人気ブログランキング | 話題のタグを見る

市川準「BU・SU」富田靖子高嶋政宏丘みつ子大楠道代

 目黒にて。「-犬童一心監督企画-目黒シネマ名作チョイスVol.13 市川準監督特集2015 市川準と女優たち」特集。87年、東宝=日本テレビ、配給・東宝東和。

市川準監督特集2015 『市川準と女優たち』 予告編

 目黒シネマは、母体が大蔵映画ということで、こういう映像素材はお手の物か。デジタル時代ならでは、の、名画座でも、予告編が、出来る。面白い。

 この数十年間、何度も何度も何度も、見逃し続け、ようやく見ることがかないました(笑)。
 しかし特に期待が膨らんだわけではなくて、常に平常心?の市川準映画ですから、例によって淡々とした映画を予想していたら、その若書きぶりにびっくり(笑)。
 もちろん雲が浮かぶ青空とか、風に揺れる木々いった、一貫して彼の映画に散見されるエンプティ・ショットはあるものの、スローモーションで男子にビンタする富田靖子とか、こちらに向かって歩いてくる彼女のコマ抜きとか、多彩な群像ショットの学生映画振りとか(富田靖子が遭遇する若い男二人が、無音の銃撃戦、たぶん映画の撮影なのだろう、とか、公衆電話ボックスで、女をいたぶる男とか)、まあ、恥ずかしいくらい、学生アマチュア映画のノリで。
 老成した印象の市川だが、やはりデヴュー作、アマアマのアマチュアっぽさ。ほほえましい?
 先輩芸者を乗せた人力車を、罰ゲーム的に追いかけさせられ、全力疾走する富田靖子、そういうアクション描写も、後年には、ないものだ。
 のちに、まったく削いでいくような若書きが、たっぷり。たぶん、デヴュー作ということで、いろいろはしゃいではみたが、これは、オレの映画としては、恥ずかしい、と、おもったんだろーなー。
 面白い。
 チャカチャカとした部分と、淡々さり気ない映画の、ハイブリット。というか、まあ、若書きゆえの失敗作か。

市川準「BU・SU」富田靖子高嶋政宏丘みつ子大楠道代_e0178641_113186.jpgBU・SU どつぼにはまらない青春なんて、なんの価値もないのだ。 <目黒シネマHPより>
【物語】監督デビュー作にして青春映画の傑作。性格ブスな少女が上京し、さまざまな出会いや経験を通して少しずつ心を開いていく姿を描く。「花の街」の音楽にのせ八百屋お七を無心に踊る姿は永遠の語り草。
【出演】 富田靖子、高嶋政宏、丘みつ子、大楠道代【1987年/95分/35mmフィルム】
★ 文化庁優秀映画作品賞 ★ キネマ旬報ベストテン第8位 ★ 第6回ファーイースト映画招待作品(’04)

 さて、富田靖子は、BU・SUなのか。
 美人とはいえぬ、美少女というのも、違うか(笑)。個性派とも違うが、しかしさすがに番茶も出花の彼女、一番美しい頃の彼女をBU・SUとは、いえまい。
 しかし、性格ブスという設定で、暗い表情をさせ、過剰な黒髪の量で、暗さを強調。
 えっBU・SUって、性格ブスって、ことなの? それって、ジャロ的?に詐欺なんじゃないの。
 「BU・SU」という映画を作るのに、当時はそういうシステムが完備していなかったが、製作委員会的に、ヒロインにリアルブスは、どうも、という判断になったはずだ、東宝も日本テレビも東宝東和も、おそらく。
 かくて、市川準側と興行資本側で、ぎりぎりのせめぎあいの結果(笑)、ビミョーに美少女・富田靖子で、落ち着いた、と見るは、うがちすぎか(笑)。
 その代わり、市川側は、富田のクラスメイトにして協同者役に、リアルブス広岡由里子を、送り込んだ、と。脇役なら、リアルブスでも、いいだろ、というせいぜいの市川側の抵抗か。
 かくて「(あたし、将来) ソープに勤めるかも。男を知らずに、死んでいくのはいやだから」という、過剰な名セリフを生むことになる。
 なお本作の同時上映、市川準「あしたの私のつくり方」でのダブルヒロイン、成海璃子・前田敦子も、きわめてビミョーな美少女で。そういうチョイスが市川準か。

