人気ブログランキング |

続・佐分利信「広場の孤独(廣場の孤獨)」佐分利信津島恵子菅佐原英一高杉早苗千田是也

 渋谷にて。「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」特集。53年、新東宝。
 先の★佐分利信「広場の孤独(廣場の孤獨)」感想駄文★の続き。
e0178641_1245222.png 本作は、この映画製作当時の「世界の中の日本」に関する、ドキュメンタルな世情・心情レポートを、娯楽映画の範囲内で描こうとした、意欲作である。
 しかし、娯楽映画というものが、斬った張った、惚れた腫れた、泣いた笑った、の「小説」的世界を、通常は描くとすれば、本作は「一国の運命」「一民族の行く末」を、描く「大説」的世界、実に野心的な試みであり、それは、かなり成功していて、非常に緊密な、ドキュメンタルなドラマと、なったと思う。
以下、ネタバレ。

『広場の孤独(デジタル)』公開:1953年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:佐分利信
主演:佐分利信、津島恵子、菅佐原英一、高杉早苗、千田是也
スターリン死去の報に沸く冷戦下の日本に、動乱利権屋のティルピッツが入国し、右翼と左翼の衝突を画策。その暗躍に、日産新報外信部副部長の原口(佐分利)と妻が巻き込まれ…。原作者の堀田善衛、武田泰淳、片山哲(社会党書記長)など、多くの政治家、文化人も出演し、佐分利の監督としての格を見せつけた社会派大作。冒頭15分ほど画面と音声の乱れが続きますことをご了承の上、ご覧ください。

 主舞台となる新聞社、日産新報、映画に登場する新聞としては「毎朝新聞」が定番か。その中で「産」の字は、珍しい。
 サブリンの妻・高杉早苗は戦前の上海の生まれ、育ち。島国日本のスケールを逸脱している彼女は、しみったれた、ビンボーくさい日本が大嫌い。呪詛するがごとく日本の現状をのろい、夫サブリンの無能をあざけり、そう、本作では、サブリンは、日本そのものの象徴と化して(笑)いるのだ。
 サブリンの自虐趣味と、日本人一億の自虐が、奇妙にシンクロする(笑)。
 「日本を呪詛し、国を売る」日本人は、現在でも左翼に多く見られる。現代にも通じる話だ。
 その高杉がオーストリー人「動乱利権屋」の手先となっている。
 「動乱利権屋」とは、なんぞや。他国の内乱、動乱を煽り立て、世情不安を原資にダーティーマネーをいただこうという寸法か。
 その高杉の行為を、裏で指図しているのがサブリンだという誤解から、部下・菅佐原英一は「国を売るとは何事か」と、サブリンを鉄拳制裁。
 まず、妻の悪事は夫の指揮下にあるのだ、という誤解。サブリンは、ホントウは妻を制御不能、という実態を知らぬゆえ(笑)の誤解だ。
 にしても「売国奴」に鉄拳をふるう新聞記者、というのも珍事だ。現在でも、朝日、毎日の諸君は、率先して、「ニュースを売る」イコール「国を売る」と、「意図的勘違い」をしているわけだからなあ。

 おそらく原作由来の「広場の孤独」とは、何か。
 暗い広場のなかに、強烈なスポット・ライトが二つ。この二つの強い光にさらされて、自分たちは、うろちょろあがいている。二つの強い光とは、文字通り米ソの冷戦をさし、それにホンロウされる「小国の悲哀」ということだろう。
 外国勢力の「草刈場」と、なっている「悲哀」。
 で、高杉の発想には、米ソ冷戦の渦から、逃れえている国としても、アルゼンチンが想定されている模様。当時のアルゼンチンが、米ソから自立した大国ないし中堅国として認識されている。誤解なのだが。
 しかし、それはある意味、影響ある大都市から、遠く離れている「田舎町」の利点であって、それは、やがて、没落するもととなるだろう。

 当時の日本の「小国の悲哀」は、やがて減殺されることになるだろう。日本自身が小「大国」にのし上がり、ソ連のパワーは衰退した。そのDNAは、現在もクリミア半島で発揮されたが、かつての勢いはない。
 日本は「あいまいな中州」から、アメリカの「安定した子分」の位置に落ち着き、しかし、強い自己主張をしないがために、依然として、国連など外交の場では「小国の悲哀」を味わっている。
 現在、今度は米中の二大国にはさまれて、「小国の悲哀」を味わっているのは、韓国だろうか。ただ、歴史を通じて、一貫して支離滅裂なこの国は、自ら求めて、その失策ゆえに、大国間でホンロウされているように見える。
 支米滅裂

 で、強烈な個性の高過ぎ、もとい高杉早苗の陰に隠れて、印象が薄くなっているヒロイン津島恵子が、侮れない(笑)。アメリカ系商社?の事務員だったが、日本人女性社員のみの健康診断をする、あたしたちまじめな女性を、パンパンと同一視している、ということで嫌気がさし、退職。
 次に、モンダイのオーストリー人「動乱利権屋」が、隠れ蓑にしている花屋に就職。
 でも、オーナーの裏稼業を敏感に感じ取り、今度は日航のスッチーに。
 ちゃらちゃらと、立場を変えていく、しなやかな(笑)津島恵子。日本のある側面でもある、自由自在な「転向」傾向を表わして、きわめて軽快である(笑)。ある意味では、兄・田島義文(日産新報の左翼的組合委員長)以上の転向を繰り返して、なおかつ兄の転向は、平気でなじる(笑)。
 この津島の「変転・流浪する運命」は、まさに戦前松竹メロドラマのヒロインそのまま。このヒロインの変転でドラマを転がす、サブリンのメロドラマ監督としての腕もグッド。やるぅ。

 面白いのは、大磯の高級花屋の津島が、わざわざ羽田空港に日参する。来日する外国人がバラの花束を持っていると、その花束を譲り受け、日本にはない品種を育てるため。なるほどな、と思う。今からは予想もつかない花屋事情。
 そうして空港に日参するうちに、スッチーへの憧れを持つ。原作由来だろうが、ナイスな展開だ。
 珍奇な外国産品種への、あこがれ。

 サブリン、スサリン(笑)菅佐原英一共通の知人である、アメリカ人従軍ジャーナリストは、言う。
「もう朝鮮(戦争)は、卒業だ。今度は、ホーチミンの仏印に行く。次が、日本にならないことを、祈っているよ」
 うなづく菅佐原。そういう時代だったのだ。
 サブリンのジャーナリスティックなセンス、ドラマのセンスは、きわめてバツグン。あの仏頂面の影で(笑)。
 なお、多数のインテリ面の新劇人が、新聞社記者として、出演。この贅沢な多量出演こそ、俳優出身監督にして、リベラリストが多い新劇人からサブリンが信頼されていた証。その中で、インテリ面ではない小沢昭一が、屋台のラーメン屋として数秒出演しているのは、シモケンさんのご指摘どおり。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

by mukashinoeiga | 2014-10-23 11:11 | 佐分利信 サブリン人生劇場 | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : https://mukasieiga.exblog.jp/tb/22497157
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
名前
URL
削除用パスワード