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島津保次郎「嫁ぐ日まで」原節子矢口陽子御橋公大川平八郎沢村貞子大日方伝清川玉枝汐見洋杉村春子

ハラセツ絶頂期の輝き。
 ユーチューブにて。40年、東宝。

(以下、完全ネタバレあり)
原 節子さん 20歳の肖像「嫁ぐ日まで」1940年


e0178641_19472775.jpg モダニスト島津は、松竹時代の「兄とその妹」(感想駄文済み)で、火鉢に網を乗せてトーストを焼き、ケーキに当時としては珍しいだろうドライアイスをつけていた。本作でも、ハラセツは火鉢でシチューを煮込み、叔母清川玉枝に、菓子鉢を勧め、普通せんべいかと思うだろうが、なんとエクレア。清川玉枝は「チョコレットがついているねえ」とご満悦。思わず着物にこぼし、ああエクレアは、たいていこぼすよねえ(笑)。
 そういう和洋折衷な和モダンな島津の、楽しさ。
 黒沢明「一番美しく」でも千葉泰樹「煉瓦工女」でも、イマイチ地味でどこがいいのか、よくワカラナイ矢口陽子が、ハラセツの妹役。率直に好ましい。アイドル女優といっていい。彼女も、役に恵まれなったなあ。
 ハラセツを自分の嫁に、と大川平八郎青年。
「まずはあなたの了解を得てから、ぼくの両親に話を持っていきたいんです」
「それは…」
「いけないんですか」
「それじゃあ、まるであたしたち恋愛しているみたいで、恥ずかしいですわ」(大意)
 この恋愛嫌いの潔癖さは、なんなのか。

 ハラセツ矢口姉妹の父・御橋公は、沢村貞子をのち添えに迎える際、娘矢口が大切にしている母(御橋にとっては亡妻に当たる)の写真を勝手に没収。亡き母を思う娘に同情して沢村が写真を返したと知るや、娘の留守に娘の部屋を、見るからにアサましく探し回る。
 この易姓革命めいた旧代否定のおぞましさは、なんなんだろう。

 矢口の女学校の音楽教師・杉村春子は授業終了後、矢口ら女生徒たちが、ピアノを弾き、合唱するのを聞いて、「あんないたずらを」と激怒、直ちにやめさせてしまう。音楽の授業が終わって、みんながピアノを取り囲むことは、むしろ好ましいことではないか。この規律の厳格さの異常は、いったい何なのか。

 再婚の沢村貞子・御橋公は、初婚のうれしハズかしでもなかろうが、それにしても一度も笑顔を見せない。このぎすぎすっぶりは、明らかに異常に思われる。

 この厳格ぎすぎすっぶりはこの映画特有のものなのか。それとも時代の気分エートスといったものなのか。
 結局恋愛嫌悪のハラセツは、仲のいい大川(所詮友達以上恋人未満か)をあっさり振って、見合いで大日方伝のもとに。
 大川は、酒に酔って、いびきかきつつ、ふて寝するばかり。
 ノンシャランとした「隣の八重ちゃん」の島津が、かくも「不機嫌」な人物を描くとは。
 上記引用のポスターのハラセツも花嫁姿とは思えないほど、相当怖い(笑)。この集団的厳格さは何なんだ(笑)。
 子供のころ識別不能?だった沢村貞子と杉村春子が夢の競演! 共演してみればちゃんと識別できる(笑)。
 なお杉村は、音楽教師として的確にピアノを弾いているように見える。むしろ演技的には極めてアグレッシヴ。むしろ、アグレッシヴし過ぎて、怖いほど。音なのにこえーよ杉村(笑)。
音大声楽科の大空真弓といい、こういう才能を生かしえない日本映画の不幸。
 なおこの音楽の時間に矢口陽子の後ろの席にいるのが御舟京子こと加藤治子と思われる。


原節子を偲ぶ 「10分で辿る原節子全フィルモグラフィー」

シモケンさんの労作。10分で見せるため、どれだけ時間をかけたのだろう。

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by mukashinoeiga | 2018-01-31 19:39 | 旧作外国映画感想文 | Trackback | Comments(0)

