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川頭義郎「あねといもうと」岩下志麻倍賞千恵子

きわめて「面白い」。65年、松竹大船。
e0178641_338218.jpg 阿佐ヶ谷にて「宮崎祐治・著→キネマ旬報誌・刊→より 東京映画地図2」特集。
 川頭義郎といえば、もちろん木下恵介の弟子筋にあたるわけだが、むしろ本作には、小津や成瀬を、感じる。
 なんでかなー、と考える。
 木下恵介といえば、数多くのヒット作をものして、松竹の名を高らしめ、しかし、今現在さほど、評価は、高くない。
 いや、それなりにリスペクトされてはいるが、小津や成瀬ほどではない。
 おセンチすぎる、とかお花畑過ぎる、ということもあるかもしれないが、ずぶずぶのメロドラマ作家でありながら、恋愛系メロドラマに弱い、恋愛系ホームドラマがなっていない、要するに男女間の葛藤メロドラマがほとんどない、という、木下固有の特殊事情のせいか、と思われる。
 男女間の成り行きに、なぜか(笑)関心がいかない、いうのは、メロドラマ作家としては、かなり致命的かと、思われる。
 その木下の弟子の川頭が、本作のような恋愛系ホームドラマを撮る際に、参照するのは木下ではなく、小津や、なかんずく成瀬であるというのも、道理で、本作は、かなり成瀬ティストを感じてしまった。

e0178641_3385540.jpgあねといもうと (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1965年(S40)/松竹大船/カラー/90分
■監督:川頭義郎/原作:佐多稲子/脚本:楠田芳子/撮影:荒野諒一/美術:梅田千代夫/音楽:木下忠司
■出演:岩下志麻、倍賞千恵子、中村晃子、久我美子、早川保、山村聰、轟夕起子、大辻伺郎、北林谷栄
田園調布の父子家庭の物語。長女・岩下志麻、次女・倍賞千恵子、三女・中村晃子という適齢期の三人と、娘たちの結婚問題に揺れる父。ここに亡き長男の嫁も加わって、それぞれの姉妹の新たな出発が描かれる。


 感想駄文済みの成瀬「おかあさん」が、ありえないくらいのエピソードてんこ盛りのジェットコースタームーヴィーであった。本作の、サクサク進む展開の速さに、それを感じる。そういう意味で、この映画の「流れる」速度は、成瀬並みで、くいくい展開していく快感がある。
 メロドラマでありながら、師匠の木下の、粘着性から、脱しているような。女々しいねばねば感がない、爽快さがある。
 まあ、木下的女々しいねばねばさも、好きなのではあるけれど(笑)。成瀬的、小津的な、さっぱり系?メロも、好きなんだよなあ。

 田園調布に住まう、中の上クラスの「部長さん」山村總、その娘たち、長女・岩下、次女・倍賞、三女・中村。
 父親の思惑、この家を維持していくに足る、それなりの収入の男に娘を嫁がせたい、と思うのに、倍賞は同僚の安サラリーマン早川保に惚れて、岩下も安月給の小学校教師・大辻司郎(ロンパリ気味の、老成したいかつい顔ながら、誠実な青年を好演)に思いを寄せ、思うようにならない。
 これに「事故で亡くなった長男の嫁」(きわめて成瀬的な設定)久我美子が加わると、義父・山村總の久我への親切が、山村が長男の嫁・ハラセツに懸想していた成瀬「山の音」も想起され、なにやら妖しい。
 まあ、健全な松竹メロだから、その懸念は、全く杞憂なのだが。しかし精力的な「四十八歳の抵抗」親父・山村總なので、全く油断ならない(笑)。
 三女・中村晃子のみ、恋愛エピソードがないのは、この手の四姉妹物としては瑕瑾だが、そのエピソードも入れると、とても90分には、収まらない。
 しかも彼女には、亡兄の未亡人・久我を、なにげに、ねちねちいびる小姑的役割があるので、存在感はオーケー。

 この時代の、松竹メロは、つまらない作品が数多くうんざりすることしばしばなのだが、チョット小津、割りと成瀬を意識した本作は、なかなかに合格点。
 と、相変わらずの上から目線で、どーもすいません。三平です。

