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2010年 04月 20日 ( 1 )

稲垣浩「佐々木小次郎」

 京橋にて。「映画の中の日本文学 Part3」特集。67年、東宝。
 佐々木小次郎、<所詮は武蔵に負けた男>である。実際の佐々木小次郎がどうであったのかはともかく、少なくとも日本映画においては<最強の負け犬キャラ><最高の脇役キャラ>。それを主役にして、映画にする。無謀だ。
 負けるべくして負ける企画ではないのか。しかも151分のオールスタアキャストの大作だ。プログラム・ピクチャアとして、ちょろちょろっと作るのとは、何割がたか予算も違うだろう。東宝創立35周年創立記念作。
 しかもこれだけ長い映画にもかかわらず、なんだか大河ドラマの総集編みたいに、マキが入っているようにも感じられるところも。いきなり登場して、主人公と濡れ場の遊女・大空真弓。いきなりすぎる登場だ。
 それもそのはず、どうやら同じ監督が50-51年に作った三部作の、セルフ・リメイクらしい。一本90分だとしても、三部作なら4時間半。その脚本を、そのまま二時間減らして、作ったような。
 娯楽映画で<最後は、負けてしまう男>を主人公にするなら、それは、やはり、<青春映画>にするしかないでしょう。と、いうことで、尾上菊之助の小次郎は、あくまでもさわやかな好青年。あまりに好青年すぎて、とても<剣の修行中>に見えない(笑)。大体、主家の娘・星由里子、琉球の皇女・司葉子、遊女・大空真弓、出雲の阿国の一番弟子・沢井桂子と、つぎつぎにアバンチュール(笑)、やりまくり、って、いったいどこで修行しているんだ、というくらいで。これでは、剣の道まっしぐら、修行に次ぐ修行の武蔵(仲代達矢)に、勝てるわけ、おまへん。
 一応武者修行のため諸国行脚の小次郎、影に日に寄り添うのは、忍者仕様の義賊・長門勇。主人公が都合の悪いシチュになると、必ず現われ、アシストする。娯楽時代小説お決まりのパターンを踏襲。いささかわけありの関係の友人・中丸忠雄も、最初はふつうの侍だったのに、なぜか、隠密として各地を転々として、各地で偶然(あるいは必然的に)主人公と遭遇する。
 ふてぶてしいまでに、娯楽の王道を歩む・・・・のだが、主人公は、負け犬。う~ん、ここら辺がやはり、弱い。
 明朗な好青年ヒーロー、でも主人公は、負け犬。
 う~ん。例の巌流島のシーンに近づくほど、映画は退屈になってしまう。ここで、退屈にさせないとすれば、それは、マキノしか出来ない不動の泣かせか、ヌーヴェルヴァーグ以降の<現代的センス>でしか、ない。
 しかし、本作は雑駁な稲垣浩。とても、むり。
 ただし、チャームがある菊之助は、いいなあ。

by mukashinoeiga | 2010-04-20 00:24 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)