一体どういうつもりだ(笑)「お茶の恋」浅丘ルリ子大原麗子高橋恵子高峰三枝子原節子若尾文子

スーパーの新商品コーナーで見つけた(笑)。
 いったいどの客層に売れると思っているんだ(笑)。

e0178641_23291593.jpg 検索してみると、
(以下ネットニュースより)
“昭和の大女優”がラベルにプリントされた「昭和の大女優シリーズ緑茶 お茶の恋」が、11月上旬にドウシシャから発売されます。500mlペットボトル入り、価格は150円(税別)。全国のスーパーや量販店での取り扱い。
これは、写真家である故・早田雄二氏が撮影した6人の女優の写真がパッケージデザインに採用されたお茶。浅丘ルリ子、大原麗子、高橋恵子、高峰三枝子、原節子、若尾文子(五十音順、敬称略)がラインナップされています。
中身の緑茶は、静岡県産緑茶葉を独自の低温保存で熟成させ、しっかりとした味わいに仕上げられているそう。外見だけでなく中身にもこだわったペットボトル緑茶、ぜひお気に入りの女優さんを手に取ってみては?(以上引用終わり)

 日本の飲食メーカーは、毎シーズンごとに定番の他に、新商品を出さねばならない強迫観念にとらわれている。数年前の夏に記憶にあるのは、男が好きな缶飲料は、コーヒーと炭酸飲料だ、じゃ、一緒にしちゃえと、炭酸入り缶コーヒーを出した。飲んでみたが、不味かった。結局ワンシーズンで消えた。
 この「お茶の恋」も、新商品開発のアイディアに詰まった、中年社員が、焼けのヤンパチ日焼けのなすびで出した企画を老社長が「お、それいいな、これからは老人社会だから、まかり間違えば、面白いかもしれん」と乗り、若手社員は眼を白黒という構図だろうか(推定)。
 人選も不可思議。おそらくOLD女優で一番人気の吉永小百合は、ギャラの面から断られたのか。いやいや、早田雄二側に安い写真料(これまで散々使いまわししているので)を払って、各女優側にも安い肖像権料を払えば、成立したのだろうが、小百合のみは現役のキャンペーンガール。高いはずだ。
 
 しかしこの人選はどうなんだ。特に高峰三枝子は、全盛期は戦前だし、年齢層は想定できない(笑)。フルムーンまで延長すれば、ファン層は、広がるのだが。
 見方を変えれば、安い肖像権料で、キャンペーンガールを得られる。コスパ的にはいい仕事なのかも。
 これ、スーパーだけでなく、名画座で売ればいいじゃんと、思うが、考えてみれば、名画座で売ってもせいぜい各数十本だろうし、メーカーも歯牙にもかけまい。

しかし「お茶の恋」はネーミングとしてはいかにもダサい。常日頃「お茶はおっちゃんの飲み物や」と、ペットボトルのお茶を愛飲している身としては、「おっちゃんの恋」というダジャレネーミングなのかなあと。ダサいけど(笑)。

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by mukashinoeiga | 2017-12-17 23:30 | 業務連絡 | Trackback | Comments(8)

黒沢明「わが靑春(青春)に悔なし」原節子藤田進大河内傳次郎杉村春子三好榮子河野秋武高堂國典志村喬

時流に乗った四流メロという印象をかつては持っていたが、今回ついで見の何度目かの再見で、それほど悪い映画でもないか、と日和りつつあります(笑)。まあせいぜい三流かな、と(笑)。 
e0178641_650931.jpg 京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016 原節子選集」。46年、東宝。
 感想駄文済みの、つい四年前の島津保次郎「緑の大地」脚本黒沢明)で、乳児のある若夫婦を演じた原節子藤田進が、令嬢大学生を演じるのは、いささか無理があるのだが、まあそこはそれ。

9わが靑春に悔なし(110分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1946(東宝)(出)原節子(八木原幸枝)(監)黑澤明(脚)久板榮二郎(撮)中井朝一(美)北川惠司(音)服部正(出)藤田進、大河内傳次郎、杉村春子、三好榮子、河野秋武、高堂國典、志村喬、深見泰三、清水將夫、田中春男、光一、岬洋二、原緋紗子
占領軍の民主化政策に沿って、戦前の京大滝川事件とゾルゲ事件を題材にした民主主義啓蒙映画。原は八木原教授(大河内)の娘・幸枝を演じる。幸枝は急進的な学生の野毛(藤田)と恋に落ち、彼が獄死した後は彼の老いた両親と共に、スパイの汚名を受けながら農村で働く。従来の日本映画には見られなかった強烈な女性像が話題となった。

