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井上梅次「女は夜化粧する」山本富士子川口浩森雅之叶順子上原謙田宮二郎清水将夫

大人大映らしい夜メロ快作。再見。
 神保町にて。「女たちの街「色」と「花」に彩られた文芸映画の世界」特集。61年、大映東京。
井上梅次「女は夜化粧する」山本富士子川口浩森雅之叶順子上原謙田宮二郎清水将夫_e0178641_1327741.png 大人な大映らしく、と言っては変だが、大映は青春映画が苦手で、大映のほぼすべての若手俳優は、青春の気が感じられない。実年齢は若くても、みんな妙に「大人の事情」に精通しているように見える。
 その中にあって、川口浩だけがゆいいつ、やんちゃ坊主のまま、青春を体現している。大映にとっては貴重な存在だ。
 その浩の父、松太郎は大映の重役でもあったから、おそらく大映から、「センセ、今度は山本富士子主演映画になるような原作お願いしまっせ」などと言われていたに違いない。
 脚本のアテ書きはよくあることだが、これは何と原作からすでに、アテ書きだったと思われる。やんちゃな若者には息子を、気障な紳士にはモリマを、妖艶なやり手には山本富士子を、といった具合に、きわめてシステマティックな、企画→原作→脚本化→イメージ通りの配役。安定したシステム。
 小説家川口松太郎は、今でいう、大映のPB(プライヴェートブランド)だったのね(笑)。そりゃあ効率いいわ。
 ところで、この映画を見た女子の疑問は、あれだけエロかっこいいモリマを差し置いて、山本富士子が、なぜ川口浩に、なびくのか、ということのようだ。まあ、原作者の息子だから、息子可愛さの親バカ、という点もあるかもしれないが(笑)それとは別に…。

井上梅次「女は夜化粧する」山本富士子川口浩森雅之叶順子上原謙田宮二郎清水将夫_e0178641_13281321.png16. 女は夜化粧する S36('61)/大映東京/カラー/1時間41分 (神保町シアターHPより)
■監督:井上梅次■原作:川口松太郎■脚本:斎藤良輔■撮影:中川芳久■音楽:鏑木創■美術:下河原友雄■出演:、川口浩、森雅之、叶順子、上原謙、田宮二郎、清水将夫
赤坂の歓楽街でギター芸者として人気の登子(山本)は、その美貌と手腕を買われ、ナイトクラブを任されることになり…。衣装も雰囲気もゴージャスな山本と、彼女を誘惑する色男たちとの恋の駆け引きも楽しい娯楽作。




 山本富士子は、男を手玉に取る女である。それを商売にして、その適応能力は抜群なのだ。
 彼女はあらゆる客たち、そしてパトロンのモリマでさえ、手玉に取る。
 モリマも、ある程度は押すんだけど、きっぱり富士子に拒否されると、あきらめちゃう、本当の紳士。
 普段はオトコ山本富士子というべき押しの強さで鳴らす田宮二郎も、チャンスを人に譲る、おっとり加減。上原謙も清水将夫もやさしいやさしい。
 そうこの映画では、男たちは、みんな優しい。誰も富士子を不幸な目にあわすようなセクハラ男では、ない。

 その例外が、川口の浩。劇団をやめる当夜に、酒を飲んだ、最後の青春の同士でもあった。 
 富士子がゆいいつ手玉にとれない男。もしくは、手玉に取りたくない男。
 ぐいぐい押してくる浩に、富士子は抵抗できない。むしろぐいぐい押してくる浩に、ついに抵抗しきれず、自分から浩の顔を抱き寄せ、キスしてしまう始末。
 オトコを手玉に取る女は、結局手玉にとれない男に弱い。だから、モリマより川口浩。
 最後、歓楽を期待した富士子を、モリマは店に送る。究極のアッシー君か、「お前、日銭を稼げよ」という共同経営者か。まあモリマは紳士だから、どっちもどっちか。

 この映画は、画質が暗い。クレジットで確認できなかったが、アグファか、偽アグファか。いや、アグファじゃないだろう、もっと美麗なのが大映アグファだ(吉村公三郎「夜の河」)。とにかく画面が暗く、荒い。夜のシーンが多く、室内でも室外でも暗い。
 この当時は、町中のネオンサインも少なく、住宅地も街灯が少なかったろう。
 ということで、今ほど明るくもなかった当時の世相を反映しているのが、明るく楽しい東宝映画に対して、暗くて楽しい大映映画の面目躍如。
 なおクレジットで、特殊撮影というのがあったが、まず気になったのが富士子の控室で、富士子が写る三面鏡での的確な配置。これ、たぶん三面鏡と本人、全部にピントを合わせるのは、相当困難だよね?
 あと、クライマックス付近でうつる、富士子の豪華なラメ入り和服。ピカリピカリ光るのだが、これ暗いなかで実際にピンスポ当てたら、その周りも明るくなるよね。このラメの明り自体が、全部均一の光十字で。

シネマ・パラダイス 山本富士子特集


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by mukashinoeiga | 2018-11-29 13:06 | 井上梅次:エンタメを呼ぶ男 | Comments(0)

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