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野村芳亭「琵琶歌」「東京音頭」

野村芳亭「琵琶歌」
 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。33年、松竹蒲田、サウンド版。
 亡父が犯罪者だから、という理由でその遺児たちの兄いもうと(岡譲二、川崎弘子)も、貧しい村で、村八分。差別を受ける。その兄妹に同情した東京の金持ちの息子が、「可哀想だた、惚れたってことよ」(by夏目漱石の名言)と、川崎弘子を娶る。
 ところがその母親(川崎弘子の姑)葛城文子が、強盗の娘なんて当家の嫁にふさわしくない、とばかりに、息子の留守中、勝手に川崎弘子を離縁してしまう。 

琵琶歌(91分・35mm・サウンド版・白黒)<フィルムセンターHPより>
松竹蒲田撮影所の草創期から活躍し、松竹現代劇の基礎をつくった野村芳亭監督によるサウンド版小唄映画。三蔵(岡)とその妹・里野(川崎)は、亡父に窃盗罪の前科があったため、村人から除け者にされている。たまたま彼らと村人の争いの仲裁に入った貞次(竹内)は、里野に好意を持ち、やがて二人は結婚するが…。
'33(松竹蒲田)(監)(脚)野村芳亭(原)大倉桃郎(撮)長井信一(美)脇田世根一(音楽指揮)島田晴誉(出)岡譲二、川崎弘子、竹内良一、新井淳、葛城文子、奈良眞養、筑波雪子、宮島健一、日守新一、坂本武

 たいへん安心感があるベスト母親女優だが、葛城文子は、異常なまでの高確率で、ほとんど、判断を誤る(笑)。しかし、彼女が判断を誤るがゆえに、戦前松竹メロドラマは、ドラマとして、転がっていくのだ。戦前松竹メロドラマの、隠れキー女優として、その存在感は、大きい(笑)。
 その葛城文子の、誤った判断で嫁を離縁した結果、川崎弘子は発狂、妻を愛する息子も悲惨な目に・・・・。
 うーん、葛城文子が、狭量な偏見のもと、嫁を虐待しなければ、みんな、幸せになれたのに。川崎の義父(葛城の夫)も川崎にやさしく、ほんとうに葛城文子の「狭量な心根」だけが、すべての悲劇をもたらす。
 なお、戦前松竹の母親役女優は、飯田蝶子、吉川満子、など何人かいるが、彼女たちは、葛城ほど、判断をあやまる専制独断母親を、演じていないと思う。目が怖い声が怖いヴァージョンの吉川満子が、時折、葛城文子の域に迫るが、まあ葛城文子のふもとに行くかどうか、というところで。
 判断を誤る専制の母は、葛城文子の独壇場。ま、善母の役の葛城文子も、たいへんいいのだけど。

 川崎弘子は発狂したときの表情が、平常時の美貌に比べて、たいへん美しい。これこそ白痴美か。
 ヒモリン、坂本武、ノンクレジットの突貫小僧など、80年前の映画なのに、みんなおなじみの顔というのは、戦前松竹ならでは(笑)。
 都会派ダンディの岡譲二が、珍しく田舎者の役で、普段の厚化粧(当時フィルム感度が低い無声映画では、ありがち)ではなく、すっぴんに近い、それでも、差別される田舎者には、見えない堂々とした男っぷりなのは、明らかにミスキャストだが、この種の娯楽スタア映画に、それを言っても、しょうがないか。
 なお、タイトルの「琵琶歌」は、夫が妻・川崎を慰めるために弾く琵琶のゆえ。まあ、サウンド版ゆえの、歌唱の趣向か。
 都会派のスタッフ・キャストが、田舎者の因習(村八分、および都会の母親ではあるが、息子夫婦の人権無視)を批判しよう、という上から目線もありーの。なおかつ、それら因習をメロドラマの糧に利用する一篇。

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野村芳亭「東京音頭」
 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。33年、松竹蒲田、サウンド版。

