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大庭秀雄「むすめ」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。43年、松竹大船。あと1回の上映。
 たいへん楽しい戦前松竹通常娯楽作のラヴコメ&ホームドラマ。
 満員電車の中で、いっぱいの荷物をかかえた中年婦人・岡村文子、彼女を座らせようとした髙峰三枝子、悠然と座っている上原謙青年に、おかんむり。ここで岡村文子は三枝子を見初め、息子の嫁にと。同時に、最初はけんか腰だけど、三枝子・上原の出会いに。グッドな展開。三枝子、謙の魅力全開の楽しさ。日本的スクリューボール・コメディとしても、楽しい。
 三枝子は歯痛、偶然行った近所の歯医者が上原謙、「むすめ」としては不本意な再会。
 大口を開かされ、目を白黒、上原に治療器具を口に突っ込まれ、若い娘にとっては、屈辱なシチュ(しかも歯医者が美青年の上原という羞恥きわまるわけで)戦前松竹としても、かなりエロティックな絵づらになって、清純派なのに肉感的な髙峰三枝子としては、ちょっとエロい展開だ(笑)。
 しかも、医者に行く前夜としては、父親レイキチに、歯痛には梅干だ、と伸ばした梅干をほほに貼り付けられ、梅干貼り付け三枝子も、妙にフリークスでエロティック。

 そして三枝子の父・河村黎吉が例によって、素晴らしい。
 少し前に、日本映画の大独演会俳優四天王に、バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清を挙げたが、これに河村黎吉も加えるべき。ただし、お小言専門で(笑)。
 バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清とは違い、河村黎吉は、会話コラボに、坂本武&飯田蝶子の超協力助っ人を得て、丁々発止。独演会に至らないのは、いいことか悪いことか。逆に言えば、バンツマ、小杉勇、森繁、渥美清は、坂本武&飯田蝶子クラスの共演者を得なかったために、独演会にしか、ならなかった、という見方も、ありうるわけだ。

 本作の河村は、幼なじみのお面屋・坂本武&飯田蝶子夫妻に文句を言い、大衆食堂のいい加減なオヤジ(武田秀郎、武田春郎と同一人物だな)にケチをつけ、もちろん娘の三枝子、息子の葉山正雄(かつての名子役も、思春期になり、ちょっと劣化か)にも、お小言。
 しかも葉山正雄への小言が、だんだん激励に調子に変え、息子なのに「ユウさんユウさん」と、さん付けのモダンさ。ご時勢に合わない?日本的に?アメリカナイズされた?いいオヤジだ。
 つまり、なんだろう、この映画、「時局」「緊急時」とは、まったく逆の、「ふわふわした、たよりない女心」「(三浦光子の三枝子への)女の友情」を前面に出した、「武張った戦時中時局」とは、真逆の「軟弱」映画だろう。
 そもそも、ひらがなで「むすめ」というタイトルからして、この「非常時」に似つかわしくないナンパさ。世間が「生きるか死ぬか」「一億玉砕」を叫ぶ中での、このナンパさは、やはりただ事ならないのではないか。
 その中で、やや不良じみた(といっても、夜の歓楽街を未成年がうろうろした、という程度の、今では当たり前のこと)息子を、小言を続けるうちに、「ユウさんユウさん」と、さん付け。ここに、松竹と河村黎吉のモダニズムが遺憾なく発揮されている。
 精一杯の日本式モダニズム。その余裕が、うれしい。河村黎吉の、いちいちユーモラスなお小言に、大笑い。河村黎吉、小独演会のお小言の、すばらしさ(笑)。

むすめ(77分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
大庭秀雄監督の戦中の佳作。洋裁店を営む久子(高峰)は、無職の料理人の父・新六(河村)を養っている。そんな中、近所の角平(坂本)とおかつ(飯田)夫妻が、久子の縁談を世話することに。だが、久子は、夫婦の娘・富江(三浦)と同じく、歯科医の向井(上原)が気になっていて・・・。河村黎吉・坂本武・飯田蝶子らベテラン勢の熟練した演技が興味深い。
'43(松竹大船)(監)大庭秀雄(脚)齋藤良輔、長瀨喜伴(撮)長岡博之(美)小島基司(音)朝比奈昇(出)髙峰三枝子、上原謙、三浦光子、河村黎吉、坂本武、飯田蝶子、水島亮太郎、岡村文子、葉山正雄、武田秀郎、山路義人

★むすめ★
 フィルムセンターも2種類の、ジェネレーション違いの作品紹介HPを作ることはなかろう。統一しては、どうか。前者には配役紹介がなく、後者にはあらすじ紹介がない。縦割り官僚仕事か。
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by mukashinoeiga | 2014-03-10 00:07 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

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