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大島渚「マックス、モン・アムール」シャーロット・ランプリング

 渋谷にて。「追悼! 大島渚」特集。87年、フランス。
 鑑賞後、二、三のぞいて見たネットでの感想は、あまり芳しからぬようだが、おそらく大島渚の(ある意味での)最高傑作では、ないか。
大島渚「マックス、モン・アムール」シャーロット・ランプリング_e0178641_12515223.jpg つまり、遺作にいたるまで、はったりに満ちたアヴァンギャルドな映画を作り続けた大島が、おそらくデヴュー作「愛と希望の街」をのぞいて(第2作「青春残酷物語」を未見のままに)ただ一作撮ったウェルメイド・ドラマとして、傑作なのだ。
 渋谷のほぼ満員の場内も、私も含めて、その艶笑ギャグに、爆笑しておりました。
 そもそも、これまた「愛と希望の街」をのぞいては、大島が撮った、唯一の「ホームドラマ」「コメディ」なのではないか。
 「唯一の完全外国映画」で、ほぼ「唯一のウェルメイド・コメディ」を作ったとは、なんと、屈折した(笑)。
 本作の売りというか、内容を一行で表すとすれば、
「妻の不倫相手は、サルだった」
 ということになると思う。そうして、人々の目には、そういう珍奇なキャッチーな「異種間セックス映画」という風に興味本位でとらわれてしまうだろうが、ぼくの見るかぎり、本作のキモは「大島渚が生涯でほぼ一作だけ撮った、ホームドラマ」ということに、尽きる。
 あるいは、フランス(というか、ヨーロッパ)映画お得意の艶笑コメディと、大島の(不本意ながらの出自)松竹メロドラマ/ホームドラマとの、ハイブリットな合体。そういう意味で、大島にとっては、このホームドラマ、助監督時代に昔取った杵柄として、きわめて滑らかに、ウェルメイドに進行していく松竹ホームドラマの、延長上にあるものだろう。
 ホームドラマでは、最終的に家族の崩壊は、ありえない。崩壊したら、それは社会派ドラマに、なって、しまう。あるいは「不条理ドラマ」に。
 そこをぎりぎりの段階で踏みとどまって、なおかつ大島の教養の範囲内にあるかどうかわからないが、共同脚本ジャン・クロード・カリエールの教養のなかには、確実にあるだろうルビッチをはじめとする艶笑不倫コメディの数々への目配せ。
 たとえば、ルビッチお得意のドア描写の多用。ドアの向こうでの、いかなるみだらな行為がドアに隠されているのか、妻の隠れ家的アパートのドア、チンパンジーの檻の格子ドアに、それはあからさまに援用されているだろう。
 そして、渋谷の場内をたびたび沸かせるコメディタッチの数々。ウェルメイド・コメディを撮ろうと思えばらくらくと撮れる大島渚の、「松竹ホームドラマ回帰」。それが、ほぼ唯一の外国映画でしか、実現しないという悲喜劇。結局、大島は、国内映画では、虚勢を張って、甘えていただけということですか。
 あるいは、「妻の不倫相手がチンパンジー」ということだけで、所定のはったりを使い果たし、後は、正攻法に「走った」ということか。
 しかも、クライマックスの<4WDの凱旋走行>描写(文字通りに凱旋門の通りを凱旋する!)は、さながらハリウッド映画のような、<街中が祝福する恋>そのもので。ここで終われば、まるで絵に描いたハリウッド映画みたいだし、最後に、ヒロインのシャーロット・ランプリングを、間に挟んで、チンパンジーのマックスと、夫のアンソニー・ヒギンズとキスしあい、抱擁し合えば、そのままルビッチだった。
 しかし、ここで終わっては、オレ様大島渚映画じゃない、フランス文芸映画じゃない、ということで、苦い結末(ランプリングの見た夢の話)を、くっつける。でも、それは、蛇足、面白くもなんともない。
 主演シャーロット・ランプリングは、夫には「反抗的」だが、マックスに対しては、120パーセント献身的。メイドの女の子は、これ以上ないくらい、主人夫婦思い。本作でも、大島渚映画の女性は、素直な子ばかりということで、つまり反逆は男の専売特許という大島映画の<反動性>が、またしても証明された形か。
 なお、最初は敵対していたような三者が、性的な「何か」で結びつきあうのは「夏の妹」「戦場のメリークリスマス」「御法度」でも同様な、大島セオリーか。

 蛇足だが、今回ネットをあさってみて、本作のあらすじを200パーセント誤読したブログを発見。
★■日本映画の感想文■マックス モン アムール★
 これがぼくのテキトー弱小ブロクと違って、OLD映画ブログとしては、一目も二目もおかれているらしいブログなのに、この、おそらく一行たりとも、本作のストーリーと合っていないものを書くとは、よほど本作に恨みがあるものか(笑)。わざと誤読しているにせよ、仮にも、ぼくなどのブログと違って「信用と実績のあるブログ」としては、どうなのか。ギャグとしても、つまらないし。



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by mukashinoeiga | 2013-03-25 01:14 | 大島の渚に寄せる新波かな | Comments(0)

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