 本作は、前半京都青春時代、中盤東京スパイ時代、終盤東北での農民時代と、三部構成のていだが、終盤のみいささか異様で。前半中盤は、いわゆる滝川事件とゾルゲ事件をモデルにしているが、農村時代は、それとは無関係。

 これはウィキペディアによれば、

本作と同時期に同じ題材の映画「命ある限り」(楠田清監督)が企画されていたため、「新人監督をつぶすつもりか」との労働組合の圧力を受けて、黒澤の意図に反して映画後半の展開を大幅に変更せざるをえなかった。農村シーンに込められた異様な気迫は、この圧力に対する反感があったからと黒澤は述懐している。(以上引用終わり)

e0178641_6504241.jpg 黒沢としては精一杯時流に乗り、左翼的な作品を撮るが、応援してくれるはず?の、共産党組合から、妨害されたのは、いかにもサヨクの好きな内ゲバ状態か(笑)。
 同じ東宝社内で同一企画が二つ同時進行しているのは、まさしく時流に乗っているというしかない。河野秋武、中北千枝子、清水将夫、志村喬と四人も共演者がかぶってすらいる。
 その共産党が、いまでは野党野合連合を画策しているが、これは反安倍の同一テーマの映画を3、4本同時公開するようなもので?共倒れにならないか(笑)。共産変じて共倒の図。

 しかし妨害があって、かえって良かったのでは、ないか。前半中盤の、いささか締まりのないふにゃふにゃドラマ(結局藤田進が何を画策しているのか、全くわからないマクガフィン状態で、出来の悪いヒッチコック仕様)が、最後まで行ってしまったら、この映画、今ほど名を残せなかったかもしれない。最後の、ハラセツ、高堂国典、杉村春子の異様なドラマゆえに、この映画は残ったのではないか(ただしぼくの好みではなく、ぼくには面白くはないが)。
 黒沢のオリジナルな結末はどうだったのだろうか。脚本なりシノプシスは残っていないのか。

 まあ、いずれにせよ、おかげで、令嬢、OL、若妻、獄中の女、農婦と、ハラセツ波乱万丈、イロイロのハラセツを楽しめるわけだが。そして、現代劇の大河内伝次郎は、いつでも絶品!
 学生役の田中春男には爆笑せざるを得ないが、このワンショットだかワンシーンの田中、「黒沢はん、せっかく京都でお撮りになるんでっしゃら、ワイも出して―な」と、衣装部で学生服をちょろまかし、勝手に学生エキストラに交じり、居座って、黒沢も苦笑いしながら、その場で科白を一言口伝え、てなことを想像するが、あながち間違ってはいまい(笑)。

 映画の中で何回も出てくるのは「顧みて悔いのない生活」というフレーズだが、これをタイトルに転用して「わが靑春(青春)に悔なし」とはキャッチ―でパワーあるタイトルになったが、「わが青春に悔なし」と言い切れる奴は、おそらく人類史上皆無だと思う(笑)。ここら辺が、いかにもお花畑な黒沢(笑)。青春というものは常に無駄遣いされるものなのだ。まあそれを言ったら、少年中年老年も変りもないが。
 黒沢は映画「わが靑春に悔なし」に悔なし、と言い切れるのか(笑)。

わが青春に悔なし


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by mukashinoeiga | 2017-12-03 06:53 | 黒沢明 黒い沢ほどよく明か | Trackback | Comments(4)

島津保次郎「緑の大地」原節子藤田進入江たか子池部良丸山定夫英百合子江川宇礼雄千葉早智子嵯峨善兵汐見洋

山崎豊子のいない山崎映画か。
 京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016 原節子選集」。42年、東宝。
 つまり面白くない。大勢の、立場が違うひとびとが右往左往する群像ドラマは、小市民のこじんまりドラマを得意とした島津保次郎には、荷が勝ちすぎか。あるいは、内弁慶な日本の映画屋さんが、海外ロケの映画を作ると、常に失敗する一例か。

e0178641_54222.jpg6緑の大地(118分・16mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1942(東宝)(出)原節子(上野初枝)(監・原)島津保次郎(脚)山形雄策(撮)三村明(美)戸塚正夫(音)早坂文雄(出)藤田進、入江たか子、丸山定夫、藤間房子、英百合子、里見藍子、江川宇礼雄、千葉早智子、嵯峨善兵、池部良、汐見洋、林千歳
中国・青島に長期ロケを敢行した国策映画。運河建設をめぐり、日本人技師(藤田)やその妻(原)、女教師(入江)、悪徳商人(嵯峨)、反対派の中国青年(池部)たちが衝突するさまを描く。原は、女教師が夫の初恋相手であると知り、友情と嫉妬の間で揺れる妻の役を演じる。

