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田中重雄「共犯者」

 阿佐ヶ谷にて。「ミステリ劇場へ、ようこそ。2014」特集。58年、大映東京。
 感想駄文済みの田中徳三「誘拐」という、緊迫感たっぷりサスペンス快作の直後に見たものだから、余計、そのまったり感が倍増(笑)。
 一応、探偵役となっている船越英二、彼が素人丸出しの調査員で、調査には、その奥さん・八潮悠子を帯同。千葉に、岡山に、下関に、船越が調査におもむけば、船越以上にのんき者の彼女も必ずついていく。
 というのも、奥さんの実家に間借りしていた失業者夫婦なので、一種の「家なき夫婦」。一応全国をまたにかけて?調査する船越についていけば、その安宿に同泊出来て、「家なき」状態も解消できる、という発想だ(笑)。
 こんな夫婦探偵見たこともない(笑)。
 しかも、船越、奥さん得意のトランプ占いで、ターゲット高松英郎を探す方角を決めたりする。
 江戸時代じゃないんだから(笑)。

共犯者 1958年(S33)/大映東京/白黒/95分 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:田中重雄/原作:松本清張/脚本:高岩肇/撮影:渡辺公夫/美術:柴田篤二/音楽:古関裕而
■出演:根上淳、高松英郎、船越英二、叶順子、宮口精二、倉田マユミ、八潮悠子、町田博子、多々良純、山茶花究
強奪した金を元手に事業に成功した男・根上淳は、五年前に別れた共犯者の動向が気になって仕方なく、私立探偵を雇って身辺調査を開始した──。疑心暗鬼から自滅していく男の姿を描いた松本清張の同名短篇小説を映画化。

 探偵仕事を船越に依頼した根上淳、こいつが映画史上最弱といっていい臆病者。いつ過去が露見されるか、常にびくびくしている。婚約者・叶順子の、何気ない過去への質問にも、きょどりっぱなしで。
 こんな根上と、のんびり探偵船越が、交互に描かれて、まあ、サスペンスのサの字もありませんな、というのんびりっぷり。
 同じ田中姓の大映専属監督、徳さんと重さん、偉い違いで。
 ちなみに池広一夫によれば、当時の大映京都には三一ローテーションというものがあった、という。
 は、田中徳隅研次、は、森生、池広夫の、監督が交互に「座頭市」や「眠狂四郎」のヒットシリーズを、まるでローテーションを組みように、担当していたという。
 まあ、この中では新人監督である池広一夫の証言は、ちと眉唾だが(笑)。
だいいち安田公義などの立場は(笑)。閑話休題。

 相変わらずエロキュートな叶順子の魅力は当然のことながら、問題は高松英郎と、倉田マユミだ(笑)。
 高松英郎。ゴツイ顔のせいか、この時期の大映では、渋い小悪党を担当。
 前記田中徳三「誘拐」の、職能一点張りの主任刑事などでは、スマートささえ感じる好演を見せる彼も、小悪党役では、いいところなく、ずっこける。
 第一に笑顔を見せたら、もうだめ。悪党らしい「凄みのある笑い」も、小悪党らしい「卑屈・卑劣な笑い」も、出せない。
 素の「純朴な笑顔」一点張り。それ以外の、演技が、出来ない(笑)。
 高松英郎、一度でも笑顔を見せたら、演技終了。史上最強の笑顔がサマにならない役者なのだ。

 倉田マユミ。田中徳三「誘拐」と同様に、挙動不審な「謎の同居人」が出色で。
 もちろん「誘拐」では、実は主人のモト妾の、今では女中頭扱い。本作では、根上の世話をする女中、という「謎」でもなんでもない「同居人」なのだが、二作とも、あのウロンな顔で、いかにも謎めいた、挙動不審な登場、行動。
 ドアを開けると、いつも彼女が立ち聞きしている(笑)。
 「謎の同居人」女優と呼ぼう。この時期の大映で、そんな彼女をいく本か見た気がするぞ。別名「究極の出落ち女優」というべきか。
◎追記◎そうそう増村保造「恋にいのちを」(感想駄文済み)でも、出落ちとも言うべき挙動不審者の印象で。

 ラスト、根上と高松、船越が一瞬交差して、そこに小サスペンスはあるが、基本はのんびりサスペンスだ。
なお、九州の根上が、何の面識もない上州高崎の失業者・船越を、いかに知って手紙を出し、高松捜査を依頼したのか、映画を見ているあいだわからず、そこが不思議。

★Movie Walker★に、詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2014-10-02 00:29 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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