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森永健次郎「美しき別れの歌」

 阿佐ヶ谷にて。「蔵出し!日活レアもの祭」特集。60年、日活。11/19(火)まで、上映中。
 いやあ、これは、間然するところがない、快作ですな。楽しい素晴らしい。
 たった47分の中篇ながら、ぎっしり詰まった、大お得映画。
 (新人)とクレジットされる笹森礼子の魅力満点。かわいらしくハツラツとして、何よりも、微妙な表情の演技力が最高。
 以後、日活娯楽アクションのルーティンワークとして、さほど演技力を必要とされない、お飾りのヒロイン役に多用されていくだろう彼女の、本来の美質が、垣間見れる。
 その父、宇野重吉の過剰とも思える顔芸、くさい芝居、小芝居も連発するが、臭みをまったく感じさせない好印象。元祖草食系のさっぱりさが、過剰な小芝居のクサミを、相殺したのか。とにかく、クサい演技なのに、さわやか(笑)。なんだ、そりゃ。
 笹森の「第二の」お見合い相手・波多野憲(碁会所における宇野重吉の碁仇でもある「囚人心理学」研究者)も秀逸で。
 何より、脚本、演出の素晴らしさ。TVドラマ並みの上映時間ながら、過不足もない。下手な演出・脚本の映画が、しばしば90分の上映時間に膨らませるために、いかに、メタボな演出・脚本を繰り返すかが、よくわかる(笑)。
 笹森礼子が、長年の夢、高校生のときから立てた人生プランを、あっさり放棄するのも、これが90分の映画なら、なんだそりゃ、と違和感を感じるところ、万事スピーディーな47分の中篇なら、納得、かと(笑)。
 最後、娘を嫁がせた夜の宇野ジュウのひとり芝居、小津映画の笠智衆に勝るとも劣らない(笑)。軽味が、いい。
 しばしば才能のない映画監督たちが、だらだらと90分、時間を引き延ばし引き伸ばし、苦慮しているさまが、本作のランニングタイムの短さから、逆にわかるような気がする。
 まったく関係ないが、80分90分のオトコ・三隅研次の、短編なり中篇なりを、逆に見てみたかった(笑)。見果てぬ夢やね。

 なお、中篇ゆえ、本作には同時上映あり。
堀池清「お嬢さんの散歩道」
 阿佐ヶ谷にて。「蔵出し!日活レアもの祭」特集。60年、日活。11/19(火)まで、上映中。
 同時上映ゆえの再見作。こちらも、楽しい。ただし、「美しき別れの歌」はどでは(笑)。50分。
 笹森礼子が田園調布のお屋敷の女中さんに、なる、明朗篇。
 「美しき別れの歌」ほどは演技力が要求されないアイドル映画のため、笹森礼子はアイドル女優としてのみ、輝く。演技者としての潜在能力は、封印されて、いる。
 勤務先の父親に、清水将夫。びっくりしたときに、絵に描いたような団栗眼。おいおい(笑)。
 前々から、重厚な割には、ワンパタな清水将夫、いつもいつもあいも変わらぬ演技に、その声その顔その演技、快だと思っていたが・・・・うーん、宇野ジュウと比べると・・・・いやいや、宇野ジュウも、決してうまい役者とは思えんが(笑)。いや、意外とうまいのか(笑)。
 しかし、ひとつだけいえるのは、この時期の日活好青年・沢本忠雄は、ホントにさわやか(笑)。何で、すぐ消えちゃったのか。
 ラストショット、田園調布の坂道で、信じられないくらい遠いところにいる、笹森&沢本。ナイスショット。映画的(笑)。
 なお、日活おなじみの脇役・土方弘が、かなりいい役(色悪な雑誌編集長)で、キュート。
ホントのお嬢さんに松尾嘉代、というのがミスキャスト気味(彼女も、また、(新人)とクレジット)。

★美しき別れの歌 | Movie Walker★
★お嬢さんの散歩道 | Movie Walker★
 この「お嬢さんの散歩道」の英語タイトルって(笑)。盗むも何も、キスシーンなんてなかったはずでは(笑)。

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by mukashinoeiga | 2013-11-18 21:58 | 傑作・快作の森 | Comments(0)

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