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三隅研次「巨人 大隈重信」再見

 京橋にて。「映画監督 三隅研次」特集。63年、大映東京。
 一年前に神保町で見た際に、感想駄文★三隅研次「巨人 大隈重信」★を書き、さらに★隠れた傑作「巨人 大隈重信」に、しびれよ!★で、アジったが、今回再見して、もっと書きたくなったので、この「最高」作を「再考」します(笑)。
<以下、ネタバレあり>
1/31(日)に、もう一度上映があるので、未見の人は読んじゃだめよ(笑)。
三隅研次「巨人 大隈重信」再見_e0178641_443158.png 巨人 大隈重信(103分・35mm・白黒) <フィルムセンターHPより>
1963(大映東京)(監)三隅研次(脚)八尋不二(撮)小林節雄(美)間野重雄(音)斉藤一郎(出)宇津井健、坪内ミキ子、三條江梨子、藤巻潤、船越英二、内藤武敏、小池朝雄、神山繁、北原義郎、千波丈太郎、岡田真澄、本郷功次郎、髙松英郎、根上淳、石黒達也
大隈重信生誕125周年記念作品。明治元年から明治35年(東京専門学校20周年、早稲田大学開校)までが語られる。大隈役は早大出身の宇津井健。会話演出主体だが、二度の大隈暗殺未遂シーンでは印象的なアクション演出が見られる。剣をふるって大隈を助ける畑剛造役は石黒達也。

 なお、本作が、いかに隠れた傑作かというと、ウィキペディアの大隅の項の、

関連作品[編集]映画
日本暗殺秘録(1969年、日本、役者:矢那木邦二郎)
商魂一代 天下の暴れん坊(1970年、日本、役者:芥川比呂志)

に、一目瞭然。どう見ても一番重要、かつタイトルロール、かつ傑作が、ガン無視状態(笑)。

 本作は、史実に基本的にはモトづきつつ、しかし、その細部は、当然ながら、かなりフィクションと想像される。

大隈の下には伊藤博文や井上馨といった若手官僚が集まり、木戸孝允とも結んで近代国家の早期建設を謳って大久保利通らを牽制した。当時、伊藤や井上らが集って政治談義にふけった大隈の私邸をさして「築地梁山泊」と称した。(以上、ウィキペディアより)

 仲の良かった伊藤、井上らと、国会開設などの夢を語っているうちは、よかったが、だんだん政治の本丸に取り込まれるに連れ、かつての同志にも裏切られ、下野したり、しかし井上の後任で外相になったり、早稲田開校式では、伊藤の祝辞を受けたり、昨日の友は今日の敵、昨日の敵は今日の友を繰り返す、政界アラベスク。
 それを、快活に恬然と受け入れる、ウツケン大隅の、好ましさ。
 実際は、ドロドロの政治的魔界を、これは宇津井健主演だからと、明朗に乗り切る三隅の手腕。
 これが、大映京都、仮にサゲチン(失礼&笑)雷蔵が、大隅を演じたら、どれほどダークかつニヒルな「政界裏話」になったかと思うと(笑)。三隅なら、やりかねんよ(笑)。
 雷蔵が大隈なら、その夫人は中村玉緒、母は目黒幸子(ないし浦部粂子、陰険版沢村貞子)、伊藤井上は、見明凡太郎、伊達三郎か。陰謀渦巻く、うーん、ダークや。

 ことに井上馨なんて、無類の女漁り、貪官汚吏的イメージがあるが、好漢・藤巻潤が演じることで、さわやかさ200パーアップ。
 複雑怪奇、権力権勢のドロドロ血液が、さらさらに、これぞウツケン効果か。
 さらさらも、ドロドロも、思いのままの三隅。スパシーボ。

 本作には、明治政界のさまざまな有名人が登場するが、ある時期以降の大作日本映画に必ず採用される字幕による人物紹介が、一切ない。
 しかも、大隈以外の有名政治家なども、一切苗字のみが、語られる。伊藤、井上、山県、西郷。
「伊藤さん、西郷さんが、お見えになりました」と、案内。普通西郷といえば、あの兄のほうかと思いきや、実は弟・西郷従道だったりする。
 ウツケン大隈とにこやかに談笑する船越英二。まだ、名乗らないので、誰の役かは、わからない。そこへ若者たちが来て、「先生、先生」という。しばらくして、「福沢先生」と、わかる。
 これが、現代の映画なら、説明過剰なまでに、
 「慶応義塾塾長 福沢諭吉」と字幕が出て、
学生たちも「先生、先生」とは言わずに、「福沢先生」「福沢先生」と、言うに違いない。
 岡田真澄演じるアーネスト・サトウも、アーネスト・サトウというフルネームでこそ、カレの存在感を示せると思うのに、ただのサトウだけ(笑)。

