鈴木清太郎(清順)「浮草の宿」二谷英明山岡久乃春日八郎木室郁子安部徹小沢昭一高品格深江章喜
らしさとらしくなさの混載。神保町にて「女優は踊る―素敵なダンスのある映画」特集。56年、日活。再見。でも、ほとんど忘れている(笑)。
清順らしいカッとんだショットが、当時の水準的な描写の中に、時折顔を出す。とはいえ、その水準的な描写もまた、鮮烈だとは、ひいき目か(笑)。
冒頭山岡久乃が愛人二谷英明を失って、バーカウンターに酔いどれて突っ伏す。
店の、ではなく、映画の照明が暗転して回想の二谷の顔が漆黒から浮かび上がる。安いデジタルではなく35ミリフィルムのクオリティーで見たかった。
なお、一番笑ったのは…
3. 浮草の宿 (神保町シアターHPより)
S31('56)/日活/白黒/スタンダード/1時間14分
■監督:鈴木清太郎(清順)■脚本:山崎巌■撮影:中尾利太郎■音楽:江口夜詩■美術:佐谷晃能■出演:二谷英明、山岡久乃、春日八郎、木室郁子、安部徹、小沢昭一、高品格、深江章喜
横浜の港町を舞台にした二谷初主演作で、春日八郎の同名ヒット曲に因んだ歌謡映画。踊子達が酒場で所狭しとカンカンを踊るシーンは、異国情緒を漂わせるモダンな演出が光る。山岡の宝塚仕込みの華麗な身のこなしにもご注目あれ!*デジタル上映
…二谷英明がホテルに帰ってくる。ドアの鍵を回すと開いていて電気が点いている。
かつての弟分・小沢昭一が訪ねてきたのか、と二谷は小沢に語り続けるが、小沢の気配は、ない。
従来の映画作法なら、ここで殺し屋が出てくるところだが、その気配は、肩透かし。
ふと窓を見ると、外に山岡久乃が立っている。招き入れる。
次のショットでは、殺し屋の宮崎準が二谷の部屋のドア前に佇む、いったん間合いを外し、廊下突き当りの窓でタバコを吸いつつ、窓外を見る。
見下ろした眼下に、流しの春日八郎がギターつま弾きつつ唄っているさまが俯瞰で捉えられている。
殺し屋の背後の壁には3階の表示。
3階の部屋で、窓外の歩道に立つ山岡久乃を迎え入れることは不可能だから、鈴木清順「暗黒の旅券」(感想駄文済み)で岡田真澄E・H・エリック兄弟二人一役をやったように、二部屋一役?を、やったのか、と(笑)。さすが一見無駄とも思える工夫の清順だ。
このほかで、目についたのは二谷が対立する安部徹の子分たちに拉致されて、はしけ船に連れ込まれ、対岸に上陸し、倉庫街を延々連れまわされる一連のシークエンスを通常の映画的時間軸に沿って処理している。これでは当たり前すぎると、のちに歌舞いて行くのか。
春日八郎がやたら歌いまくるのが、のちの清順流オペレッタの数々に、つながる。
上映が終わりロビーに出ると、清順組助監督と思しい二人が、
「小道具(のアップ)から(キャメラを)引いたり、(キャメラを小道具に)寄ったりするのを一番嫌ってたのに(本作では、やっている)」
と、なかなか興奮していました。要するに清順トライアル&エラーの時代。って清順いつでもそうか(笑)。
本作肝心?の山岡久乃は、恐らくそのキャリア唯一のヒロイン役。神保町ご推奨のダンスシーンはさほど多くなく、いかんせんヒロイン女優としては、顔立ち、演技とも華が全くなく見ていて楽しくない。白木マリや筑波久子当たりの代役かと。
その代わり妙に顔立ちが清順好みの和泉雅子似の第二ヒロイン木室郁子がかわいい。
器械体操やっていたの、と橋の欄干で自在に歩き回る。清順組助監督の座談会で、下に何の保護具も置かずびっくりした、というがほんとに器械体操をやっていて、それを活用したのだろう。清順演出も相まってなかなか愛らしいシーンになった。
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by mukashinoeiga | 2017-04-27 16:21 | 清順の光と影すべって狂ってる | Comments(2)
「雲ながるる果てに」そういえば出ていましたね。しかし「華のある芝居」かどうかは全くの記憶なし(泣)。番茶も出花ということでしょうか。 昔の映画