千葉泰樹「裸の重役」森繁久彌星由里子草笛光子児玉清有島一郎加東大介東野英治郎宮口精二柳永二郎
非常に「面白い」佳作。
阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン 第77弾 団令子」特集。64年、東宝。5月2日(土)まで上映中。
同時期、同じ東宝で、社長シリーズ、駅前シリーズで、ノー天気な好色オヤジをコミカルに演じていた、森繁の「別な顔」が、垣間見れる異色作だ。
この時期の森繁としては、珍しくシリアスな、リアルな演技を目指す。
ダンレイに迫られても、珍しく(笑)鼻の下を伸ばさない。それだけでも、そういう森繁、見ものでしょ(笑)。
原作:源氏鶏太としても、のほほんな会社/家庭コメディで鳴らしたが、これは異色な「シリアス」もの。
傑作ではないが、東宝ファンなら、必見と、いっておこう(笑)。
裸の重役ニュープリント 1964年(S39)/東宝/カラー/103分 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:千葉泰樹/原作:源氏鶏太/脚本:井手俊郎/撮影:西垣六郎/美術:阿久根巌/音楽:團伊玖磨
■出演:森繁久彌、星由里子、草笛光子、児玉清、有島一郎、加東大介、東野英治郎、宮口精二、柳永二郎
仕事の鬼と呼ばれる男やもめの重役・日高(森繁)。出世への希望を失い、街娼の咲子(団)と心を通わせていく──。原作は源氏鶏太の「東京一淋しい男」。森繁のサラリーマンものには珍しいビターで切ない物語。©TOHO CO.,LTD.
上記解説も、例によって、やや、ずれている。後半かなり経つまでは、森繁は、バリバリの重役サラリーマンで、出世街道まっしぐら。その後半のあとで、やっと団令子登場。だが、それは、まあ、許容範囲内か。
当時東宝で主流だったお気楽サラリーマンものと真逆な、シリアス?路線。
これが、<成瀬になれなかった>千葉泰樹ではなくて「その場所に女ありて」鈴木英夫の監督だったら、「その場所に男ありて」というべきな傑作になったのかもしれない。
千葉泰樹には、甘さがあるので、そうは、ならなかった。そこは、おしい。
東宝脇役陣、新劇系の、オールスタアというべき、多人数が出てくるが、そのタイプキャストの確かさは、ただならない。
千葉泰樹映画の、キャスティングは、毎度ながら確かだ。
加東大介などホントにワンシーンのみ、ライヴァル社重役・清水元など十秒弱か。
無能弱気若手サラリーマンを演じては、東宝一な児玉清が、そういう役。してやったりの快演。ぼくが見たなかでは、ほとんどちょい役ばっかりの児玉清だが、これは、彼の東宝時代の代表作というべきだ。
ちなみに、児玉が森繁の娘・星由里子に無理矢理連れ込み旅館に連れ込まれるのだが、その旅館の看板が「こだま荘」って。
役者は全員、好演だと思うが、酔ってふらふらの演技の中村伸郎の、その演技、下手すぎ(笑)。ま、その前の慇懃無礼な皮肉の言い方は、堂に入っていましたがね。
なお、当時としては珍しい欧米視察壮行会&50才誕生日の記念に、「60歳還暦なら、赤いちゃんちゃんこだが、その手前の50歳なので、ピンクのベスト」と、森繁に贈られたベスト。どう見てもピンクには見えない、ほとんど真紅気味。
これは、
1 今回のニュープリのカラー調整が、おかしい
2 もともと当時のカラー調整が、おかしい
3 現在と、製作当時のピンクに対する認識が違う?
4 ピンクというオーダーを、衣装スタッフが誤解して、それを仕方なくそのまま、使った
はて、どっち(笑)。
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by mukashinoeiga | 2015-04-21 23:01 | 千葉泰樹 ヤスキ節の愉しさ | Comments(17)
やっぱり佳作でしたか...うーん調整してでも行かねばなりませんね。
ムカエイさん、朝が(い)やなのに出掛けたのは何か思う所でもあったんですか?
私もこれは見逃したくないなぁ...と思っていた所でした。
以前の記事で「サラリーマン忠臣蔵」を高く評価されていましたね、私も観ましたが、いやいやこれは傑作でしたな。大好きですこういうの。
「沙羅の門」を見逃してしまったのでこっちは行きますよ。
「社長シリーズ」と「駅前シリーズ」のオススメがあれば教えてください。あと「次郎長三国志」ってどうですか?
>ムカエイさん、朝が(い)やなのに出掛けたのは何か思う所でもあったんですか?
いやいや(笑)。つらいけど、まるきり不可能ではないということです(笑)。むしろ、朝より、阿佐ヶ谷のレイトのほうが、寄る年波(笑)で、ビビッております(笑)。
>「社長シリーズ」と「駅前シリーズ」のオススメがあれば教えてください。あと「次郎長三国志」ってどうですか?
