清水宏「風の中の子供」「子供の四季」「団栗と椎の実」

清水宏「風の中の子供」
 京橋にて。「生誕110年 映画監督 清水宏」特集。37年、松竹大船、86分。
 坪田譲治原作の児童文学の映画化。NECチラシによれば、「原作の新聞連載中から、松竹には清水による映画化を求めるファンの声が寄せられた」とのこと。つまりコドモ映画なら、清水宏だ、という、ある種の「合意」が、このころすでに出来ていたということか。
 しかし、そういうコドモ映画なら清水宏だ、というある種の「思いいれ」が、清水映画の可能性を、実は狭めていたのではないか、と「コドモ嫌い」の、ぼくは、思うわけではあるが。
  河村黎吉・吉川満子の両親(ともに、抜群の安定感)、善太と三平の、葉山正雄・爆弾小僧(横山準)の兄弟。この四人が、絶対の安定感を持って、頑固親父と、慈愛あふれる母親、そして腕白な兄弟の一家。戦前松竹家庭劇の磐石の安定感。
 しかし、父親が会社の金を横領したという冤罪で、逮捕され、この慎ましやかな一家の幸福は、一挙に失われていく。
 とりあえず、母・吉川と、長男・葉山は、今の家を守っていく。だが、二男・爆弾小僧までは、養ってはいけない。かくて、口減らしのため、二男は、父親の親友、坂本武・岡本文子の元に、引き取られていく。
 逮捕された父親はもとより、母、兄とも引き離され、親切な坂本夫婦とはいえ、他人の飯を食う、二男の悲哀。さびしげな表情の爆弾小僧(横山準)、せいいっぱいのツッパリの悲哀。
 やがて、父・河村の冤罪は晴らされるのだが、その証拠の出現は、あまりに安易で。いかに、コドモ映画といえど、これはひどい。
★日本映画データベース/風の中の子供★

清水宏「子供の四季 春夏の巻」
清水宏「子供の四季 秋冬の巻」
 京橋にて。「生誕110年 映画監督 清水宏」特集。39年、松竹大船、70分と71分。
 「風の中の子供」の原作、監督、主だった出演者を引き継いだ、だから三部作といっていいのか、二部作といっていいのか。
 というのも、「風の中の子供」では、二男・横山準の引き取り手、主役兄弟の父親の親友だった、坂本武・岡本文子夫妻が、本シリーズでは、兄弟の祖父母という設定に、微妙に修正されていたりする。けれど祖父母という設定(もともとの、原作の設定か?)のほうが、より親密性が増して、グッド。また「風の中の子供」では、冤罪で父親が不在になるけれど、本シリーズでは、父親の病気。ともに、父親の不在が、一家に悲劇をもたらす。
 しかし、子供たちが短い橋の欄干に乗ったり、その橋で、かつてのおさななじみの従姉妹たち(対立する夫たちのせいで、これまた疎遠にならざるを得ない母親たち、吉川満子と若水絹子)の、いきなりの出会いとか、親たちの対立をよそに、対立したり仲直りしたりの、子供たち。
 クールなキッズ・ムーヴィーの清水の真骨頂。やはり、いい。やはり、傑作だろう(特に「秋冬の巻)。
 ただしこの二部作、もともとは74分と80分だったらしい。ともに、最終巻が未発見。ゆえにともに、結末が欠落している。いきなり、ドラマは、ぶつりと途切れる不始末。ともに、なぜ最終巻だけが欠落?
 坂本武社長、その甥のちょっと頼りない副社長格が日守新一、その妹・若水絹子の、入り婿西村青児。この同族会社は、坂本社長の娘・吉川満子が、将来有望な社員・河村黎吉と駆け落ち出奔した過去を奇貨(禍)に、西村青児が、不遇な怨念を晴らすべく、会社乗っ取りを図る大人のドラマと、コドモのドラマの2本立て。
 特に後編の、同族会社の怨念会社乗っ取りドラマも面白く、しかも乗っ取る側、西村・若水夫婦の息子・金太郎(古谷輝夫)と、乗っ取られる側、河村・吉川の夫婦の子供たち、仲良く遊んだり、けんかしたり、親の立場とはまったく異なる交渉の楽しさ、皮肉。すばらしい。
 親たち・祖父母世代の大人のドラマと、子供たちのドラマが平行して描かれて、これはいい。ラスト10分の欠落がつくづく惜しまれる。
 祖父にして社長の、坂本武が、いい。清水の映画でも、他の監督の松竹映画でも、常にいい加減な演技の坂本武(それが、ファンにはお楽しみなのだが)これだけ、ちゃんとしたドラマでの(笑)ちゃんとした演技(笑)を、あののんしゃらん演技の大家・坂本武がしていたとは。坂本武ファンとしては、うれしい限り。
 「縁戚ゆえに幹部社員になった、善良だが、頼りない男」そのものを体現するヒモリンも、ベリーグッド。鬱屈の反逆者、根の暗い、閨閥ゆえに抜擢され、閨閥ゆえに飼い殺しにされる、普段は大部屋俳優の西村青児の、リアルな存在感。これまた、グッド。
 コドモ映画のはずなのに、だんだん大人のドラマの濃密度が、増していく。もちろん、コドモドラマも、さわやかで、いいのだ。
 兄・葉山正雄は、だんだんワキに回り、爆弾小僧(横山準)が堂々の主役。
★日本映画データベース/子供の四季 春夏の巻★

清水宏「団栗と椎の実」
 京橋にて。「生誕110年 映画監督 清水宏」特集。41年、松竹大船、29分。
 清水が長編制作の合間に、気楽に作ったと思われる短編。いつもの、横山準、古谷輝男などの子役が出演。
 都会育ちのひ弱な男の子が、スパルタ父さんの指導よろしく、一人で大木の木登りが出来るようになり、ついには田舎の子たちを仕切るガキ大将になる。
 木登りする子供たち、清水映画で何回見ただろう。
 特筆すべきは、スパルタ頑固親父に扮するのは、清水映画常連コメディリリーフの大山健二。日ごろのノー天気キャラを封印して?まじめに頑固親父。
 戦前松竹の愛すべき快優にして、戦後大映の地味目脇役の大山健二ファンとしては、たいへん楽しい見ものでした。
★日本映画データベース/団栗と椎の実★

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by mukashinoeiga | 2013-08-09 22:28 | しぃみず学園清水宏おぼえ書 | Trackback | Comments(0)

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