この広告、いくら何でも写真がヘン。「戦争とスポーツ」って、この映画特に戦争映画でもないし、スポーツは同時上映か何かなのか??? それにスポーツは敵性語じゃん(笑)〉

 そんな嫉妬も淡い描写で。日本人なのに中国人に味方する、いわゆる良心派(笑)日本人池部良も、淡彩だし。何から何まで淡彩な濃厚人間ドラマ(笑)。矛盾な筋違い。
 島津保次郎の弟子の、小津安が、中国に長期滞在しながら、キャメラをちらりとも回さなかったのは、おそらく正しい選択だったのだ(笑)。とは言いつつ、そういう珍品も、見たかったのだけれどね。

 はるばる日本から赤ちゃん連れでやってきたハラセツに藤田進は邪険。ここはのほほんと迎えるのが島津じゃないか。
 戦時中ゆえ製作本数減で、何気にオールスタアだが、小悪党専門の嵯峨善兵が、いい味。

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by mukashinoeiga | 2017-11-28 05:05 | 旧作外国映画感想文 | Trackback | Comments(2)

伏水修「青春の氣流」原節子大日方傳山根壽子黒沢明進藤英太郎藤田進加藤治子英百合子清川玉枝矢口陽子

元祖宮崎アニメ(笑)。民間航空機を設計する技師と、その恋を描く。監督デヴュー前年の黒沢明の脚本だから、あるいは宮崎駿も何らかの参照をしたのかもしれない。
 京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016 原節子選集」。42年、東宝。
 これは時局柄基本的にいわゆる国策映画を作りたかったのだろうが、軍用機の開発を扱うと、当時の日本は軍機密を極端に秘匿していたからNG、それで時節に合わなくても、国産民間機の開発ドラマにせざるを得ない。たぶん東宝も黒沢も国策映画に拒否感があったから、一種のアリバイ作りとしての、なんちゃって国策映画になったのだろうが、そのなんちゃってゆえに、生煮えの映画になったのは、否めない。

e0178641_1284134.jpg5青春の氣流(87分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1942(東宝)(出)原節子(由島槙子)、御舟京子[加藤治子](喫茶店の女)(監)伏水修(原)南川潤(脚)黒澤明(撮)伊藤武夫(美)松山崇(音)服部良一(出)大日方傳、山根壽子、進藤英太郎、中村彰、藤田進、清川莊司、眞木順、英百合子、清川玉枝
新鋭旅客機を設計した若き技師・伊丹(大日方)が、その製造実現に向け突き進む姿を、喫茶店で偶然出会った女性(山根)との恋愛を絡めつつ描くメロドラマ。社内で伊丹を支持する進歩派の専務(進藤)の令嬢に原が扮し、伊丹と添い遂げようと積極的にアプローチする姿が目を引く。ニュープリントによる上映。

 つまりドキュメンタルな航空機開発ドラマを描くのだが、それだけにはあまりに色気に欠けるので、技師大日方傳に二人の人気女優を、からませようという。
 洋風積極系おてんばお嬢様なハラセツ。
 和風消極系ひかえめな質素娘山根壽子。
 この二人のうちどちらを選ぶのか、というドラマは、吉村公三郎「暖流」で佐分利信が洋風高峰三枝子と和風水戸光子のうち、水戸光子を選ぶというものの二番煎じか。
 もちろん時局柄(笑)か、大日向もサブリンも和風を選ぶのだが。
 社長役・進藤英太郎の抜群の安定感。
 この時期、製作本数が減っているので、俳優は余っている。竜崎一郎は、大日方傳にぶつかる役で数秒のみ。 
 大日方傳と山根壽子が待ち合わせる喫茶店のウェイトレス三人娘に、新人の加藤治子と矢口陽子、あとの一人は確認できず。このウェイトレス三人娘がコメディリリーフなのだが、イマイチ不発。やはり黒沢にコメディは無理か。

