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<   2014年 03月 ( 25 )   > この月の画像一覧

佐々木康「風の女王」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。38年、松竹大船。
 脇の甘い佐野周二が、会社のタイピスト、おしとやかでやまとなでしこの三宅邦子が好きでありながら、その妹の積極派・高杉早苗の「スーパー女子力」(笑)にホンロウされ、フタマタさんまたに陥ってしまうという、典型的優柔不断駄目松竹男の、お粗末。
 その天然ビッチの魅力(まさしく嵐を呼ぶ「風の女王」!)高杉早苗が、魅力的な素晴らしさ。
 こんな女にホンロウされたら、佐野周二でなくとも、つい、マケテしまうのは、やむをえない。
というか、そもそも、三宅邦子を好きになる、というそもそもから、わからないのだけれども。

風の女王(65分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
上原謙、佐分利信と共に「松竹三羽烏」と称された佐野周二。本作では、善良な紳士ではあるが、病身の妻がいながらヒロイン(三宅)に愛を語り、さらには自ら裏切ってしまう人物を演じている。笠智衆の悪役も見所。佐野のデビュー作も担当した佐々木康監督は、松竹では主に歌謡映画や国策映画を手掛け、1952年に東映に移ってからは時代劇で活躍した。
'38(松竹大船)(監)佐々木康(原)片岡鉄兵(脚)野田高梧(撮)野村昊、杉本正二郎(美)五所福之助(音)万城目正(出)三宅邦子、高杉早苗、佐野周二、奈良真養、葛城文子、笠智衆、森川まさみ、河原侃二、仲英之助、西村青兒、伊東光一、川島敏三

 三宅の同僚で、三宅を蹴落としても、パリ行きの栄誉を担いたい森川まさみ。これが、ぷっくりまん丸顔で、しかと森川まさみと識別できないレヴェル。3年後の大庭秀雄「花は偽らず」(感想駄文済み)では、ちゃんと森川まさみ(通帳を落とす喫茶店の店主)とわかるくらい痩せているので、若ぶとりか。
 この森川の恋人で、やはり三宅邦子をわなを仕掛ける悪い奴に、笠智衆。なかなか堂に入った小悪党ぶりで、逃がした三宅邦子を見ながら、指パッチンでニヤリ顔は、最高におかしい。
 色悪専門役者としての笠智衆。そういう可能性もあったのだ。
 なお、終盤近く、道行く高杉早苗を呼び止め、説教する役に、ワンシーンのみ出演の田中絹代。
 大物女優の、ノンクレジットのカメオ出演とは、珍しく、絹代が出ると、軽くどよめく場内。
 出番の脇役女優が何らかの事情で駄目になり、たまたま撮影所にいた絹代が、「あら、ワタシでよければ」と、いうことだろうか。珍しい。
◎追記◎上記田中絹代の説教云々というのは、間違い。佐々木啓祐「春雷」との混同。まったく似たようなストーリー、登場人物だから、ついつい混同してしまいました。妄言多謝。

 喫茶店のレジ係りというせりふが一言の小さい役に、藤原か弥子。2年後の蛭川伊勢夫「涙の責任」では、ヒロインの友人という重要な役に。ひらがな一字交じりの名前で、クレジットで目立つから注目してしまった。卑怯なネーミングだ(笑)。

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by mukashinoeiga | 2014-03-20 15:13 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

宗本英男「水郷情歌 湖上の霊魂」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。37年、松竹大船。
 宗本英男「妹の晴着」 (感想駄文済み)は、それなりによかったが、本作はビミョー。
 現存する数少ない桑野通子主演作なのに、残念。
 レビューの踊り子、というクワミチお得意の都会派モダンガアルの役なのに、早々に田舎に追い立てられて、真価?を発揮できず(笑)。

水郷情歌 湖上の霊魂(73分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
静かな水郷を舞台とした歌謡メロドラマ。東京で体を壊し、帰郷したサックス奏者の伸吉(徳大寺)。だが、彼の恋人として共にやって来たレヴュー・ガールの古都子(桑野)は、伸吉の兄の壮平(河村)に全く受け入れられない。とうとう伸吉と古都子の関係にも亀裂が入る。
'37(松竹大船)(監)宗本英男(脚)圖齊與一(撮)猪飼助太郎(美)周襄吉(音)万城目正(出)桑野通子、德大寺伸、河村黎吉、水戸光子、大塚君代、野寺正一、飯田蝶子、笠智衆、奈良真養、谷麗光、東山光子、山田長正、出雲八重子、忍節子、朝見英子

 そもそもタイトルからして、究極のネタバレで、問題?は、誰が入水自殺か、という。タイトルもモンダイだが、お話もお粗末。クワミチ、恋人の実家に無為徒食の居候の図。これでは、活躍の仕様もない。
 田舎の純情娘(恋人の妹の水戸光子、恋人のいいなずけの大塚君代)に都会の風を吹かすくらいの「活躍」なんだから、景気の悪いことおびただしい。
 化粧品は、もちろん戦前松竹唯一の推奨銘柄・クラブ白粉。戦前松竹では、必ずクラブ白粉の名前が連呼される、毎度毎度のタイアップ宣伝。この松竹とクラブ白粉の癒着は、異常を通りこしている。松竹の女優さん全員に無償で提供されていたのか、幹部は絶対に賄賂もらってるだろ、というレヴェル。

