山本嘉次郎「花の中の娘たち」岡田茉莉子杉葉子小林桂樹小泉博平田昭彦東野英治郎
京橋にて。「日本の初期カラー映画」特集。53年、東宝。
東京の隣、神奈川はまったくのド田舎。そこでは、都会と違う時間、価値観倫理が流れている。
そのなかで、相変わらず(笑)小林桂樹は、明朗ぼんやり、ほのぼの。
花の中の娘たち(95分・35mm・カラー)<フィルムセンターHPより>
東宝のカラー映画第1作『花の中の娘たち』は、『カルメン故郷に帰る』同様、田舎と都会の対比を明るく描いたドラマで、当時の批評ではフジカラーの淡い色が日本の風物によく合っていると賞賛された。東京近郊の梨畑農家の長女で都心のホテルで働くよし子(杉)をめぐって恋物語が展開する。同様にフジカラーで撮影されたアニメーション2本を併せて上映。
'53(東宝)(監)(脚)山本嘉次郎(脚)西島大(撮)完倉泰一(美)河東安英(音)レイモン・ガロワ=モンブラン(出)岡田茉莉子、杉葉子、小林桂樹、小泉博、平田昭彦、小堀誠、本間文子、鴨田清、東野英治郎、立花満枝
以下は、同時上映の短編アニメ。
幽霊船(YUUREI SEN)[デジタル復元版](11分・35mm・カラー)
'56(大藤スタジオ)(監)(作画)大藤信郎(音)平井康三郎
努力賞。スタイリッシュなのは、買う。
黒いきこりと白いきこり(16分・35mm・カラー)
'56(日動映画)(監)藪下泰司(原)浜田廣介(脚)(原画)森康二(撮)石川光明、佐倉紀行(原画)熊川正雄(動画)大工原章、市野正二、長沼寿美子、進藤進、内山孝、寺千賀雄(音)斎藤高順
リベラルお花畑。熊や狐やリスを殺す猟師は悪くて、熊や狐やリスを温かく迎える猟師は素晴らしいという、なんなのこのお花畑は。藪下泰司や浜田廣介は豚や牛は食わんのか。
◆フジカラー
1939年からカラーフィルムの開発を進めていた富士写真フイルム(現富士フイルム)は、1947年、学術映画『胃癌の手術』において初めて三色多層式フジカラーフィルム(外型反転)を使用し、1949年に映画用35mmカラーフィルムを発売。長篇映画では、1951年の『カルメン故郷に帰る』、1953年の『夏子の冒険』(中村登監督)『花の中の娘たち』と計3本で使用された。富士フイルムはその後、内型ネガ・ポジ方式のカラーフィルム開発へと方針転換し、1958年の『楢山節考』で同方式が確立する。
登場人物やら物語が、なんだか成瀬巳喜男「あにいもうと」を連想させるが、もちろん山本嘉次郎演出は、成瀬程の緊密さがあるわけではなく、凡庸な一作。
杉葉子(たちまちスターダムから脱落したのが納得の平凡さに落ち着く)と小泉博のぐだぐだ、もこんにちの視点から見ても、不自然。当時としては未婚の娘の倫理観に支配されすぎ、キスすらしていないのに娘の実家に行き、相手の両親に娘さんをくださいという。これが果たして、恋愛であるかすら、よくわからないレヴェル。
いくら戦前の巨匠だって、この「ぼんやりとした不作為」は、おかしいだろ。
まあ、目線の交差だけで「すべてを物語る」成瀬と、比べることすらはばかれる技量。そもそも戦前だって、巨匠扱いされるレヴェルだったのかすら、疑問に思えてくるぞ。
まだコドモコドモした岡田茉莉子の、メイクがすごいことに。お顔がマッカッカ。上記解説の「当時の批評ではフジカラーの淡い色が日本の風物によく合っていると賞賛」された、というのが信じがたい。異常に顔がドス赤い(笑)。
今回のニュープリの焼きが違うとでも。
また、ごく若い娘なのに、つける口紅が、大人向けの深紅。当時いかに口紅の色の多様性がないとしても、大人の女も若い娘も、すべて深紅一色とは。
しかし、メイド仕事とはいえ、杉葉子の勤めるホテルの近代的アメリカ仕様と、神奈川の日本的ド田舎の対比。まさに天国と地獄(とは、言い過ぎで、田舎の良さも小林桂樹が体現)だったか。
なお、本作ニュープリだが、スタッフ・キャストの冒頭クレジット、ラストの「終」マークが、欠如。つまり文字クレジットは、別撮りであり、最終的に合成して完成するはずが、その文字クレフィルムのみがないという。ぼくたちは、文字クレジットがない、安手の作りモノの、流れる水を、しばし呆然として、見ていましたとさ(笑)。
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by mukashinoeiga | 2014-06-01 08:20 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)
真っ赤すぎました(笑)。色っぽさとは無縁のアイテムに、逆に色気を感じるとは、お互い、ヘンタイですなあ(笑)。 昔の映画