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高嶋達之助「お嬢お吉」溝口健二補導

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。35年、第一映画。
 冒頭、松竹株式会社、日本映画配給株式会社、映音(音映?)トーキー、第一映画と、4枚のカンパニー・ロゴが出る。昔日の日本映画としては、珍しい。
 胴元(黒幕)、差配師、トーキー・サポートの叔父貴、下請け、といった、按配、だろうか。
 さらに、新人監督の「補導」とクレジットされるのが、溝口健二って。クレジットが、多すぎる(笑)。
 なお、録音にマキノ正博とクレジット。トーキー技師時代。「おしゃべり」なマキノが、現場にいながら、録音のみに徹していたとは、思えないが(笑)。

お孃お吉 (64分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
第一映画社で溝口健二作品の脚本を担当していた高島達之助の監督デビュー作。溝口は応援監督として参加している。船宿の女将・お吉(山田)は、「お嬢お吉」の異名を持つ、強請の常習犯である。足を洗おうと決心したお吉は、見合い相手の材木問屋の若旦那(林)にすべてを告白するが…。1934年に第一映画社が創設されてすぐ、松竹は「日本映画配給株式会社」を興して同社作品の配給を開始した。
'35(第一映画)(監)高嶋達之助(原)(脚)川口松太郎(撮)内炭吉四郎(美)久光五郎、斉藤權次郎、花谷数雄(音)福田蘭童(出)山田五十鈴、原駒子、梅村蓉子、林敏夫、小泉嘉輔、雲井竜之介、芝田新

 まだ可愛い頃の山田五十鈴が、ぶりっ子お嬢様のフリをして、大店の若旦那とのお見合い、結納金を騙し取り、さらに結婚式当日は、年増の似ても似つかない花嫁が現れ、破談、始末料をもらって逃げきる、二重取りとはいい条、なんだかコスト・パフォーマンスが悪そうな、美人局。
 ブリっ子の五十鈴もいいし、アバズレな五十鈴もいい。
 ただし、モンダイは、若旦那役の林敏夫。下加茂からの特別出演とクレジット。当時の人気スタアらしい。 
これが、なよなよした男のなよなよ演技で、つまり、演技に感情が、こもっていない「旧劇」調。
 感情の表現としての演技、という現代の演技ではなく、まるで舞踏のように、演技の型を墨守した、今の目で見て、それは、出来損ないの人形芝居だろう、というギクシャクブリ。
 イヤー、醜態(あくまで、現代の視点で見て)な、なよなよ演技、無感情な木偶人形演技。

 ミゾケンが「監督補導」、果たして名義貸しだけに過ぎなかったのか、かなりフォローしてたのか、いざ知らず、この林敏夫の、演技のひどさは、ないだろ。厳密厳格な演出者(と、される)ミゾケンが、「補導」作品とはいえ、林敏夫のダボハゼ演技をフィルムに定着させた事実は、大きい(笑)。
 女優の演技にはきつく当たるが、男の役者の演技は、ダボハゼでも、いいのかミゾケン。
 あるいは、逆に「忖度」すると、林敏夫を出演させる企画が起こったとき、自身はからくも逃げ切り、その代わり子飼いの脚本家(助監督ではなく)に「押し付けた」のかも、しれない。
 まあ、考え過ぎか。

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by mukashinoeiga | 2014-03-30 22:40 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)

Commented by なご壱 at 2014-04-04 17:43 x
林敏夫は、ウィキペディアで調べると初代中村鴈治郎を祖父に二代目中村鴈治郎を叔父に持ち、歌舞伎界から鳴り物入りで映画デビューを果たしたとのことです。やはり昔の映画さんがおっしゃるようにミゾケンは、林をつかうのがいやで弟子に押し付けたのだと思います。その後、林は、映画をやめ歌舞伎界に復帰して1945年に30歳で戦死したそうです。その忘れ形見が俳優の林与一とのことです。
Commented by mukashinoeiga at 2014-04-04 22:45
高嶋達之助「お嬢お吉」へのコメント、なご壱さん、ども。
 なるほど。雁治郎家系で、雁治郎になれなかった林敏夫なわけですね。線も細すぎたということでしょうか。
 林与一も、オヤジよりは良いが、線が細かったなあ。
 この絵にかいたようなツッコロバシ林敏夫だけではなく、先輩格のマキノが録音技師、というのにも、苦虫が走ったミゾケンの顔が目に浮かぶようで?逃げたくなるも道理か(笑)。
 マキノ、ほんとに、他の迷惑顧みない、天然や。自ら進んで、後輩監督のスタッフになるって。ミゾケン、怒髪天なシチュでは(笑)。
 でも、弟子に、押し付ける、というのも、非道やねー(笑)。さすが、鬼畜のミゾケンで。 この映画のメイキングがあれば(もちろん当時では、ないものねだりだが)ミゾケンとマキノの、率直な感想など、聞いてみたかった(笑)。    昔の映画
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