 都会派ぶっきらぼうで、田舎者には嫌われて、かわいそうヒロイン・・・・って、ちょっと、待ったあ(笑)。
 まずだいいちに、こんなに愛想も悪くて、家事も手伝わずに、正式に結婚しているわけでもなく、恋人の実家にぶらぶら無為徒食、って、こりゃー、嫌われて当たり前だろう。
 次に、彼女を嫌ういっぽうの、頑固者の兄に、河村黎吉。完全なミスキャスト。田舎の固陋モノなのに、なに、あのしゃれた作業着は。棒縞のモダンなシャツ。顔は怖いが、河村黎吉、都会の、下町の、生きのいい頑固者にしか、見えへんでー。
 とても、都会派モダンガアルをたな卸しする田舎者に、見えないというお粗末。
 そもそも戦前松竹男優陣で、田舎者を演じうるのは、坂本武くらいなものか。
 しかし、坂本武の頑固者って、コメディがかってるからなあ。家から桑野通子を追い出す迫力はなく、逆にクワミチに、家をのっとられてしまうだろうね。

 というところで、後半家を追い出されたクワミチ、洋装から一転して、粋な和服の着こなしの、隣町のカフェーの女給さんになってからが、やっと良くなる法華の太鼓。
 言いたい放題のヤンキー系純情派が、本当に水にあって、絶好調。
 戦前女優としては、稀有なまでの洋装の似合いっぷりの彼女は、和服でも、粋な着こなしというしかない、華麗さ。 ということは、逆に言えば、家庭婦人には見えない粋筋、ということで、戦前松竹ホームドラマには、なじまない。、ということで、庶民娘な田中絹代や水戸光子に、お嬢様風ではあるが、ややドンくささが混じった(失礼、あくまで桑野通子に比較しての話で)高峰三枝子に、追いやられてしまうのであった。
 哀れモダンガアルの末路、という言葉が、クワミチの、その後の「没落」を、特に戦時下の松竹映画での、立場のなさを象徴している。
 しかし、そのクワミチの絶好調を、台無しにするのが、やはり恋人・德大寺伸。これが絵にかいたような戦前松竹駄目男の典型で(笑)。
 頑固な兄に反抗もできず、クワミチに逃げられて、うじうじ、とうとう許嫁の大塚君代との結納まで承諾し、でもやっぱりうじうじぐだぐだ、なし崩しに入水自殺。
 なぜか色黒の顔(クラブ白粉でも隠しきれない)のクワミチ。某説では水郷の太陽に日焼け、ということだが、そうか、クワミチは、顔グロの元祖でもあったか(笑)。その不思議の色黒のクワミチに比べるまでもない、德大寺伸の色白。同じ監督の「妹の晴着」の絶好調男とは、比べ物にならない、残念な德大寺伸名のであった。
 なお、笠智衆が水戸光子の恋人役でちょい役。若いころの彼は、朴訥な声はともかく、かなりのイケメン。いい男だ。サブリンみたいな朴念仁が主役を張れるんだから、笠智衆もまかり間違えればスタアになりえたのだが、やはり声のせいか、愛嬌の点か。本作でも垣間見れる隙のなさか。
 大体ちょっとしか出番がないサブキャラなんだから、もっとゆるくてもいいのに(ヒモリンのように)シャープすぎる。
 それともサブリンですらもってる、德大寺伸はもっと持ってる、戦前松竹駄目男の、ワキの甘さか知らん。そう、若き日の笠智衆に欠けていたのは、隙のある甘さ、ゆるさがないことだったのだろうか。晩年(ないし晩年役)では、「優しそうなおじいちゃん」で人気を博した彼も、若いころはシャープすぎて。うーん。
 にしても、シャープな笠智衆の、二枚目役も、見てみたかったなあ。

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 本作の場合、タイトル検索では「霊」を旧字にしないとヒットしない。監督名で検索した。

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by mukashinoeiga | 2014-03-20 10:34 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

「KANO」台湾で大ヒット中

《KANO》六分鐘故事預告


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KANOクランクインMOVIE

KANOクランクアップMovie

國片KANO 大澤隆夫毛遂自薦演出

巨星沒架子! 大澤隆夫誇馬志翔"美男子"

八田與一(与一)と嘉南地方、嘉義農林学校


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by mukashinoeiga | 2014-03-19 00:17 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)

宗本英男「妹の晴着」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。39年、松竹大船。
 いかにも戦前松竹らしい快作。
 主演・水戸光子としても、美貌、娘役の演技でも絶好調で、彼女の代表作ともされる同年の「暖流」より、はるかに輝いている。これだから、「映画史の定評」なんて、当てにならない。
 タイトルロールの「妹」羽田登貴子は、見かけない顔だが、顔も声も演技も主演女優の魅力オーラなし。たぶん数作で消えてしまったものと思う。見ていて楽しい顔、声、演技でないと、主演は勤まらない。水戸光子には、それがあり、羽田登貴子には、それがない。
 なおはるか後年の松竹で、同姓の羽田美智子が、あまりに主演オーラがないのに多用されたため、奥村プロデューサーの愛人かと、揶揄されたことがあったのは、別の話。
 近年の中村義洋「ジェネラル・ルージュの凱旋」での、羽田美智子は、なかなかよかった(重要な脇役として)。経験ゆえか、若いころには真価を発揮できない遅咲きの花ということか。