原節子の代表作ベスト10

著者が語る「原節子の真実」

伝説の女優 原 節子


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by mukashinoeiga | 2017-11-26 12:09 | 黒沢明 黒い沢ほどよく明か | Trackback | Comments(0)

伏水修「東京の女性」原節子立松晃江波和子水上怜子

原節子絶対の魅力。映画も戦前モダン都市東京の魅力がたっぷり!
 京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016 原節子選集」。39年、東宝東京。
 まだ若く顔の左右の表情が違い、いろいろな顔が楽しめる。テキパキ歩くと、うすい服越しに軽く胸がゆさゆさ揺れるのは、戦前日本人女優としては珍しい。ハラセツだけか。
 戦前日本人女優としては珍しいのは、明確で明朗な強い意志を持ち、目的に向かって邁進する女性を、はつらつと、不自然でなく体現する、その強靭さか。ハラセツの強度よ、その美貌よ。
 戦前モダン都市東京を滑走する、時に挫折する、東京モダンガアル・ハラセツの魅力よ!

e0178641_19135458.jpg4東京の女性(82分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1939(東宝東京)(出)原節子(君塚節子)(監)伏水修(原)丹羽文雄(脚)松崎與志人(撮)唐澤弘光(美)安倍輝明(音)服部良一(出)立松晃、江波和子、水上怜子、藤輪欣司、水町庸子、水上怜子、外松良一、鳥羽陽之助、深見泰三、如月寛多
丹羽文雄の同名小説を映画化。生活能力のない父に代わって一家を支えるため、節子(原)は自動車会社のタイピストから“セールスマン”へと転身し、次々と成功を収める。能動的で溌剌とし、男性社会を脅かしさえする女性を演じた原は、当時の映画評で「東宝入社以来おそらく最も生彩のある演技」と高く評価された。ニュープリントによる上映。

 借金まみれのクズな父に3000円で妾に売り飛ばされようというハラセツは、タイピストから、車のセールスマンに、チャレンジ。セクハラの嵐にもめげず我を通し、男勝りな性格と美貌で、トップセールスマンに。
 この強気の戦前キャリアウーマンに、当時19歳のハラセツ、貫禄的には二十代半ばな感じ。
 一方ハラセツの妹に、設定19歳の江波和子。こちらは男に甘えて、服や何やらプレゼントしてもらい、ドライブもおねだりする、天然な憎めない女の媚びを生かして、いわば楽して稼ぐタイプ。
 この江波和子が、爬虫類顔ながら、キュート。たえず体をふはふは動かして、自然の少女の愛くるしさ。
e0178641_19142435.jpg この江波和子が、のちに江波杏子の母となる。より爬虫類顔が強化された杏子がなぜ女優として一定の人気があったのか、ぼくには不明で。
 こういういい方は、いささか趣味が悪いが、女性として、和子はオーケーで、杏子は対象外。典型的に上から目線ですが(笑)。杏子、ハラセツ以上に、怖すぎ。和子は、堅気の娘さんを普通に演じられるが、杏子は堅気の娘さんは、絶対ムリ。そういう違い。
 この二人の相手役・立松晃は、東宝入社第1回の典型的美男子。絵に画いた二枚目だが、あまり活躍していないようなのは、やはりイケメンなだけじゃダメなのよの典型か。
 この彼がハラセツと外食、ご飯を口にほおばり、その直後の科白が、もごもご。飯食いドラマが頻繁な日本の役者は、ご飯を口に入れた直後もクリアなセリフ回しを要求される。そこがダメだったのか(笑)。

 モダン都市東京(ハラセツ両親の古い価値観を内包しつつ)の、モダンガアル原節子&江波和子姉妹のはつらつが快。よって下の英題は、複数形でよかったかも、と思う。

Woman in Tokyo (1939)


節子の唄 二葉あき子

蓄音機で聴く昭和の流行歌。昭和14年12月新譜。東宝映画「東京の女性」当選主題歌。

 ハラセツの役名は、君塚節子。ということはハラセツのテーマソングか。ところが、この曲、いたるところでBGMとして流れるが、歌唱曲そのものは、ハラセツと関係ない、立松晃と江波和子のドライヴシーンにのみ流れたというのは、単なる勘違いか。うーん。って、当選主題歌って、なに?

