人気ブログランキング |

タグ:丘さとみ ( 1 ) タグの人気記事

大島渚「天草四郎時貞」大川橋蔵

 京橋にて。「映画監督 大島渚」特集。62年、東映京都。
e0178641_21421177.jpg 大島唯一の東映作品。時代劇はこれと「御法度」くらいか(例の「忍者武芸帖」は未見)。
 島原の、キリシタン農民たちが、キリシタン弾圧と、苛酷な年貢米取立て、に耐え切れず民衆蜂起して、悪代官たちを襲う話。なのだが、これがおそらく、百人が見たら、百人とも欲求不満におちいるだろう作品。カタルシスがない。
 大川橋蔵の天草四郎らが、民衆蜂起の方法論、そもそも暴力は是か非かの、論争ばかりにかまけで、一向に蜂起しないし、したらしたで、またまた、これでいいのか、と議論する。語るに堕ちる、というか、語るしすぎて、カタルシスが、ない。
 農民たちというより、反安保の60年代学生運動そのものだね。農民の重鎮、花沢徳衛なんて、戦っている最中に、やっぱり暴力はいくない、なんて民コロ虫そのまんま。あ、今どき民コロ虫っつってもわからないか。民青のことね。て、民青ももうわからないか。だいいち、変換の候補にすらないし。今風に言えば・・・・山田洋次よ。
 主人公・天草四郎は、まだまだ蜂起の利あらず、もっと大衆の中から怒涛のようなうねりが生まれるまで、時節を待たねばと、もう待てない、我慢できない、という河原崎長一郎青年たちを押さえに抑える。そして、戦いが始まると、いろいろ方法論というか、戦術をぐだぐだ。結局、この人には、しょうがないことだけど、戦略がない。戦術しかない。そういう人が率いる蜂起軍が、結局自滅するのは歴史の必然なんだろうけど、戦いの最中に、戦術のアレかコレかをぐだぐだされても、盛り下がるばかり。
 だいいち、天下の東映スタア、水も滴る大川橋蔵に、悩む男、というのが、からきし似合わない。こういう役を甘いスタアさんに振っちゃダメだろ、大島渚。そして、一緒に悩む友人に大友柳太郎、って、大友柳太郎を、悩ましても、ダメだろ。さらに、これまた女々しく悩みに悩む絵師に、三国連太郎って、くだらない悩みなんてすっ飛ばしそうな三人に、苦悩する役って、むちゃくちゃや。
 そして、大川橋蔵には、いいなづけの純情キリシタン娘(三国の娘で、新人の立川さゆり)と恋仲であり、同時に親友・大友の妻(やはりたいへん可愛らしい丘さとみ)とも幼馴染であり、実はこちらのほうにもならぬ恋。でも、この二股愛も、クラシックな純情美男スタア橋蔵には似合わず。事態を混乱させはしても、複雑な心理ってのが、この東映では、お呼びでない、のだ。
 そして、松竹出身の大島渚には、やはり戦いの修羅場が、描けない。大島は知性では武闘派だが、肉体的にはお稚児さん派で。
 当時の東映時代劇にも、無理。意識は、一応現代、というか60年代なりの現代で、一応苦悩する近代知性なのだが、肉体の現場が追いついていない。無理からぬことながら、いわゆる眼高手低の時代。かくて映画は、盛り下がりに盛り下がる。
 なお、武闘派農民の一人が、やたら印象的。あの独特の声が、そうだ、大島の60年「日本の夜と霧」で、これまた印象的に、延々と党派的演説を垂れ流し続けた吉沢京夫というひとではないか。「日本の夜と霧」より演技は格段に進歩している。もっとも、延々たる演説口調というのは、普通の会話にも垣間見れるのが、笑える。

by mukashinoeiga | 2010-01-31 06:10 | 大島の渚に寄せる新波かな | Trackback | Comments(5)