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大庭秀雄「稲妻」倍賞千恵子藤田まこと浜木綿子望月優子稲垣美穂子穂積隆信柳沢真一宗方勝巳

真のアイドル女優!倍賞千恵子。不満から口はへの字ながら両口角は上がっている(笑)。その愛らしさは、ナチュラルボーン・アイドル(笑)。
 阿佐ヶ谷にて「豊かに実る 松竹文芸映画の秋 」特集。67年、松竹大船。
 陰鬱な52年版ミッキー成瀬版「稲妻」に比べれば、はるかに明朗軽快なプログラムピクチャア、より気軽に楽しめる娯楽編となっている。
 それはいいことなのか。

e0178641_3222265.jpg稲妻 1967年(S42)/松竹/白黒/85分 (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
■監督:大庭秀雄/原作:林芙美子/脚本:堀江英雄/撮影:長岡博之/美術:芳野尹孝/音楽:真鍋理一郎
■出演:倍賞千恵子、藤田まこと、浜木綿子、望月優子、稲垣美穂子、穂積隆信、柳沢真一、宗方勝巳
四人の子どもの父親がみんな違うという複雑な母子家庭の物語。原作は林芙美子の同名小説で、1952年に成瀬巳喜男監督、高峰秀子主演で映画化されている。今回の松竹版では、家族からの脱出を試みる末娘を倍賞千恵子が好演。

 それは主演女優、高峰の陰と、倍賞の明と、の違いなのか。成瀬と、大庭の違いなのか。
 おそらく、大庭は、成瀬的名シーンを、たいてい排除する方向で、脚本を作っていったのだと思う。
 戦前松竹の助監督/監督の成瀬は、おそらく松竹メロドラマメソッドを、体質的に受け入れられない。
 一方成瀬の後輩、大庭は、その松竹メロドラマメソッドを受け入れ、戦後はそれを体現し続けた。

 その真逆な二人が、同じ林芙美子原作で、かくも対象的な、陰鬱明朗を見せた。面白い。

ミッキー成瀬版      大庭秀雄版
清子 高峰秀子      倍賞千恵子
光子 三浦光子      浜木綿子
縫子 村田知英子     稲垣美穂子
嘉助 丸山修       柳沢真一
おせい浦辺粂子      望月優子
龍三植村謙二郎      穂積隆信(竜吉)
綱吉 小沢栄       藤田まこと
田上りつ 中北千枝子   宗方奈美
国宗周三 根上淳     削除
つぼみ 香川京子     削除

e0178641_324545.jpg 重厚なミッキー成瀬キャスティングと、軽快な大庭キャスティング、その演出、何から何まで対照的だ。この「軽さ」は、50年代と60年代の差ななのか。松竹メソッド嫌いの成瀬と、松竹メソッドそのものの大庭の差なのか。
 高峰秀子と倍賞千恵子、三浦光子と浜木綿子、丸山修と柳沢真一、浦辺粂子と望月優子、植村謙二郎と穂積隆信、小沢栄と、藤田まこと、中北千枝子と宗方奈美、いつでも大庭版のほうが明るい。

 割と陰鬱に進む成瀬版の、最後にふと現れる、ほのかな希望、根上淳・香川京子兄妹を、ひそかに無視する明朗大庭も、面白い。まあ当時の松竹に根上香川に対抗しうる若手がいなかったゆえか。

 先週はラピュタに行かなかったので、ワカラナイが、例の休憩中の、柳沢真一録音予告は、この映画だったのかな(笑)。

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by mukashinoeiga | 2017-12-14 03:24 | 成瀬巳喜男映画の正体成瀬る | Trackback | Comments(1)

川頭義郎「あねといもうと」岩下志麻倍賞千恵子

きわめて「面白い」。65年、松竹大船。
e0178641_338218.jpg 阿佐ヶ谷にて「宮崎祐治・著→キネマ旬報誌・刊→より 東京映画地図2」特集。
 川頭義郎といえば、もちろん木下恵介の弟子筋にあたるわけだが、むしろ本作には、小津や成瀬を、感じる。
 なんでかなー、と考える。
 木下恵介といえば、数多くのヒット作をものして、松竹の名を高らしめ、しかし、今現在さほど、評価は、高くない。
 いや、それなりにリスペクトされてはいるが、小津や成瀬ほどではない。
 おセンチすぎる、とかお花畑過ぎる、ということもあるかもしれないが、ずぶずぶのメロドラマ作家でありながら、恋愛系メロドラマに弱い、恋愛系ホームドラマがなっていない、要するに男女間の葛藤メロドラマがほとんどない、という、木下固有の特殊事情のせいか、と思われる。
 男女間の成り行きに、なぜか(笑)関心がいかない、いうのは、メロドラマ作家としては、かなり致命的かと、思われる。
 その木下の弟子の川頭が、本作のような恋愛系ホームドラマを撮る際に、参照するのは木下ではなく、小津や、なかんずく成瀬であるというのも、道理で、本作は、かなり成瀬ティストを感じてしまった。

e0178641_3385540.jpgあねといもうと (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1965年(S40)/松竹大船/カラー/90分
■監督:川頭義郎/原作:佐多稲子/脚本:楠田芳子/撮影:荒野諒一/美術:梅田千代夫/音楽:木下忠司
■出演:岩下志麻、倍賞千恵子、中村晃子、久我美子、早川保、山村聰、轟夕起子、大辻伺郎、北林谷栄
田園調布の父子家庭の物語。長女・岩下志麻、次女・倍賞千恵子、三女・中村晃子という適齢期の三人と、娘たちの結婚問題に揺れる父。ここに亡き長男の嫁も加わって、それぞれの姉妹の新たな出発が描かれる。