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by mukashinoeiga | 2017-11-24 19:14 | 旧作外国映画感想文 | Trackback | Comments(4)

「東京物語」またまた指田文夫さんの珍論

大衆文化評論家指田文夫の「さすらい日乗」というブログをたまたまのぞいたら、「日本映画学会第12回大会」という記事があって、その一部に仰天した(笑)。以下一部を抜粋引用する。

e0178641_982320.jpg新潟大学の羽鳥隆英さんの「淡島千景資料」を使用しての五社協定下の俳優の動きは、非常に興味深い発表で、東宝の池部良、松竹の佐田啓二らが、会社を超えて俳優のつながりを作り出そうとしていたことが淡島千景さんの資料から実証された。
私もまったく同意で、戦後の独立プロ運動が、東宝を出た左翼独立プロから、1960年代の大島渚らの松竹脱退組のみで語られるのは不満で、いろいろな動きがあったことはもっと研究されるべきことだと思う。
昼食後は、小津安二郎についてが2本あり、相変わらずの小津人気の高さを知らされた。
京都大学の伊藤弘了さんは、小津作品の小道具や部屋の絵画等を手配していた北川靖記の役割についてのもので、小津の広い人脈が改めてよくわかった。
一橋大学の政清健介さんのは、『東京物語』における引き戸の音の処理についてで、大坂志郎の場面への入りの扱いが特別だったことが協調されていた。それは私の考えでは、小津は大坂志郎が嫌いで、そうしたのではないかと思った。
もし、小津が大坂が嫌いでなければ、原節子は次男の死の後、三男の大坂と結婚したはずだったからである。
戦後、男が戦争で死んだときは、その兄弟、多くは弟と再婚したものだったからである。それは、農家等では財産を家で保持するという意味も大きかったと思う。(以上引用終わり、文字変色は引用者)


 相変わらず指田さん独特の根拠不明な断定調が、ひどい(笑)。
 戦前から一貫して、家制度の崩壊を描いた小津が、仮に大坂志郎が大好きだったとして、ハラセツと夫の弟の結婚を描くはずもない。
 小津の基本姿勢は、家族が増える結婚は許さない、ということであり、現に笠智衆は、ハラセツにほかの男との再婚を促して、家族を減らそうと努力しているのだ。
 しかも、笠智衆の息子・娘は、より近代的なミニマムな家族構成を志向しつつあるのであり、指田さんいうところの「農家等」の発想とは、まさに真逆な立ち位置だろう。

 妄想も極まれり、というところか。

 なおついでに読んだ同ブログ、『「小川宏ショー」に出た兄』もまた、意味不明の珍文である。短いので全文を引用する。

アナウンサーの小川宏が亡くなったそうだが、その人気コーナーのご対面に私の兄が出たことがある。
相手は女優の高峰秀子で、彼女の小学校時代の「恩師」が私の父・指田貞吉で、1960年に死んでいるので、その代わりで当時20代の兄が出たのである。
私は家で、8ミリカメラで撮影したので、そのフィルムは今でもあるはずだが。
私たちの父が彼女の小学校時代の「恩師」であったことは、彼女の自叙伝『私の渡世日記』に書かれていて、少々褒めすぎのように私たちには思えるが、彼女のような大女優に記憶されているのは、勿論うれしいことである。
高峰秀子は、恐らく日本映画史最高の女優の一人だと思うが、このブログでも彼女のことに触れないのは、その性である。

 たったこれだけの理由で、「恐らく日本映画史最高の女優の一人」に「このブログでも彼女のことに触れない」のは、常人には理解できないクレイジーさだと、私は、思います(笑)。異常なまでの自意識過剰、以外には、わたくしの凡庸な頭では、理解できない(笑)。

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by mukashinoeiga | 2016-12-07 09:10 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(3)

