島津保次郎「嫁ぐ日まで」原節子矢口陽子御橋公大川平八郎沢村貞子大日方伝清川玉枝汐見洋杉村春子
ハラセツ絶頂期の輝き。
ユーチューブにて。40年、東宝。
(以下、完全ネタバレあり)
原 節子さん 20歳の肖像「嫁ぐ日まで」1940年
モダニスト島津は、松竹時代の「兄とその妹」(感想駄文済み)で、火鉢に網を乗せてトーストを焼き、ケーキに当時としては珍しいだろうドライアイスをつけていた。本作でも、ハラセツは火鉢でシチューを煮込み、叔母清川玉枝に、菓子鉢を勧め、普通せんべいかと思うだろうが、なんとエクレア。清川玉枝は「チョコレットがついているねえ」とご満悦。思わず着物にこぼし、ああエクレアは、たいていこぼすよねえ(笑)。
そういう和洋折衷な和モダンな島津の、楽しさ。
黒沢明「一番美しく」でも千葉泰樹「煉瓦工女」でも、イマイチ地味でどこがいいのか、よくワカラナイ矢口陽子が、ハラセツの妹役。率直に好ましい。アイドル女優といっていい。彼女も、役に恵まれなったなあ。
ハラセツを自分の嫁に、と大川平八郎青年。
「まずはあなたの了解を得てから、ぼくの両親に話を持っていきたいんです」
「それは…」
「いけないんですか」
「それじゃあ、まるであたしたち恋愛しているみたいで、恥ずかしいですわ」(大意)
この恋愛嫌いの潔癖さは、なんなのか。
ハラセツ矢口姉妹の父・御橋公は、沢村貞子をのち添えに迎える際、娘矢口が大切にしている母(御橋にとっては亡妻に当たる)の写真を勝手に没収。亡き母を思う娘に同情して沢村が写真を返したと知るや、娘の留守に娘の部屋を、見るからにアサましく探し回る。
この易姓革命めいた旧代否定のおぞましさは、なんなんだろう。
矢口の女学校の音楽教師・杉村春子は授業終了後、矢口ら女生徒たちが、ピアノを弾き、合唱するのを聞いて、「あんないたずらを」と激怒、直ちにやめさせてしまう。音楽の授業が終わって、みんながピアノを取り囲むことは、むしろ好ましいことではないか。この規律の厳格さの異常は、いったい何なのか。
再婚の沢村貞子・御橋公は、初婚のうれしハズかしでもなかろうが、それにしても一度も笑顔を見せない。このぎすぎすっぶりは、明らかに異常に思われる。
この厳格ぎすぎすっぶりはこの映画特有のものなのか。それとも時代の気分エートスといったものなのか。
結局恋愛嫌悪のハラセツは、仲のいい大川(所詮友達以上恋人未満か)をあっさり振って、見合いで大日方伝のもとに。
大川は、酒に酔って、いびきかきつつ、ふて寝するばかり。
ノンシャランとした「隣の八重ちゃん」の島津が、かくも「不機嫌」な人物を描くとは。
上記引用のポスターのハラセツも花嫁姿とは思えないほど、相当怖い(笑)。この集団的厳格さは何なんだ(笑)。
子供のころ識別不能?だった沢村貞子と杉村春子が夢の競演! 共演してみればちゃんと識別できる(笑)。
なお杉村は、音楽教師として的確にピアノを弾いているように見える。むしろ演技的には極めてアグレッシヴ。むしろ、アグレッシヴし過ぎて、怖いほど。音楽なのにこえーよ杉村(笑)。
音大声楽科の大空真弓といい、こういう才能を生かしえない日本映画の不幸。
なおこの音楽の時間に矢口陽子の後ろの席にいるのが御舟京子こと加藤治子と思われる。
原節子を偲ぶ 「10分で辿る原節子全フィルモグラフィー」
シモケンさんの労作。10分で見せるため、どれだけ時間をかけたのだろう。
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by mukashinoeiga | 2018-01-31 19:39 | 旧作外国映画感想文 | Comments(0)