小津漬の味ディープ 小津の色紙の巻

 片山杜秀という人の分厚いコラム集「ゴジラと日の丸」という新刊を読み始めたら、面白いものを見つけた。
 このひとは、今は亡き三軒茶屋アムス西武の鈴木英夫特集をおすすめしたり、今は亡き浅草東宝でオールナイトを見たりした人のようだ。
 その片山氏が、後期小津映画の常連音楽監督・斎藤高順にインタヴューした折、小津安二郎から贈られた色紙を見せてもらったという。
 その色紙に書かれた小津の言葉は、

「鯛夢出鳴門円」
 
 なんと読むか悩んだ氏に、斎藤高順は種明かしした。いわく「タイム・イズ・ナット・マネー」と。
有名な西洋成句「タイム・イズ・マネー」のパクリ。まあ、オヤジギャグですな。
 今度は、漢字の語感とあわせて、その意味を考える片山氏。

 ぼくがかつて「小津漬の味」(このブログの特集「小津安二郎映画の正体」)で、妄想系小津論を書いたさい、小津映画をオヤジギャグの視点から見たことと、この色紙の句?は、ぴったり符合する(笑)。
●小津は駄洒落が好き
●小津は「時」に固執する
 つまり、
◎小津安二郎は60歳の還暦の誕生日、12月12日午後12時過ぎに亡くなっている。
◎小津ヒロインたちの役名で、戦前戦後を通じて繰り返し登場し、印象的なのは「節子」「紀子」「時子」。
 「節子」が『淑女は何を忘れたか』以来五回、「紀子」が『晩春』以来三回、「時子」が『非常線の女』以来四回。別に小津映画を代表する女優というべき原「節子」は『晩春』以来六回の出演数を誇る。さらに『秋刀魚の味』には松竹の新人女優・牧「紀」子も出演している。
 多分にヒロインの年長の関係者として、「秋子」と言うのも多い。「秋子」は『風の中の牝鶏』以来五回。
 驚くべき?ことには、「節」「紀」「時」は、ほぼ同じ意味なのだ。時、もしくは時期時節を指す。「秋子」だって「春子」「夏子」「冬子」がないのになぜか多い。ここでさらに愕然となるのは「秋」は「とき」とも読むことだ。「秋」と書いて「とき」は「重要な時期」という意味。
 広辞苑をひも解いてみると、「紀」の説明に「中国では一回り12年」とあり、「節」の説明に「節季、すなわち一年を12ヶ月に分けた各月の前半の称」とあり、「時」の説明に「一昼夜の区分。現在では午前と午後をおのおの12等分。昔は十二辰刻が広く行われ、午前午後をそれぞれ6等分」とある。中国、その影響下の日本において「時」は12という数字と密接なつながりを持つ。
 小津のヒロインたちがしばしば二十四歳であるのは、当時の結婚適齢期「上限」であるという「ドラマ性」ばかりでなく、それが12の倍数だからかもしれない。「節」季は、二十四「節」季あり、一日は二十四「時」間。時節が一回りし、次のステージに進まなければならない、その区切りがたまたま、当時の結婚適齢期に一致したことが、小津映画が結婚問題に「こだわる」理由のひとつと、推測される。あるいは、いわゆる結婚適齢期そのものが、こうした時間の制度に呪縛された結果の産物なのかもしれない。その呪縛は、勿論現在では効力を失っているが。                        
                               (「小津安二郎映画の正体」より)

 その小津の色紙の文字が「タイム」と来た。
 やはり、小津は「時」に支配された男なのだ。時をかける小津。
 さらに、ノットにあたる鳴門は、渦巻く円・うずしおで有名。マネーを金ではなく、円と表記。
 小津における「時間」とは、循環しているはずである。中国式の、輪廻する、円環する、時間の流れ。24単位で、あるいは12単位で、あるいは60単位で、元に戻る、ないしは、新たなステージに進む。
 円(○)を否定するノットが、鳴門(うずしお=○)であるなら、○かける○は、やはり○で、否定になっていない。二重否定。
 本当は、小津的には、タイム=鯛の夢は、マネー=まる=円で、円環するのではないか。と、言う妄想。
 かといって、タイム・イズ・マネーでは、あまりに陳腐。
 ということで、偽りの否定形ノット。しかしその否定形も、鳴門で、渦まきで、円。
 妄想も、ますます病コーモーで、モーローとしてきましたな。

 鯛の夢 鳴門を出でて 円        小津安二郎


                                        2011・1・2記
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# by mukashinoeiga | 2009-07-17 21:18 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(0)

