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宗本英男「妹の晴着」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。39年、松竹大船。
 いかにも戦前松竹らしい快作。
 主演・水戸光子としても、美貌、娘役の演技でも絶好調で、彼女の代表作ともされる同年の「暖流」より、はるかに輝いている。これだから、「映画史の定評」なんて、当てにならない。
 タイトルロールの「妹」羽田登貴子は、見かけない顔だが、顔も声も演技も主演女優の魅力オーラなし。たぶん数作で消えてしまったものと思う。見ていて楽しい顔、声、演技でないと、主演は勤まらない。水戸光子には、それがあり、羽田登貴子には、それがない。
 なおはるか後年の松竹で、同姓の羽田美智子が、あまりに主演オーラがないのに多用されたため、奥村プロデューサーの愛人かと、揶揄されたことがあったのは、別の話。
 近年の中村義洋「ジェネラル・ルージュの凱旋」での、羽田美智子は、なかなかよかった(重要な脇役として)。経験ゆえか、若いころには真価を発揮できない遅咲きの花ということか。

妹の晴着(81分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
清子(水戸)は株式取引所で働き、一家の家計を支えている。彼女は、主任の瀧本(徳大寺)に好意を持っていた。しかし、取引所の同僚で、妹(羽田)の恋人でもある並木(三原)が、客の金に手を付けてしまったことを知る。本作で好演した水戸は、この後、『暖流』(1939、吉村公三郎監督)の石渡ぎん役で注目された。
'39(松竹大船)(監)宗本英男(脚)猪俣勝人(撮)杉本正二郎(美)五所福之助(音)万城目正(出)水戸光子、羽田登貴子、遠山文雄、吉川満子、水島亮太郎、德大寺伸、齋藤達雄、花房廣子、三原純、河原侃二、奈良真養、西村青兒、松井潤子、高橋佳代子

 水戸光子が良くて、その母親に、相変わらず抜群の安定感の吉川満子の、ダブルみつこ。
 水戸光子がしたう德大寺伸も、最高によい。若いのに座禅が趣味で、水戸にフラレて、「あなたのことを時々思い出して、心の修行とします」ということばには、思わずホロリ。
 斎藤達雄の縁談申し込みを、心ならず水戸光子にしなくてはならなくて、酔っ払って水戸光子に掛け合うとこなんざ、松竹メロドラマの定番ではありながら、名シーンや。
 戦前松竹のメロドラマのお約束は、たとえば、この斎藤達雄の役がヒヒ爺いで、金の力でもって水戸光子を、後妻に直させるというようなことが多発しがちだが、本作の斎藤達雄は、本当によい人。
 誰ひとり悪人がいないのに、みんな善人なのに、追い詰められて、こと志と反する水戸光子。皮肉な結末ながら、斎藤達雄と、その幼子が良いので、救いがある。
 妹のカレシ・三原純が、普通に、ちゃんとしていれば、すべてはハッピーだったのに。
 三原純、あまりにうじうじしていて、新妻に「秘密」が、バレそうだ(笑)。だいたい、こんな秘密、もし妹が知ったら、「姉を犠牲にして自分だけ幸せ」なシチュに、耐え切れるのか。その瞬間、夫婦崩壊だろう。
 これが佐分利信なら(笑)、秘密は棺おけの中まで安定で持っていきそうだが、三原純、耐えられるのか(笑)。
 戦前松竹ファンを自負しながら、今回高倉彰と三原純を、初めて認識した。それくらい多作であり、ある種のオーラは、ある。ただし、その名前が現代に残らなかったのもまた事実。
 幼形成形されたかのような頼りない顔立ち、いつも、情けなさそうな役回り、それはある意味現代的でもあり、昔より今のほうが合いそうなキャラでもある。ある一定あるオーラも、あまりに弱すぎ、結果映画の歴史に残らず、「いまっぽさ」ゆえに(ある程度の)注目をフィルムセンター常連に、もたらしている。
 
 なお、本作の後半は怒涛のせりふ量。水戸光子も德大寺も、自分の心情を語り合う語り合う。81分のランニングタイムだか、監督の力量だか、あるいは脚本・猪俣勝人の、上記のようにせりふもうまいが、量も多かったのか。
 せりふはいいのだが多すぎ、情緒が減じられるほど、せりふの洪水というべき。
 その結果、余裕のない映画展開となったのは、痛い。
 監督が手ダレであったら、ある程度は回避されたのか、81分ではムリだったのか。いや、60分台でも、いい作品はあることが、今回の特集でも何度も確かめられた。せりふを削れなかったゆえの、せりふ量。
 しかしそれにもかかわらず、本作の快は、揺るがない。

★妹の晴着/フィルムセンター所蔵映画フィルム検索システム★
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★所蔵映画フィルム検索システム★
 斎藤達雄の幼い息子は、女の子が演じている。結果愛らしさ倍増の子役だ。

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by mukashinoeiga | 2014-03-16 22:45 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

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