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佐藤武「帰国 ダモイ」堀雄二大日方伝田中春男山口淑子堀越節子池部良藤田進清川虹子花井蘭子

森雅之夫人も出演。
 渋谷にて。「玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のまだまだディープな世界」特集。49年、新東宝。
 そもそもどのオムニバス映画でも、各エピソードの食い足りなさが残る仕組みになっており、本作もそう。それぞれ独立した中篇、長篇にすれば感銘を与ええるものになる可能性があるものをも、ぶつ切りにして、すぐに次のエピソードに移っていく。
 オムニバス映画は、常に、観客の感情、余韻を置き去りにして、しまう。本作もまさにそれ。
 つまりオムニバス映画は、常に、安物買いの銭失い、なのだ。

佐藤武「帰国 ダモイ」堀雄二大日方伝田中春男山口淑子堀越節子池部良藤田進清川虹子花井蘭子_e0178641_149128.png『帰国 ダモイ(デジタル)(90分)』公開:1949年(渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:佐藤武
出演:井上正夫、野上千鶴子、和田信賢、堀雄二、大日方伝、荘司肇、山室耕、田中春男、山口淑子、堀越節子、泉麗子、池部良、藤田進、清川虹子、島田友三郎、藤間房子、花井蘭子
舞鶴港で戦死した息子を待つ老人、帰還兵のためタバコを探し回る靴磨きの少年など、シベリア抑留者の帰国をテーマにしたオムニバス映画で、敗戦後日本の貧困と混乱が実写映像で映し出される。第三話では、キャバレーの歌手になった恋人・山口淑子を「堕落した人間」と批難する池部良を通して、洗脳され共産化した抑留者問題に挑んだ。
(注)舞鶴港で戦死した息子を待つ老人は、花井蘭子と井上正夫を混同したケアレスミス。

 舞鶴にソ連からの引揚者が帰って来る。毎日、帰らぬ夫を待ち続ける花井蘭子。
 田舎の駅に堀雄二が帰還して来る。そこに出迎えの老人、井上正夫。彼は、一人息子が戦死して以来、気が狂い毎日息子を求めて駅に来ているのである。そして、堀雄二を息子と思い込む。
 上野駅で、靴磨きをしている少年に靴を磨いてもらった復員兵の大日向伝が、少年にタバコのピースを買ってきてくれと言う。
 漁師まちへ帰った藤田進はたくさんの子供を前にして「ロシアだってちっとも平等ぢゃねえ、でけえ赤旗ふりゃメシがよけいもらえた。向うじゃ船が無えってきかされて帰るのがおそくなったが舞鶴にゃ船が一ぱいだ、うそつきだ、一日でも余計にコキ使おうとしやがったんだ」といいきかせた。
 銀座のキャバレー歌手山口淑子、まだ帰って来ない恋人池部良。彼そっくりの男(池部の二役)が現れる。親しく会話をして踊った池部は、刑事に逮捕される。そのあと本物の池部良が復員兵姿で出てくる。池部は、山口を「堕落した人間だ」と強く批難する。シベリアでの洗脳で、完全に共産化していたのだ。

 この池部の良ちゃんの一人二役をナイスと絶賛しているブログもあるが、ぼくにはまったく意味不明の悪手。そもそもリアリズム基調の映画に、こんなファンタジー?手法を使うなんざ、まったく水と油。
 片方は金持ちそうな青年紳士だが、たぶん詐欺案件で逮捕、まったくの理想の男でもなかろう。片方は、ぼろぼろの復員兵姿の純粋赤化野郎。
 資本主義の毒に染まった男と、共産主義の毒に染まった男の対比ということだろうが、悪手過ぎる。
 この一人二役の意味が全くワカラナイし、映画の調子を崩してもいる。
 多くのシベリア帰還兵が、赤色エナジーを注入されて帰ってきたなか、堀雄二、大日向伝、藤田進は、違うようである。
 驚くべきことには、この映画ではだれもソ連を批判しないことである(唯一の例外が花井蘭子か。しかし抗議の自死というのは、批判の影響力のランクとしては低いだろう)。
 シベリア抑留といい、二個の原爆といい、他国による人災を、われわれ日本人は天災として甘受できる天才なのかもしれない。
 またこの時代、ソ連の悪を徹底して突いたら、コミンテルンの支配下にある悪の手下・日本共産党や、悪の下回り朝日新聞などが、徹底的な上映妨害運動をし、「氷雪の門」のように上映中止に追い込まれただろう。
 新東宝は商売人だから文字通り右顧左眄しながら、本作を曲りなりに作り、興行に乗せた。
 この中途半端な映画は、中途半端な戦略をとることにより、生き延びた。それはある意味是とするが、しかしこんな半端な映画は、やっぱり駄作だよね(笑)。

 なお山口淑子の同僚ダンサー役に堀越節子。聞けばのちの森雅之夫人だという。この彼女が思いッきり地味。華がない。多分二十代だと思うが、若さの輝きのない。
 そういえば、モリマが元宝塚女優の愛人に産ませた娘・中島葵も、華のない、若さが感じられない女優で、その母親の元宝塚女優も無名で、ぼくには名前も画像も見つけられない。
 元宝塚女優といいながら相当地味で無名。
 妻も愛人も娘も地味目。
 これは、この一個前の駄文奇遇なり森雅之の命日の呑み会から帰宅後「俳優 森雅之bot【非公式】」なんてのを見つけてしまうに、いわく、

(美人の女優について)そういう人達たちにちっとも色気を感じなくなっちゃうのね、本当に俳優は裸にされちゃいますからね。いい顔作ってやっても、君はそれウソだ、少しも気持ちが入ってない、いい顔してるだけだと監督に言われたりするでしょう?それがよくわかっちゃうんです。
僕らはね、いわゆる美人という人を見飽きてるんですよ。美人を見てもね、あ、これは美人だぞというふうには思わないですね。


ということなのだろうか。美人不感症。
 これはNoeさんあたりに、堀越節子なり、元宝塚女優さんの写真を、ぜひ見つけてほしいところかな。

 ★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2018-10-15 01:50 | 旧作日本映画感想文 | Comments(1)

Commented by mukashinoeiga at 2018-10-19 02:59
佐藤武「帰国 ダモイ」へのセルフコメント。
Noeさんツイッターに、
>昔の映画さんが私を呼んでいる…(呼んでない)
 ええと、堀越さんも梅香さんも検索すればお写真出てくるけども、私もあんまり興味がわかないというか、そういうわけで顔くらいしか知らないんですよね。モリマが美人なんとも思わないってのはそうなんだろうなと思う。でも順江さんはかわいいよね、踊り子さんて感じ。葵さんはお母さん寄りかなと思う。
どんな人にお手つきしてたとかは全然興味がないんだけど鬼瓦系看護婦さんとの話は普通におもしろそうなので聞いてみたかった。

とのこと。鬼瓦系ねえ。モリマは、お母さんも美人だし、お坊ちゃんなんだけど、乳母とか女中さんに面倒見てもらううちに、そして美人女優と共演するうちに、言ってみれば言葉は悪いが、ブス専になったのかなあ、と。これもまた隣の芝生は青い、ということかしらん。 昔の映画


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