 感想駄文済みの成瀬「おかあさん」が、ありえないくらいのエピソードてんこ盛りのジェットコースタームーヴィーであった。本作の、サクサク進む展開の速さに、それを感じる。そういう意味で、この映画の「流れる」速度は、成瀬並みで、くいくい展開していく快感がある。
 メロドラマでありながら、師匠の木下の、粘着性から、脱しているような。女々しいねばねば感がない、爽快さがある。
 まあ、木下的女々しいねばねばさも、好きなのではあるけれど(笑)。成瀬的、小津的な、さっぱり系?メロも、好きなんだよなあ。

 田園調布に住まう、中の上クラスの「部長さん」山村總、その娘たち、長女・岩下、次女・倍賞、三女・中村。
 父親の思惑、この家を維持していくに足る、それなりの収入の男に娘を嫁がせたい、と思うのに、倍賞は同僚の安サラリーマン早川保に惚れて、岩下も安月給の小学校教師・大辻司郎(ロンパリ気味の、老成したいかつい顔ながら、誠実な青年を好演)に思いを寄せ、思うようにならない。
 これに「事故で亡くなった長男の嫁」(きわめて成瀬的な設定)久我美子が加わると、義父・山村總の久我への親切が、山村が長男の嫁・ハラセツに懸想していた成瀬「山の音」も想起され、なにやら妖しい。
 まあ、健全な松竹メロだから、その懸念は、全く杞憂なのだが。しかし精力的な「四十八歳の抵抗」親父・山村總なので、全く油断ならない(笑)。
 三女・中村晃子のみ、恋愛エピソードがないのは、この手の四姉妹物としては瑕瑾だが、そのエピソードも入れると、とても90分には、収まらない。
 しかも彼女には、亡兄の未亡人・久我を、なにげに、ねちねちいびる小姑的役割があるので、存在感はオーケー。

 この時代の、松竹メロは、つまらない作品が数多くうんざりすることしばしばなのだが、チョット小津、割りと成瀬を意識した本作は、なかなかに合格点。
 と、相変わらずの上から目線で、どーもすいません。三平です。

 ちなみに、上記引用の、きわめて微温的ポスターも、味わい深い。
 もっともキャリアが長い久我美子が和装で座布団付き正座。もっとも正統的。
 倍賞千恵子は、横座りで、崩している。
 中村晃子は、倍賞の陰に隠れて見えないが、アグラまで行かないにしても、足を伸ばして崩している。
 岩下志麻のみ、立っていて、他の三姉妹と比べ、ヒロイン性を示す。
 でも本当は、まだ姐さんキャラ以前なので、本作では、他の女優さんに比べて、存在感は、ないんだけれども。
 凡庸なポスターながら、味わいは深い(笑)。 

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by mukashinoeiga | 2016-11-25 03:39 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(4)

加藤泰「みな殺しの霊歌」佐藤允倍賞千恵子中原早苗應蘭芳菅井きん沢淑子河村有紀松村達雄渡辺篤大泉滉須賀不二男石井均角梨枝子吉田義夫太宰久雄藤田憲子ザ・クーガーズ

 京橋にて。「生誕100年 映画監督 加藤泰」特集。68年、松竹大船。
 再見作。うーん、何度見ても、見心地が悪い(笑)。確かに、フィルムセンター言うところの加藤泰最大のモンダイ作と、言うに、ふさわしい(笑)。
 そのココロは(笑)。以下、完全ネタバレ。

e0178641_7335284.jpg32 みな殺しの霊歌(90分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1968(松竹大船)(監)加藤泰(脚)三村晴彦(撮)丸山恵司(美)森田郷平(音)鏑木創(出)佐藤允、倍賞千恵子、中原早苗、應蘭芳、菅井きん、沢淑子、河村有紀、松村達雄、明石潮、渡辺篤、大泉滉、須賀不二男、石井均、角梨枝子、吉田義夫、太宰久雄、穂高稔、藤田憲子、ザ・クーガーズ
時効目前の殺人犯(佐藤)がある事件を契機に連続強姦殺人をおこしていくが、純粋な娘(倍賞)に出会い心惹かれ…。衝撃的な殺人場面と、アウトローと山田洋次の協力を得て造形した松竹的ヒロインとの二人の心の交流が、ロー・ポジションの陰影に富んだ白黒映像による緊張感に満ちた語りで描かれる。どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品で、加藤泰最大の問題作と評される。

Clip みな殺しの霊歌 (加藤泰)

 
 おそらく中学卒業後、集団就職で北海道の田舎から出てきた16歳の少年は、残された愛聴盤が、橋幸夫&吉永小百合「いつでも夢を」だし、まだまだ都会の風に染まらない純情少年だったのだろう。そんな彼を中原早苗、應蘭芳、菅井きん、沢淑子、河村有紀のおばさん軍団が「輪姦」ないし集団暴行した。
 ショックだろう。まだまだ「花とゆめ」の田舎の純情少年が、いきなり大量の「珍味」を食わされたようなものだ。特に菅井きんは、ないだろう(笑)。
 そこは、何歩か譲って、良しとしよう。
 そして思い詰めて、飛び降り自殺をしたと、いうのも、まあ良しとしよう。

 しかし、この少年の顔見知りの、佐藤允が、「義憤に駆られて」この五人の女たちを、次々レイプ・拷問・殺害する意味が、分からない(笑)。
 「俺はあいつと何の関係もない、名前すら知らないんだ」というが、少なくとも一緒に映画を見に行ったり、凌辱されたことを打ち明けられる程度には、親しいわけだろう。
 なんだか変だ。

