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瑞穂春海「森繁の 僕は美容師」

 阿佐ヶ谷にて。「お茶の間からスクリーンへ!劇場版のお・た・の・し・み」特集。57年、宝塚映画、配給東宝。
 たいへん楽しい。映画としては水準作ではあるが、例によっての森繁の独演会、脚本も楽しめる。1/11(土)まで上映中。
 これが今年のシネ初めだが、まずまずで、よかった(しかしシネ納め数本を駄文しないままのシネ初めは本末転倒だなあ)。
 森繁が、まだまだ男としては珍しい時代の美容院オーナー美容師。これを表現するのに、歩き方もしゃべり方もなよなよ。畳に座るときも女座り。まだまだ「男の職業」とは認知されない時点での、苦肉の表現か。
 普通なら、違和感ありまくりなのだが、達者な森繁節として、表現は快。彼の主演だと、どうしても独演会になってしまい、ドラマとしてはアレなのだが、快は快。
 当時の美容院、蛸足電気釜というべきパーマ機(年頃の娘さんが同業水戸光子の美容室で、髪が燃えて丸はげになったりとか熱がりの塩沢ときが悲惨な目にあったりとか)、客の婦人たちは夏のこととて、全員うちわで扇いだり扇がれたり。虚実交じりの描写が時代感あり。
 森繁の姉が、世話焼きオバサン沢村貞子。まだ女子高生の江利チエミに縁談をもって来る。遊びたい盛りのチエミ、まだまだ結婚なんて、「売約済み」なんてイヤなんだが、一応オバサンの顔を立てるためにお見合い、相手が江原達怡、当日沢村が病気のためハイティーンの息子井上大助が、代理の仲人、この時期の東宝ヤングの二人が、また楽しい見せ場。セーラー服の美人ではないが快活の江利チエミを含めて、いいんだよなあそのほのぼの感。
 高校生の姪ッコにすら、お見合い話を持ってくる世話焼きおばさん。いま、そういうものが一掃されて、三十娘、四十娘が跋扈。ああ、少子化も、やむなし。しかし、父親森繁、娘の見合いには熱心だが、親を無視して娘が相手とドライヴ・デートには、カンカン。無軌道な戦後派若者たち、早速連れ込みでイケナイことをしているのでは、と叱りまくり。この辺のダブル・スタンダードが、嫌われる元。この親の「無理解」が、「親管理のお見合いシステム」を壊して、現在の晩婚化少子化に、至る、と。
 でも、森繁、自分の娘のお見合い話には熱心でも(しかし、普通父親は娘はなるべく手元においておきたいのが人情では)亡き姉の娘・中村メイ子(この美容院の美容師兼女中としてこき使われている)の、結婚を含めた将来には無関心。
 森繁の姪なのに、この一家では娘の江利とは、明らかに待遇が違う居候・使用人状態。この辺の描写は、水木洋子原作だけに、きわめてリアルな、たんねんな従姉妹間の差別待遇描写。知らず知らず家庭内では実の娘と扱いが区別される、悲しみ。不幸顔の中村メイ子がよく似合う。脚本にも水木が絡んだら、傑作度は増したかもしれない。
 森繁、相手にいやな話を持ちかけるときは必ずオプション。姉・沢村に、娘の見合い話を断るときは、手土産。改築の見積もりの大工・田武謙三に工事を断るときは、昼間の一杯をおごる。ここら辺の何気なさがいい。
 おばあちゃん(亡き嫁の母)飯田蝶子、嫁いだ長女・北川町子(夫が佐田豊なのは、ちとかわいそう>笑)、水戸光子美容室「チューリップ」美容師・若水ヤエ子は、今回抑えた演技、隣家夫婦に坂本武・出雲八重子とは、うれしいおまけ。何気にゴーカな出演者も、OLDモノには、うれしい。
 なお当然のごとく、チエミと森繁は歌う。森繁の歌は、まだ森繁節完成以前なので、そんなにくさくない(笑)。

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by mukashinoeiga | 2014-01-08 02:01 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)

Commented by さすらい日乗 at 2014-01-10 09:00 x
この映画は封切り時に日劇で見た。日劇は、公演との間に映画を上映していた。
なぜ行ったのかは憶えていないが、映画ではなく、公演に誰か父の知合いが出ていたからだと思う。
映画の中身は全く憶えていない。
Commented by 昔の映画 at 2014-01-11 19:16 x
瑞穂春海「森繁の 僕は美容師」へのコメント、さすらい日乗さん、ども。なかなかにかよかったですよ。お気楽ものとしては許容の範囲で。    昔の映画
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