 この、こつこつとした、下の名前などの省略が、大映ならではの、三隅ならではの、ランニングタイムの短縮に繋がっているのだと、思う。
 そして、大山健二だ(笑)。Movie Walkerの、本作項目では、医官、としてクレジット。
 しかし、一回目の神保町では、見逃した。あの、目立つ、おなじみの顔なのに。
 今回はじめてご覧になったお邪魔ビンラディンさんも、見逃したようだが、2回目のぼくは、さすがに、目視しました(笑)。
 医官というからには、あそこのシーン、つまり、爆弾を投げられて臥せっている大隈を取り囲む大勢の人のなかにいるに、違いない、と当たりをつけて、そのシーンで、話の筋は無視して、人々の顔をねめ回していたら(笑)、いました。画面中央、やや右寄りの白衣の大山健二が。
 戦前松竹では、三枚目スタアとして、大活躍、戦後大映では、出番は毎度少ないながら、きわめて印象的な脇役の大山健二が、たった十秒弱、ワン・オブ・ゼムとして、ぼんやり顔を見せるだけ、とは、考えにくい。
 おそらく、セリフも二言、三言は、あったに、違いない。じゃなきゃ、単なるエキストラで十分、大山健二を呼ぶまでもない。
 おそらく脚本では、大山の出番は、あった。撮影も、実際に、された。
 しかし、全部、カット。なぜ。もちろん、ランニングタイムをカットしなければならない、大映なり三隅の事情。映画のシマリを、ヨクするために。

 ここで、面白いインタヴューが、ある。大映の編集者の証言が、三隅好きには、たまらない。
★コラム『日本映画の玉(ギョク)』谷口登司夫が語る三隅研次 Text by 木全公彦★
 三隅は、谷口の編集が、長過ぎる、キレキレ、と絶えず言っていたらしい。
 たとえば、谷口は、三隅の「座頭市」で、街道を画面奥までエンエン歩いていくカツシンの後姿を、長く長く残す編集をすると、三隅は、長い、切れ、という。
 この後姿のカツシンがいいのに、と渋る谷口に、なおも切れ、という。だったら、こんなに長く撮影してくるなよ、と、心の中で、少し切れた谷口。
 ああ、70、80分で終わる三隅映画の「完全版」が、見たい(笑)。

 さて、下野していた大隈に、かつて山県有朋(高松英郎)とともに、大隈を蹴落とした黒田清隆(小池朝雄)が、訪ねて来て、頭を下げる。 「いろいろ対立はあったが、おいどんの内閣の外務大臣になって、不平等条約を改正してくれ」と。 (実際は、伊藤内閣の外務大臣を、続く黒田内閣でも引き継いだらしい)
 当時、「不平等条約」を改正できない内閣に対し、国民の不満は、大変なものだった一方、それに比例して、政府批判の言論人・大隈の人気は大変なものであった。
 ところが、大隈が、条約のほとんどの改正に成功するも、国内で外国人犯罪者を裁くために、裁判官判事に、外国人を登用する、としたために、可愛さあまって憎さ百倍の、売国奴呼ばわり(笑)。
 大隈の反論は、
1 世界中のすべての国の対外条約で、百パーセント満足なものは、ありえない。何らかの妥協が必要。
2 多少の妥協によって、不平等条約が、全体として改正出来るなら、それを良しとせねばならない。
3 しかも外国人が日本で裁判官になれるのは、まず彼が日本国籍を取得してのちのことで、それなら彼は立派な日本人だ。(当時お雇い外国人は多数いても、わざわざ日本国籍を取得する心理的ハードルはかなり高い)

 こう、大隅は、国民からの売国奴呼ばわりに、反論するのであるが、この光景は、つい最近も、見られるもので、この映画、なかなか、古びていないなあ、と(笑)。

【反日韓国】日韓合意絶対反対、明日、官邸前緊急抗議活動へ起て![桜H27/12/28]