 佐藤允は、新婚の妻を殺して、逃亡中の身だ。新妻が実はほかの男と関係があり、許せなかったのだ、と推測される。しかしそれから十数年、もうすぐ時効の身だ。もう酸いも甘いも、のおっちゃんになったのだから、知り合いの少年が汚されたからといって、五人もの女を殺すか。
 レイプするか。おかしいだろ。復讐のため、拷問レイプするのは、本末転倒だろう。
 清いものが汚された、それへの怒り。
 少年が自殺したのは、ある意味少年の勝手で、あろう。その復讐を女たちにするならば、せいぜいレイプ程度?で、すます?べきだろう。歯には歯を、という論理でいうならば、殺すのは、明らかに過剰だろう?
 百歩譲って、レイプ抜きの拷問のみで、殺すべきだろう。
 いや、わからないじゃないよ、60年代後半ともなると、エロティック映画がかなり幅を利かせ、おそらく松竹の作品依頼は、ほどほどのエロ描写を利かせたサスペンス、ということで、ほどほどにエロを出してくださいよ、加藤さん、ということでしょう。だから、サスペンスでエロと言ったら、レイプ殺人だろう、ということになる。
 でもお公家さん集団の松竹では、そういうエロが苦手な監督ばかり、だからわざわざ他社から監督起用するんですよ、加藤さん、暑い演出、頼みますよ、というわけで。

 しかし、明らかに、混迷の結果と、なる。あまりに、レアケースを扱う結果になる。ふつうなら、倍賞千恵子クラスの清純な乙女が、男たちに凌辱され、自死。その復讐、という段取りだろう。
 しかし、松竹の清純派女優には、そういう輪姦描写は、なじまない。倍賞千恵子、論外。じゃ、少年じゃ、どうか、と。そういう企画の流れか、と。よく、わからんが。
 ムーヴィーウォーカーには、(広見ただしの原案を、「ハナ肇の一発大冒険」の山田洋次と、「懲役十八年」の加藤泰が共同で構成にあたり、三村晴彦がシナリオを執筆した。監督には加藤泰があたったスリラー)とあるが、本映画のクレジットには、広見ただしのクレジットが、ない。いかにもペンネームっぽい名前だが、当時、そういう少年の輪姦事件というものがあって、そのレポートを原案にしたのか。

 しかしなぜ佐藤允なのか。
 佐藤允が、本作の主演というのが、おそらく、本作最大の欠点だろう。
 佐藤允は、典型的な映画スタアである。小林信彦が、小林旭を言ったように、無意識過剰な、その顔を見ても、何を考えているのかわからない、というより、何も考えていない、圧倒的な空虚を、体現している無意識過剰な映画俳優の、典型かと。

 本作では、佐藤允は、女たちを殺しまくるが、それは個人的怨恨ではない、金銭目的ではない、性的葛藤でもない(現在の視点からいえば、佐藤が少年に愛をいだいている、という仮説も可能だろうが、そういう兆候は一切排除されていると、思う)。
 では、なにゆえの犯罪なのか。
 かつて自分が新妻に裏切られたように、少年の無垢が汚されたゆえの、犯罪か。という風にしか読み取れないが、15年も逃亡生活を続けるおっさんが、そんな少年じみた「汚れちまった悲しみ」に、まだ拘泥し続けるとも、思えないが。
 佐藤允の、少年みたいな笑顔、に、加藤泰は、賭けたのか。
 しかし、そういう、「思想犯」を演じるには、佐藤允の顔は、徹底して、空虚であり、無意識過剰でありすぎる。
 佐藤允は「思想犯」を演じるような顔をしていないし、そういう演技も、一切出来ない真の映画俳優なんですね。
 これが、加藤泰映画がらみでいえば、安藤昇であれば、あるいは、高倉健であれば、あるいは、説得力を持ったかもしれない。佐藤允では、義憤の説得力に、全く欠けるのである。
 義憤を体現するような、知的/感情レヴェルに、佐藤允の顔は、全く無縁、なのだ。
 たぶん、佐藤允は、小林旭以上に、無意識過剰な役者なので、よりによってそんな佐藤に「ある意味思想犯」を演じさせた加藤泰は、なんちゅう無謀(笑)。

 かつて鈴木清順は、「映画のつじつまが合わないのは、俳優が下手なせい」(大意)と、一種の暴言を吐いたが、おそらく本作が、消化不良を観客に感じさせるのは、佐藤允がミスキャストなせいなのだ。倍賞千恵子程度の「深み」すら感じさせない、鉄面皮な、真の映画俳優、佐藤允を、なぜ、よりにもよって起用したのか、加藤泰。
 
 倍賞千恵子。ほくろの多いすっぴんの顔で、演じた。家族に迷惑をかけるやくざの兄を、思い余って、殺した女。ウラさくらか。構成山田洋次の、ダークサイドなのか(笑)。仕事も、大衆食堂で、さくらとの共通点多し。
 山田洋次にとって、加藤泰とは、何なのか。加藤泰の裏が、あるいは表が、山田洋次なのか。
 山田洋次「霧の旗」と並ぶ、二大言いがかり映画に、ともに倍賞が出ている不思議?

