田畠恒男「花くれないに」

 阿佐ヶ谷にて。「お茶の間からスクリーンへ!劇場版のお・た・の・し・み」特集。57年、松竹大船。
 学校を出て、半年就職浪人だった高橋貞二が、岩手の男子高に職を得て、赴任する。
 つい最近も書いたように、年に二三本は必ず見る、若手俳優主演「新米教師地方赴任モノ」。
 初日に蛇を使ったいたずらをされ、早速あだ名(若ムジナというのが、時代がかっている)を頂戴すると、職員室では、いやあ、漱石の影響は偉大ですなあ、と話題に。って、この種のジャンル映画の元祖に言及する、メタ・フィクションとは、もちろん大げさな物言いですね。
 熱血漢教師・山嵐に相当する菅佐原英一、赤シャツ教頭に相当する中村是好など、典型的「坊っちゃん」フォロワー。岩手は男女別学なので、男子の東高に、対抗する?のが、女子の南高、その教師・小山明子が、さしずめマドンナという按配。小山明子につけられたあだ名が、ドリーム先生というのが、おかしい。
 で、この映画、始まって数分で、その駄目駄目振りが露呈してしまう。なんとも演出の間合いが悪いことは、素人のぼくにも、丸わかり。なんていうんだろう、勢いとか、熱気というか、絶無、だらだらとルーティン・ワークを、ただこなしているだけ。やる気のなさがダイレクトに伝わってくる、こんな映画も、逆に珍しい。
 本来は好漢なはずの高橋貞二の、妙に力の抜けた、無気力そうなナレーション。
 しかしそのなかで、相変わらずの笠智衆の快演が眼福。
 眼福といえば、これほど演出が駄目駄目でも、撮影は絶美。イーストマンカラーの美しい原色ライクな、ロケーション撮影、室内撮影も絶美。撮影監督は、あまり聞かない名前だが。
 さて、列車内での奇遇から、お琴の師匠・夏川静江の家に下宿することになる。
 てとっ、おお。
 つい昨年見た、感想駄文済みの山本薩夫「お嬢さん」の霧立のぼるも、日本家屋のお琴のお師匠さんの家に下宿するのではないか。
 清新な新人教師は、常に、田舎では、旧弊たる旧態依然たる「前世紀にたな晒しされ」たような牢固な旧趣味の家に住む、この明朗かつモンキリな対比。そしてその家の娘は、琴ではなく、ピアノを小山明子に習っている。
 で、その夏川静江の娘というのが、地域の小町的存在という設定。
 南高女子ピカイチで、男子校の東高男子のマドンナ的存在。ところが、このマドンナ女子高生を演じる女優が、演技は、まあ、うまいが、オーラなし。
 美人ですらなく、まあ言ってみれば、十人並みというところ。とても他校男子のうわさになるようなタマではない。
 下記のMovie Walkerとは違い、日本映画データベースでは、この役は桑野みゆき、となっている。
 ということは、もともと桑野がキャスティングされていたのが、何らかの理由でドタキャン、で、どうするんだ、となったときに夏川静江が「あたしの娘も女優よ」と言ったのか、あるいは「そういえば夏川さんの娘さんも、女子高生年代の女優じゃないか」と、言い出したため、急遽、夏川静江の娘役に、実娘の夏川かほるが、担ぎ出されたと、思える。
 イヤ、すでに、脇役の女子高生役に、母親がらみでキャスティングされていたのを、昇格した、ということだろうか。
 そもそも夏川静江は、戦前膨大な映画に出演した娘役らしいが、
★日本映画データベース/夏川静江★
 唯一見ているその一本伊丹万作「故郷」(感想駄文済み)でも、主演の女子大卒業生を演じているが、その主役オーラのなさは、ハンパない感じで。まさに母娘二代の女優ながら、ともにオーラなし。うーん、ザンコクや。
 母・桑野通子のオーラを、少しは引き継いでいる桑野みゆきなら、納得のキャスティングだったのだが。
 その他の女優、小山明子、夏川静江の長女・杉田弘子、居酒屋の看板娘・中川弘子、料亭のおかみ・雪代敬子など、それなりのオーラのきれいどころで、固めているのに、残念でした。もっとも、映画自体も、グズグズですけどね。
 ニュープリント同然の美しい映像で絶美の撮影を楽しむべき映画。
◎追記◎あらためて日本映画データベースを見たら、桑野みゆきなんて載ってなかった(笑)。なにを勘違い?

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by mukashinoeiga | 2014-01-31 22:17 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

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Commented by なご壱 at 2014-02-01 06:28 x
私も先週の日曜日にラピュタで見てきました。昔の映画さんがおっしゃるように撮影は、見事でした。馬のセリの風景は、高峰秀子主演の「馬」を思い出させてくれました。また夏川静江は、若い時からオーラがあまりありませんでしたが、フイルムセンターで見た溝口の「東京行進曲」では、入江たか子に伍してなかなかの存在感がありました。
もっとも映画は、ほんの10数分しか残っていませんが。
Commented by mukashinoeiga at 2014-02-01 09:41
田畠恒男「花くれないに」へのコメント、なご壱さん、ども。
本当に見事なロケーション撮影でした。ラピュタはニュープリとは言っていませんでしたが、傷ひとつない鮮明さ。
しかも、スタンダードなので、さらにラピュタの小さいスクリーンに映写機からの光線を集中して映写されるので、輝くようなまばゆさ。に、感じました。「東京行進曲」は、忘れてしまいました(泣)
 すいません     昔の映画
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