妹の晴着(81分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
清子(水戸)は株式取引所で働き、一家の家計を支えている。彼女は、主任の瀧本(徳大寺)に好意を持っていた。しかし、取引所の同僚で、妹(羽田)の恋人でもある並木(三原)が、客の金に手を付けてしまったことを知る。本作で好演した水戸は、この後、『暖流』(1939、吉村公三郎監督)の石渡ぎん役で注目された。
'39(松竹大船)(監)宗本英男(脚)猪俣勝人(撮)杉本正二郎(美)五所福之助(音)万城目正(出)水戸光子、羽田登貴子、遠山文雄、吉川満子、水島亮太郎、德大寺伸、齋藤達雄、花房廣子、三原純、河原侃二、奈良真養、西村青兒、松井潤子、高橋佳代子

 水戸光子が良くて、その母親に、相変わらず抜群の安定感の吉川満子の、ダブルみつこ。
 水戸光子がしたう德大寺伸も、最高によい。若いのに座禅が趣味で、水戸にフラレて、「あなたのことを時々思い出して、心の修行とします」ということばには、思わずホロリ。
 斎藤達雄の縁談申し込みを、心ならず水戸光子にしなくてはならなくて、酔っ払って水戸光子に掛け合うとこなんざ、松竹メロドラマの定番ではありながら、名シーンや。
 戦前松竹のメロドラマのお約束は、たとえば、この斎藤達雄の役がヒヒ爺いで、金の力でもって水戸光子を、後妻に直させるというようなことが多発しがちだが、本作の斎藤達雄は、本当によい人。
 誰ひとり悪人がいないのに、みんな善人なのに、追い詰められて、こと志と反する水戸光子。皮肉な結末ながら、斎藤達雄と、その幼子が良いので、救いがある。
 妹のカレシ・三原純が、普通に、ちゃんとしていれば、すべてはハッピーだったのに。
 三原純、あまりにうじうじしていて、新妻に「秘密」が、バレそうだ(笑)。だいたい、こんな秘密、もし妹が知ったら、「姉を犠牲にして自分だけ幸せ」なシチュに、耐え切れるのか。その瞬間、夫婦崩壊だろう。
 これが佐分利信なら(笑)、秘密は棺おけの中まで安定で持っていきそうだが、三原純、耐えられるのか(笑)。
 戦前松竹ファンを自負しながら、今回高倉彰と三原純を、初めて認識した。それくらい多作であり、ある種のオーラは、ある。ただし、その名前が現代に残らなかったのもまた事実。
 幼形成形されたかのような頼りない顔立ち、いつも、情けなさそうな役回り、それはある意味現代的でもあり、昔より今のほうが合いそうなキャラでもある。ある一定あるオーラも、あまりに弱すぎ、結果映画の歴史に残らず、「いまっぽさ」ゆえに(ある程度の)注目をフィルムセンター常連に、もたらしている。
 
 なお、本作の後半は怒涛のせりふ量。水戸光子も德大寺も、自分の心情を語り合う語り合う。81分のランニングタイムだか、監督の力量だか、あるいは脚本・猪俣勝人の、上記のようにせりふもうまいが、量も多かったのか。
 せりふはいいのだが多すぎ、情緒が減じられるほど、せりふの洪水というべき。
 その結果、余裕のない映画展開となったのは、痛い。
 監督が手ダレであったら、ある程度は回避されたのか、81分ではムリだったのか。いや、60分台でも、いい作品はあることが、今回の特集でも何度も確かめられた。せりふを削れなかったゆえの、せりふ量。
 しかしそれにもかかわらず、本作の快は、揺るがない。

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 斎藤達雄の幼い息子は、女の子が演じている。結果愛らしさ倍増の子役だ。

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by mukashinoeiga | 2014-03-16 22:45 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

園子温「紀子の食卓」

 渋谷にて。「園子温監督特集」特集。05年、マザーアーク。
 園子温とは相性が悪い。食わず嫌い。「愛のむきだし」をツタヤから二度借りて、二度とも見ずじまい(もちろん、少しは、見た)で返却。
 ということで、本格的初体験。
 まずいかに10年前の映画とはいえ、主役の女子高生に吹石一恵というのがびっくり。大人っぽい顔立ちや雰囲気の彼女に、女子高生というイメージは意外すぎて。
 その妹に吉高由里子と言うのは、ナットク。
 で、この映画、長いよ長すぎる。物理的上映時間が159分というのも長いが、それは全体的に見れば、さして苦痛は、ない。
 クライマックスの「偽りの家族の食卓を囲んだ団欒」が、長すぎて、苦痛。さっさと、ダレでもいいから、誰かを殺して、終わりにしろよ、というくらい、くだらない会話劇がだらだらだらだらだらだら進行して、登場人物全員に殺意を抱くほど(笑)。

 この映画にかかわった全員を公開処刑にしても飽き足らないほど、だらだらだらだらだらだらだらだら無意味な会話が続く。金正恩なら園子温瞬殺だろう。
 つかこうへいがかつて、「竹を割ったような性格」の対語として「もちをついたような性格」と名言を残したが、本作は、まさにもちをついたような、しまりのなさ。
 この感想駄文のイッコ前山本薩夫「傷だらけの山河」は152分にぎっしり中身がつまり、むしろ二倍でも三倍でも、もっと見たいと思ったのに。「紀子の食卓」は、水増しのし過ぎ。

 なお、本作の2本立て同時上映は
園子温「LOVE SONGS」84年、素材は8ミリ、上映はデジタル転換版。
 法政大学映画サークル時代の処女作とのことだが、この9分の短編からして、すでに長すぎる(笑)。
 延々同じことの繰り返しの描写。
 もちろん、描写の繰り返し、あるいはだらだら情報量の少ない映画の効用、ないし快感というものは「一般論」として存在するが、この159分と9分の映画には、そういうものは存在しない。
 たった9分の短編が、あくびを誘うという、空虚。
 この監督には、超長編が多いという印象だけれど、それは、単に、しまりが、ないだけちゃいますか。