小津安二郎「和製喧嘩友達」

 京橋にて。「フィルム・コレクションに見るNFCの40年」特集。29年、松竹蒲田、無声、24ftp。
 オマケの同時上映ゆえの、再見。<宇賀山正昭氏寄贈の9.5mmフィルムより復元の、パテベビー短縮版・デジタル復元版>。不完全ながら、ヤング小津映画。
 ふたりの仲良しトラック運転手、とくに渡辺篤が、いいんだよなあ。軽くて、軽くて。トーキー以後の、あの、へっへっへっ、という声が聞こえてきそうだ。
 短縮版ゆえ、唐突に始まって、唐突に終わるが、それでも、家庭向けダイジェストとして販売されていたものゆえ、最低のストーリーは抑えている。
 戦前は、渡辺篤、斉藤達雄、など軽味のあるコメディ方向の人たちを使って、戦後は笠智衆かあ。でも、佐分利信や、中村伸郎、北竜二、みんなみんな軽味、あるんだよなあ。ウェルメイドな、プログラム・ピクチャアの快が、うかがわれる。

                                            2010・8・16記
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# by mukashinoeiga | 2009-07-16 22:38 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(0)

高橋治「七人の刑事 女を探がせ」

 阿佐ヶ谷にて。「昭和警察物語・銀幕に吠えろ」特集。63年・松竹大船。
 現在は人気小説家、高橋治の松竹時代の監督作。彼の映画は何本か見ていて、見るたびに好印象なのだが、本作にいたっては、これは隠れた傑作と断言してしまおう。もちろん当時の人気TVドラマの低予算映画化であるが、立派な快作です(脚本/成田孝雄・高橋治)。60~70年代の松竹新人監督群は、少数の例外を除いて死屍累々の無残さなのだが(80年代以降にいたっては、屍骸すらない有様)、高橋治ほどの逸材を映画界から逃げ出させた松竹経営陣の無能さは、呪ってもあまりある。
 TVでおなじみの刑事の面々、といっても一本も見たことはないので、これがTVドラマ版と比べて、どういう出来なのかは云々できないのだが、デカ長に堀雄二(ぼくはOLD映画での若い二枚目時代の彼しか知らないので、でっぷり中年ぶとりの彼になじめない<笑>)、菅原譲二、芦田伸介、佐藤英夫などの、地道な捜査活動を追う。荒川の河川敷で死体が発見された不良少女の事件が、別の失踪事件を浮かび上がらせる。お決まりのルーティン・ワークがきらりと光る。
 映画を華やかに彩るのは不良少女の仲間たち。虚言癖で平気で仲間を売る十朱幸代、仲間思いの香川美子、ハーフ(当時は合いの子といった)青山ミチ、少々おつむの弱い中村晃子、みんなとても演技がうまくて、かわいい。これに、陰のある有閑マダムをやらせたら日本一!の高千穂ひづる、着々と逃げ延びようとする田村高広が絡み、この二人が展覧場でほとんど聞き取れない会話をし、それを聞き取ろうとする刑事たちの描写とか、なんというセンスのよさか。また、最後に、老刑事が青山ミチにお決まりの励ましを言うシーン。そのお決まりの励ましは、青山ミチが別のシーンで別の誰かに言われたもので、それを聞いた彼女が「そんなおいしいこといわなくてもいいよ」と最高にすばらしい笑顔、きびすを返す。事情を知らない刑事は、事件解決と、不良少女に一発説教食らわしたぜ、と二つ思いでにっこり笑う。このラストシーンは「第三の男」のそれに十分匹敵すると思う。
 当時のパトカー事情も興味深い。事件発生を知り、一般車両を避けつつ現場に駆けつける際、パトカーの両側の窓から一人ずつ旗を持った刑事が、前方を確認しつつドライバーを誘導するのだ。この時代がかった風俗に流れる音楽が山下<ルパン三世>毅雄。当時としてはめちゃくちゃモダンだったろうジャジーな曲が、今聞いても楽しい。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:12 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

丸山誠冶「女ごころ」

 神保町にて。「東宝文芸映画の世界」特集。59年・東宝。
 モリマと原節の夫婦。
 モリマが団令子と浮気。原節子供を連れて家を出る。モリマ、主婦なき家に団を連れ込みずるずると生活する。う~ん、原節覚悟が足りないな。モリマと結婚する以上、浮気は当然ではないか(笑)。というようなことしか、思い浮かばない。
 しかし、丸山の映画に関しては、雑な感想しか浮かばないなあ。
 ほかに本特集では、筧正典「女房族は訴える」(56年・東宝)「大安吉日」(57年・東宝)も凡作で。この特集でも快作はあるのだが、大体既見でパスで。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:11 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