 本作では、珍しく大泉滉が、まぢめな役(笑)。まあ、多少軽みはあるが、所轄警官を、それなりにまじめに演じて、こんな大泉滉メヅラシイなあ。
 警察は、ぼんくらばかりで、失敗だらけ。うーん。
 ということで余談だ(笑)。以下、話は、どんどん細かくなってくる(笑)。

余談1 殺され順でいうと、應蘭芳、中原早苗、沢淑子、菅井きん、河村有紀だが、最初の應蘭芳こそ、エロティック映画らしく?ヌードも多いが、菅井きんのみは、遺体写真のみ。
 なぜ菅井きんの暴行場面を描かない、加藤泰。エロでもなく観客ドン引きだろうが、そこを「平等」「等価」に描いてこそ、じゃないのか、加藤泰(笑)。
 いや、菅井きんをレイプする佐藤允を見たいわけじゃないが(笑)、まあ、それなりにエロい女たちをレイプしてばかりでは、佐藤允、自分の趣味でやってるんじゃないか(笑)と、誤解されちゃうでしょ。菅井きんをレイプしてこそ、佐藤允のまじめな?犯罪ぶりが、逆に証明されるんじゃないの(笑)。
 士道不覚悟(笑)。なんのこっちゃ。

余談2 上記ユーチューブ画像でも垣間見れるが、最初の被害者が殺されるときに、回想シーン的にダブって、五人の女のマージャンシーンが、出てくる。手っ取り早い人物紹介なのかもしれないが、事件当日はマージャンをしていた、という偽り証言を観客の頭に刷り込ませるミスリードの典型で。
 ミステリとしては、完全に失格。まあ、事件当夜ではない、別の夜に確かにマージャンをしていた、という言い訳も成り立つが、それでも、失格気味。まあ、加藤泰映画に、厳密なミステリ基準を求めるのもセンないことでは、ある。

余談3 警察は最初の時点で残り四人の氏名、住所を把握している。事情聴取、あるいは囲い込みで、連続殺人は、少なくとも、二人目で阻止できたはずだ。そういう事情聴取を五人目の河村有紀で、やっとするとは、なんというお粗末。
 最初の監察による手書きメモ発見を、人物紹介の手っ取り早いうまい手だ、という脚本の思惑が、逆にこの映画の傷になった。

余談4 例によっておバカなフィルムセンターの解説(字数制限を守るため、日本語として、そもそもメロメロなのだが)いわく「どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品」とあるが、本件のような「動機なき」(と、法令上は、解釈される可能性が高い)「不条理大量殺人」こそ、もっとも「罪が重い」はずで「あるべき」であろう。
 「どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品」で、あるならば、本作の事例は、まったく不適当。それとも「お花畑による犯罪」は、「許されるべき」というサヨク脳的発想なのだろうか。
 法律解釈上はあるいは、本件は極めてビミョーな扱いなのだろうが、というのも動機重視主義の日本の刑法(という、法律無知のぼくの印象)では「動機が薄い」(と、解釈をせざるを得ないだろう)と、なぜか刑が軽くなるような印象なので。
 こういう「ある種の思想犯」が、訳が分からないので法律上の判断は保留、という理由で「刑罰が軽くなる」ほうこそ、まさしく「不条理」だろう。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2016-08-28 07:34 | 加藤泰突撃せよ炎のごとく | Trackback(13) | Comments(6)

野村芳太郎「女たちの庭」生田悦子小畠絹子香山美子倍賞千恵子尾崎奈々岡田茉莉子山口崇小沢栄太郎高峰三枝子園井啓介

 渋谷にて。「野村芳太郎監督特集」。67年、松竹。
e0178641_23343079.png 日本橋で老舗織物店を構える、小沢栄太郎・高峰三枝子夫妻、その三人姉妹を描く。
 三人姉妹に、小畠絹子、香山美子、生田悦子。
 長女は園井啓介を婿にもらって、店のあとを継ぎつつある。あとの二人は独身。
 典型的な3・4姉妹ものホームドラマ。
 松竹当時の大御所・大庭秀雄か中村登が撮りそうな定番ホームドラマを、中堅というべき野村にも、お鉢が回ってきたか、というところ。
 生田の友人に倍賞千恵子、生田の異母姉妹に尾崎奈々、尾崎の叔母に岡田茉莉子と、豪華な婦人、もとい布陣。
 どうやら三女・ 生田悦子が実質主演か。
 生田悦子は、ぼく的には、なんだか、イマイチで。どの映画を見ても、確かに、そこそこ美人で、そこそこかわいいが、演技的に引っかかるフックが、ない。
 たとえば戦前の槙芙佐子のような、典型的可愛いだけじゃ駄目なのよ女優。その生田にして、本作ではなかなかの善戦と、見たが、ほかの高峰、香山、倍賞、岡田、尾崎各嬢ほどには、突出したチャームを感じない。
 これは、ぼくの趣味ゆえなのか、しかし、いずれにしろ、生田悦子がヒロイン女優として「残らなかった」のは、紛れもない事実であろう。倍賞、尾崎は、どちらかというと、ブス寄り(笑)なのに、「残っている」ことを思い合わせると、やはり、可愛いだけじゃ駄目なのよ。
 いや、まあ、尾崎奈々が、今、残っているか、といったら、はなはだ疑問ではありますが、まあ、ぼくの好みですからね(笑)。斎藤耕一GS映画のミューズ。

 この時期、戦前松竹ヒロイン女優で、多少の色香を漂わせていたのは、高峰三枝子のみ。田中絹代は、とっくにおばあさん女優に。まあ、いつもの愚痴ながら、桑野通子の不在が惜しまれるわけだが、通子・みゆきの共演を見てみたかった、という、かなわぬ夢ですな。
 生田と香山美子(いや、若いころは好みでした(笑)が、姉妹で争う男に、TV俳優・山口崇。さわやかだが、それだけ(笑)。
 いったんは、姉妹にそろってふられた山口崇に、姉妹の義兄・園井啓介が「(うちの草野球チームの)5番に、よかったんだけどな。惜しいことした」というのが、笑わせる。

