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鈴木清順「悪魔の街」「浮草の宿」

鈴木清順「悪魔の街」
 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.5日活篇」特集。56年、日活。あと1回の上映。
 鈴木清順監督第3作目。まだ、本名・鈴木清太郎名義のころだ。
 悪役・菅井一郎大暴走(笑)。なんせ、喫煙をとがめた警備員を、「タバコ吸って何が悪い」と、即殺しちゃう(笑)。
 で、改めてあたりを見渡せば、火気厳禁の石油コンビナート。忌々しげに、足でタバコを踏み消す菅井一郎(笑)。とにかく、殺して殺して殺しまくる菅井一郎。こんな凶暴な役を、嬉々として演じ、アクションすらこなす。
 日ごろ、穏健な役の多い菅井としては、珍しい。たとえば小津安二郎「麦秋」で、穏やかな老人役の菅井との、落差。楽しい。
 思い起こせば鈴木清順「東京流れ者」でも、後期小津映画常連・北竜二を、裏切り者の親分に仕立てている。たぶん小津とは合わない、あるいは近親憎悪ゆえの、松竹助監督出身の、清順らしい意地悪キャスティングだろうか。もっとも「娯楽映画ですからね。俳優はプロデューサーが決めたものの、お仕着せですから」なんて、言いそうだが。
 主役は菅井の子分格・河津清三郎。改心する悪党だから、精彩なく、菅井に食われっぱなし。さらにその子分のチンピラに、芦田伸介。芦田伸介のチンピラ役は、妙に老成していて、珍。
 撮影は鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」でも、コンビ復活の永塚一栄。ほんとうに絶美。
 特に石油コンビナートの夜景。工場萌えの元祖か(笑)。

鈴木清順「浮草の宿」
 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.5日活篇」特集。57年、日活。あと1回の上映。
 鈴木清順監督第4作目。まだ、本名・鈴木清太郎名義のころだ。
 鈴木清順「海の純情」 (感想駄文済み)の主役・春日八郎が脇にまわり、これまた歌いまくる。
 主役は、ハワイ帰りのやくざ・二谷英明。親分の女が、男連れで日本に逃げ帰っているので、女を殺すよう命じられて、日本は横浜に。
 で、その女性はともかくとして、山岡久乃が、要注目。実質のヒロイン役とは、珍しい。
 宝塚出身女優らしいのに、その老け顔、地味顔、華のなさゆえ、若いころでも、せいぜいヒロインの姉役とか、後はおばさん役専門女優の、珍しく、華やいだ、女さえ感じさせる酒場女役。しかも、行方不明の姉と妹の一人二役という、ある意味おいしい役だ。
 鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」大谷直子の原型か。ただし、清順演出の常として、大谷直子も、山岡久乃も、一人二役といっても、キャラの違いなんて、繊細な?演技は、させない。判別不可能なのが、清順らしいところで。「あたしは妹よ」といわれれば、そう信じるしかない程度。疑えば、きりがない清順迷宮。
 さて、二谷が洋風の横浜で、かっこよく女を捜すたびに、流しの春日八郎が必ず現れ、和風の「浮草の宿」などなどを、歌う。ハマを舞台の日活無国籍アクションを、ことごとく邪魔する(笑)和風流行歌手というのが、きわめて珍。結果、出るたび爆笑の春日八郎。
 そして、映像もエピソードも、ことごとくブツ切れで、情感の流れを遮断する。いまいち、調子をつかみきれない清順演出、第3作までの職人芸から、一歩踏み出したけれど、後のふてぶてしいまでの快調なる破調は、手に入っていない感じか。
 鋭い切れ味の、演出、編集にいたっていない、その一歩手前の、珍奇さ。

 しかし、二作とも、娯楽映画の通常範疇に収まりきれない、珍事続出、やっぱり、清順映画は、普通作品でも、狂っている(笑)。

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by mukashinoeiga | 2013-03-07 11:23 | 清順の光と影すべって狂ってる | Comments(0)

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