 なお、映画を見たあと本屋で関連本を立ち読みしたら、「紀子の食卓」の業務試写を監督が見に行ったら、客は男性一人のみ。よくよく見たらその男は、この映画のプロデューサー、仕方なく監督とプロデューサーがふたりだけで、試写を見たという。暇な業界人・ヒョーロンカも、紛れこむ業務試写が、関係者だけというのは、たぶん、珍しい。
 ひとりよがり映画と、見抜かれているからこそだろう。

★紀子の食卓|Movie Walker★

紀子の食卓 予告


Noriko's Dinner Table - Noriko No Shokutaku - 紀子の食卓 (2005


バラが咲いた 紀子の食卓 (Noriko's Dinner Table)


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by mukashinoeiga | 2014-03-14 09:17 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(1) | Comments(0)

山本薩夫「傷だらけの山河」

 渋谷にて。「日本のオジサマ 山村總」特集。64年、大映。
 2本立て同時上映ゆえの、おそらく三度目の再見。
 152分間、まったく飽きさせず、ダレさせず、映画も主演・山村總も、全力爆走する、スーパーパワフルな大快作ジェットコースター映画。
 西武(山村)と東急(東野英治郎)の、結果としての西武新宿線敷設戦争をめぐる泥臭い企業対決を背景に、企業経営にも絶倫、愛人たちとの愛欲にも絶倫な、超肉食系カリスマ企業経営者・山村總と、彼をめぐるおびただしい男女を描いて152分間の、まさにアッパレなザ・ヤマサツ・ワールド
 妻・村瀬幸子は、義父の財産目当てだから好みはこのさい問題外だったろうが、愛人たち、坪内美詠子、丹阿弥谷津子、若尾文子、滝瑛子という選択はどうなのか(笑)。いいといえばいいし、来るものこばまずの微妙感も漂う。
 もちろん若尾も含め、肉食系のB級グルメ感がただよう、というのは、身のほど知らずの暴論か(笑)。時代が下るにしたがって、しっとり和風系の坪内、丹阿弥から、サバサバ現代風系?の若尾、滝へ。
 もちろん、若尾はしっとりねちねちも、サバサバクールも変幻自在お手の物なのだが。
 大学生の息子がいる坪内、丹阿弥との愛欲シーンはない、若尾、滝とのいちゃいちゃシーンはある。この辺の「節度」がいかにも時代だが、現代のR18程度のレヴェルで見たかった気もするぞ(笑)。もう、そうなれば200分越えは確実か。肉食系のヤマサツ、ヤマムラのコンビなら、充分やってくれそうなのが、残念といえば残念。

 肉食系暴君のオヤジの、息子たちは、肉食系にあらず、という典型。
 長男・北原義郎は、社長として山村の完全イエスマン。あまりに完璧なイエスマン振りがグッド。北原の代表作か。
二男・高橋幸治は、オヤジの肉食ぶりについていけず発狂。娘婿・船越英二は、ちんけな欲望から勘当。カリスマの息子たちは、駄目になる典型か。
 部下たちの中では、用地部長の高松英郎が、印象的。
 しかし、左翼のヤマサツ、新藤兼人たちは、この「悪徳資本家」を、糾弾したいのだろうが、その映画表現能力の高さゆえに、ヤマムラのカリスマ的魅力が描かれ、カリスマ種は、本当に貴重な存在なので、描けば描くほど、その魅力に、われら凡庸人種は、魅了されていく。
 うっとりと、山村總の魅力に染まっていく凡庸なわれら(笑)。ヤマサツ、左翼としての逡巡は、ないのか(笑)。
 左翼であるということは、映画作家であることの二の次なのか、ヤマサツ。
 それとも、左翼こそ、カリスマを必要とするのは、ソ連/現ロシア、中国、北朝鮮、キューバ、その他一切の例外なしに明らかであることを思えば、庶民など歯牙にもかけないカリスマこそ、左翼の望むところなのだろう。
 安倍晋三程度を強権独裁者、ヒトラーまがいと連日非難する日刊ゲンダイが支持する、小沢一郎こそが、安倍以上の独裁タイプなのを思うと、左翼の独裁志向は、骨がらみなのだろう。
 自分たちが独裁志向だから、対立する安倍も独裁だと勘違い。
 自分たちが民族虐待するから、対立する日本軍も南京大虐殺と勘違い。
 自分たちが売春婦・慰安婦最大利用だから、対立する日本も慰安婦大活用と勘違い。
 自分たちがしている「悪弊」は、対立相手(日本)も「自分たち以上に」している、と、「自然」に「勘違い」してしまうものなのだ、人間は。

 なお、若尾・川崎敬三が、すき焼きなべをつつくシーンで、爆笑した。
 若尾が取り皿からしらたきをすすり、川崎もしらたきをすすり、なおも若尾しらたきをすする。貧乏カップルが、若尾が山村からもらった金で、めったにない贅沢なのに、肉も野菜も食わず、しらたきばかり(笑)。
 つまり、食いつつ、同時に大量のせりふを言わなければならず、肉や野菜では、せりふが出ない。だから、しらたきのみをつるつるしながら、せりふを言う。これ、リアリズム、チャいますやろ(笑)。
 152分長時間映画なのに、中身ぎっしり。だから、肉や野菜を食べ、余裕を持ってせりふを言う、間合いのある映画の「贅沢」は、ゆるされない、ことから来る、苦肉、ならぬ苦しらたきの策で。