 ちなみに、上記引用の、きわめて微温的ポスターも、味わい深い。
 もっともキャリアが長い久我美子が和装で座布団付き正座。もっとも正統的。
 倍賞千恵子は、横座りで、崩している。
 中村晃子は、倍賞の陰に隠れて見えないが、アグラまで行かないにしても、足を伸ばして崩している。
 岩下志麻のみ、立っていて、他の三姉妹と比べ、ヒロイン性を示す。
 でも本当は、まだ姐さんキャラ以前なので、本作では、他の女優さんに比べて、存在感は、ないんだけれども。
 凡庸なポスターながら、味わいは深い(笑)。 

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by mukashinoeiga | 2016-11-25 03:39 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(4)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2016-11-27 01:09 x
このあと、川頭監督は劇場用映画を2本しか撮っていません。理由は、TVの木下惠介アワーのメイン監督のひとりとして良質なホームドラマを量産したことと、40代半ばで周囲から惜しまれつつ病没してしまったことで、もしもうすこし長生きして劇場用映画を従前のペースで撮っていたら、中村登監督と並び称せられるような「作家性」を謳われていたはずです。
この映画が成瀬や調子の良いときの久松静児を思わせる見心地のよい傑作であることは、いくら強調しても強調しすぎることはないと思いますが、しかし、「東京映画地図」という特集に入れるのはちと強引。冒頭の中村晃子が久我美子のアパートを訪ねて行くシーンは相模鉄道の横浜のとなりの平沼橋駅付近の風景だし、田園調布の風景などというのなら、裕次郎主演の「陽のあたる坂道」や「風速40メートル」を「60年近く前の田園調布の風景が見られる映画」とするようなコジツケに近いというものでしょう。早川保の家だって、ヘンテツのない住宅地という以上の印象はないですしね。(まぁ、思いがけず秀作にめぐり遭えたからよしとすべきか……)
それから、大辻司郎は、当時は「伺郎」です。航空機の事故で亡くなった父親の名前を襲名するが、まだ父親ほどは偉くないという理由で名前の司ににんべんをつけて「分を守ろうとしていた」のがこの頃。その後、にんべんを取って改名したあたりからいろいろな不運に見舞われ、借金苦とノイローゼがもとで自殺しています。役を自分のものにしようとしてべらぼうに資料を買い込んで、ギャラでは足を出してしまうのが常であった由。
Commented by mukashinoeiga at 2016-11-28 01:46
川頭義郎「あねといもうと」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
>しかし、「東京映画地図」という特集に入れるのはちと強引。

ではありますが、特集の規格外、数合わせとはいえ、こういう拾い物があるから、楽しい。三姉妹、四姉妹モノ特集には、ぴったりですね。

>役を自分のものにしようとしてべらぼうに資料を買い込んで、ギャラでは足を出してしまうのが常であった由。

 名前間違えましたが、うーん、いかにも偏執狂めいた顔立ちの大辻にふさわしい(笑)。それほど資料が必要でない、タイプキャストばかりという印象の彼の、何かしらの執着ですかね。
 しかし本作の小学校教師へのキャスティング、なかなかナイス。
 毎年毎年いろいろな俳優の賞がありますが、「意外な配役だけど、結果はぴったりなキャスティング」賞が、あっても、よろしいか、と。 昔の映画
Commented by サセレシア at 2016-12-13 14:16 x
大辻さんの印象はトホホドラマ(?)の金字塔ハレンチ学園の「ヒゲゴジラ」ですかね。

この作品と以前同じ場所で観た「四つの恋の物語」って似たようなテーマだったりするんですが、原作の色合いからかトーンが好対照で面白かったですね。

同じ'65年の作品ですが日活の「四つの恋〜」は松竹から笠智衆を、松竹の「あねといもうと」は日活から轟夕起子をそれぞれ出向させているのも興味深いところです。
私的には今回の取り組みはホームドラマの横綱・松竹を
日活チームが原作者の源氏鶏太のユーモアを出演者が巧く演じていた分フットワークが軽く楽しかったかな…と。
どちらの作品も長女は(この時点では)甲乙つけがたいですな。
Commented by mukashinoeiga at 2016-12-14 03:09
川頭義郎「あねといもうと」へのコメント、サセレシアさん、ども。

>「四つの恋の物語」

 ま、四姉妹モノホームドラマは、基本構造が同じですからね。あちらもこちらも楽しかったですね。
 轟夕起子は、戦前の美少女のころは、個性がない美少女でしたが、おばさんになって味が出ました。最高のおばさん女優ですな。結構若死にのようで、おばあさん役は、見たことがない。
 永遠のおばさん女優でしょう。 昔の映画

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