クラタ・フミンド「殿様ホテル」原節子出演

 新橋TCC試写室にて。「シネマ△トライアングル「発掘!幻の映画」シリーズ。49年、藝研株式会社。
 監督のクラタ・フミンドは、原節子が母親役の、倉田文人「ノンちゃん雲に乗る」の、監督の異名。
 なんだろ、非日本人的な(なんちゃってアメリカっぽい?)名前に、したかったのか?
 なんせ日本人がアメリカに劣等感を抱いていた時代だからねー。

e0178641_1212310.jpg『殿様ホテル』1949年 藝研株式会社製作 <シネマ△トライアングルHPより>
モノクロ スタンダード 93分 (16mm上映)
製作:井上正之 シナリオ・演出:クラタ・フミンド 演出補助:津田不二夫 撮影:會田吉男
音楽:飯田信夫 美術:北川恵笥 録音:亀山正二 照明:石川緑郎
出演:河津清三郎/井川邦子/眞山くみ子/藤原釜足/飯田蝶子/吉川満子/徳大寺伸/小林十九二/林寛/小杉義男/原節子
【あらすじ】
華族制度の廃止で平民となった“殿様”花小路はかつての封建的な生活を捨て、働くの人達の役立ちたいと、夫人朝子の猛反対を押し切って自邸を改造し「家庭旅館」を始めた。そこへやってきた兄の復員を待ち続ける娘千代も女中として加わり、旅館の営業は順調な滑り出しを見せたかと思われたが、やってくる客は連れ込み客やおめかけさん、はたまた女スリなど花小路の思惑とは違う客ばかり。そんな中、花小路は宿泊客の一人猫越から高価な宝石の売却の話を持ちかけられるが...。
【作品解説】
 戦中から多くのスターたちのマネージメントを行い俳優ブローカーとして知られた星野和平が監督の熊谷久虎を代表に立て、同じく監督の倉田文人、森永健次郎、俳優の佐分利信らと設立した藝研株式会社の第一回作品で、撮影は労働争議が終結して間もない東宝撮影所で行われた。
シナリオ・演出は戦前日活出身で戦後は鰐淵晴子・原節子主演の『ノンちゃん雲に乗る』で知られる倉田文人(本作はクラタ・フミンド名義)だが、倉田のシナリオは2年前の1947年に既に雑誌に発表されており、東映の前身東横映画で映画化する企画もあったようだ。
キャストは星野のお抱えの俳優を中心に固められ、当時星野がマネージメントを務めていた俳優のトップである原節子も女スリ役で特別出演している。 また、原の実兄で撮影技師の會田吉男はこの作品からキャメラマンとして一本立ちした。
劇場上映は勿論のことソフト化やCS等の放映もない超レア作品につき、是非この機会をお見逃しなく!


 義兄がエグゼクティヴ・プロデューサー、実兄が第一回撮影映監督、そういう意味では、女優ハラセツにとっては、家庭的な製作環境だが、この四年後、義兄が監督、実兄が撮影、ハラセツ主演「白魚」での撮影中、実兄が事故死してしまう。しかも列車に惹かれるという悲惨さ。
 この事故がなければ、ハラセツの女優人生も、また、違ったものに、なっていただろうか。

 ハラセツが「家庭旅館」の広大な庭で、犬をお供に読書にふける(しおり代わりに挟んであるのは、軍服の若者、ハラセツの恋人であろうか、彼が生きていれば、ハラセツも女スリにならなくて済んだものを、という思い入れ)、その愛らしさを見ていると、いっそ、ハラセツ主演でも、とは思うが、人気者であり、こういう低予算では、特別出演がせいぜいか。
 特に実兄が、撮影監督に昇格のその第一回、おそらくノーギャラか、それに近いご祝儀出演だったろう。

 主演・河津清三郎の愛らしさ、素晴らしさ、それを支える、戦前松竹以来も多い、脇役陣の好演もすばらしいが、映画そのものは、あまりはじけず、シッソク気味。
 ただ、後半、だんだんよくなる法華の太鼓。
 おそらく倉田としては、日本版「グランド・ホテル」を狙ったのだろうが、現代の視点から見てみると、十年後の川島雄三「貸間あり」の、はるかな先駆かとも、思われる。
 お屋敷ホテル、川島はお屋敷アパート、なに、本作のお屋敷ホテルだとて、一晩限りの連れ込み客もあるが、女スリ、悪徳ブローカー、泥棒、妾たち、の長期滞在者多数。コンセプトは、ほとんどいっしょだ。
 むしろ川島なりが本作を見たか、その概要を映画雑誌など知って、発展させて言った可能性もある?
 きわめて、川島好みの題材だろう。まじめそうな?倉田文人だから、中途半端なのであって、たとえば川島なら、極め付きの怪作/快作に、なっていた、だろう。
 こんな妄想も、OLDモノの、かなわぬ夢なのね(笑)。
 井川邦子ら女優陣がピアノを弾き(ただしひとりだけ、手だけの接写で、引けないとわかる)戦前のいいとこのお嬢さんが没落して、女中や、妾になっていることが、わかる。

