堀池清「その人は遠く」Wいずみ芦川いづみ&和泉雅子山内賢小夜福子信欣三下元勉井上昭文
神保町にて。「恋する女優 芦川いづみ アンコール&リクエスト」特集。63年、日活、デジタル上映。
あああああ(笑)。確かに、芦川いづみ&和泉雅子のダブルいずみは、超かわいい。なのに、何なの、この…(笑)。
基本線としては、きわめてまぢめな純愛青春映画(いや、一応は)なのだが…。なのに、本来の製作意図とは違った、感慨がありまして…ほぼ全編にわたって…微苦笑する映画とは、相成った。
うーん。
11. その人は遠く (神保町シアターHPより)
S38('63)/日活/白黒/シネスコ/1時間23分
■監督:堀池清■原作:藤原審爾『遠い人』■脚本:金子担、青山民雄■撮影:姫田真佐久■音楽:西山登■美術:中村公彦■出演:山内賢、芦川いづみ、和泉雅子、小夜福子、信欣三、下元勉、井上昭文、杉山元、小園蓉子
受験生の量介(山内)の家に、嫁入りを控えた従姉・奈津子(芦川)が同居することになり…。恋に目覚めた少年の成長と葛藤を描いた文芸もの。女ざかりを迎え、上品な色香を湛えた芦川に、誰しも心奪われる珠玉の一本。*デジタル上映
まず、二段階ある(笑)。
先に書いたように、「基本線としては、きわめてまぢめな純愛青春映画」なのだが、(いや、一応は)という、エクスキューズが、つく。
どういうことか。
一浪中の山内賢の家が、父逝去に伴い独り身になった、遠い親戚の芦川いづみを、引き取ることになるが、その年上の女の魅力にメロメロになる、という。まあ、家にいきなり、芦川いづみが下宿したら、だれだってメロメロだろう(笑)。
当時ヨーロッパ映画で流行った、童貞少年が年上のセクシーお姉さんの色香に悶々する、青春映画ならぬ性春映画、その日活版なのだ。
芦川いづみが、山内賢に、彼女自身としては、何気に、身を寄せる、肩に手をやる、腕を組む、そのスキンシップのいちいちが、少年の悶々心に、悩ましい。
ここで、まず、「基本線としては、きわめてまぢめな純愛青春映画」が、揺らぐことに、なるのだが(笑)。
さらに(笑)。
山内賢が、いづみにキスを迫る。
いづみの婚約者・井上昭文が、いづみを抱き寄せ、求める。
和泉雅子の母・東恵美子が、夫の入院をいいことに、間男。
その間男が、和泉雅子の就寝中に襲い掛かる。
和泉雅子も、芦川いづみも、山内賢に、ふれなば落ちん風情満々で。
いずれも、未遂に終わったり、まだまだ穏便な描写なのだが、そのてんこ盛りの性春っぷりに、もう全編で小笑いしっぱなしで(笑)。
撮影が姫田真佐久だからというわけじゃないが(笑)日活は、この十年後、日活青春純愛路線から、いきなり日活ロマンポルノに、180度の大転換。
63年の本作では、全部未遂だったものを、十年後、全部既遂にしちゃうんである(笑)。
例えば、芦川いづみの役は山科ゆり、山内賢の役は風間杜夫、和泉雅子の役は(時期は違うかもしれないが、いづみつながりで)泉じゅん、東恵美子の役は宮下順子、山内賢の母・小夜福子だって、絵沢萌子か(笑)。
日活の十年後を、想像して、芦川いづみに対しては極めて不謹慎ながら、もう、小笑いの連続なのでありました。
本作こそ、日活純愛路線と、日活ロマンポルノをつなぐ、ミッシングリンクでは、ないか、と(笑)。
芦川いづみが、山内賢に、膝を崩しながら、じりじりにじり寄り、抱き着きキスをして身を寄せるショットが、フィックスなのが、もうすでに違和感。なぜキャメラを揺らさないのだ姫田真佐久(笑)という。
ラストに、ご清潔なイタリア民謡なんて流さずに、ここは高橋明「なかなかなんけーなかなんけー」だろうという、妄想っぷり。
余談1 芦川いづみの美形っぷりも絶品だが、本作の、いささかむくんだ顔の和泉雅子の、生っぽい美少女っぷりも美形で。
余談2 いづみと賢がデートする、デパート?の屋上の、回転施設は初めて見ました。たぶん川本三郎さん当たりが書いてそうだが、シンプルに屋上で緩やかに回転するだけのもの、昔は回転系が好きだったんだなあ、と。回転眺望レストランとか回転ベッドとか(笑)。
今は、回転系は、回転寿司くらい?