★傷だらけの山河|Movie Walker★
 ただしこのあらすじは、相当「荒い」。たとえば「光子とも縁を切った勝平」というのは「光子に勝手に逃げられた勝平」であり、意味合いがまったく異なる。また勝平の妻役「成瀬幸子」は「村瀬幸子」のケアレスミス。
 推測すれば、Movie Walker転写オペレーター(あるいはキネ旬へのアウトソーシングか)が「村瀬」を「成瀬」と誤記するような、「高度」な映画的ケアレスミスをするはずもなく、これはネタもとのキネマ旬報の、当時の印刷所の活字工が、キネ旬ゆえに頻発する「成瀬」を、つい拾っちゃったということでしょうね。 

★【映画】傷だらけの山河 - いくらおにぎりブログ★
 相変わらず、ストーリー(的確な感想・評価付)を書かせたら、クイクイ読ませる絶好調なブログです。ただ、ここでも
「成瀬幸子」と孫引き。これも山本薩夫が成瀬の専属助監督だった因縁か(馬鹿)。
 なお「おとなげない」というブログには、「それと、この作品、当初は吉村公三郎監督の予定だったのが脳卒中で倒れたために、山本薩夫に変更になったそうです。吉村監督だと妾たちがメインになりそうで、これはこれで見てみたかったです。」という記述。まったく同意。
 なお吉村の常連脚本家・新藤兼人が、本作の脚本担当。軟派ハムさんでも、硬派ヤマサツでも、どっちでも、受けますぜ、という新藤の職人芸!

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by mukashinoeiga | 2014-03-14 07:44 | 山本薩夫傷だらけの左傾山河 | Trackback(6) | Comments(0)

野村・渋谷・吉村「敵機空襲」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。43年、松竹大船。あと1回の上映。
 きわめてユニークな二部構成の、そのユニークさゆえの快作と言っていい。
 クレジットされる監督は三人。野村浩将・渋谷実・吉村公三郎。これは監督、撮影監督らはいっぱいいるのに、戦時中のフィルム・物資不足のゆえに、製作本数が激減、という当時の状況ゆえの、苦肉の策だろう。
 おそらく、本作は、米屋一家(河村黎吉・田中絹代父子)、悪徳ブローカー一家(山路義人一家)、没落一家(葛城文子・徳大寺伸・髙峰三枝子の母子)、土地持ちの斎藤達雄、らの、それぞれの家族のコラボである映画、この家庭別の撮影だったのだろうか?

>きわめてユニークな二部構成の、そのユニークさゆえの快作と言っていい。
 本作は、まるで水と油な、二つの描写が、並行して描かれる。

 そのひとつは、アメリカ軍による民間人大量虐殺である、東京空襲への対応の描写。
 海から観測船で、山から測候所で、関東でもおそらく千葉の銚子あたりで、アメリカ軍航空隊の動向が観測されるや、本部に次々連絡され、本部の軍人たちにより、最終的には空襲警報が発令され、同時にアメリカ空軍を迎え撃つ軍機のスクランブルが命令される。そこらへんのシステマティックな機構の描写が、たいへん面白い。きわめて映画的。
 ただ、「本土空襲」への「迎撃」という時点で、これは、負け戦である。
 空襲警報にいたる大勢のひとびとによる、きわめて整然としたシステマティックな「機構」の描写を見れば見るほど、結果論としては、それが日本人の大量虐殺を防げなかったむなしさ。
 日本機がアメリカ機を撃墜する。同時にアメリカ機による日本機の撃墜も、描かれ、ある意味きわめて公平な描写が、きわめてチミツな特撮(白黒映像でのミニチュア特撮は、例によって大変、よろしい)と、おそらくドイツ戦争映画のフィルム援用(ま、ありていに言えば、パクリですな)により、日本映画、松竹映画らしからぬリアルな迫力。
 しかし、この「公平な描写」が、ある意味、それ以後の現在に至る「自虐史観」にも通低する原点かも知れぬ。うーん。

>きわめてユニークな二部構成の、そのユニークさゆえの快作と言っていい。
 本作は、まるで水と油な、二つの描写が、並行して描かれる。

 その二つ目は、米屋一家(河村黎吉・田中絹代父子)、悪徳ブローカー一家(山路義人一家)、没落一家(葛城文子・徳大寺伸・髙峰三枝子の母子)の、戦前松竹毎度おなじみの、人情ホームドラマ。
 また、田中絹代と髙峰三枝子の、ダブルヒロインが、ひそかに上原謙を恋する物語でもある。
 恋のさや当てが、ほのかに進行する。
 やはり松竹映画は、国家存亡の危機という<大状況>より、結局上原謙は、田中絹代・髙峰三枝子のふたりから、どっちを選ぶんだ(笑)という<小状況>のほうが大事なのね(笑)。