 当時、東京には住める家が少ない住宅事情を反映した映画は多々あるが、成金や、怪しい職業の人は、とりあえず、この、お屋敷ホテルにつかの間の安息と栄華を得ていたのだろう。作品はともかく、時代背景として、面白い。

原節子を偲ぶ 「10分で辿る原節子全フィルモグラフィー」

 主催者シネマ△トライアングルのひとり、下村健さんの力作。すごいなあ。

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by mukashinoeiga | 2015-12-08 01:22 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

原節子のびっくり絶美グラビア

 今週発売中の各週刊誌が、ハラセツ追悼を組んでいる。
 なかで、びっくりしたのは、特集ページ数が比較的少ないにもかかわらず、サンデー毎日のグラビアだ。
 おそらく撮影直前、撮影を待つ、白い和服で盛装して、佇む原節子だ。しかし、表情は、疲れたような、くたびれたような、苦悶の表情だ。
 公式スチールにはない、リアルな苦悶の表情。サンデー毎日が言うとおり、「貴重な一枚」だ。
 で、このショットは、何の映画かというと、なんと熊谷久虎「白魚」というでは、ないか!
 「白魚」といえば、ハラセツ主演、監督は義兄、撮影監督・会田吉男は、実兄。そして、会田は、この映画撮影中に列車にはねられ、死亡した。
 その、実兄の死を乗りこえ、しかしショーマスト・ゴーオン、妹は主演、義兄は監督、撮影は続行される。
 しかし、ハラセツの苦悩は、あい知れず。かくて撮影待ちの、苦悩の表情と、なったのだろう。
 サンデー毎日がこの「貴重な一枚」を載せたのは評価するが、その背景を何も書いていないところを見ると、その間の事情を、知っていたのかいないのか。
 知っていれば、たぶん、下種な週刊誌屋だから、書いていただろう。知らないで、載せた可能性も、高い。サンデー毎日は、おそらく、その程度だろう。

 しかし、同様に下種なぼくは、この苦悶の表情のハラセツを、美しい!と、思ってしまうのでした。
 美しい人は、苦悶しても、美しい、と。まあ、お下品で申し訳ないが、エロティックですら、ある、と。
 はい、下種なぼくなのでした

◎追記◎原節子を偲ぶ 「10分で辿る原節子全フィルモグラフィー」

 shimomov氏の力作。やるなあ!

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by mukashinoeiga | 2015-12-06 23:10 | うわごと | Trackback | Comments(4)

原節子

e0178641_2333448.jpg すでに50年前に引退、隠遁した彼女が、ただ単に死んだからといって、なにを言うべきか。
 何も、いうことなど、ありはしない。 映画というのは、不思議なもので、100年前の映画でも、50年前の映画でも、新作と「等価」に見ることも可能なのだ。
 個体としての原節子は、滅びたかもしれないが、ぼくたちは、いつでも、彼女の「新作」をみることができるのだ。それが、映画俳優の「特権」だろう。

e0178641_234357.jpg 一女優が死んだからといって、号外が出る、というのも、稀有なことだが、これ、ペーパーでホントに出たのか、と疑問も。
 単なるネット上の「なんちゃって号外」かも知れぬ(笑)。
 「右翼」のはずの産経が、戦後民主義映画の輝かしい原点「青い山脈」をタイトルに上げ、「左翼」のはずの朝日が、当時「反動的」と「揶揄」された「晩春」をあげるのが、面白いなあ(笑)。
◎追記◎原節子を偲ぶ 「10分で辿る原節子全フィルモグラフィー」

 shimomov氏の力作。やるなあ!
 号外が出る女優、こうなったら、フィルムセンターは、3期くらいに分けて、ハラセツ特集をすべきではないか(笑)。

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by mukashinoeiga | 2015-12-02 02:36 | うわごと | Trackback | Comments(8)