余談3 ラスト、旅立つ芦川いづみは、九州行き列車の、ドアなしドアに立つ。
旅情強調の、ドアなしドアは、いつごろまであったのだろうか。ちあきなおみ「喝采」の♪あれは三年前 止めるアナタ駅に残し 動き始めた汽車に 一人飛び乗った~ は、いつまで通用したのだろうか。
たしかに、今の感覚では危険極まりない、サスペンス映画では、揉み合う格闘の果て、ひとりが突き落とされる、というのは、よくある描写だし。
しかし、動き始めた列車に飛び乗る、それだけできわめて秀逸な別れのシーンを作り出してきたのは、事実なのだ。
余談4 芦川の夫の教え子役として、藤竜也がクレジット。主演女優と、一シークエンスの脇役と、圧倒的な格差。とはいうものの、劣悪なヴィデオ画像(の、せいにしてしまおう)ぼくの動体視力では、確認できず(泣)。
★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。
下記コメント欄の芦川いづみ支持者さんのコメントにより、追加しました。
藤圭子♥出世街道
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by mukashinoeiga | 2016-07-29 03:50 | 芦川いづみ:青春快談いづみ晴れるか | Comments(6)
そんな中、インタビューされていた何人かの内の一人であった和田浩二さんだけは「ロマンポルノでも何でもこうして日活が存在し続けている事がうれしい」という様なことを仰っていたのが印象に残って居ります。
亡くなられたのはそれから間もなくだったんですが、
和田浩二さん器が大きかったなぁ….。
うわっ。日活青春清純路線と、ロマンポルノ勢の、同居パーティーですか。それは、キッツいなあ(笑)。というか、無茶やろ(笑)。
日活は誠に不思議な会社で、労働組合主体の会社ですから、とにかく生き延びることが至上命令。
永田ラッパは、資本の論理で、平気で会社をつぶしましたが、しかし、まあ、こちらも生き延びて。
日活は、日本最古の映画会社として、いまだ映画を作っているんですから、立派なものです。
和田さん確かに立派。 昔の映画
ポルノに転じる前数年間の日活は、「日活ニューアクション」以外は惰性で作っているとしか思えない作品の宝庫で、トリュフォーばりの作品を撮れる実力のある江崎実生に多数の愚作を撮らせたのは、江守清樹郎や鈴木清順を追い出した体質のしからしめるところでしょう。
一方、いまみると、田宮二郎を追い出して雷蔵に死なれたあとの大映の映画もカツシン出演作か、増村作品以外は珍品、駄作のオンパレードという感じですね。その後の復活には、けっこう共産党系の勢力が入り込み、山本薩夫の助監督を長くつとめ、岸旗江の御主人でもあった武田敦が、組合推薦の重役に就任しています。
鈴木清順あたりなら、という「妄想」は、かなり楽しいですね。日本家屋の、障子一枚隔てての、天国と地獄といいますか、ふすま一枚隔てての男女のキビ、というのを撮らせたら、日本一、いや世界一の演出家ですからね。言われてみれば、いやあ見たかった(笑)。
考えてみれば、ダイニチ共配なんて、今の民共野合みたいに、ひどいもんでした(笑)。まあ民共よりは、相対的にましか(笑)。 昔の映画
>脇役で1シーンでちらりの藤竜也すぐわかりました。
おお、さすが。藤圭子の出世街道は、これを機にアップしました。しかしあの母娘は、なぜ歌手として共演しなかったんでしょうね。のちに自殺する母のせいなのか、娘の営業戦略のせいなのか。つくづくもったいない。 昔の映画