野村芳太郎「踊る摩天楼」
渋谷にて。「野村芳太郎監督特集」。56年、松竹。
実は何気に、面白映画が多い高打率ヒットメイカー野村芳太郎。本作もグッド。
徳川家の末裔の「若殿」川喜多雄二と、若手TV局ディレクター高橋貞二を中心とした、このラヴコメも、快調なり。
特筆すべきは、戦前松竹以来の、日守新一。川喜多の家の「家老」という「時代錯誤」な役にばっちり。老け作りで老家老を快演なのは、ヒモリンファンとして、うれしい。
卑怯な(笑)エロキューションと、極端なイントネーションにますます磨きがかかり(笑)せりふ自体やシチュエーションの面白さがないまま、その独特の発声で、笑いをかもし出す。
おそらく戦前のヒモリンなど見たこともないだろう若い衆たちが、後半ヒモリンがしゃべるたびに、笑いを発していた。いわゆる森繁プシといわれる、森繁口調は、せりふ自体の面白さやシチュエーションの面白さも含めて笑いを取っているのだが、本作のヒモリンは、大仰な台詞回しのみで、観客を笑わせる。
至芸。
これに感動したのか(笑)野村演出は、ラストカットを、若い高橋貞二らスタアではなく、ヒモリンでシメる。
娘・藤乃高子の結婚後、ひとりさびしく残される父、という小津映画おなじみのラストのパロディで、部屋の照明を徐々に落とすという演劇調。なんだか、本作の実質主演がヒモリンかとも、思えてくる(笑)。
タイトルのハリウッド・ミュージカル調からもわかるように、本作、歌とダンスの間をドラマでつなぐ、野村流オペレッタ。
川喜多の姉・越路吹雪を始め、朝丘雪路、中川弘子(父譲りのタップも披露。確かお父さんも出ていた?)小坂一也、モチロン元歌手の大木実も、ちょいと歌う。
大木実は、ぼうぼうのひげを剃ったら、いいオトコ、というお定まり。別にこれは、小津を意識したものではなく、定番ギャグの援用だろう。
東踊り?みたいな設定か、劇場で踊りを披露するのは、超美貌の有馬稲子、特別出演。大勢の当時のタレントも出ていて、いかにもお正月映画らしい華やかさ。
ただ、そのブン、歌わない高橋貞二は、主演クラスなのに、生彩を欠くのは、致し方なし(笑)。
なお、冒頭クレジットを見ていて、終わり近くのその他大勢の中に、槙芙佐子の名が。
フィルムセンターで最近見た大庭秀雄「感激の頃」39年の、戦前松竹ヒロイン女優。率直な美人だが、あまりにあくがなさ過ぎて、主演としては、残らなかった。その彼女が、エキストラ?扱いでクレジット。
「見合いの客」として、四人クレジットされたうちの一人。残り三人の名前は、視力に入らなかったが、彼女のみ、目に入った。
そもそも「見合いの客」などというクレジットも、不思議。ふつう、見合いに客はいない。
おそらく、見合いの場に設定された劇場で、有馬稲子が日舞を踊る。その観客(主人公周りの)の、和服の女性が何人かいたが、そのひとりだろうか(判別は不能)。
そもそもほんの数秒映るかどうかのエキストラに、クレジットがあること自体が、当時としては異色。かつて戦前はヒロイン女優でもあった彼女を、松竹は遇したということだろう。となると、残りの三人も気になるが。
その見合いの場の劇場にちらりと顔を出すヒモリンあたりは、おそらく戦前共演しているはずで、たぶん認識していたと思う。「おはようございます。お久しぶりです」などと挨拶を交わしていたのかと推測するが、なんだか、面白い。
なお、サブタイトル(原作明記)込みの正式タイトルは下記。
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by mukashinoeiga | 2014-05-24 10:54 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)