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曽根中生「花嫁に手をだすな!わが子は殺人者」

 渋谷にて。「追悼特集 曽根中生伝説」特集。80年、テレビ朝日・にっかつ。
 なかなか面白い、いや、見ている最中わくわくドキドキのハイブリット快作。あと2回上映。ほぼ絶対のオススメ。真の意味での、希少価値満載の快作。
以下、ネタバレあり。

『花嫁に手をだすな!わが子は殺人者(デジタル)』公開:1980年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
主演:鶴田浩ニ、本間優二、森下愛子、岡田英次、平田昭彦、山谷初男、野際陽子、草薙幸二郎
曽根監督唯一のドラマ作品。原作はパトリック・クェンティン。唐突な自殺によって妻を失った男が、殺人犯の罪を着せられた一人息子の冤罪を晴らそうと奮闘する物語。父性愛溢れる父に鶴田浩二。曽根中生×鶴田浩二の奇跡のコラボを見逃すな!

 本来ありえない(笑)曽根中生×鶴田浩二。
 日活ロマンポルノの曽根と、ポルノには顔をしかめそう?なツルコウのコラボ。
 まずプロローグの、のちに鶴田の妻と判明する女性(なんと柳川慶子?それとも町田祥子?)の、簡にしてスタイリッシュな自殺シーンに、うなる。
 そして出版社社長・平田昭彦の、新妻に、当時魅力絶頂の森下愛子という設定に、ボーゼン(笑)。
 ありえないだろ。
 森下愛子が、なぜ推定約2.5倍年上の平田昭彦の妻になったか、というと、それは父・岡田英次が二重にも三重にも、悪い(笑)。
 任侠スタア・ツルコウが、マンションの8階に住むサラリーマン(平田の会社の営業担当専務)という設定にアゼン(笑)。いい年こいて、8階まで階段で行く、エレヴェータ不使用のツルコウに、慄然(笑)。
 まあ、若いころは松竹で、のほほんサラリーマン青年を快活に演じていたのだから、そのン十年後の姿ということで見れば、違和感はないのか。
 タイトル「花嫁に手をだすな!わが子は殺人者」の、ジャンル分類不能?さ。前段と後段のつながりが、見えない。奇妙な、隔靴掻痒なタイトル。
 わかってみれば、鶴田の一人息子・本間優二が、鶴田親友の新妻にちょっかいを出して、あげく年上夫・平田昭彦を、殺してしまった疑い。
 しかし、下手なつぎはぎの違和感のみが残る、無理やりの珍タイトル。
 ドラマは、いかにもパトリック・クェンティンらしい、直線ではない、紆余曲折のミステリ。くねくね、小出しのどんでん返しが楽しい、先の展開が読めない、いかにもフレンチなねちねちミステリ(ほめていえば、エスプリの利いた、ウイットある小粋さ)。

花嫁に手を出すな! わが子は殺人者 <テレビドラマデータベースHPより>
妻が謎の自殺を遂げ、息子は殺人犯の疑いをかけられる。家庭崩壊の中で真相を追う中年男。
キー局 ANB 放送曜日 土 放送期間 1981/06/27 →ヴェーラと1年違うが。
放送時間 21:02-22:51 放送回数 1 回 連続/単発 単発
番組名 土曜ワイド劇場
主な出演 鶴田 浩二、町田 祥子、本間 優二、平田 昭彦、森下 愛子、野際 陽子、岡田 英次
主な脚本 安倍 徹郎(安部 徹郎)
主な演出 曽根 中生
原作 小林 久三(一部資料では、パトリック・クェンティン) →え、えーえっ!(笑)
局系列 ANN

 土曜ワイドのルーティンなのか(当方いわゆる2時間ドラマは、ほとんど見ていなかった)冒頭主要キャストのショット付紹介のあと、脚本家、監督も、顔写真つきクレジット。なんと作家主義?な、クレジット。
 まず、年はとっても、相変わらずの、ツルコウの口跡に酔う。聴いてるだけでエクスタシー(笑)。
 真のスタアのみがらくらく表現できる、セリフの妙味。エロキューションだけで観客を魅了する、真のスタアの特権的台詞回し。
 NHKのTVドラマ「男たちの旅路」どうよう、若いバカもんを、淡々と、しかし情熱をこめて、この二律背反をらくらくと止揚する、魅惑の台詞回し! その快楽。
 バカな若者(若いバカ者)を説教する年配者を演じて、やはり日本一だツルコウ。説教のエクスタシーを演じうる唯一無二の存在。健さんでも、さすがに、ここまでの境地には、達しまい。
 うさんくさい文太など、もちろん論外だ(笑)。
 そして、ツルコウが説教するバカな若者(若いバカ者)が、本間優二(笑)。いやあ、なんというフィット感(笑)。
 しかし、本間優二には、絶対の安定感で説教のツルコウも、その相手、こんなに若いのに、こんなにかわいいのに、絶対ファムファタールな森下愛子には、たじたじ(笑)。
 まさにご婦人は理不尽を地でいき、なおかつ圧倒的な清純派(笑)。絶頂期の森下愛子の凄みというか、愛らしさ。
 森下愛子、もし映画全盛期に彼女がいたら、若尾文子レヴェルの大女優になっていたのではないか。いや、少なくとも、叶順子では、あったろう(笑)。
 そして橘侑子、野際陽子など、いつも後ろ暗いことを考えてそうな「悪女」女優の素晴らしさ。動揺した野際が、思わず英語での捨て台詞にも、爆笑す。
 鶴田の弟役に、山谷初男。似合ってへんやろ(笑)。刑事に高橋明、タクシードライヴァーに佐竹一男など、日活脇役陣の出演も目立つ。
 そして本間優二を匿う、眼鏡っ子小説家に鹿沼えり、その不審な行動のいちいちが楽しい。そういう日活由来(森下も含めて)と、東宝由来の平田、柳川、TVや新劇の野際、岡田、橘、そして映画会社渡り鳥の鶴田の異種格闘戦めいたコラボが、雑然としていて、楽しい楽しい。グッド。

 ただし、ツルコウ、あまりにどっしり構えすぎて(笑)本来は息子の無実を証明すべく活躍するはずが、弟・山谷初男、警察に、手柄?を横取りされる始末。
 わずかに、山谷に先導されて、九段下駅から出てくるシーンに、微苦笑。
 何度もいうが、たった一回きり放送されただけで、死蔵されるTVドラマ、何とか見れるシステムを構築すべきだろう。

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by mukashinoeiga | 2014-12-09 03:51 | 傑作・快作の森 | Comments(0)

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