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神代辰巳「赤い帽子の女」

 渋谷にて。「神代辰巳の世界 没後20年メモリアル特集」。82年、若松プロ、配給・日本ヘラルド。
 なぜ、こんな企画がまかり通り、かくも中途半端な映画が出来たのか、今からの視点で見て、不思議でもある(笑)。
 池田満寿夫「エーゲ海に捧ぐ」79年「窓からローマが見える」82年、増村保造「エデンの園」80年と同様の、異色監督のヨーロッパロケ映画、日本ヘラルドによる、和製なんちゃってヨーロッパ映画の一連か。
 つまり、かつて日本での人気も全盛を誇っていたヨーロッパ文芸映画が、低調下火になり、日本経済がバブルに向かうなか、あぶく銭もたまった、ここ十何年のデフレ日本とは違い、イケイケどんどんの日本人が、ヨーロッパ映画がダメダメなら、よーしおれたちで、なんちゃってヨーロッパ映画でも、作っちまおうか、という勢いか。
 ジュスト・ジャカン「エマニエル夫人」74年(もちろん配給・日本ヘラルド)という成功体験もあるのに、ヨーロッパ映画自体は、第二、第三のエマニエルを、なかなか作ってくれない、と。ヨーロッパ風味文芸エロ路線で、一儲けだあ、と。
 で、ピンク映画の雄・若松プロにもお鉢が回ってきたが、若松プロ関連で一番の有名監督は若松本人ではないだろう、東宝で話題作を作っているクマシロだろう、ということで、クマシロに白羽の矢?

『赤い帽子の女(デジタル)』公開:1982年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:神代辰巳
主演:永島敏行、クリスチーナ・ファン・アイク、泉谷しげる、アレクサンダー・ステファン、ベルント・ステファン、エルハルド・ハルトマン、ヴェロニカ・ファン・クアスト
ナチス台頭前夜、ドイツにやってきた“私”は、街で“赤い帽子の女”と出会い退廃的な日々を送るが…。初の海外ロケ作品で、キャストのほとんどがドイツ人、台詞の大部分もドイツ語という意欲作。二人乗り自転車レースのシーンが印象的。©若松プロ
神代辰巳「赤い帽子の女」_e0178641_875048.jpg

 あらゆる意味でミスキャスト。
 鈍感で凡庸な田舎の野球少年イメージの、永島敏行の鈍重さ。その永島が、インテリ高等遊民の、「ゆえない不安」を体現せざるをえない。似合わないよ。さらに庶民イメージの強い泉谷しげるまでも、インテリ高等遊民って。
 最後、懊悩のはてに首吊り自殺、っそういうキャラじゃないだろ泉谷。
 で、この二人以上に庶民派、というより、まつろわぬ民を体現するクマシロが、海外渡航する高等遊民なんて、どこに共感するものがあるの?
 かくて、映画は、本当に凡庸に、和製なんちゃってヨーロッパ文芸映画を、なぞっていく。

 ああ、そうでした。クマシロには一本だけ、マルキ・ド・サド原作「女地獄 森は濡れた」という、欧風?貴族趣味?風の、これまた、なんちゃって映画がありましたが、あれだって、パロディとして、成立していたわけで。
 パロディを封じて、クマシロならではの偽作的かつ戯作的なコメディ精神を封印?して、至極まじめな、なんちゃってヨーロッパ文芸映画。
 誰得というもおろか。存在全体がミスキャスト。
 クマシロの戦前を舞台にしたロマンポルノで、しばしば軍隊批判が顔を出すが、それと同様に、ちらちらとナチス描写も、さまにならず。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2015-04-14 08:09 | 神代辰巳猥歌 揺れた俗情 | Comments(0)

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