工藤栄一「やくざGメン 明治暗黒街」松方弘樹千葉真一近衛十四郎月形龍之介久保菜穂子小川知子
クールスタイリッシュな快作。65年、東映。
池袋にて「追悼 松方弘樹 演じた! 作った! 撮った! 映画をこよなく愛した最後のスター」特集。
明治時代の映画なのに、なぜかご機嫌なモタンジャズ(典型的バッタもんの津島利章)が全編に流れ、それはそれで楽しいのだが、なぜに明治に、とは思う(笑)。
「やくざGメン」という、いわゆる角書きがタイトルについているが、実際のフィルム上のタイトルに、それはついていなかったと、思う。いや、実際はついていたのを、見逃したのかもしれませんが、おそらく「明治暗黒街」として完成して、しかし営業的には地味だから「やくざGメン」と、つけたのかもしれぬ。
しっかし「やくざGメン」とは、モダンジャズに続き、明治的ではないぞ(笑)。
さすがいい加減な東映や。だが映画は軽快で。
やくざGメン 明治暗黒街 (レッツエンジョイ東京HPより)
監督:工藤栄一
出演:松方弘樹/月形龍之介/小川知子/千葉真一
製作年:1965 配給:東映
明治三十四年。日本は露国との開戦をひかえ、政府と軍部は奉天に情報機関を設けるべく、資金として莫大な金塊を用意したが、郵送の途中、何者かに奪われてしまった。警視庁では藤川部長を主任に活動を開始したが、捜査は暗礁に乗りあげ、この捜査から警視庁内部にスパイがいて大きな組織が背後にあるらしいと推測されたがその正体は不明であった。ただ郵送車襲撃に暴力団の人間が加わっているらしいことが、わかっただけだった。
「明治侠客伝 三代目襲名」でコンビの村尾昭と鈴木則文がシナリオを執筆、「大殺陣」の工藤栄一が監督したアクションもの。撮影は「蝶々雄二の夫婦善哉」の鈴木重平。
かつて80年代に「野獣刑事」「ヨコハマBJブルース」「逃がれの街」と、一種の工藤栄一再ブームという形になり、盛り上がったが、この3作、スタイリッシュでクールな工藤流ハードボイルドと、当時もてはやされたが、じっさい公開時に見て、ああ、なんだか、盛り過ぎだなあ、と。それなりにいいが、でも大したことないじゃん、とがっかりしたものだ。
それに比べて、本作の快作ぶりよ。
クールもしつこいと、クールじゃなくなるのよ。スタイリッシュも、度が過ぎると、田舎じみて、酢が入る。
東映の義理と人情の仁侠/やくざ映画の、湿っぽさ(もちろん、それも大好きなのだが)とは、完全に隔絶したクールさが、この映画にはある。
東映仁侠映画の名物脇役の天津敏が、本作でもやくざのボスなのだが、本作での天津敏は、体脂肪率を絞りに絞ったというか、限りなく湿度ゼロの悪役を演じ、新鮮だ。
いつもの分厚さとは違う、妙なクールさ。新鮮な天津敏。
渋い月形龍之介を脇役に配したら、その映画は文句なく光り輝く。その典型例。
そして悪の黒幕に近衛十四郎。まあ父子対決を演出したのだろうが、ただ単に父子共演しただけでは、いささかギミックに欠けるのではないか。
近衛十四郎の黒猫の演出はグッド。
久保菜穂子は、天津敏と近衛十四郎の二股の悪女を演じて、絶品…と、言いたいところだが、工藤栄一は、女優の扱いが下手だからなあ(笑)。まあ水準。しかし久保菜穂子は、こういう路線でいいなあ。
小川知子も硬すぎで。まあ、ハードボイルドな工藤には、清純派は、こんな扱いか。
なお「警察内部に裏切り者がいる」という設定で、刑事の一人に菅貫太郎、って、そりゃ卑怯やないかい(笑)。
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by mukashinoeiga | 2017-03-25 01:10 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)