小津「東京物語」熱海の宿の不思議

 ふいと気付いたのだが、これは、さすがに、無理スジだろうという。酒呑みの勘ですな。
 老父・笠智衆は、若い頃は、相当の酒飲みで、妻・東山千栄子は、相当苦労したという。
「あたしたち、それがいやでねえ」と、長女・杉村春子は述懐する。
 しかし、末っ子・香川京子が生まれた頃から、現在の「仏様のような笠智衆」になっていったという。だから、末っ子の香川は、父には、いい思い出しかない。しかし、長女・杉村、長男・山村總、三男・大坂志郎には、笠智衆は、厳父(ないし、酒飲みの)という印象がある(次男は戦地から帰らず、不明)。
 だから、杉村春子は、おそらく甘党の中村伸郎を、夫に選んだ。いわゆる午前様(もはや死語か)は、中村伸郎には、許されていないような気がする。どうも、何か、怪しげな職業?(ブローカーか)の中村にしては、健全な?暮らし。また、長男・山村總の家でも、酒が提供された形跡もない。
 ゆいいつ、過去の<酒乱>?の事実を知らない、次男の嫁・原節子が、アパートでお銚子1・2本程度を提供する。

 そこで。
 老夫婦は、熱海の旅館に、行く。
 おおぜいの団体客の、夜になってもの、大騒ぎに、老夫婦は、眠れない。寝床のふたりは、眠りが、浅い。
 ここで、(もと)酒飲みの笠智衆は、なぜ、酒を、頼まない。
 いや、そもそも、熱海の通俗的な旅館で、ここは、ふつう、夕食に、お酒つけますか、と女中さんに聞かれて、ああ、もらおうか、頼むだろ、ふつう。
 いくら周囲が騒がしくても、酒飲めば、まあ、とりあえず入眠出来るだろ、笠智衆。
 それとも、古女房相手に、酒は飲めない? ンなことないだろ。
 田舎モノだから、旅館に遠慮? ンなことないだろ。若い頃は、県の教育長として、数々の料亭での接待宴会に出席して、家族を苦しめていたくらいなんだから。その辺のシステムおよびキビを、充分熟知している、なのに、なぜ、この、熱海の、通俗旅館で、酒を飲まない(笑)。
 おかしいだろ。
 もちろん、それは、翌夜、笠智衆が東野英治郎らと、「痛飲」するための、脚本上のタメなのだが。
 小津安二郎・野田高梧の脚本は、通常の、ふつうのリアリズム(酒飲みが旅館に行って、なぜ、酒を飲まない?)を、しばしば無視して、より高度?のリアリズムを実現させた。ないしは、でっち上げた。
 あまりにするするとした脚本と、演出に、目がくらませられるが。
 なぜ、そんなことを、するのかって?
 小津や成瀬らにとって、そんなくそリアリズムを映画に導入したら、雑味だらけになってしまうからに決まっている。スジはシマラなく、上映時間のみやたらと長くなる。焦点はボケ、キレもコクもなくなる。それが、クソリアリズムの成れの果て。
 だから(もと)酒飲みのはずの笠智衆は、タメにタメて、ラストの一夜まで、酒を、呑まない。
 そういう脚本を、ダイヤ菊を、空の一升瓶を並べながら鯨飲して、小津安二郎・野田高梧は、旅館にこもって、書いている。それ自体がギャグだろう。

                              ◎元記事掲載時間 2012-05-25 00:11◎

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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:11 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(0)

丸山誠冶「山と川のある町」

 神保町にて。「東宝文芸映画の世界」特集。57年・東宝。
 東北の田舎町が舞台で、青年教師・宝田明がいて、<おませで多感な女子高生>雪村いづみがいて、彼女の家は町有数の金持ちだから、妻子もちの教師・小泉博を家庭教師に雇ってしまえる。
 恋ともいえない恋、明晰で知的な手紙を教師に送る雪村、ああ、やっぱり石坂洋次郎原作は、こうでなくっちゃ(笑)。
 吉永小百合が永遠の学級委員長ならば、雪村は永遠の冒険好き女子高生。ついに、このふたりは<大人の役>が似合わなかった。
 小泉の妻・津島恵子がこの中では唯一の<大人>で、そういう意味ではもったいないのだが、この明るく楽しい洋次郎戦後民主主義ホームルーム・ワールド、捨てがたい。日本の現実の戦後民主主義ホームルームは、実際には日教組や共産党社民党などの、暗さまっしぐら勢力が先導(扇動)したため、どんよりしたものになってしまったが。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:10 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

