人気ブログランキング |

2012年 07月 22日 ( 2 )

今井正「望樓の決死隊」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督 今井正」特集。43年、東宝。
 最初に、戦時中の映画らしく「撃ちてし止まむ」と、戦時標語が出る。
 当時の、満州との国境を警備する、朝鮮国境警備隊の活躍を描く。高田稔(絶品)を隊長とする、日本人警察官たち、それに数人の朝鮮人警官も入り、国境を守る。とはいっても、当時の朝鮮人は、「日本人同様の扱い」という「立場」だった。
 国境を侵犯して、押し寄せてくるのは、映画では「野盗・馬賊の類い」、しかしして、その「歴史的実態」は、中国・朝鮮混合のパルチザンの類いなのかもしれない、というのが左翼諸君の「見解」なのだろう。しかし、パルチザンといえども、食料、必需品、時には女も「現地調達」するわけだから、野盗・馬賊の類いとの、差別化は、難しかろう。
 クライマックスは、わらわらと押し寄せる騎馬軍団を迎え撃つ、砦の警察官たち。そう、まるで、西部劇のインディアン軍団VS白人軍団の、戦いを、大いに参照して、描かれた今井正版西部劇だ。
 こういう娯楽映画を作らせると、東宝も、今井正も、うまい。今井正は、何より、きわめてまっとうな、娯楽映画の名人なのだ。一般的には、男騒ぎの映画のヒト、と思われている黒沢明が、戦時中は、銃後の女の子集団のなんチャラかんチャラでお茶を濁していた(「いちばん美しく」)実は、きわめて「女の子」体質であることは、当ブログ「黒沢明映画の正体」を、お読みあれ。もし、黒沢が、こういう西部劇を撮っていたら、というかなわぬ夢を、想起させる出来なのだ。

 閑話休題。しかし、敵馬賊の圧倒的人数は、砦を守る警察官の比ではない。高田稔は、妻・原節子に、いざというときのために、銃を渡す。「覚悟は、できております」と原節子。本隊に出張中の若い警察官の妻は、乳飲み子を負ぶいながら、出張前の夫から、銃を渡されていることを、原節に伝える。殉職した朝鮮人警官の、若い妹は、朝鮮人青年に「いざとなったら、先に私を撃ってくださいね」と、言う。彼女は亡兄や青年の援助で、医大を卒業、将来は医者を志す身だが、今は砦で負傷した警官・国境の村の朝鮮人たちの、傷の手当てを、原節とともに、している。
 原節も、凛とした若妻役で、光る。不幸にも、戦時中にヒロイン女優としての、若さの頂点を迎えた女優のなかで、原節子のみが、輝いていたのではなかろうか。
 ラストは、本隊出張中の若き警官が援軍をひき連れて、ラスト・ミニッツ・レスキュー。お約束。ただし、騎兵隊ならぬ、トラックの荷台に警官を満載して。
 戦い終わって、殉職した(というより、もはや、戦死だろう)5・6名の警官たちの葬儀。白布の台の上に並べられた、白木の箱。そのうしろに遺影写真があるのは、数名。ないのも数名。こちらは、朝鮮人警官なのかもしれない。その、一瞬の、リアル。
 とにかく、国境「警備」といいながら、警察の職務の範囲を超えている、軍人の仕事だろう。手榴弾や、ライフルの仕事なんだから。高田稔という、ナンパな?お父さんの役しか、見てないような気がする人だが、その険しい顔の表情も素晴らしい、凛とした男。原節も、いい。
 
★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

by mukashinoeiga | 2012-07-22 05:36 | 今井正 青い左傾山脈 | Trackback | Comments(0)

今井正「民衆の敵」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督 今井正」特集。46年、東宝。
 イマセイ、戦後第一作とのことだが。凡作。
 戦時中、軍人や「戦争を食い物にしている」軍需産業経営者を対象にした、高級秘密クラブ。都内の空襲もあるというご時世にもかかわらず、高級食材、高級洋酒、高級ホステスで、酒食やら酒色なぞを、高級洋館にて提供している。そんなの、あったのか。うーむ。
 その、雇われマダム(主役には、ちょっと地味な花柳小菊)、いわば悪の組織の側にいるのだが、誠実な男(藤田進)に、感化されて、「正しい側」に、目覚めるという。しかも、花柳は、母ひとり子ひとりで育ち、母とともに自分を捨てた男(志村喬)が、この高級クラブの実質的権力者の財閥の長である、という。
 「占領軍の民間情報教育局から撮るように会社が命じられていた民主主義映画の一本」とのこと。そういう教条主義(藤田進は、身分の低い徴用工から、戦後軍閥が逃走して、軍需工場は壊滅、組合を立ち上げ、工員一体となった農業肥料工場に生まれ変わり、その会社代表みたいな立場に、みんなから、推される)の、組合賛歌みたいなヒーロー物語に、花柳のメロドラマが、からむ。

 前に感想を書いた今井正「由起子」もそうだが、たぶん、イマセイ、「メロドラマ」が苦手。メロメロ、メソメソしたドラマは、体質に合わないに違いない。
「青い山脈」みたいな「明朗ドラマ」こそ、イマセイで。だから、純朴朴訥藤田部分は、ともかく、メロメロ花柳部分は、どうも、ノれない。
 たぶん、本作は、イマセイより、山本薩夫が撮ったら、もっと面白かったに違いない。同じ左翼作家でも、山本薩夫なら、メロメロはおろか、ドロドロ、ぐちゃぐちゃも、大得意なんだからね。ドロドロを描いてすら、爽快な映画を作る人だから。
 しかし「民主主義映画」、命じられて、撮るべきものか(笑)。まあ、GHQも、左翼お花畑の組だからねー。
 第一回毎日映画コンクール監督賞、キネ旬6位、って、いかに当時映画の絶対数が少なく、まあ、それなりにしっかりした作りとはいえ。毎度おなじみの、左翼の下駄をはかせたか。
 なお、東京大空襲シーン(GHQに遠慮した、遠望のみ)の、円谷英二特撮は、やはりグッド。今ほどクリアではない映像の、白黒での特撮は、リアルに見えて、いい。

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

by mukashinoeiga | 2012-07-22 05:33 | 今井正 青い左傾山脈 | Trackback | Comments(0)