 とはいえ、ウィキペディアでは、
CMクリエイターとして活躍していた市川準の映画監督デビュー作。ひねくれた性格ブスの女の子が次第に成長し、自分の殻を破り自立して素直になっていく姿を描く。
主人公の麦子は当初、歯並びが悪いとか見た目も悪くしようとかルックスにコンプレックスを持っている女の子という話もあったが、監督の市川準が見た目じゃなく精神的に閉じた感じの女の子にしようと言ったという。市川は「ブス」という言葉の意味を、どうしても「容姿」のこととしてはとらえたくなくて、いまを生きている若者の多くが感じている「心の閉塞感」が「BU・SU」という「記号」になればと思っていたと述べている。
1987年のキネマ旬報ベスト・テン第8位、読者選出第2位。(引用終わり)

 さらに、ウィキペディアによれば、<本作は当初大林宣彦が撮る予定で脚本まで完成していた。しかし『漂流教室』の撮影が長引き不可能になった>とのこと。むしろ、そちらのほうも見てみたかったが、そういう事情で、市川準は、映画デヴューしたのか。

 <主人公の麦子は当初、歯並びが悪いとか見た目も悪くしようとかルックスにコンプレックスを持っている女の子という話もあったが>・・・・これは、どう見ても、大林的では、ないだろう。むしろ市川的では、ないかな(根拠不明の妄想)。
 むしろ、個人的には、マスマスムラムラ増村にこそ、作ってほしかった、とも、かすかに、おもう(笑)。

富田靖子 主演映画「BU・SU」 エンディング

2012/09/04 に公開 映画「BU・SU」エンディング 主演:富田靖子 監督:市川準
ここで原由子「あじさいのうた」が流れますが、権利関係で削除しました

↑最後のクレジット。現在有名ワキ役となっている、多数の役者が、ほんのちょい役としてクレジットされているのも、味わい深い。
 なお、イッセー尾形が、富田の先輩芸者・伊藤かずえを、コマす二枚目。このイッセーの二枚目ぶりが、チョー気持ち悪い(笑)。
 何か、二枚目というものを誤解しているかのような、演技プランで、いかに色悪ともいえど、これでは変質者そのもので、二枚目の二の字もない。これに懲りたのか、以後イッセーは二枚目風?を、活かした三枚目系になっていく。

 OLD映画ファン的にいえば、お座敷で、見習い(お運びさん)富田靖子を、セクハラ三昧のすまけい。
 その座卓の対面で、そのメインのすまけい=富田靖子の対決とはまったく関係なく、ぼそぼそ別の話をする老人に中村伸郎。
 まったくノイズ扱いなのが、ちょっと。ただ、許せない、というわけでもないのは、その戦略的使用法ゆえか。老衰しつつ、明晰な台詞回しの中村に、ちょっと、面白い。

市川準 BU・SU監督依頼にびっくり


BU・SU TV初公開

 内容はないけど、なつかしー。淀川さんと違って、商売に徹した水野さん。

BU・SUロケ撮影


★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

★にほんブログ村日本映画(邦画)★

by mukashinoeiga | 2015-11-24 00:06 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)

Commented by PineWood at 2015-11-27 11:41 x
羽仁進監督の記録映画(教室の中の子どもたち)みたいに生き生きしたタッチの学園風景が印象的!名作(小さな恋のメロデイ)のようなハチャメチャさもあって好きな映画ですね。市川準監督の遺作(明日の私の作り方)も学園もので、女学生の成長記という面では同じテーマですが、スタイルの違いや市川準監督自身の手法の変化が見もの。
Commented by mukashinoeiga at 2015-11-27 22:05
市川準「BU・SU」へのコメント、PineWoodさん、ども。若書き(その良さもある)からプロの水準まで、デヴュー作から遺作まで、その変化を一望させた目黒シネマの企画には、感謝しています。 昔の映画
名前
URL
削除用パスワード