社長駅前シリーズは、見てるあいだは楽しいけれど、見たら、まあ、どれも、同じですかね(笑)。ファンには、怒られそうだけど(笑)。「次郎長三国志」については、因縁(笑)があり、長くなりそうなので、また、別の機会に(笑)。
昔の映画
いやはや何ともビターテイストでした。おもしろかったです。
団令子を森繁がひと月五万円で囲うくだりですが、
昼はOLの団令子の月収はひと月一万二千円で家賃が四千五百円だそうで.....。
その部分だけで考えると現代の10〜15分の1くらいの物価でしょうか?
そうすると五万円という当時の価値は現代の50万〜75万円くらいなんでしょうか?
流石上場企業の重役さんですな〜この甲斐性!
ダンレイさんなら私だって囲えるもんなら....
死んでも無理ですな(哀笑)。
宮口精二や児玉清に心ならずも情を掛けてやったことが巡り巡りて自分に帰って来る所など深かったっす。
「その場所に女ありて」....いつか観てみたいっす。
帰りまでの時間調整に引き続きザ・ピーナッツ主演の
「私と私」も観ちゃいました。
たわいないストーリーなんですが、クレージー・キャッツや
有島一郎、淡路恵子など脇がしっかりしていてそれなりに楽しめました。エンディングの近くで「ふりむかないで」を歌うシーンはバンマスのスマイリー小原などノリノリで楽しかったなぁ〜。
月給1万強の、ダンレイに月5万円のお手当とは、森繁盛り過ぎ(笑)。
当時大手企業の重役の年収とは、いくらくらいだったのでしょう。この事実を知ったら、アパート暮らしの娘ホシユリは、怒髪天では(笑)。
社長シリーズ、さらには駅前シリーズの森繁なら、値切りに値切るでしょうに(笑)。
>ザ・ピーナッツ主演の「私と私」
他愛のないアイドル映画の楽しさですね。ピーナッツ映画は、結局双子という「出落ち」でしか作られなかったので、「意外と違うぞ」とかの、ダークな(笑)双子映画も、見たかった気もします(笑)。
スマイリー小原、あのノリは、いいですね。 昔の映画
オオ、ハラセツの歌なんてめずらししい。マッタク聞いたことがないのは、歌、下手だったんでしょうか。
かつてはアイドル女優だったのに。もっとも戦前のアイドル女優は、歌なんて、歌わなかったんでしょうが。
聞いてみたいものでんす。 昔の映画
ムカエイさんも述べておられるように(俳優という)持ち駒を適材適所に埋めて行く手腕は敬服ものですな。
「沈丁花」などはあれだけの面子をよくあそこまで整理しましたねぇ…まさに名手。
「成瀬になれなかった…」というより成瀬も「千葉になれなかった」部分も実際多いんじゃないでしょうか?
ユーモアは千葉さんの圧勝かな。
>鈴木英夫なら「その場所に男ありて」...
最後の逆転はなかったということでしょうか?
うーん....あれはあれで良かったような,,,。
でも「狐と狸」では森繁に最後で一杯食わされていますからギューちゃんも借りは返さなきゃいけませんな。
中村伸夫は何故最後に草笛さんのバーに行ったんですかね?アウェイ感なかったんですかね?
ラピュタの「おかしな奴」満員札止めで鑑賞出来ずでした…ウーン残念!
>シネマヴェーラの特集我慢出来ずに
何も、我慢なんかしないでも(笑)。
>「成瀬になれなかった…」というより成瀬も「千葉になれなかった」部分も実際多いんじゃないでしょうか?
もちろんもちろん。
>中村伸夫は何故最後に草笛さんのバーに行ったんですかね?アウェイ感なかったんですかね?
中村伸郎は、立派過ぎて(笑)ダメな男というのが、徹底的に似合いませんね(笑)。小津の「東京暮色」のダメ男も、なんだかサマになっていません(笑)。少しは、モリマこと森雅之を見習ってほしいものです(笑)。
>ラピュタの「おかしな奴」満員札止め
おお、わざわざ阿佐ヶ谷くんだりまで行って、見れないとは、ショック大きすぎですね(笑)。「おかしな奴」なぜそんなに人気(笑)。読めませんねー(笑)。
昔の映画
おお、そうでしたか。いつの日にか、見て・・・・いや、聞いてみたいものです。 昔の映画
別に千葉も成瀬になりたかったわけではなかろうし、成瀬も小津になりたかったわけでも。
要するに、外野からの、比較批評でしょう。外野からの、お手軽な印象批評としてはいいが、特集のタイトルにするには、ちょっと、というところで。 昔の映画
この時期のモリシゲにしては、珍しくシリアスで。リアルモリシゲ。
寅さん以外の渥美清も見たかった、と思う身としては、社長シリーズ以外のモリシゲを見られる貴重な映画で。 昔の映画