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2014年 08月 23日 ( 1 )

増村保造「この子の七つのお祝いに」岩下志麻畑中葉子中原ひとみ芦田伸介岸田今日子

 京橋にて。「映画監督 増村保造」特集。82年、松竹=角川春樹事務所。
 ロードショー公開時以来の再見。当時は、ダルダルの凡作と断じたが、たぶん、いや絶対に、マスマスムラムラのことなど無知の頃で。
 では、マスマスムラムラについては、大体見当がついてるはず(笑)の現在では、見方が変わるかどうか(笑)。という意味での再見でおます。

e0178641_14173626.jpgこの子の七つのお祝いに (111分・35mm・カラー)<フィルムセンターHPより>
角川春樹の製作で斉藤澪の第1回横溝正史賞受賞作を映画化。これが増村の遺作となった。夫への復讐の念を娘に託し自らの命を絶った母。時は流れ、政界を操る女占い師の周辺で起こる連続殺人。血塗られた2つの事件に、戦後日本の深い傷跡が浮かび上がる。真相が明かされるラストの夕日が観客の脳裏に焼き付く。
'82(松竹=角川春樹事務所)(監)(脚)増村保造(原)斉藤澪(脚)松木ひろし(撮)小林節雄(美)間野重雄(音)大野雄二(出)岩下志麻、杉浦直樹、根津甚八、辺見マリ、畑中葉子、中原ひとみ、室田日出男、名古屋章、神山繁、村井国夫、芦田伸介、岸田今日子

 そもそもは角川春樹が大鉱脈を掘り当てた市川崑「犬神家の一族」以来の過去の因縁が現代に惨事を引き起こす「おどろおどろしい土着的怨念ミステリ」その何匹目かのドジョウである本作。
 それが増村に依頼されたのは、なにゆえか。
 そもそも、市川崑は、増村の映画論(最近文庫になった。ちびちび読んでいる)では、溝口、黒沢に並ぶ重大監督扱い。ただ、実際は市川の大映作品を、ほぼ、ぼろぼろにくさし、またその「偏狭」な性格も証言しているのが、たいへん楽しい読み物だ。
e0178641_14203018.jpg 独善的な天才肌、とも言う。人格に問題のある(笑)独裁者は、人民に必ず嫌われるという典型のような人物だったらしい、市川崑は。清水宏の小型版のような、嫌われ者だったよう。
 映画ファンとしては、よく見ている監督のゴシップは、大変に好物だ(笑)。

 ちなみにぼくの好きなマスマスムラムラのゴシップは、地方ロケに行くと、夜は旅館の大広間での夕食になり、各お膳(宴会仕様)に、お銚子が一本つく。まあ、スタアさんがいるかどうかは別にして、スタッフも大所帯だから、一見宴会風の夕食。
 酒飲みのスタッフは、あてがいぶちの夕食はそそくさと済ませ、夜の巷に繰り出す。まあ、監督が増村で、いちおう上座だろうから、そんな宴会に、長く居たいとは、誰も思わないだろう(笑)。
 で、当然お銚子には手をつけない、下戸もいるだろう。
 宴たけなわの頃になると(実際は打ち上げではない、日々の夕食なのだが)増村は、下戸の手付かずの銚子、いなくなった酒飲みの飲み残しの銚子を集めて、酒盃を重ねたという。
 さすが、超合理主義にして、地味地味な増村らしい(笑)。
 カツシンや裕次郎、監督でも川島などの豪遊伝説は数あれど、こんなしみったれた(笑)映画全盛期の監督も珍しい。
 確かに銚子には誰も口を付けてはいないのだから、合理主義者の酒飲みにしてみれば、もったいないし、しかし監督としてはみっともない。合理で地味な増村らしいエピソードで、ぼくは好きだな(笑)。

 何の話だっけ。そうそう「この子の七つのお祝いに」の話だった。
 結論から先に言うと、土井たかこ。「駄目なものは駄目」。
 まず、111分の上映時間が長過ぎ。
 全盛期マスマスムラムラなら、確実に90分は切っていただろうタイトな物語に、半時間の「贅肉」。「贅沢」なランニングタイムの使用などではない、単なる「贅肉」な映像の数々。
 体脂肪をほぼ絞りに絞った大映時代の、「90分の男」に比べて、この「贅肉」過剰が、この映画からサスペンスを奪った要因のひとつだ。
 しかしこの映画のストーリーは、111分の上映時間をかけるようなタマでは、ない。その結果、増村は、どうしたか。
 杉浦直樹、根津甚八のふたりは、ルポ・ライターと新聞記者で、二人は事件の真相を探るべく、多彩ないろいろなところに取材に出かける。そのたびに、すべての場所で、看板なり表札なりエンエン映す。律儀に固定ショットで、各五秒ほど? 杉浦のマンションの看板など何度も映す。
 こんな律儀かつ凡庸な映画って、たぶん、はじめて見たよ。まあ、この種のわかりやすい場所説明は、大映プログラム・ピクチャアの基本であったのかもしれないが。しかしそれにしても過剰。
 贅肉その2。本作の象徴の童謡「通りゃんせ」を。岸田今日子が二度も、そして岩下志麻も歌う。しかも、すべてフルヴァージョン(笑)。
 そのほか、すべて描写において「余裕」。ゆったりした描写なんて、マスマスムラムラには、これほど似つかわしくないものはない。合理主義がなくってもんだぜ。

