人気ブログランキング |

五所平之助「猟銃」

 渋谷にて。「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」特集。61年、猟銃プロ、配給・松竹。
 サブリンが年若い妻・岡田茉莉子には、「食指」を動かさず、茉莉子のいとこ・山本富士子とは、愛欲不倫の日々。
 茉莉子のどこがよくなくて、富士子のどこがいいのか、映画は一向に明らかにしないので、いまいち、ノレない映画。茉莉子が、いつものように、女としては、ぎすぎすしていて、富士子が、いつものように、愛らしいせいだろうか。
 それなら、まったくサブリンと同意だが、そういう「女優の質」だけに頼るのも、なんだか映画としては、情けない。
以下、ネタバレ。

e0178641_22592863.jpg猟銃(35mm)公開:1961年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:五所平之助
主演:山本富士子、鰐淵晴子、岡田茉莉子、佐田啓二、乙羽信子、柳永二郎、田浦正巳、佐分利信
離婚後も元夫の愛人が生んだ娘・薔子を育てながら、従妹の夫・礼一郎と不倫関係を続ける彩子は…。愛憎渦巻く大人たちの穢い世界を、薔子の視点から描いたメロドラマ。礼一郎役の佐分利が男の色気を醸し出す。山本富士子と岡田茉利子の演技合戦も見もの。

 自虐的にダメ男を演じたがるサブリン監督作のサブリンを、この特集で見慣れていると、本作における異様なモテモテぶり、茉莉子と富士子を両手の花のサブリンも、また、面白い。
 ただサブリン監督作の、揺れと風格の絶妙な配合、俳優の配置の素晴らしい俳優愛、それらを見たあとで、この五所平映画を見ると。
 男女の心の葛藤と揺れを描きつつ、映画が一向に「揺らがない」のが、俳優たちの演技が一向に「弾まない」のが、歯がゆく見えてくる。
 「堂々とした文芸映画」の、その「堂々」が、紋切り型過ぎて、物足りない。
 「巨匠の王道映画」の凡庸と、食い足りなさを、感じてしまう。
 たいへん愛らしい可憐な鰐淵晴子を、本作で見ていても、一向に、輝いて見えない、という俳優愛のなさも。
 すっかり監督作のサブリン菌に毒されているのかもしれない。

 そして、唐突にあらわれる、あっと驚く落ち。
 山本富士子は、離婚後、長いあいだ独身だった前夫・佐田啓二が、ようやく再婚したときくや、さっさと自害。
 遺書によれば、佐田啓二は「分かれても好きな人」で、サブリンのことは大して好きでもなくて、単なる心と体の飢えを満たすための、佐田啓二の「代用品」だった、と!
 その遺書を、ボー然と読むサブリン。
 いい年こいた大人が、好きな人が再婚したから、自殺というのもトートツだが、これまでの愛欲描写を、通り一遍に裏切る落ちも、なんだかなあ。
 まあ、それほど好きでもない相手と、ずるずる付き合うというのは、ありがちかもしれんが、じゃあ、それまでの愛欲描写を、別の視点から、再構成する作業が、必要だろう、というのは、現代のだらだらした、どんでん返し&再構成描写を見慣れてしまった、現代の映画ファンの不幸かしらん。

 本特集でも上映済みの、感想駄文済みの島耕二「渇き」58年では、同年公開の小津「彼岸花」で、サブリンの娘の友人役・山本富士子を、サブリンの妻役とした。
 その三年後の本作では、その山本が愛人、前年60年の小津「秋日和」で、サブリンらをやり込めていたハツラツお嬢さん・岡田茉莉子を、サブリンの妻に。
 まるで、「女性にウブ」で、なおかつ「すっかり女に枯れ果てた」小津映画の「お子様ぶり」を「揶揄する」かのような、島耕二と、五所平なのであった(笑)。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

by mukashinoeiga | 2014-10-19 05:36 | 佐分利信 サブリン人生劇場 | Trackback | Comments(12)

トラックバックURL : https://mukasieiga.exblog.jp/tb/22485247
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by なご壱 at 2014-10-19 06:13 x
おっしゃるように確かに演技に弾みがありません。サブリンの山本富士子に言った言葉「二人で悪人になろう」だけが印象に残っています。
Commented by mukashinoeiga at 2014-10-19 11:04
五所平之助「猟銃」へのコメント、なご壱さん、ども。