丸山誠冶「朝霧」

 神保町にて。「東宝文芸映画の世界」特集。55年・東宝。
 信州の高校生・久保明は、姉一人弟一人の身、学費は姉・杉葉子が工面してくれるのだが、あるとき、姉が志村喬の愛人として金を得ていることに気付き、苦悩する。
 という本筋の話はどうでもよくて(笑)、男子高校生たちの旧制高校的寮生活が描かれているのが興味深い。何せ原作の阿部知二は、女子大生の寮生活を描いた「人工庭園」の作者だ。「人工庭園」は木下恵介が傑作「女の園」として映画化している。
 男の寮には、志村の娘・岡田茉莉子なんてのも出入りできる。汚い落書き(ま、ドイツ語が人気)もあって、その対比が面白い。寮生同士の友情、純情娘青山京子とのはかない恋、しかも舞台は信州だし、ああ、木下なら傑作になっただろうなあ、とないものねだり。木下の男子寮生モノ、いや、わしは別にその趣味はないが、いや、木下なら絶対傑作だって。見たかった!
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:09 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

丸山誠冶「現代の欲望」

 神保町にて。「東宝文芸映画の世界」特集。56年・東宝。
 会社乗っ取りをもくろむ株屋池部良(現代では何とかファンドと名乗る、いわゆるハゲタカですな)、その犠牲となって自殺した会社社長の娘を、愛するようになってしまう。
 その娘が、司葉子。
 東宝株モノでは、加害者になってよし、被害者になってよしの司葉子。<明るく楽しい東宝映画>にあって、苦みばしった池部と、クールビューティーの司が、この種の<現代の>映画にマッチする。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:08 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

久松静児「沙羅の門」

 神保町にて。「昭和の庶民史・久松静児の世界」特集。64年・宝塚映画。
 団令子・草笛光子W主演という地味なキャスティング、こういう映画は絶対東宝本流では作りませんな、傍系の宝塚映画だ。
 しかし、特に団令子がよくて、この不遇な女優の代表作といっていいだろう。しかし、ま、特に、言うことも。団の子供時代の子役がかわいらしかった(笑)。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:07 | 面白メロドラ日記 久松静児 | Trackback | Comments(0)

久松静児「丼池(どぶいけ)」司葉子三益愛子新珠三千代森光子佐田啓二中村鴈治郎

 神保町にて。「昭和の庶民史・久松静児の世界」特集。63年・宝塚映画。
 女子大生上がりの高利貸し司葉子が、大阪丼池界隈でエネルギッシュに成り上がるさまを描く、菊田一夫戯曲原作のパワフル快作。猥雑な掃き溜めの中の鶴を、司葉子が快演するが、この時期の東宝で、経済もの(つまり、東宝にあっての経済系映画とは、株で一攫千金系か、会社乗っ取り系の二つなんだが)というと、なぜか女優は決まって司葉子という印象があるのだけれど。そのクールビューティーぶりが、ハードボイルドな映画に合うということか。

e0178641_2431390.jpg『丼池(35mm)』1963年 (渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:久松静児
出演:司葉子、三益愛子、新珠三千代、森光子、佐田啓二、中村鴈治郎
昭和27年、大阪の丼池。老舗問屋の乗っ取りを巡って、女たちの意地と情のバトルが勃発する。大卒論理派金貸し・司葉子と老練の高利貸し・三益愛子、色仕掛けで店を狙う新珠三千代の三つ巴の騙し合いに加え、空売り、買占め、インサイダー等の頭脳戦も手に汗握る面白さ! 浪花千栄子は行商のおばちゃんとして登場し、森光子との軽妙なやり取りで笑いを取る。

 大学の同好会乗りで、同級の男子大学生たちを部下に従え(江原達怡とか西條康彦とかの、頼りない系東宝若手やさ男陣たちだ)、司葉子は颯爽と高利貸しの道を邁進する。彼女に手を貸したり裏切ったりの海千山千狸婆あに、この人、三益愛子。いつもの調子でへらへら笑いながら、儲かってんだか、損してんだかの狐女浪花千栄子。若いながらも涼しい顔で中村雁治郎を手玉に取る新珠。いずれ狸か狐か、の怪女たち。の、中で、ぎゃーぎゃー無駄に騒ぎながら、あたりをうろつき回っている<残念な空騒ぎ女>が、森光子。安直に、常に強いほうに付く、しかも大騒ぎして加担する、コバンザメ女を柄に合って快演する。映画ではとうとうチンピラ女優のままだったが、TVで成功し、舞台で<日本の女優で初の国民栄誉賞>に輝く。長生きも芸のうちなのか、究極の出世魚なのか。まあ、国民栄誉賞自体が、デタトコまかせで極めて安直に選ばれているというのもあるのだが。
 経済系司葉子は実に面白い。ところが、続けて見たのが、同じ久松の「新・女大学」(60年・東宝)。つまらない映画だが、それ以上に、司葉子が甘えん坊の新婚妻で、夫が無断外泊するや、たちまちすねて、へそを曲げて実家に里帰りする、というあまりのぶりっ子ぶりに、快作「丼池」のあとだけに、体が受け付けまへんわ。
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# by mukashinoeiga | 2009-07-15 00:06 | 面白メロドラ日記 久松静児 | Trackback | Comments(0)