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木村荘十二「純情の都」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.6東宝篇」特集。33年、P・C・L。
 P・C・L(写真科学研究所時代のP・C・Lとして)自主製作開始第2作、という、まさに、うぶな、初期初期な東宝映画。
 同じ監督の同年のP・C・L第1作木村荘十二「ほろよひ人生」に、比べると、だいぶ複雑?な物語と、なった。
 朝のアパートの一室から、映画は始まる。
 モダンガアル竹久千恵子は、ベッドの中でパジャマ姿。タバコをスバスバのんだり、新聞を読んだり、のんびり。
 いっぽう、割烹着姿でかいがいしく朝食を作る千葉早智子。
 特に性的関係ではないようだが、女性二人のルームメイト。かっきりと、擬似性的役割は出来ているようだ。
 なんだか、気分は新婚夫婦。
 世慣れた、経験豊富なモガの竹久、純情なチバサチ。竹久は、チバサチを「ぼくの奥さん」?と、呼ぶ。
 この時代ですでに、自分を「ぼく」と呼ぶ女性がいるのも、面白い。
 ここに、ふたりの友人たち、いわゆる愉快な仲間たちの、藤原釜足(まだまだやんちゃ青年期の釜足なのが、新鮮!)、戦前東宝アンパンマンこと堤真佐子、おなじみデブのコメディアン岸井明が朝食に乱入。
 快調なコメディーの始まり始まり・・・・というのには、全体に演出が、もっさり。
 以下、チバサチは会社に出勤、ルームメイトであるだけでなく、会社の同僚タイピストでもある竹久は、会社をサボり、釜足、堤、岸井のお気楽トリオと、遊びまくる、並行描写が、きわめて、もっさりしているのが、残念。
 しかし、彼らモダンガアルたちが遊びほうける「スポーツランド」(浅草松屋の屋上遊園地)が、シンプルかつ面白そうな電動遊戯の数々で、いかにも昭和初期の、都市型屋内レジャーランドの好趣を伝えていて、楽しい。
 さて、純情チバサチは、同僚の色悪・島耕二、社長のスケベオヤジ・徳川無声の毒牙に、迫られ、散々。セクハラ、パワハラが、あまりに全開過ぎて、逆に、可笑しすぎる。
 以下、後半は、チバサチを、ひそかに思う好青年・大川平八郎(明治製菓専属?の広告図案家)や、振付師・釜足、ダンサーのアンパン真佐子が、携わる明治製菓の、ショー喫茶?のオープンショーと、チバサチが、色悪・島耕二にロウラクされる描写が、これまた並行描写されるが、またまたもっさりしているのが、ちょっとつらい。
 しかも、いやいや車に、半強制的に乗せられたチバサチ、車を降りたとたん、なぜか多幸感にみちた笑顔全開の郊外散策デート、相思相愛のカップルのような描写が、まったく違和感、つながっていないぞ。
 そして、アパートに戻り、これまた仲のよいカップルのように、嬉々として部屋に島耕二を迎い入れるチバサチ。
 その結果、島に、無理やり犯され?涙にくれるメソメソ振り。
 この二転、三転する描写が、不可解。下手なだけか。しかも、犯し犯される描写が、戦前映画ゆえ、まったく、ないので、余計、不思議な気分となる。
 まあ、映画作品としては、まったく力不足だが、当時の時代風俗、気分、風景の楽しさは、やはり、面白い。
 しかし、純情可憐なヒロインが、あっさり色悪に陵辱される、身もフタもない結末が、娯楽映画としては、異色。原作の「恋愛都市東京」が、ムーランルージュ新宿座の演劇(いわば、当時としては、今で言う小劇場的な異色作といった理解でいいのか?)だったゆえの、「東宝映画」としては、大暴走か。
 「明るく楽しい」「娯楽映画」東宝の、まだ、慣れない?ゆえの初期不良?

 竹久千恵子は、当時時代の最先端モダンガアルを柄に合って、演じているのだが、主役オーラは、ない。最先端であるがゆえに?、あるいは、柄だけで演じているがゆえに、逆に古びてしまったような。なんだか、華が、ない。
 チバサチは、いつの時代でも愛される純情可憐娘ぶりが、かわいい。
 青年・釜足も、楽しい。ショートヘアの堤真佐子も、一見お気楽なダンサー役だが、島耕二と、かつていろいろあったらしく、という陰影を一瞬の演技であらわしていて、ナイスでキュート。
 そして、特筆すべきは、まだ若かろうに、ヒヒオヤジを嬉々として演じた無声、後に映画監督となる島耕二の俳優振りが、たっぷり見られる点か。
 監督作島耕二「麗春花」(感想駄文済み)でも、中年の父親役を好演した島が、まだ若く精力ギンギンの、容赦ない色魔を、演じる。なかなか俳優としても、素晴らしい。その、いかにも酷薄そうなマスクも、いい。
 その彼がなぜ俳優をやめ?監督業に専念するようになったのか。もっと、俳優兼業で活躍してもよかったはずなのに。
 推測するに、戦前としては、あまりにリアルで酷薄な悪役専門にならざるを得ないマスク・演技だったために、しゃれにならず、需要?がなかったというところだろうか。他に理由があったのかもしれないが。
 細面で、あまり贅肉がない顔つきは、実子・片山明彦の面影もあるが、父はワイルド肉食系、片山は草食系という。親子でも、キャラは違うのね。

★東京昭和八年。丸の内の海上ビルの明治製菓売店と東和商事。 - 日 用 帳★
 本作、本作ロケ地、その他本作回りについての、楽しい記事。なお、このブログ掲載の場面写真は、かなり暗いが、実際に映写された映像は、もっとクリア。しかし、このブログのほか記事も、楽しそう。

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by mukashinoeiga | 2013-11-30 01:37 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(2)

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Commented by なご壱 at 2013-11-30 06:32 x
私も先週末にこの映画を見てきました。松屋のスポーツランドの様子が興味深かったです。主演の竹久千恵子は、波乱の人生を送っています。香取俊介著の「モダンガール 竹久千恵子という女優がいた」を機会があれば読まれることをお勧めします。
Commented by mukashinoeiga at 2013-11-30 20:13
木村荘十二「純情の都」へのコメント、なご壱さん、ども。
 あの床の円盤がくるくる回るやつは、単純にして、今でも受けるのでは。でも、事故を誘発するとして、現在では、危険視されるか(笑)。竹久本、前から気にはなっていたのですが、彼女の映画を一度も見たことがなく、今回2本見たので、気に留めておきます。「歌へ!太陽」の、掃除婦おばさん役以後、どうなったのかも、気になりますし。
 オススメ、ありがとうございます。       昔の映画
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