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原研吉「ことぶき座」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。45年、松竹京都。
 東京で成功した浪曲師・高田浩吉が、北海道巡業中、釧路に立ち寄る。釧路は、浪曲師として苦悩した青春の地。
 釧路の劇場ことぶき座の花形スタアだった彼は、その興行主・小杉勇の娘・高峰三枝子への「身分違いの恋」に苦悩して、自滅した土地だった。
 かつて愛したお嬢さん・高峰は、どうなっているのか、気になって仕様がない浩吉なのだった。
 浩吉の「根岸の」師匠・廣澤虎造に、廣澤虎造本人。若き虎造、意外と二枚目。
 座員に朝霧鏡子、坂本武。坂本が三味線を弾くと、場内が、小さくどよめく(ないし、失笑)。やはり無骨な坂本には、芸人は、似合わないなー(笑)。

ことぶき座(65分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
無声映画期から1950年代まで松竹時代劇で活躍した高田浩吉が、浪曲師に扮する。梅中軒鶴丸(高田)は、北海道・釧路のことぶき座の所有者鈴村(小杉)の娘・千代(高峰)に思いを寄せていた。しかし鈴村に、才能をくすぶらせてはならないと諭され、東京でやり直すことに。8年後、成功した鶴丸が慰問のため釧路を訪れると…。鶴丸が東京で弟子入りする師匠に、浪曲師・広沢虎造が本人役で出演。
'45(松竹京都)(監)原研吉(原)野崎正郎(脚)岩沢庸徳、岩間鶴夫(撮)布戸章(出)高田浩吉、小杉勇、高峰三枝子、桑野通子、小堀誠、廣澤虎造、朝霧鏡子、坂本武

ことぶき座(1945)/原研吉


 戦争末期の映画ゆえ、物資不足、フィルム不足のゆえか、冒頭クレジットがない時期の映画。ゆえに、クレジット再現を旨とする★所蔵映画フィルム検索システム★には、監督以外一切のクレジットなし。いかにも、お役所仕事だな。
 なお、高峰三枝子が、ナンパな不良見合い相手から、誘われて猟銃撃ちを見学するシーン。見合い相手の男が銃を撃つと、かなり離れた石河原にいる浩吉が、うっとひざまづく。まるで撃たれたかのようだが、距離が遠すぎる。
 憧れの高峰三枝子が、他の男に取られつつある、という心理的「被弾」を表現した幻想的シーンだ。
 しかし、こんな「抽象的」ショットの非連続編集とも言うべき連なりは、戦前松竹では、ついぞ見たことないな、と疑問に思っていたら、あっさり氷解。脚本にクレジットされた岩間鶴夫
 おめーだな(笑)。イワツル、この時期、松竹助監督であり、だから、この映画の助監督も兼ねていよう。
 石河原でうっとうずまくる(だけ)なんてショットは、おそらく別班撮影として、原研吉は帯同せず、イワツル助監督が撮影したものと、勝手に推測。
 
 岩間鶴夫。戦後松竹で数々のB・C級映画を監督。 
★日本映画データベース/岩間鶴夫★
 
 まあ、たいした映画はまったくないのだが、それ以上に、トリッキーな映像、つながらないギクシャクした編集に固執したところに彼の特色がある。
 不安をあおるサスペンス映画で、画面に渦巻きをぐるぐるぐる。こんなの、無声映画時代の、古いトリッキー映像だろ、と。子供時代の美空ひばり主演映画で、ひばりが歌えば歌うほど、周りがどんよりするという、通常娯楽映画とはマ逆な「意欲的」な演出。
 唯一感心したのは、メロドラマでヒロインが銀座でお見合い写真を、おばさんに見せられるショット。戦後すぐの夜の銀座は真っ暗で、その真っ暗な中、おばさんがライターを点火すると、一瞬だけ、お見合い相手の写真が、ヒロインに見える。いやあ、映画的や。
◎追記◎いや、ライターでなく、マッチだったか。当然、マッチだったと思う(笑)。ヒロインは、たぶん、津島恵子だったか。
 しかし、モンダイは、その映画的表現がまったく、生かされないこと。無駄なトリッキー。意味のない過剰さ。
 鈴木清順が松竹助監督の鈴木清太郎時代、岩間鶴夫の専属助監督であったことは有名だが、岩間鶴夫は、いわば<失敗した鈴木清順><鈴木清順になれなかった男>ということができる。
 不肖の弟子、という言葉があるが、岩間鶴夫は、いわば鈴木清順の不肖の師匠なのだ。イワツルの過剰トリッキー映像を支持しつつ、しかし、それがなぜ何の効果もエモーションも呼び起こさないか、鈴木清太郎は、考えていたはずだ。
 その岩間鶴夫が、戦後だけでなく、45年時点で、すでに、この、つながらない編集を試みていたとは、意外だ。
 しかし、この異質ショットが、この映画でここだけであり、かつ何の意味ももたらしていないのは、明らかであり、残念。
 映画自体は、浩吉の芸道モノとして水準。
 また、ヒロイン高峰の叔母役で、桑野通子がワンシーンのみの出演。三枝子に、見合いを勧めるオバサン、て、戦後なら沢村貞子あたりの役どころだろ。さすがに失礼だろ。でも、そんな役でも、にこやかに演じるクワミチ。
 その和服も家庭婦人らしいのが、いじらしい。
 戦時中は、急速に出番が減った<モダンガアルの末路>。うーん。

★日本映画データベース/ことぶき座★

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by mukashinoeiga | 2014-03-21 00:09 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(3)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2014-03-21 00:58 x
 この映画は、今回の松竹篇で見逃した数本のうちのひとつですが、原研吉は慶應仏文出身で、滝口修造とほぼ同い年で、シュルレアリスム風の詩も作っているという話を聞いたことがあります(作品は未確認)。原因は監督か、はたまた脚本家かの判断は難しいところですね。
 岩間鶴夫監督のシムノン原作「その手にのるな」は、なんと、ジュリアン・デュヴィヴィエの「パニック」をそのままリメイクしたような格好の映画で、クライマックスの構図なんかは、そのまんまのイタダキです。元祖が「フランス版伊藤雄之助」のミシェル・シモン主演なのに対して、日本版の主演は高橋貞二。小金治師匠がさむーいギャグを連発したりして、元祖とは、かなり差のある仕上がりとなっています
Commented by mukashinoeiga at 2014-03-21 22:32
原研吉「ことぶき座」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 原研吉、そんな背景が。ぜんぜん思い至りませんでした(笑)。松竹映画監督としては、そんな「過去」は封印した職人人生だったかと? かのショット、編集、いかにも岩間鶴夫映画そのままでした。
 「その手にのるな」は、かのパトリス・ルコント「仕立て屋の恋」と同じシムノン原作(未読)というのは有名ですが、もう一本「パニック」というのもあるというは初耳。
 ぜひともフィルムセンターあたりで三本比較上映をしていただきたいもので。        昔の映画
Commented by mukashinoeiga at 2014-03-21 23:01
「仕立て屋の恋」と「その手にのるな」続き。
 確かにウザイ、お寒い小金治のどたばたでした。
 ムードあふれる片思い?モノと、団地でみんなが右往左往のどたばたサスペンスと、とても同じ原作とは、思えませんでしたね。      昔の映画
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