慰安婦問題での日韓合意を糾弾する国民大行進2016/1/10デモ前

【2016/1/10】慰安婦問題での日韓合意を糾弾する国民大行進2


★映画監督 三隅研次 | 東京国立近代美術館フィルムセンター★
 クリックすると、Not Foundと表示されますが、その上の黒いメニューバーをクリックすれば、大丈夫。

 なお、どうでもいいことだが、上記貪官汚吏が、自動変換されないのでネット検索したら、正式には「たんかんおり」という読みで、ぼくの知っている「どんかんおり」は俗読みらしい。しかしタンカンでは、なんだか、淡々としたいい人みたいで、ドンカンの貪欲そうで、薄汚そうで、そう、貪じたいは、タンともドンとも読む、らしいが、語感から、ドンに変化した、ようだ。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2016-01-18 11:02 | 三隅剣児女なみだ川と大魔剣 | Comments(9)

Commented by お邪魔ビンラディン at 2016-01-19 00:11 x
配役の上でもうひとつ別の展開を考えてみると、こんなのもあり得るかもしれません。
大隈重信:カツシン  大隈夫人:藤村志保  大隈の母:村瀬幸子
伊藤博文:天知茂  井上馨:船越英二  井上夫人:叶順子 
黒田清隆:田崎潤  山県有朋:根上淳  小野梓:石黒達也
福沢諭吉: 市川雷蔵(特別出演)  渋沢栄一:小林勝彦
アーネスト・サトウは、E・Hエリックあたりかな?

宇津井健は、やはりTVのお茶の間のヒーローが一番似合う役者で、この映画の場合は、「間違って最善のパフォーマンスになってしまった」数少ない一本ですね。「本編の芝居」のベストスリーの他の二本は、やっぱり、中川信夫の「思春の泉」と「雷電」あたりになるのかな? 「正義の味方」の主役を演じるときは、どうしても一本調子になってしまうし、脇役で好演技を示す場合は、「代表作」と称するには出演時間が短かすぎるし、といったアンバイなので。
Commented by mukashinoeiga at 2016-01-20 03:26
三隅研次「巨人 大隈重信」再見へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 うーん、カツシンに、インテリは、似合わないのでわ(笑)。初期の、暴力的な寅さんの時期に、寅さんの腹違いのアニキにカツシンは、どうだろうと、夢想したものでして(笑)。
 ふたり揃って「おめえ、さしずめインテリだな」って(笑)。
やはり、三隅映画ですから、市川雷蔵(特別出演)は、今回の石黒達也の役で、希望します(笑)。 昔の映画
Commented by なご壱 at 2016-02-06 07:41 x
大隈の妻役に早稲田演劇博物館になじみの坪内逍遥の孫の坪内ミキ子を配したのも早稲田を意識したのでしょうか。
Commented by mukashinoeiga at 2016-02-06 23:42
三隅研次「巨人 大隈重信」再見へのコメント、なご壱さん、ども。
 調べてみると、坪内逍遥は、早稲田大学の前身である東京専門学校の講師となり、のちに早大教授とのこと。
 彼女の父・士行は坪内逍遙の兄の子で、一時、逍遙の養子だったが、1919年に養子縁組を解消した、とのこと。彼女自身も、
1963年に早稲田大学文学部英文科を卒業。市川雷蔵主演の大映映画「陽気な殿様」でデビュー。大学卒業の女優であることから、「学士女優」と呼ばれて、時代劇女優として人気を集める。大映の看板女優としての活躍を経て現在はテレビドラマやクイズ番組、情報バラエティ番組の他、コメンテーター、執筆など幅広く活動。温かい人柄で人気を集める。(以上、ウィキペディアより)

 ということで、これは、明らかに「縁故採用」的キャスティングですな。
 しかし、映画女優としては、あるいはTVタレントとしては、ぼくもほとんど見ておらず、うーん、な女優さんで(笑)。よく、わかりません(笑)。  昔の映画
Commented by Generic cialis at 2018-04-18 18:40 x

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Commented at 2022-02-27 12:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 大隈重信 at 2022-02-27 12:16 x
染井明希子
Commented by 西村六郎 at 2022-02-27 12:17 x
大隈重信
Commented by mukashinoeiga at 2022-02-27 20:00
奈良放送一体何なんだ  昔の映画
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