★女たちの庭|Movie Walker★


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by mukashinoeiga | 2014-06-29 00:53 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(80) | Comments(0)

野村芳太郎「暖流」倍賞千恵子岩下志麻平幹二朗細川俊之笠智衆岸田今日子小川真由美

 渋谷にて。「野村芳太郎監督特集」。66年、松竹。
e0178641_9434810.png 39年吉村公三郎版、57年増村保造版に続く、三度目の岸田国士原作リメイク。

★暖流(1966)|Movie Walker★
★暖流(1957)|Movie Walker★
 戦前映画はほとんどMovie Walkerにのっていないので、39年吉村公三郎版は、以下をタイトル検索(増村保造版もあり)
★所蔵映画フィルム検索システム★

 私見を述べれば、吉村版は面白い。これは、怜悧な(しかし人情もある)再建屋という役に、佐分利信がベストフィットしているからというのが、大きい。最後に、水戸光子を選ぶ理由が、ふるっている。
「どうせぼく程度の男には、彼女が似合いだ」そういうせりふが、佐分利信ほど似合う俳優は、ほかにはいまい。

e0178641_12194987.png 増村保造版は、印象が薄い。 「壊し屋」増村としては、「駄目になった老舗」再建なんて、てんで眼中にないはずの素材だったろうし、マスマスムラムラな、増村ベクトルも空回りか、という印象だ。
 では、野村版の本作は、どうか。
 うーん、吉村ハムさん、マスマスムラムラに比べれば、穏当な個性ゆえ、売り家と唐様で書く三代目というところか(意味不明)。でも、それほどは、悪くないんだが。特に倍賞千恵子は、歴代ベスト?
 ここでは三作の出演者吟味と行こう。

     吉村公三郎版  増村保造版  野村芳太郎
日疋祐三 佐分利信    根上淳     平幹二朗
石渡ぎん 水戸光子    左幸子(日活)  倍賞千恵子
笹島    徳大寺伸    品川隆二    細川俊之
志摩啓子 高峰三枝子  野添ひとみ   岩下志麻
父泰英  藤野秀夫    小川虎之助   笠智衆
母滝子  葛城文子    村田知英子   夏川静江
兄泰彦  斎藤達雄    船越英二    仲谷昇
妹三喜枝 森川まさみ   清水谷薫    岸田今日子
堤ひで子 槙芙沙子    下平れい子   小川真由美

e0178641_12271975.jpg まず再建屋・日疋祐三は、サブリン圧勝。ヒラミキは、あまりに怜悧すぎて、最終的には、やはり再度倍賞を捨て岩下志麻に取り入りそう。シマ臆測ですが(笑)。
 庶民派看護婦・石渡ぎんは、倍賞か。水戸光子は、なんか裏がありそうだし(そういう顔している)、左は元気がよすぎて、ニュアンスがない。「ニュアンスがありそう」な女の役に、こういう女優、こういう演出は、増村保造暴走だろう。
 お嬢さん・志摩啓子については、家付きお嬢様に、野添ひとみは、ムリ(笑)。大映なら、石渡ぎんに若尾文子(あるいは藤村志保)、志摩啓子に山本富士子ならベストだったのに。
 志摩啓子両親については、吉村版が優勢か。ただ、野村版の夏川静江、夫危篤の報に駆けつける医師の一人に夏川大二郎。貴重な姉弟競演。野村版は岸田国士原作に、岸田今日子を特別出演、という粋な計らいも。岸田国士の著作権継承者が、岸田今日子だった可能性も。原作料・許諾はどうだったのだろう。
 なら、笹島か兄泰彦に、岸田森はどうだったか。当時は、ネームヴァリューが低すぎて、やりすぎだったか。
 打算医・笹島は、細川か。徳大寺伸は、軽薄は合ってるが、人の良さがでちゃうんだよなあ。品川隆二は、暗すぎて、打算的世渡りはかえって苦手そう(笑)。
 兄泰彦は、いい加減で軽薄な兄、という役に仲谷昇のみ、無理があり。あとの二人は、グッド。仲谷昇は、原作者の娘・岸田今日子と結婚していたということで、この夫婦役になった(他の映画で妹三喜枝と兄泰彦が夫婦であったか?)かと思えるが、ちと無理がありすぎ(笑)。妹三喜枝が、兄嫁三喜枝に、変奏されたか。
 笹島の愛人看護婦・堤ひで子は、「植物属乙女科」系槙芙沙子から、肉食系小川真由美まで。この役なら文句なしに小川だが、槙芙沙子についてはまるきり記憶にないので、あとで確認してみたい。

 松竹戦後メロドラマがぎりぎり賞味期限内だった頃の本作、美しい岩下志麻と、ケナゲかつ底力の倍賞、ダブルヒロイン映画として、面白かった。

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by mukashinoeiga | 2014-06-08 23:45 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(3) | Comments(0)

