢米取立て、に耐え切れず民衆蜂起して、悪代官たちを襲う話。なのだが、これがおそらく、百人が見たら、百人とも欲求不満におちいるだろう作品。カタルシスがない。
 大川橋蔵の天草四郎らが、民衆蜂起の方法論、そもそも暴力は是か非かの、論争ばかりにかまけで、一向に蜂起しないし、したらしたで、またまた、これでいいのか、と議論する。語るに堕ちる、というか、語るしすぎて、カタルシスが、ない。
 農民たちというより、反安保の60年代学生運動そのものだね。農民の重鎮、花沢徳衛なんて、戦っている最中に、やっぱり暴力はいくない、なんて民コロ虫そのまんま。あ、今どき民コロ虫っつってもわからないか。民青のことね。て、民青ももうわからないか。だいいち、変換の候補にすらないし。今風に言えば・・・・山田洋次よ。
 主人公・天草四郎は、まだまだ蜂起の利あらず、もっと大衆の中から怒涛のようなうねりが生まれるまで、時節を待たねばと、もう待てない、我慢できない、という河原崎長一郎青年たちを押さえに抑える。そして、戦いが始まると、いろいろ方法論というか、戦術をぐだぐだ。結局、この人には、しょうがないことだけど、戦略がない。戦術しかない。そういう人が率いる蜂起軍が、結局自滅するのは歴史の必然なんだろうけど、戦いの最中に、戦術のアレかコレかをぐだぐだされても、盛り下がるばかり。
 だいいち、天下の東映スタア、水も滴る大川橋蔵に、悩む男、というのが、からきし似合わない。こういう役を甘いスタアさんに振っちゃダメだろ、大島渚。そして、一緒に悩む友人に大友柳太郎、って、大友柳太郎を、悩ましても、ダメだろ。さらに、これまた女々しく悩みに悩む絵師に、三国連太郎って、くだらない悩みなんてすっ飛ばしそうな三人に、苦悩する役って、むちゃくちゃや。
 そして、大川橋蔵には、いいなづけの純情キリシタン娘(三国の娘で、新人の立川さゆり)と恋仲であり、同時に親友・大友の妻(やはりたいへん可愛らしい丘さとみ)とも幼馴染であり、実はこちらのほうにもならぬ恋。でも、この二股愛も、クラシックな純情美男スタア橋蔵には似合わず。事態を混乱させはしても、複雑な心理ってのが、この東映では、お呼びでない、のだ。
 そして、松竹出身の大島渚には、やはり戦いの修羅場が、描けない。大島は知性では武闘派だが、肉体的にはお稚児さん派で。
 当時の東映時代劇にも、無理。意識は、一応現代、というか60年代なりの現代で、一応苦悩する近代知性なのだが、肉体の現場が追いついていない。無理からぬことながら、いわゆる眼高手低の時代。かくて映画は、盛り下がりに盛り下がる。
 なお、武闘派農民の一人が、やたら印象的。あの独特の声が、そうだ、大島の60年「日本の夜と霧」で、これまた印象的に、延々と党派的演説を垂れ流し続けた吉沢京夫というひとではないか。「日本の夜と霧」より演技は格段に進歩している。もっとも、延々たる演説口調というのは、普通の会話にも垣間見れるのが、笑える。

by mukashinoeiga | 2010-01-31 06:10 | 大島の渚に寄せる新波かな | Trackback | Comments(5)