鈴木清順「けんかえれじい」高橋英樹浅野順子キムタケ木村威夫野呂圭介川津祐介玉川伊佐男

 池袋にて。「検証日本映画Vol. 15 川島雄三と鈴木清順 絶対熱烈支持宣言」特集。66年、日活。
 もう10回ほどは見ているので、あらためて見る必要はないのだが(笑)特集を紹介した手前?一度くらいは行くか、というところで(笑)。で、たまたま、見にいけたのが、この2本立てで。
 さして新発見はないものだが、日曜だというのに半分も埋まっていない新文芸坐。旧文芸坐時代の特集オールナイトでは、満場の拍手と檄が飛んだものだが、それも今は昔。

e0178641_1052267.png で、もはや、「けんかえれじい」について、リリシズムだの、リリシズムと表裏一体の戦前右翼的バンカラ的ヴァイオレンスだの、当たり前の感想を述べる段階でもないので(笑)そういうことは、初見のかたに期待していただきたい、というところ。
 ちなみに、たった一度の映画出演により注目され、絶賛される本作のヒロイン、浅野順子を、ぼくは好きではない。なんだかあごがでかくない?(笑) たしかに、ひとみきらきらのアイドルでは、あるんだが。

e0178641_20384388.jpg で、今回、気になったのは、やはり、あの場面だ(笑)。
 イースターの夜、キロクと道子さんが手をつないで、の帰り道。桜並木。後世に語り継がれる名場面のひとつだ。
 で、その桜並木の道に平行して、片側は土手道である。そこにOSMS団団長タクアンが、いる。無名大部屋?片岡光雄の、絶品だ。
 オナゴと手をつなぎあっているキロクを、その軟派な行為はなんだ、と叱責するタクアン。
 すると、思わず逆走して、土手に乗り、さらに走ってタクアンのモトに駆け寄るキロク。
 一芝居あって、タクアンが去る際に、持っていた竹刀だったかで、桜の枝を、たたく。すると、紙製の桜の花びらが、はらはら舞い落ち、そこに叙情的な音楽。
 ああ、なんというセンチメンタルな名場面。その快楽。
 ここから清順といえば桜、桜といえば清順、という「伝説」が始まったのであり、のちに鈴木清順「春桜ジャパネスク」なる、つまらぬ凡作をヴィデオ撮りすることにさえなり、さらに鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」では、とっくに上映が始まっているのに、わざわざ桜を再撮影に行き、途中で差し替えするという、前代未聞の執着振りと、相果てる、その原点となった。

 しかし、のちに特権化されたこのシーンを冷静に見てみるに、桜並木は完全に背景であり、一度も桜がアップされることは、ない。
 単なる背景に過ぎないものがクローズアップされ、注目されたのは、ひとえに白黒画面にマッチした造花の妙と、リリックな音楽、タイミングよく降り注ぐ、散る桜。
 そういうセンチメントはわからぬでもないし、事実、何度もなんどもこの場面で、はらはら舞い落ちる桜に、こちらも貰い泣きならぬ、貰いはらはらになったのも事実である。
 しかし、紙製の模造桜、アップなしの、この名場面が、実写の桜で、花々のアップてんこ盛りの、凡庸な清順桜伝説に、あい果てる、この不思議というか、残念というか。実際、後々の実写の清順桜には、「けんかえれじい」のペーパームーンならぬペーパー桜以上に、感動したものは、ないのだから。清順といえば桜、とは、明らかに過剰な偽りで、あろう。

 そして、おそらく、清順とキムタケが、このシーンに眼目を置いたのは、背景の桜ではなく、土手ではないか。
 このコンビのさまざまな中二階趣味?から見てみるに、桜並木と並行してある、小高い土手、高橋英樹がそこに登るのに、わざわざ並木道を逆走して、土手に上り、また走って、タクアンにはせ参じる、というほとんど無意味なアクション。そこにこそ、土手と桜を仕掛け、それに乗った清順演出の本目が、あったと、思う。
 ところが、この中二階趣味?アクションは、無視されて、桜にいってしまった。ふたりは、内心、ずっこけたのでは、ないか。

『けんかえれじい』 予告編

 本篇では未使用、または再撮影された結果、ホンペンでは見られない貴重なフッテージが、後半にある。
 特に道子がキロクを会津に訪ねるシーンが、
◎本篇→大雪の冬、夜、屋内
◎予告→晴天の雪なし、昼間、屋外
 と、まったく正反対
 おそらく新藤兼人脚本どおりに撮ったものが、予告で再利用されたのだが、このシーンを、清順は、気に入らない。なんだか、ありきたりの青春映画そのものじゃないか、と。
 春、真っ盛りの青春の血潮は、桜とともにあり。散る桜の美しさよ。
 で、あるならば、青春の終わり、恋焦がれる女との別れは、降り注ぐ大雪のもとであっても、よいのでは、ないか、と。
 会津は東北である。東北を舞台にした映画なら、当然雪を出すべきではないか、と旧制弘前高校出身の清順は、考えたはずだ。
 会津を舞台にした新藤脚本に、雪のシーンがないのは、おかしい、という至極真っ当な考え。
 ラストシーンは、当然雪のシークエンスで、あるべきである、と。
 そして、この映画の舞台となるジェネレーションで、雪といえば当然、226事件か、という連想があり、226事件といえば、北一輝か、と、そういう連想の流れが、再撮影と、なったのでは、ないか。
 そこで、病欠していた清順映画常連の大部屋俳優・緑川宏をなんとしても呼べ、ということなのでは、ないだろうか。

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by mukashinoeiga | 2015-07-19 10:09 | 清順の光と影すべって狂ってる | Trackback(6) | Comments(0)

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