今井正「あゝ声なき友」渥美清倍賞千恵子長山藍子吉田日出子小川真由美香山美子

 三原橋にて。「生誕百年 今井正監督特集・第一部」特集。72年、松竹=渥美清プロダクション。
e0178641_21113193.jpg コメディ俳優・渥美清が、その絶品の、ナチュラル・ボーン・コメディセンスを捨てて、シリアス演技に挑戦。3/2(金)まで、上映中。
 中国戦線を、病気送還されて帰国する兵隊・渥美は、玉砕を覚悟した同僚兵から、家族に当てた、遺書を多数預かる。
「内地に帰ったら、家族に届けてくれ」
 しかし、敗戦国に帰った復員兵は、まず自ら食うものを確保しなければならない。
 自作の掘っ立て小屋に住み着き、担ぎ屋、必死の思いで買ってきたコメを、朝鮮人バイヤー・朴さん(田中邦衛)に買い叩かれる。
 少し前までの敵軍、アメリカ軍払い下げの食材くず(というより、アメリカ軍の食べ残しの残飯生ごみ)を、米軍放出栄養満点シチューに、「改造」して、駅前マーケット闇市で売る。そのシチューには、使用済みコンドームも入っている。
 そのコンドームだって、アメリカ兵が、日本女性に突っ込んだものに、違いない。二重三重に貶められる、敗戦国民。
 生きるに必死で、日本全国に散らばる遺族に、なかなか遺書を届けられないのは、戦後直後の事情、アメリカ軍の無差別市民テロとも言うべき空襲で、多くの都市が破壊され、遺族そのものも多くが死に、生き残った者も、地方への疎開を余儀なくされ、あらゆるインフラが寸断されているので、大勢が「行方不明」という扱いだ。
 先の東北大震災でも、今でも、三千名強が、行方不明という状況だ。その多くは、亡くなっているのだろうが、その亡くなっているという確認が、されていない。いったん、決定的事態になったら、徹底的に、全てが、寸断される。
 e0178641_21123415.jpgということで、乏しいお金をやりくりしながら、手探りの状態で、渥美は、全国の遺族に、兵隊たちの遺書を、届けること、戦後八年。
 今から考えれば、各地方の役場に問い合わせの手紙を書き、あるいは地方新聞に、三行広告でも、出せば、とも思うが、いや、そういうことも実際にしたのを、映画は省略しているのか、実直に、渥美は、長い時間と乏しい旅費で、地方を訪ねまわる。
 あるいは、とりあえず郵便で所在確認。確認が取れたところは、すばやく持参。
 しかし、・・・・そんなに、ほいほい届けたら、映画の絵には、ならないわけですな。
 日本各地を旅し、そのたび各地の絵がロケされる、全国縦断ロケ。日本映画の定番、観光地案内というか、寅さんですね。必ず、寂しい冬の海が映し出され、そこで人々は出会う。
 いや、人が人と出会うのに、冬の海辺というのは、まず選択肢には、ふつうないのですが、絵になる、という点で、映画は、必ず、うそ寂しい海辺で、ひとと人は、会うのですね。
以下、ネタバレがあります。

最初のうちは、それなりに順調。
 元内相・加藤嘉、医師・松村達雄は、亡き息子の最後の手紙を届けてくれたことを、率直に喜ぶ。
 しかし、それ以後は、やっとの思いと犠牲を払って届けた手紙を、「もう、あたしには、どうでもいいの」と無視されたり、届けないほうがよかったケースもあり、悲惨な状況。
 仕舞いには、北村一夫の遺書を届けたら、なんと当の北村一夫本人が出てくる始末。部隊は全滅したが、俺は古参兵なりの知恵で、生き延びた、こんな遺書を、戦後八年もかけて、届ける渥美は、時代遅れの、お人よしのバカだと、ののしる始末。
 たしかに、渥美清は、極めつけの、お人よしの、愚直なだけのバカだ。
 あるいは、岡田民主党幹部のような、コチコチの原理主義者のロボコップか。
 コメデイ演技を封印し、シリアス一直線の、渥美の、渾身の力作は、しかし、どんどん、バカ映画?に、なっていく。
 遺書を書いた北村本人に遺書を届けたり、亡き戦友の妻(相変わらずエロい長山藍子、子供心にTVに出ている長山藍子は、エロいなーと、思っておりました>笑)は、再婚した夫との家庭が、崩壊するし。渥美自身も、新たな職を失うし。
 渥美が、亡き夫たちの遺書を、届けることによって、妻ら遺族らは、どんどん不幸になっていく。あるいは、吉田日出子のようにあらゆる知性を喪失し、無反応、小川真由美のように、夫の遺書を開封することが重荷で、ついに死ぬ直前まで、開封さえ出来ない。
 戦争が奪った、命と、時間は、もう二度と帰らない。<配達>に八年もかけた渥美の思いは、ほとんどが、無視され、不幸を招く。悲惨、徒労の仕事を、渥美清は、演じている。

 その理由は、つまり、明白である。敗戦、焼け野原、食にも住にも窮する、サヴァイヴァル、苛酷な環境激変のゆえに、弱いものほど、貧しいものほど、過去を顧みる余裕も、習慣もないのだ。
 死んだもののことなど、もう、どうでもいい。生きている自分たちの、今日のコメ、明日の安住のみこそが、大切なのだ。死んだ夫の、せいぜい便箋一枚、二枚の遺書なぞという、今日明日の差し迫った食料、住居、幸福追求の前には、何の役にもたちはしない。