 次に、本作が駄目な理由その二。あるいは、コレはぼくの個人的理由だけかもしれないが。
 ぼくは、根津甚八が駄目。どの映画どの映画を見ても、彼のよさがわからない。主演作が多いということは人気があるんだろうが、ぼくにとって根津甚八は、砂。彼の出番は、毎度砂をかむような思い。根津甚八不感症(笑)。
 次に杉浦直樹も微妙。このひと、若いころは一応二の線。でも、妙なゆるさが、二枚目になりきれず。
年をとったら、味のある人情派?に転換するも、今度は、そのゆるさを、妙な硬さが、ジャマをする。
 どう対応していいのかわからない、ハンパ感といいますか。
 このひと、はしゃいでいるときはカラ元気にしか見えなくて、しょんぼりしているときは、仮病感(笑)が、漂うのよ。なんだ、単なる大根か。
 そしてヒロイン岩下志麻。究極の不感症女優。ごく若いころの時期をのぞいて、この人の出番を楽しめたことが一度としてない。演技も下手だし。クライマックス「通りゃんせ」をフルで歌う演技の稚拙さったら、目を覆う。ま、罰ゲームだから、目を覆ったら負けだから、実際は、覆ってないけどね。
 つまりこの映画、砂、微妙、罰ゲームが主演トリオだから、ぼく的には、うんざりキャストで。

 大映全盛期マスマスムラムラで、確実に90分は切っていて、岩下が若尾あややで、根津が川口浩、杉浦が船越英二、だったら、あるいは本作は傑作になっていたかもしれない。
 本作でも、キーパーソンのふたりに増村保造「卍」岸田今日子、増村保造「赤い天使」芦田伸介を使っているが、こちらはグッド。なので大映全盛期マスマスムラムラ版でも、オーケー。
 とくに岸田今日子は、出色。彼女以外に、この役は、考えられない。

 次に、本作が駄目な理由その三。ホラー寄りのサスペンス描写が、徹底して下手。増村保造は、人間関係サスペンス?や情痴サスペンスは得意でも、ホラー劣等生?であることが、わかる。ホラー描写では、安っぽいTV2時間ドラマの域で。映画なのに、TVドラマに、毒されすぎだぞ、増村。
◎追記◎感想駄文済みの増村保造「恋にいのちを」江波杏子どうよう、本作の岩下もベッドシーンで機械的に仰向けに倒れる。さすがに新人・江波ほど機械的ではないが、いかにも増村保造的な、味も素っ気もない「合理的」な、倒れ方。
 おそらく増村とは「演技的」相性が良かった若尾なら、きわめて官能的にふわふわと倒れるところを、新人江波、不感症岩下には、単なる器械体操だったのだろう。今回まだ再見していない増村保造「セックス・チェック 第二の性」安田道代も、また、機械的にベッドに倒れるのだろうか。

余談1 って本駄文のすべてが余談そのものだが。ネットで見ると、本作をTV放映で見た当時の小学生たちが、トラウマになるほどの恐怖を味わったという。増村ホラー演出はヘタ以外の何者でもないが、たぶん、
 タイトルがタイトルなので子供向けと誤解されて、多くの子供が見た→コドモには初体験なホラーモノにショック→暗い和室の市松人形の、恐怖→岸田今日子のふるふる震える声にやられ→ヤキゴテでの児童虐待や、赤ん坊の拉致、ねずみに食い殺された赤ん坊、朝起きたら母親が血まみれで死んでいる、母親に裏切られた、などなど、大人よりもむしろ子供にとっての恐怖感満載な展開。
 タイトルが子供向け風でなければ、ここまでのトラウマには、そもそもならなかったであろう。

e0178641_14404248.jpg余談2 コレもネットで話題は「岩下志麻セーラー服写真」の異様(笑)。髪型もアフロ風で異様だし、コスプレ感満載。若い時期の岩下セーラー服なんて、松竹の過去スチール探せば、いっぱいあるはずなのに、そういうスチール写真では、増村は、満足できなかったのだろう。「過剰さ」が足りない!ということか。
 なお、岩下のセーラー服は写真の衝撃度で話題になるが、まったく無視されているのが、中原ひとみの、洋裁学校時代回想シーンでのカーディガン姿か。もちろんはたちとしては、ありえない老け顔なのだが、童顔だからぎりぎりオーケー(では、ないが、かろうじて、問題?とはならない)。
 しかしなぜ野添でなく中原なのか。たまには、違うひとみを使ってみようということか。もっとも、中原ひとみ好きとしては、この年でもかわいい中原を、コスプレ付きで見られて、オーケー(笑)。

余談3 書いているうちに思い出したが、ロードショー時は深作欣二「蒲田行進曲」との2本立て。このときぼくは、地方の映画館に勤めていたのだが、当初は「この子」のほうがA面だったはず。
 ところが、幕をあけてみたら、「蒲田」の大圧勝。爆笑に次ぐ爆笑。エンエン長期上映化し、最後の頃はさすがに客席もまばらになるのだが、「蒲田」のすごいところは、空席のほうが多い末期になっても、場内は爆笑の渦となること。いっぽう「この子」上映時は、セキとして声なし。
 上映中は、映画館従業員は暇になるので、「蒲田」上映時はたびたび館内で入り浸っておりました。映画の勢いもさることながら、必ずそして常に場内大爆笑の連波というのは、映画好きにして映画館好きの小生には応えられないものでしたので。
 いっぽうの「この子」のほうは、一回見たっきりかな(笑)。ホラーモノとしては、特に初期の特報、暗がりの市松人形はよかったのですがね。アノ特報は何回も見ました(笑)。たぶん下のとは違うほう。
しかし2本立てなら、最初から上映時間短くして、増村本来の味を出せばよかったのに。残念。人はないものねだりするものか。

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この子の七つのお祝いに(昭和57)メイン・テーマ

★Movie Walker★に、詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2014-08-23 15:21 | マスマス増村保造ムラムラ | Trackback | Comments(12)