東京音頭 (87分・35mm・サウンド版・白黒)<フィルムセンターHPより>
「東京音頭」のサウンド版小唄映画。野村芳亭監督によるオリジナル・ストーリー。「東京音頭」は1933年にビクターより発売(前年に発売された「丸の内音頭」を改題・改詞)。爆発的なヒットとなり、今では盆踊りの定番曲となっている。
'33(松竹蒲田)(監)(原)野村芳亭(脚)陶山密(撮)長井信一(美)根岸信男(音楽指揮)島田晴誉(出)伏見信子、藤野秀夫、葛城文子、市村美津子、岡譲二、岩田祐吉、水久保澄子、宮島健一、竹内良一、大山健二、磯野秋雄、勝俊二、岡田嘉子、龍田靜枝、井上雪子、泉博子

 当時人気の東京音頭をフィーチャーした映画を、サウンド映画として、作ろう。ついては、ストーリーは、適当に見繕ってくれたまえ、ということで、何度も東京音頭が流れ、ヒロイン伏見信子(かわいい)が、踊りの稽古をするシーンもあり、クライマックスの愁嘆場は、東京音頭流れる盆踊り大会の夜に設定されているのだが、お話自体は東京音頭とは、縁もゆかりもない、ただの凡庸なメロドラマ。
 キュートな岡田嘉子の、ダンサー仲間に、井上雪子がいたり、エキストラ同然のダンスホールの客に徳大寺伸が、秒殺で現れたり。でも、数秒の彼がクレジットされるのは、新進スタアとしてのお披露目の意味もあるのか。
 だとすれば、徳大寺伸のお仲間、渡辺忠夫、東上悟、日下部章というのも、日の目は見なかったスタア候補だったのか。

東京音頭


盆踊り・生歌による丸の内音頭(第10回日比谷公園大盆踊り大会)

 「ほんにお前を数寄屋橋」「踊りゃ心も丸の内」、こっちのほうが「東京音頭」より数寄屋橋(笑)。

勝太郎・きみ栄・久保幸江・市丸 ~ 東京音頭・炭坑節・トンコ節・茶


三味線ブギ 市 丸  1985' (11)

 えーい、おまけだ。単に、好きなので。ただ、お年のせいか、テンポが遅く、またバックバンドの演奏も三味線色?が薄い。もっと、オリジナル音源のように、テンポがよく、三味線色が強ければ、言うことなし。
 ということで、探したら、こっちのほうが、「ますますよくなる」↓
三味線ブギウギ 市丸(昭和24年・44年)

 もう、こうなってくると、映画なんて、どうでもよくなってるな(笑)。

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by mukashinoeiga | 2014-04-06 11:05 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)

Commented by お邪魔ビンラディン at 2014-04-06 13:25 x
東京音頭と来ると、やっぱり、これが出て来なけりゃあね。(原曲への冒涜かな?)
 https://www.youtube.com/watch?v=gN8o8jAQMQw
ようつべには、初音ミク版もあるようですが。
Commented by mukashinoeiga at 2014-04-06 21:43
野村芳亭「東京音頭」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 見ました、というか、聞きました。ありがとうございます。
コミックソングとして売れるには、もうひとつパンチが足りないかな(笑)。
 というか、発売以前にお蔵入りになったのは、過激な内容以前に、著作権問題でしょうね。アメリカの映画会社に訴えられる可能性とか、ましてやきむずかし屋で知られるジョディ・フォスターの名前をはっきり出した時点でアウトかと(笑)。
 かといって、国際弁護士を立てて、交渉するほどのこともない伊集院ですからねー(笑)。事前にしても事後にしても、手間と金をかけていられないということで。
 かつてジュリーが♪ボギー、あんたの時代は、よかった~、と歌ったころは著作権なんてそれほどでもなかったし、何よりボガートは過去の人でしたからねー。フルネームでもないし。    昔の映画
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