 戦時体制の描写を隠れ蓑に(笑)小市民的ラヴコメを描く。さすがです松竹。
 上原謙並びの、些細な小状況、ほのかな日本的親和性。
◎追記◎しかしそれにしても、米軍機から次々と投下される焼夷弾、それによる爆撃で爆破・燃焼していく東京市街。そういう特撮映像を、ゴジラ映画などの<空想ファンタジー>とは違う<今、そこにある危機>として、描く心性とは、どういうものだろう。いま、まさに、日本という国が侵略されつつある、というときに、それをミニチュア特撮として「再現」していく。リアルであればあるほど、それは<わが心の痛み>に、なっていくのではないか。
 その「再現」、その「表現」は、果たして映画職人の職人魂として、収まるものなのだろうか。
 東京空襲というものを、ミニチュアなどでわめてリアルに再現していく。
 下記のフィルムセンターによるクレジットでも、この当時の常として、特撮スタッフは、しかと明記されていないのだが、彼らはいったいどういう心性で、この<東京破壊>を、描いていたのか。特撮としては、素晴らしいだけに、余計に、気になってしまう。
 自虐なのか、庶民のリアリズムなのか。この映画をごく普通に見ていけば、ああ日本軍は、負けるなー、と、当時すでにスタッフらは、わかっていたはずだ。わかっていなければ、こんな特撮表現は、できないだろう。
 こういう壊滅的表現と、いつもの楽しい楽しい戦前松竹的スクリューボール・コメディとの融合、あるいは<野合>との、折り合いは、どうついているのだろうか。
 なお、映画で描かれる隣組活動(いわゆる細胞活動)、戦時統制経済(配給制度などに代表される)、情報統制(いわゆる大本営発表などの、実態と乖離したプロパガンダ)、国民総動員体制などの、戦時軍国主義は、実は社会主義そのものであって、この時期に日本の左翼政党は一貫してその党勢を伸張していった、日本軍国主義は左翼主義そのものであったという<衝撃の事実>。戦後左翼は<戦前左翼>を、批判している「だけ」という事実も、また、あるのですね。閑話休題。

敵機空襲(88分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
野村浩将・渋谷実・吉村公三郎が共同で監督した、アメリカ軍の空襲への備えの重要性を説いた国策映画。隣組の活動に参加しない不動産ブローカー(山路)の留守宅が、空襲時に深刻な被害に合うという教訓的なプロットはあるものの、全体として、松竹大船が得意とした市井の人々の描写が多くを占める。
'43(松竹大船)(監)野村浩将、澁谷實、吉村公三郎(脚)齋藤良輔、武井韶平(撮)齋藤正夫、長岡博之、生方敏夫(美)江坂實、本木勇、森幹男(音)深井史郎(出)河村黎吉、田中絹代、山路義人、若水絹子、雨宮一、信千代、葛城文子、徳大寺伸、髙峰三枝子
 なんというズサン、ここには、本作のきわめて重要なキーパースン、田中絹代と高峰三枝子が、ともに好意を持つがゆえに物語が転がる、戦前松竹大スタア上原謙の名前がない! ケアレスミスというには、やや違うぞよ。なお、下記にはちゃんと、ありますよ。

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by mukashinoeiga | 2014-03-11 01:53 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

大庭秀雄「むすめ」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。43年、松竹大船。あと1回の上映。
 たいへん楽しい戦前松竹通常娯楽作のラヴコメ&ホームドラマ。
 満員電車の中で、いっぱいの荷物をかかえた中年婦人・岡村文子、彼女を座らせようとした髙峰三枝子、悠然と座っている上原謙青年に、おかんむり。ここで岡村文子は三枝子を見初め、息子の嫁にと。同時に、最初はけんか腰だけど、三枝子・上原の出会いに。グッドな展開。三枝子、謙の魅力全開の楽しさ。日本的スクリューボール・コメディとしても、楽しい。
 三枝子は歯痛、偶然行った近所の歯医者が上原謙、「むすめ」としては不本意な再会。
 大口を開かされ、目を白黒、上原に治療器具を口に突っ込まれ、若い娘にとっては、屈辱なシチュ(しかも歯医者が美青年の上原という羞恥きわまるわけで)戦前松竹としても、かなりエロティックな絵づらになって、清純派なのに肉感的な髙峰三枝子としては、ちょっとエロい展開だ(笑)。
 しかも、医者に行く前夜としては、父親レイキチに、歯痛には梅干だ、と伸ばした梅干をほほに貼り付けられ、梅干貼り付け三枝子も、妙にフリークスでエロティック。

 そして三枝子の父・河村黎吉が例によって、素晴らしい。
 少し前に、日本映画の大独演会俳優四天王に、バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清を挙げたが、これに河村黎吉も加えるべき。ただし、お小言専門で(笑)。
 バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清とは違い、河村黎吉は、会話コラボに、坂本武&飯田蝶子の超協力助っ人を得て、丁々発止。独演会に至らないのは、いいことか悪いことか。逆に言えば、バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清は、坂本武&飯田蝶子クラスの共演者を得なかったために、独演会にしか、ならなかった、という見方も、ありうるわけだ。

 本作の河村は、幼なじみのお面屋・坂本武&飯田蝶子夫妻に文句を言い、大衆食堂のいい加減なオヤジ(武田秀郎、武田春郎と同一人物だな)にケチをつけ、もちろん娘の三枝子、息子の葉山正雄(かつての名子役も、思春期になり、ちょっと劣化か)にも、お小言。
 しかも葉山正雄への小言が、だんだん激励に調子に変え、息子なのに「ユウさんユウさん」と、さん付けのモダンさ。ご時勢に合わない?日本的に?アメリカナイズされた?いいオヤジだ。
 つまり、なんだろう、この映画、「時局」「緊急時」とは、まったく逆の、「ふわふわした、たよりない女心」「(三浦光子の三枝子への)女の友情」を前面に出した、「武張った戦時中時局」とは、真逆の「軟弱」映画だろう。
 そもそも、ひらがなで「むすめ」というタイトルからして、この「非常時」に似つかわしくないナンパさ。世間が「生きるか死ぬか」「一億玉砕」を叫ぶ中での、このナンパさは、やはりただ事ならないのではないか。
 その中で、やや不良じみた(といっても、夜の歓楽街を未成年がうろうろした、という程度の、今では当たり前のこと)息子を、小言を続けるうちに、「ユウさんユウさん」と、さん付け。ここに、松竹と河村黎吉のモダニズムが遺憾なく発揮されている。
 精一杯の日本式モダニズム。その余裕が、うれしい。河村黎吉の、いちいちユーモラスなお小言に、大笑い。河村黎吉、小独演会のお小言の、すばらしさ(笑)。