 もうひとつは、日本人独特の、昨日の不幸、苦しみ、被害を、「次の日」には、けろっとして、忘れ去る能力。真に、デジタルな思考法?
 広島長崎への原爆、大規模な日本全国への、無差別非戦闘員大量虐殺テロというべき空襲の、犯人・アメリカを、簡単に許し、その戦後チャリティーに、全面的に頼ってしまう。
 ぼくは、常々大笑いしてしまうのだが、こういう、過去の恨みつらみを、水に流す、忘れっぽいデジタル民族がいて、そして、そのお隣りの国は、歴史を改ざんして、資料や証言を捏造して、ありもしない<被害>をでっち上げてまで、過去の<民族的苦痛>を、日々国民挙げて<リニューアル>している、明白な嘘をついても、次の瞬間には、嘘を言った当人が、その嘘を真実と信じてしまう、そういう心性の人たちの国々が、ある。そういう、おかしみ。
 そういう国が、隣どうしというのが、まあ、神様のいたずらというか、プラティカル・ジョークというか、実に、面白い(笑)。
 というわけで、マジメな今井正と、マジメな渥美清のコラボである本作は、まじめでないぼくが見ていると、だんだんギャグ映画の様相を呈していく。実は、年をとってとみに涙もろくなっているので、目を潤ませつつ、ぼくは、笑っているのです。

 ちなみに遺書のあて先は、父親、妻、恋人、姉、弟。
 いちばん、切実にその遺書を欲しがっているだろう姉(博多の倍賞千恵子)、弟(釜石の志垣太郎)は、結局その遺書は届けられず、どうでもいい、恋人未満(香山美子)、開封すること自体が苦痛で出来ない妻(小川真由美)、空襲で発狂し、遺書すら認識できないた妻(吉田日出子)などには、届けられるという不条理。
 妻たちは、所詮仮のつながり、血肉を分けた父親のみが、渥美に感謝する。といっても、冒頭の加藤嘉は、遺書の中の父親批判(いかにも、戦後的発想を、戦争中の軍人がするというのは、左翼フィクションでは、よくあること)に愕然とする。
 ここで、母親に当てた遺書が一通もないのも、左翼・今井正らしい。遺書を見て、涙にかきくれるというのは、戦争否定の、左翼・今井正には、ご不満か。ちゃんと、靖国神社は、茶化しの対象だし。
 いっそ、完全茶化しの遺書配達人・渥美清を、見てみたかった。監督は、もちろん、森崎東ね。
◎追記◎とは、言うものの、左翼作家のお決まりは、日本という国の体制、支配階級の横暴が、悪い、一般庶民は、悪くない、というのが、基本のスタンスのはず。
 ところが、本作では、簡単に過去の悲劇を忘れるのは、今の生活にかつかつの一般庶民の方。
 特に、出し遅れの証文みたいな、数年~8年前の、死んだ夫、死んだ恋人、つまり<元オット><元カレ>の、便箋1・2枚の遺書など、現在の<女の幸せ>には、まったく何の役にも立たないという、庶民の、女の、リアリズム。
 そう、<庶民のリアリズム><女のリアリズム>のまえには、いささか、<共産党左翼作家>今井正も、カタナシというところか。職人に徹して、とりあえず、作った映画。
 だから、ラストの、渥美清の呆然とした顔が、とってもリアル(笑)。

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by mukashinoeiga | 2012-02-27 01:26 | 今井正 青い左傾山脈 | Trackback | Comments(0)

井上梅次「踊りたい夜」水谷良重倍賞千恵子鰐淵晴子有島一郎

 神保町にて。「ニッポン・ミュージカル時代」特集。63年・松竹大船。
e0178641_2056111.jpg 今回の特集21本の中で、おそらく唯一の未見作。先ごろ亡くなった井上梅次お得意のミュージカルもの。思ったよりもソング&ダンスが多くて、うれしくなる。ただ、テーマソング的なピンク・タイツの歌が、ちょとつまらなくて、何度も聞く曲じゃないよな(笑)。
 主演は、ショーダンサー三姉妹。セクシー・キュートな長女・水谷良重、けなげキュートな次女・倍賞千恵子、キャリア最高の美貌・三女鰐淵晴子。歌って、踊れて、可愛くて。最高のキャスティングではないかしらん。日本映画史上、あとにも先にも、これを超える、トリオのミュージカル女優はありえないだろうという、贅沢さ。
 この三人を、さりげなく、派手にならずに、しかもきらびやかに平常運転演出の井上梅次。スーパーでもエクセレントでもないけれど、すばらしい。のちに香港に渡って、この映画を「香港ノクターン」としてセルフ・リメイクし、それは前にフィルムセンターで見たが、色調も演出も俳優もダサくて、しかもどんなお話かイマイチよくわからないという。
e0178641_20571057.jpg 鈴木清順が小林信彦に、「清順さんの映画はつじつまの合わないところがあるが?」と問われて、「つじつまを合わせるのは、役者の仕事です。つじつまが合わないのは、役者が下手だからです」と、天下の名言?を吐いたことを記憶しているが、そう、どんなに理不尽なストーリーでも、俳優の絶対的魅力があれば、それはらくらくクリアできるのだ! 「香港ノクターン」には???だったぼくも、「踊りたい夜」の、いい加減なメロドラマには、感服いたしました(笑)。
 娘たちの才能と美貌を食い物にする父・有島一郎とけんかして(ヌード劇場でヌードになれ、と言われて反発して、泣く。後年、鰐淵はヌード写真集やあがた森魚の映画で脱ぐのだが・・・・)、泣きながら夜の家出の鰐淵晴子。ショーダンサーをしていても、亡き母の夢でもある、クラシック・バレリーナへの夢やみがたく、その家出の道行きに、ふと目に留まった看板「バレェ研究所」。その看板のそばに「住み込み女中募集」。
 鰐淵は、研究生になりたいと、管理人夫婦(妻は桜むつ子)に頼むが、「夜で担当がいないから明日おいで」と言われ、今夜の宿もなく「住み込みの女中にさせてください」と、頼み込む。出ました、典型的大映メロドラマ調。
 同世代の娘たちがレッスンする中、ひたすらモップで掃除の美少女。
 そして、非常勤の<伝説のコーチ>がやってくる。本人ももとバレェ・ダンサーだったはずなのに、今は杖をついて足が不自由、鰐淵のレッスンを見て、その杖で床をどんどん、「ダメだ、全然なっていない!」、ついにはその杖で鰐淵をバシバシ叩くスパルタな鬼コーチ、涙流しつつ、そのスパルタ教育に耐える鰐淵。
 この鬼コーチに、自身も、確か、ダンサー出身の、根上淳(大映)。ぼくが見た根上淳史上で、もっともシャープな、美中年。しかも足が悪く、杖をついて、その杖で美少女をビシバシと。愛のムチ。う~ん、絵に描いたような少女漫画、または、大映映画、または大映TVドラマ、あまりにベタなのだが、先ほどの清順の言葉ではないが、根上淳があまりにスーパーすぎて、ベタなのに、つじつまが合ってしまう! エクセレント! 
 鰐淵は、結局、根上に失恋する形で。水谷良重も、ニヒルなバンド・マスター佐田啓二(これまたニヒルな美中年を好演)に失恋し、倍賞千恵子も夫・吉田輝男を失う。みんなそれぞれの失意の中で、それでもなおかつショー・マスト・ゴーオン! まあ、安いメロドラマなんだけど、イージー・リスニングなソング&ダンスには、合っている。
 当然ベストテンとかのレヴェルの話題には絶対残らないんだけど、で、ぼくも、これが今年のベストワンだ!とは言わないんだけど、水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子、このコラボ、最強。

