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大庭秀雄「感激の頃」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.7松竹篇」特集。39年、松竹大船。あと1回の上映。
 水準的戦前松竹ホームドラマ。父親が、河村黎吉でも坂本武でもない、これまた戦前松竹常連父親役者の藤野秀夫だが、謹厳実直な藤野ゆえ、まあ、まじめな映画ですな(笑)。
 しかし理解ある謹厳実直の藤野には、河村や坂本には出せない味があり、これはこれで快作なり。
 ラストの藤野には、ちょっと、感動。
 不良ゆえに勘当して横浜にいる兄息子が、新聞種になって(チンピラの三井弘次に因縁つけられてケンカ)同居している妹娘の縁談を断られてしまう。

 勘当息子に三原純。なんだか<戦前のオダギリジョー>みたい。「戦前感」が少ない、いまどきの二枚目みたいなところがあり、なぜ売れなかったのか。それは、彼の妹にも、言えるモンダイ。
 可憐な娘に槙芙佐子。この特集で注目され、一部の映画ファンに、いま、話題。なぜ、もっと注目されなかったのか、と俄然ひいきの的。きれいで、モダンで、垢抜けていて。そういう注目。
 本作2年後の大庭秀雄「花は僞らず(偽らず)」41(イッコ前に感想駄文)では、すでにヒロイン水戸光子の同僚という小さな役に「格下げ」になっている。このかっこいい彼女より、何で德大寺伸は、ドンクサい水戸光子を選ぶのか、と一部フィルムセンター鑑賞者は、不満顔。

 いや、この女優は、売れないでしょ(笑)。典型的「きれいなだけじゃ駄目かしら」女優。
 少し前にお邪魔ビンラディンさんが言ったような、<(女優として)性格がよすぎた>典型かと。主演スタアとして売れるには、何らかのアクの強さ、サムシング・エルスが必要なのだが、この女優には、決定的に<一歩前に出る>何かが、欠けている。
 美人なのに、女優としての華がないというか。美人だけど、押し出しが弱いというか。演技は、そこそこうまくて、でもクサミがなさ過ぎる。見ているものの心に響くフックがない、キャッチーではないのね。
 一般女性として、お嫁さんになら、売れ口は殺到するが、女優としてはねー、というところ。
 本作で彼女とダブルヒロインの三宅邦子、三宅の<女優としてのクサミ>、あの独特のねちっとした喋り方や、ぼくのセンサーには美人と認識できない、あのビミョーな顔立ちは、はっきり言って苦手で、戦前の「若い娘」役はぜんぜん似合わないと思う。戦後の、おだやかな「家庭婦人」役で、あの声もあの顔もあの演技も生かされ、花開いた女優だと思う。
 その三宅邦子でさえ、最低限に持っている、女優としての華が、槙芙佐子には、ない、残念ながら。
 だから「花は僞らず(偽らず)」で、德大寺伸ならずとも、美人で颯爽の槙芙佐子と、ちょいブスで、でも時折可愛い、性格は雑そうだけど(笑)キャッチーな輝きのある水戸光子を比較したら、男はたいてい水戸光子を選ぶと思うよ(笑)。たぶん(笑)。
 <キミは三枝子派か?光子派か?>の「暖流」伝説が、ぼく的に信用できないのは、「暖流」には、水戸光子の「下世話な魅力」が、まったく感じられなかったからで。
 キャッチーではない、という意味では、本特集に、ほんとうに頻出する高倉彰もそう。本作では槙芙佐子の見合い相手として登場。この時期の松竹映画の常連で、本特集の見る映画見る映画に、ほとんど出てくる印象だが、ぜんぜんよくない、というか無味乾燥な若手。若い男で、いいのは、みんな戦争にとられて、その結果、こういう清潔そうだが、無味乾燥男がのさばるということか。いや、のさばる意識は、本人にはないから、ちとかわいそうだが。
 まあ、戦時中という非常時に、こういう「無難」なキャラ、というのも、わからぬではないが。
 救いは、生きのいいチンピラを演じる「与太者トリオ」上がりの三井弘次。同じく「与太者トリオ」阿部正三郎は、三原純の相棒だが、なんだか顔がむくんでいるのが、ちと残念。
 この二人、若いころは気のいいアンちゃんだったものが、年をとると、やや悪相になり、すさんでくる。戦後の三井は、クサミのある脇役として活躍し、阿部は戦死したという。阿部のクサミのある脇役も、見たかった。
 なお、戦後は、いまいまはじけない原保美が、一応の、美少年で。藤野秀夫の教え子かつ三宅邦子の弟。いかにも「誰かと誰かは実は昔からの知り合い」なメロドラマ定番のご都合主義。
 藤野秀夫一家の女中・出雲八重子が若くて、出番が多くて、ちょっとお得。いや、松竹映画ファンとしてだけどね(笑)。ちなみに三宅邦子は、下では女給と紹介されているが、横浜だから、チャブ屋なのかも。

感激の頃(75分・35mm・白黒)<フィルムセンターHPより>
大ヒットシリーズ『君の名は』3部作(1953-54)をはじめ、松竹大船調を支え続けた大庭秀雄監督の最初期のメロドラマ。旧制高校の教授・石川(藤野)には、娘・俊子(槙)と、横浜に離れて暮らす息子・保(三原)がいる。保は、横浜で女給の上野波子(三宅)と知り合うが、彼女の客(三井)が起こした刃傷沙汰に巻き込まれる。この事件が原因で、俊子の結婚は破談になり…。
'39(松竹大船)(監)大庭秀雄(脚)齋藤良輔、長瀨喜伴(撮)寺尾清(美)五所福之助(音)篠田謹治(出)三宅邦子、槙芙佐子、三原純、藤野秀夫、原保美、坂本武、高倉彰、阿部正三郎、三井秀男、出雲八重子、谷麗光

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by mukashinoeiga | 2014-03-09 08:51 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

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