むすめ(77分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
大庭秀雄監督の戦中の佳作。洋裁店を営む久子(高峰)は、無職の料理人の父・新六(河村)を養っている。そんな中、近所の角平(坂本)とおかつ(飯田)夫妻が、久子の縁談を世話することに。だが、久子は、夫婦の娘・富江(三浦)と同じく、歯科医の向井(上原)が気になっていて・・・。河村黎吉・坂本武・飯田蝶子らベテラン勢の熟練した演技が興味深い。
'43(松竹大船)(監)大庭秀雄(脚)齋藤良輔、長瀨喜伴(撮)長岡博之(美)小島基司(音)朝比奈昇(出)髙峰三枝子、上原謙、三浦光子、河村黎吉、坂本武、飯田蝶子、水島亮太郎、岡村文子、葉山正雄、武田秀郎、山路義人

★むすめ★
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by mukashinoeiga | 2014-03-10 00:07 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

大庭秀雄「感激の頃」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。39年、松竹大船。あと1回の上映。
 水準的戦前松竹ホームドラマ。父親が、河村黎吉でも坂本武でもない、これまた戦前松竹常連父親役者の藤野秀夫だが、謹厳実直な藤野ゆえ、まあ、まじめな映画ですな(笑)。
 しかし理解ある謹厳実直の藤野には、河村や坂本には出せない味があり、これはこれで快作なり。
 ラストの藤野には、ちょっと、感動。
 不良ゆえに勘当して横浜にいる兄息子が、新聞種になって(チンピラの三井弘次に因縁つけられてケンカ)同居している妹娘の縁談を断られてしまう。

 勘当息子に三原純。なんだか<戦前のオダギリジョー>みたい。「戦前感」が少ない、いまどきの二枚目みたいなところがあり、なぜ売れなかったのか。それは、彼の妹にも、言えるモンダイ。
 可憐な娘に槙芙佐子。この特集で注目され、一部の映画ファンに、いま、話題。なぜ、もっと注目されなかったのか、と俄然ひいきの的。きれいで、モダンで、垢抜けていて。そういう注目。
 本作2年後の大庭秀雄「花は僞らず(偽らず)」41(イッコ前に感想駄文)では、すでにヒロイン水戸光子の同僚という小さな役に「格下げ」になっている。このかっこいい彼女より、何で德大寺伸は、ドンクサい水戸光子を選ぶのか、と一部フィルムセンター鑑賞者は、不満顔。

 いや、この女優は、売れないでしょ(笑)。典型的「きれいなだけじゃ駄目かしら」女優。
 少し前にお邪魔ビンラディンさんが言ったような、<(女優として)性格がよすぎた>典型かと。主演スタアとして売れるには、何らかのアクの強さ、サムシング・エルスが必要なのだが、この女優には、決定的に<一歩前に出る>何かが、欠けている。
 美人なのに、女優としての華がないというか。美人だけど、押し出しが弱いというか。演技は、そこそこうまくて、でもクサミがなさ過ぎる。見ているものの心に響くフックがない、キャッチーではないのね。
 一般女性として、お嫁さんになら、売れ口は殺到するが、女優としてはねー、というところ。
 本作で彼女とダブルヒロインの三宅邦子、三宅の<女優としてのクサミ>、あの独特のねちっとした喋り方や、ぼくのセンサーには美人と認識できない、あのビミョーな顔立ちは、はっきり言って苦手で、戦前の「若い娘」役はぜんぜん似合わないと思う。戦後の、おだやかな「家庭婦人」役で、あの声もあの顔もあの演技も生かされ、花開いた女優だと思う。
 その三宅邦子でさえ、最低限に持っている、女優としての華が、槙芙佐子には、ない、残念ながら。
 だから「花は僞らず(偽らず)」で、德大寺伸ならずとも、美人で颯爽の槙芙佐子と、ちょいブスで、でも時折可愛い、性格は雑そうだけど(笑)キャッチーな輝きのある水戸光子を比較したら、男はたいてい水戸光子を選ぶと思うよ(笑)。たぶん(笑)。
 <キミは三枝子派か?光子派か?>の「暖流」伝説が、ぼく的に信用できないのは、「暖流」には、水戸光子の「下世話な魅力」が、まったく感じられなかったからで。
 キャッチーではない、という意味では、本特集に、ほんとうに頻出する高倉彰もそう。本作では槙芙佐子の見合い相手として登場。この時期の松竹映画の常連で、本特集の見る映画見る映画に、ほとんど出てくる印象だが、ぜんぜんよくない、というか無味乾燥な若手。若い男で、いいのは、みんな戦争にとられて、その結果、こういう清潔そうだが、無味乾燥男がのさばるということか。いや、のさばる意識は、本人にはないから、ちとかわいそうだが。
 まあ、戦時中という非常時に、こういう「無難」なキャラ、というのも、わからぬではないが。
 救いは、生きのいいチンピラを演じる「与太者トリオ」上がりの三井弘次。同じく「与太者トリオ」阿部正三郎は、三原純の相棒だが、なんだか顔がむくんでいるのが、ちと残念。
 この二人、若いころは気のいいアンちゃんだったものが、年をとると、やや悪相になり、すさんでくる。戦後の三井は、クサミのある脇役として活躍し、阿部は戦死したという。阿部のクサミのある脇役も、見たかった。
 なお、戦後は、いまいまはじけない原保美が、一応の、美少年で。藤野秀夫の教え子かつ三宅邦子の弟。いかにも「誰かと誰かは実は昔からの知り合い」なメロドラマ定番のご都合主義。
 藤野秀夫一家の女中・出雲八重子が若くて、出番が多くて、ちょっとお得。いや、松竹映画ファンとしてだけどね(笑)。ちなみに三宅邦子は、下では女給と紹介されているが、横浜だから、チャブ屋なのかも。