>「二人で悪人になろう」だけが印象

 ぼくも、それが強く印象に(笑)。くどき文句としては、ちょっと大げさな気もしますが(笑)有効なんですかね(笑)。
 もっとも、真の「悪人」は山本富士子で、サブリンは、とうとうだまされっぱなしだった、という落ちで。  昔の映画
Commented by 今みたお at 2015-09-08 11:16 x
今見ていますが

昭和の映画はいいと思います

現代に映画化するとしたら


岡田茉莉子→広末涼子
山本富士子→松下奈緒
鰐淵晴子→石原さとみ
佐分利信→伊勢谷友介
佐野周二→木村拓哉
かな
Commented by mukashinoeiga at 2015-09-08 22:04
五所平之助「猟銃」へのコメント、今みたおさん、ども。
なるほど、面白いですね。広末は、ぴったりかも。
 松下奈緒より、ぼく的には、もっとゴージャス女優のほうが(笑)。石原さとみより、もっとピュア感があったほうが(笑)。
 まあ、女性、女優の好みというものは、人それぞれセンサーが異なるので(笑)、みんな好き勝手に妄想して、いいのでしょう。それで、いいのだ(笑)。
 でもサノシュウにキムタクとは、さすがにキムタク、まだまだ、かわいそう(笑)。むしろサブリン役にキムタクでは、どうでしょう(笑)。  昔の映画
Commented by 今みたお at 2015-09-10 08:36 x
広末涼子は岡田麻里子的ですね
他は特に希望はないです
しかし
煙草を吸うシーンがやたら多いと思いました
特に蒲郡の旅館へ行く駅の街頭で佐分利信が煙草を吸うシーンに衝撃を受けました
私はYouTubeで見たのですが
これなら簡単に見れてよいですね
佐分利信は坂上忍でもよいと思います
http://m.youtube.com/#/watch?v=2vYU5ufxDoc
佐野周二は向井理辺りでよいと思います
Commented by mukashinoeiga at 2015-09-10 22:42
五所平之助「猟銃」へのコメント、今みたおさん、ども。
>広末涼子は岡田麻里子的ですね
 納得です。

>特に蒲郡の旅館へ行く駅の街頭で佐分利信が煙草を吸うシーンに衝撃を受けました

 これはまったく記憶にないのですが、たぶんぼくのばかな記憶力によるものでしょう。未見の映画だと、いそいそ出かけて、実は見た映画だというのは、何百回(笑)経験しておりますマヌケです。
 このブログは、各映画会社に監視されていますので(誇大妄想)URLなんかアップされたら、ソク削除ですよ(笑)。   昔の映画
Commented by 今みたお at 2015-09-19 19:53 x
なるほど
私のおすすめの映画は
ジェネラルルージュの凱旋です

Commented by mukashinoeiga at 2015-09-19 23:50
五所平之助「猟銃」へのコメント、今みたおさん、ども。
ルージュ面白かったですね。TVでやると、何回でも見てしまう(笑)。あの監督の映画は、大体面白いので、必ず見てしまいます。  昔の映画
Commented by 今みたお at 2015-09-20 14:17 x
こんにちは
チームバチスタの栄光の映画もなかなかよかった
しかし同じ監督の
ジェネラルルージュの凱旋の方がもっとおもしろい
これは
病院から一歩も外へカメラが出ない低予算映画のもはんと言うべき作品だと思います
Commented by mukashinoeiga at 2015-09-20 22:52
中村義洋監督へのコメント、今みたおさん、ども。
 チームバチスタ・シリーズだけではなく、この監督の映画は、ちょんまげぷりん (2010)、ゴールデンスランバー (2010)、フィッシュストーリー (2009)は、とても大好きです。もしこのなかで未見のものがありましたら、強く強く(笑)おススメいたしますです。  昔の映画
Commented by 今みたお at 2015-09-21 23:28 x
ありがとうございます
この人の作品は
チームバチスタの栄光
ジェネラルルージュの凱旋
の二つしか見たことがありません
中村義洋監督でしたよね
チームバチスタの栄光では
正名僕蔵が転落事故で死ぬ役をしていましたね
他殺だったのかな
正名僕蔵は
それでも僕はやってない
で優れた演技をしていました

中村義洋監督で調べたら
ジャージの二人(2008年)の二人も監督していて
これは私も見ています
Commented by 昔の映画 at 2015-09-28 03:21 x
中村義洋監督へのコメント、今みたおさん、ども。
ジャージの二人は、はるかかなたに見て、イマイチ印象が薄いです。正名僕蔵、味がありますね。
名前
URL
削除用パスワード