by mukashinoeiga | 2010-04-22 22:16 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(1) | Comments(2)

篠田正浩「私たちの結婚」倍賞千恵子牧紀子三上真一郎東野英治郎沢村貞子

 京橋にて。「映画監督 篠田正浩」特集。62年、松竹大船。
e0178641_3581917.jpg 松山善三との共同脚本による、青春ドラマの、佳作。
 80年代以降、作る映画作る映画が全部、コクもキレもない凡庸な映画ばかりで、ひそかに凡匠と名づけている篠田が、こんなにキレのある映画を撮りうるとは、にわかに信じられない。
 最近、こればっかだな。
 終映後、駅に向かって歩き出したときに、時間を見た。18時12分。アレ、おかしいな。時計機能、狂ったかな、と。しばし考え、歩きながらフィルムセンターのスケジュール表を確認する。
 なんと。「私たちの結婚」66分。
 えー。
 たいへんヴォリュームのある映画で満足満足、と、ぼくの体内時計では平均的なプログラム・ピクチャアの上映時間90分前後を体感していのだ。それが66分とは。
 もちろん、退屈な映画で66分の映画が90分に感じられたわけではない。まったく逆だ。内容が充実しているので、いわばおなか満腹状態、でもメニューを確認してみれば、お子様サイズの小盛りだった、と、そんな感じ。やるなあ、篠田。
 いすゞ自動車の川崎工場が舞台。よどんで、くすんだ工場街。牧紀子はこぎれいな事務棟の経理部、その妹・倍賞千恵子は、工場の現場事務所のBG、ふたりがなんとなく気にしている三上真一郎は、エンジン担当の「職工」だ。現場の三上、事務棟の牧は、最初のなんとなくいやな出会いから敬遠しあうが、妹・倍賞を媒介に、仲良くなり、恋人同士といえる仲になる。しかし、結婚しても「職工」の給料では一生貧乏暮らしだ(こんな設定をオーケーしたいすゞも、すごいが、昔の企業は自社イメージ考えずに、映画撮影に協力していたので。まあ、映画の題材になることに、魅力を感じていたのでしょうが。鉄道会社は平気で自社路線で脱線事故が起きるロケを容認していたし)。そこに、むかし闇屋と馬鹿にしていた木村功が突然やってきて、今は羽振りの良いサラリーマン。牧紀子の心はぐらつく。
e0178641_358412.jpg 牧紀子が可愛らしい。いつ見ても、堅すぎ定型美人・愛想もコソもない感じが、この映画では大変かわいらしい。そして、注目すべきなのが倍賞千恵子。いつも、けなげで明るい下町娘の彼女の、ダークサイドがうかがわれるのは、山田洋次「霧の旗」以上かも。
 妹・倍賞千恵子ははしゃぐ。姉妹の両親は東野英治郎・沢村貞子。「あたしたち(姉妹は)親に似なくて良かったね」→「あたしたち、美人姉妹だから」。そして、最後には→「あたし、お姉ちゃんみたいに美人じゃないから」。とことん暗くなったときのダークサイドの表現が、倍賞千恵子、素晴らしい(笑)。
 居酒屋の女将・清川虹子も好アシスト。
 うーん、<初期>篠田正浩は、あなどれない。
 なお、終映後、時間の不思議に???状態のとき、近くを歩いていたご老人ふたりの会話。
「牧紀子を王さんは好きだったらしい。手紙も出したんだよ」
「エー、ホントかい」
「まあ、実らぬ憧れだったようだけどね」
「ああ、ファンの淡い恋、みたいなものか」
「いや、彼女が映画スタアになる前の話だよ」
「ホントかい」
 確かに、牧紀子、中華系美人だよね。しかし、王さんて。ホントかい。

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by mukashinoeiga | 2010-02-22 22:34 | 篠田心中岩の下志麻 | Trackback | Comments(0)