感激の頃(75分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
大ヒットシリーズ『君の名は』3部作(1953-54)をはじめ、松竹大船調を支え続けた大庭秀雄監督の最初期のメロドラマ。旧制高校の教授・石川(藤野)には、娘・俊子(槙)と、横浜に離れて暮らす息子・保(三原)がいる。保は、横浜で女給の上野波子(三宅)と知り合うが、彼女の客(三井)が起こした刃傷沙汰に巻き込まれる。この事件が原因で、俊子の結婚は破談になり…。
'39(松竹大船)(監)大庭秀雄(脚)齋藤良輔、長瀨喜伴(撮)寺尾清(美)五所福之助(音)篠田謹治(出)三宅邦子、槙芙佐子、三原純、藤野秀夫、原保美、坂本武、高倉彰、阿部正三郎、三井秀男、出雲八重子、谷麗光

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by mukashinoeiga | 2014-03-09 08:51 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

大庭秀雄「花は僞らず(偽らず)」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。41年、松竹大船。あと1回の上映。
 たいへん楽しい戦前松竹通常娯楽作。
 丸の内のサラリーマン德大寺伸は、同僚タイピスト水戸光子が好き。でも叔父に当たる社長夫妻大山健二&岡村文子から「大阪のお嬢さん」髙峰三枝子を、薦められお見合い。「お嬢さん」に遠慮して、水戸光子は、身を引こうとして・・・・。
 吉村公三郎「暖流」39で頂点に達する?<キミは三枝子派か?光子派か?>映画。
 しかし、ぼくは、昔から「暖流」の水戸光子って、そんなにいいのか?という疑問が。むしろ本作や本特集の「お光の縁談」「狐」のほうがいいので。
 若き青年たちは、<キミは三枝子派か?光子派か?>と、思いあって、戦地に赴いた、という「暖流」伝説があるけれど、なんだか、信用できない。本作も含めた三枝子光子対比映画の、あくまで代表として、たまたま知名度が勝る「暖流」が選ばれたのでは、なかろうか、と。
 三枝子の幼なじみにして、德大寺の学友であった、といういかにも「誰かと誰かは実は昔からの知り合い」なメロドラマ定番のご都合主義・佐分利信は、ほのかに三枝子を慕いつつ、いかにもな戦前松竹ご都合主義のあやからあやへ、偶然知り合う森川まさみを、「どうだろう、ついでにうちの娘ももらってはくれないか」という斎藤達雄に言われるままに、「どうせ、ぼく程度の男には、この程度の娘がお似合いだろう」という、出ました、サブリン恋愛感情抜き現実主義結婚観のもと、三枝子を、フる結果に(笑)。
 サブリンが本の間に挟んでいた自分の写真を見て、サブリンになら「あたし、自信あるっ」と、グフッと笑う三枝子。いやあ、いいなあ。でも、この控えめなお嬢さんが、自信を持つというのは、一種の死亡フラグで。案の定、甘い憧れは、現実主義の敵ですらない鈍感さんサブリンから、ぶっきらぼうに、断られるのですね。
 ぶっきらぼうで無愛想な鈍感さん青年を演じて、サブリンの右に出るものなし。実は德大寺伸の話が長々続き、佐分利はかなり遅い登場なのだが、その短い出番で、主役感を出す。さすがです。
 三枝子の母・葛城文子は、德大寺のみにご執心で、サブリン眼中になし。たいへん安心感があるベスト母親女優だが、葛城文子は、異常なまでの高確率で、ほとんど、判断を誤る(笑)。しかし、彼女が判断を誤るがゆえに、戦前松竹メロドラマは、ドラマとして、転がっていくのだ。戦前松竹メロドラマの、隠れキー女優として、その存在感は、大きい(笑)。

本作の感想駄文は、こちらに続く→★大庭秀雄「感激の頃」★
 
花は僞らず69分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
大庭秀雄監督の戦前の代表作のひとつ。大阪を拠点に活躍した作家・藤澤桓夫たけおの新聞連載小説をもとに、交錯する恋愛を描く。舟木(徳大寺)は、親戚でもある勤務先の社長から、大阪の醸造家の一人娘・假名子(高峰)を紹介される。しかし舟木は、同僚のタイピスト・純子(水戸)に思いを寄せていた。舟木の友人・城太郎(佐分利)は、假名子の家とは昔から付き合いがあり、舟木に彼女との結婚を強く勧めるが…。
'41(松竹大船)(監)大庭秀雄(原)藤澤桓夫(脚)平山清郎(撮)寺尾清(美)本木勇(音)篠田謹治(出)髙峰三枝子、佐分利信、德大寺伸、水戸光子、葛城文子、大山健二、岡村文子、森川まさみ、斎藤達雄

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by mukashinoeiga | 2014-03-08 08:25 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(4)