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滝沢英輔「無法一代」芦川いづみ三橋達也新珠三千代清水将夫殿山泰司沢村國太郎利根はる恵宇野重吉

 神保町にて。「恋する女優 芦川いづみ アンコール」特集。60年(実は57年とのこと。コメント欄参照)、日活。
 正式タイトルは「廓」より 無法一代。「廓」は、原作小説タイトルだが、西口克己とは西河克己と酷似な名前だが、無関係なのか。
 うらぶれたカップル、三橋達也と新珠三千代が、くるわの町に流れてくる、という設定は、明らかに川島雄三「洲崎パラダイス 赤信号」(56年、日活)の、二番煎じか。三橋、新珠、いづみが、かぶっている。
 意外といっては失礼か、なかなか見せている。

滝沢英輔「無法一代」芦川いづみ三橋達也新珠三千代清水将夫殿山泰司沢村國太郎利根はる恵宇野重吉_e0178641_2273682.jpg13. 無法一代 <神保町シアターHPより>
S35('60)/日活/白黒/スタンダード/1時間42分
■監督:滝沢英輔■原作:西口克己『廓』■脚本:横山実■撮影:山崎善弘■音楽:佐藤勝■美術:松山崇■出演:三橋達也、新珠三千代、芦川いづみ、清水将夫、殿山泰司、沢村國太郎、利根はる恵、宇野重吉
『洲崎パラダイス 赤信号』の名コンビ、三橋と新珠が主演した色街もの。明治時代、京都・伏見中書島に流れ着いた男女(三橋・新珠)は、廓で小店を開き、やがて金の亡者となっていく…。悲劇的な遊女を演じる芦川の哀しみに満ちた表情が胸を打つ。*デジタル上映


滝沢英輔「無法一代」芦川いづみ三橋達也新珠三千代清水将夫殿山泰司沢村國太郎利根はる恵宇野重吉_e0178641_2241335.jpg うら悲しく、ただただ、流されていく「すざパラ」カップルと違い、本作の三橋新珠夫婦は、喰われるくらいなら、こっちが喰ってやろう、と貧しい女たちを女郎にして、くるわの主になっていく、向上心旺盛?カップル。
 その彼らに、喰われるのが、芦川いづみ。
 初見世で処女をむりやり奪われ、しかし馴れてくると、自ら客にしなだれかかる。やり切れんなあ、そういう役を、いづみが。
 同時に石原裕次郎相手のラヴコメで清純な乙女を演じつつ、こういうアダルトな役を、並行して演じるのだから、今のアイドル女優なら、まずは、考えられない。
 もっとも当時は、きわいセックスシーンは、まずは描写できないので、そういうキワキワのショットは最初からないものなので、どんなキワキワな役であっても、アイドル女優は、平然と演じることが出来るシステム。
 それは、いいんだか、悪いんだか。
 現代なら、娼婦の役は、たとえおざなりだろうと、そういうシーンも演じなければ、観客から、突っ込まれる。
 だからアイドル女優が、そういう役を演じることは、絶対に、ない。
 昔なら、そういうシーンは、はなからダメなので、芦川いづみなどのような清純派アイドル女優が、そういう娼婦・売笑婦役を演じることが、可能だ。
 どっちが、いいんだ。まあ、どっちも、ダメか。
滝沢英輔「無法一代」芦川いづみ三橋達也新珠三千代清水将夫殿山泰司沢村國太郎利根はる恵宇野重吉_e0178641_225293.jpg ぼくの隣に座った老齢カップル。70代と思しい。上映前、手塚家一族の話をさんざんしていたが(どこの手塚家だ)上映が始まり暗くなる前に、男が女の手を握ろうと、求めてくるが、女は、拒否。いや、注視していたわけではないが、すぐ隣だから自然と目に入るのよ(笑)。こいつ、若いときから、映画館が暗くなると、必ず彼女の手を握ってたんだろうなあ。ただし、今回、まだ明るいうちの手の動き、自然と眼に入っちゃいましたぜ(笑)。
 これは、夫婦モノではないな、とピンと来るのだが、この男のほうが上映中、ああアラタマだ、とか、ああ三橋達也、いい男だなあ、と「彼女」につぶやくのが、まる聞こえ。実際つぶやいた瞬間の三橋は、実に美男子。
 貧しい娼婦の芦川、病気で床に伏している際、「ああ、この着物、きれい過ぎる」。
 実際、貧しい娼婦が、こんな高価な華美な着物着ているのは、やはり、おかしい。
 言われなければ、特に意識にのぼらなんだ。
 老人のつぶやきは、名画座でも、宝だ。DVDでの副音声オーディオコメンタリーみたいなもんだ(笑)。
 そう、アイドル女優に、娼婦の役を押し付けるのも映画会社なら、その役に似つかわしくない華美な衣装をあてがうのも、また、同じ映画会社なのだ。
 まあ、映画会社も、女衒の一種か。
 現代の映画だけ作っていれば、そう予算もかからないのに、人は、なぜ、時代劇を作るか(本作の明治期も立派な時代劇)。いや、当時としては、華美な現代モノの映画より、簡素な時代劇のほうが、安上がりだったのか。どうなんだろう。
 映画全体としては、ほどほどのコクだが、まあスーパーではない。
 ただし、女郎・利根はる恵を足抜きさせる宍戸錠、その朝もやの川の小船など、絶品の映像。
 豊頬手術前の宍戸錠が、そこそこ二枚目で、悪い奴。

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by mukashinoeiga | 2016-03-02 02:29 | 芦川いづみ:青春快談いづみ晴れるか | Comments(2)

Commented by お邪魔ビンラディン at 2016-03-04 01:02 x
この映画の制作は昭和32年(‘57)で、神保町シアターの「上映作品リスト」にもそのようになっていますが、解説本文の方では「S35年(’60)」に間違えていますね。
ラストに、申し訳のように赤線を否定する旨の説明が流れたりするのも、売春禁止法施行直前の話題性を反映しているわけで、また、三橋達也も新珠三千代も、この映画の直後ぐらいに日活から他社に移籍しています。
それから、時代劇が作られる理由は、リアリティのない設定のなかで人物を動かして行けるからで、それは、SFが作られるのと同じ理由ですね。もっとも、時代劇の方がSFより予算が少なくても見応えのあるものを作ることができる。戦後に日活が再出発して、裕次郎の爆発的な人気からアクション映画中心になるまでの数年間は、そこそこに時代劇も作っていました。それあればこそ、その後の高橋英樹主演のヤクザものやTVの時代劇や、ロマンポルノのなかの名作時代劇などにつながって行くわけで。
Commented by mukashinoeiga at 2016-03-04 01:24
滝沢英輔「無法一代」芦川いづみへのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 おお、そうでしたか。
 時代劇のオープンセットの、看板架け替えや、ガラス戸導入で、江戸時代のオープンセットが、簡単に、明治大正昭和のセットに変わる、というのは、よく聞きます。  昔の映画
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