新藤兼人「花嫁さんは世界一」フランキー堺雪村いづみ乙羽信子水野久美曽我廼家明蝶東野英治郎小沢栄太郎

軽快コメディ快作。特に冒頭からの十数分は、早口の科白、素早い場面回しと、この時代らしからぬアップテンポな、川島か増村か喜八か、と絶好調。
e0178641_18495422.jpg 新藤、やればできるコなのね(笑)。こころなしか同時期の裕次郎映画、喜八映画、増村映画、中平康映画より、ハイセンスにカットんでいる気が、する。
 阿佐ヶ谷にて「歳末&新春特選 コメディ天国 It's 笑 Time !」特集。 59年、東京映画、配給東宝。
 基本的には新藤は、メジャー各社から、発注された娯楽映画の脚本を量産しつつ、資金をため、自分の監督作は、少々メンドーな、問題作、意欲作、異色作を撮っている、というイメージだ。
 ところが本作はずぶずぶのプログラムピクチャア娯楽作。いったいどうしたんだ(笑)。ふつー新藤は、こんな娯楽作監督しないやろ。考えられるのは、

1 いつものように娯楽映画脚本として流し書きしたら、あまりに出来が良いので、監督もしたくなった。→いや、そこまで出来は良くないので、これは無理筋。

2 この時期手元不如意だったので、脚本料だけでなく、監督料も欲しかった。→これは判定不能。

3 娯楽映画とはいえ、少々水と油なドキュメンタリータッチの「当時の日本社会の多々ある細部」の描写がいくつかあるので、もちかけられた新人監督、職人監督が皆、しり込みした。
「新藤はん、だーれも手―あげる監督おりませんわ。かといってベテランさんに頼むようなシャシンでもおまへん。ここは、あんた、責任取ってもらわんと、あての立場があらしまへんわ」
「うーん、しゃーない、やりますわ。でも乙羽出してくれますやろ」
「そんなのもちろんオーケーオーケーですわ。とにかく番組に穴開けたら、あての立場はあらしまへんわ。たのんまっせー」
 これが一番ありかなー(笑)。

e0178641_18504153.jpg花嫁さんは世界一 ニュープリント (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1959年(S34)/東京映画/白黒/95分
■監督・脚本:新藤兼人/撮影:遠藤精一/美術:丸茂孝/音楽:広瀬健次郎
■出演:フランキー堺、雪村いづみ、乙羽信子、水野久美、坪内美詠子、藤木悠、藤山寛美、曽我廼家明蝶、東野英治郎、小沢栄太郎、千田是也
カリフォルニアから二世の青年が花嫁探しにやってきた!大阪・広島・名古屋と三人の候補者とお見合いをするのだが、さて運命の相手はみつかるのか──。主演フランキー堺、雪村いづみ。新藤兼人監督には珍しい、軽いコメディ。

 ラヴコメ娯楽映画としては、やや失速していくのだが、その理由であるドキュメンタリータッチの白黒描写が、あまりに素晴らしく、美しすぎる。寺の庭の砂庭園の生成、塩田、なんだかいかにも手作りのイチゴ栽培、このドキュメントな描写があまりに美しくて、これでラヴコメが失速するのは、やむを得ないな、と。
 むしろ意図的に失速させている、とみるべきだろう。
 かといって東海道線車中から見る富士山は、思いっきり書き割りの大胆さ

 旅行ガイドとしてフランキーに同行する雪村いづみが素晴らしい。喜八映画で鍛えた?早いセリフ回しの滑らかさ。そして喜八は短いカットを積み上げて編集していくが、本作では長回しのいくつかで、いづみフランキーの軽快な会話をとらえていく。
 長回しでも軽快、早口は撮れるんだぜ、喜八っつあんよ、というような、どうでぇ感(笑)。これを支えるのは、フランキーでなく、いづみである。
 そのいづみが、各出張先のホテルから、電話で小沢栄太郎社長に、報告を入れる。ははあ、ネタ元は、ハワード・ホークス「ヒズカール・フライデー」フランク・キャプラ「或る夜の出来事」当たりか。真っ当なネタ元だ。
 ただ政治的立ち位置から見ると、新藤は、どう見ても米帝嫌い?だろう。アメリカという虎の威を借る?日系二世のフランキーが、日本の娘さんを品定めっていう設定には、どうなの(笑)。
 第一候補奥村恵津子は、父東野英治郎をはじめとする日本的大家族に反発して、万事都会的なアメリカにあこがれる。しかしフランキーは家族主義者だ。奥村は当然フランキーを振る。この皮肉。
 第二候補水野久美は、父曽我廼家明蝶の没落に、好きでもない金持ちの息子に嫁ぐ、けなげな娘。というか日本的に自分を殺す娘。まれびとのフランキーは彼女を救うすべもない。

 うーん通常東宝ラヴコメと比べると、嫌がらせのように暗いネタだな(笑)。第三候補は、乙羽信子。当時としては確信犯的いかず後家? しかもイケズで半チクなインテリで。なんとなく化け物感あり。この奇妙さは、東宝プロパー監督にはなかなか出せない味か。
 浜田寅彦や天津敏、岩崎加根子や横山道代、どんな小さな役にも贅をこらした、かなりのぜいたくさ。主役陣にはともかく、脇役陣には、「一応東宝配給だけどよー、ギャラは近代映画協会価格で(笑)」というとこ?

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by mukashinoeiga | 2018-01-20 18:53 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2018-01-24 00:23 x
この映画のテイストは、前年の新藤兼人監督「悲しみは女だけに」とこの約半年前に公開の川島の怪作「貸間あり」を足して二で割ったようなところにありますね。
「悲しみは女だけに」の田中絹代は、アメリカの農園からこの世の名残にと、ほぼ全財産を使って広島に一時帰郷した老女で、彼女の持っているカネを目当に親戚たちが欲の皮を張り合うというコメディで、大映風の真面目さのおかげで、ちょっと図式的にすぎるところがあるのが難点。この映画は、「貸間あり」をすこし上品にした映画という注文に忠実たらんとして、肩の力を抜いて作ったら、こうした佳品が生まれたといったあたりでしょうか。
Commented by mukashinoeiga at 2018-01-26 03:47
新藤兼人「花嫁さんは世界一」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
「悲しみは女だけに」は見ていると思いますが、はるか記憶のかなた。

>川島の怪作「貸間あり」を足して二で割った
「貸間あり」と比べるとは、本作をちと貶めすぎでしょう(笑)。  昔の映画

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