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千石規子と黒沢と小津:その異常な?三角関係?(再録)

 先月は、大島渚「帰って来たヨッパライ」が、当ブログでは一番検索でヒットした。
 今月にはいると、なぜか「真空地帯」祭り。
 一時は検索ベストテンの過半数が「真空地帯」、山本薩夫、関連で。いったいなんなんでしょ。
 確か今年は、ヤマサツ生誕100年に当たるので、TVででも、やったのだろうか。その方面には疎いので。
e0178641_0503993.jpg 数は少ないが、先月、千石規子の「裸」「色気」というのも、ありました。
 千石規子といえば、垂れ目の、いつもぐちぐち小さい愚痴をつぶやく、いささか陰気なおばさん、というのが、パブリック・イメージだろう。あまりに「小口」すぎて、かえって笑ってしまうというか、陰気な中にもユーモアがあり、貴重な性格女優で。
 しかし、彼女にも若いころがあり、といっても、たぶん新劇系の女優さんなので、映画出演は、そんなに早くない。若くても、老け顔だし。
 しかし、そういうイメージの彼女を、セクシーガール?として、演じさせた奴ら(笑)がいる。
 黒沢明「醜聞スキャンダル」で、画家・三船敏郎の、ヌード・モデル。もちろん、当時の映画だから、ちらりとも肌を見せないが、「最近、あたしをちっとも描かないわね。もう、あたしの裸に興味ないの」と、三船を責める。あるいは、三船に、愚痴る。
 黒沢明「静かなる決闘」では、医師・三船に思いを寄せる看護婦。
 黒沢は、ずうっと、「女を描けない」と、批判されてきた。ぼくは、「描けない」のではなくて、「女に関心がない」んだと思う。あるいは「性的存在」としての女に関心がないというべきか。黒沢が唯一撮った女性ヌードが、何度も言うが「八月の狂詩曲」の、村瀬幸子のおばあちゃんヌードだった。
 これは、男性映画監督としては、極めて異様というか、異質というか。あるいは、もともと画家であるのに、そうなのであれば、かなり<異質>といっていいのではないだろうか。
 その黒沢が、若い女の生々しさを描く場合に、千石規子を起用する。
 黒沢の女優描写は、きわめて限られている。
e0178641_0533123.jpg 理想を体現する女として「わが生涯に悔なし」原節子、健康美少女として「酔いどれ天使」久我美子、一応、営業対策や物語上の要請として女優を出さなきゃいけないから出すんだけど、あんまり個性発揮して、オレの映画を邪魔しないでね要員女優として「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」「まあだだよ」香川京子、怖いおばさんとして「蜘蛛之巣城」「用心棒」山田五十鈴、などなと。
 黒沢、どう見ても、<男目線>で、女優を、見ていないよね。
 晩年の「乱」だか「影武者」で、エキストラ武者の若い男性に、リハーサル中、公然とキスしただとか、舌入れただとか(笑)、くだんねーゴシップが一時あったけれど、アレはどうなったのか(笑)。
 一方、小津は「女を描けない」とは、言われなかった。女優王国・松竹の、後年は「ホームドラマ」専門作家だから、女を描けなかったら、商売にならない。しかし、戦前は、モダンガアルも描いた小津も、戦後は、原節子など<聖女>か、三宅邦子など<家庭婦人>か、杉村春子など<おばさん>か、東山千栄子など<おばあちゃん>か、岡田茉莉子など<おきゃん娘>か、なんだ、結構、パターンあるか(笑)。
 少なくとも黒沢より、女を描いているな(笑)。
 そうは言いつつ、戦後は、あまり<セクシーガール>を、描いていない。
 唯一の例外が「早春」岸恵子と「宗方姉妹」の、千石規子。
 五反田あたりの、場末の飲み屋の女。常連の藤原釜足あたりを、例によって、ぶちぶち文句を言って、いびっている。でも、なんというか、くたびれた、場末感ある、女の色気が、そこはかなく、あるんだよね(笑)。女のナマっぽさを感じさせる、数少ない小津映画の女性だろう。
 ナマっぽい、疲れた、女の、そこはかとない、あえやかな、色気。これこそ、千石規子の色気?
 原節子の<紀子>に、対抗する、正反対の女が、千石<規子>という、例によっての、小津的親父ギャグなのだろうか(笑)。
 この映画の、つんと澄ました、田中絹代・高峰秀子の美人姉妹の喫茶店には行きたいとは思わないけれど、この場末の飲み屋で、たそがれた千石規子に、藤原釜足とともに、ぶちぶち言葉いじめされたいとは思う(笑)。
 こういう<下世話な色気>ある女が、小津の映画に出てくるとは。正確には女の<ナマっぽさ>。
 いや「秋刀魚の味」の、笠智衆が通いつめる、トリスバーの岸田今日子も、捨てがたいが、色気というよりは、カエルの妖気めいているからなあ岸田今日子は。
 岸田今日子と岸田森は、爬虫類めいて、とても哺乳類とは思えんよなあ。
  生身の女を描かない、黒沢と小津が、たまにそういうナマ感ある女を描くときに必ず出てくるのが、そう、千石規子。
 ある意味、というかどの意味でも、黒沢・小津映画の最高のミューズといえる原節の対極にある人だよね。
◎追記◎当駄文に、昨日、異常なアクセス数があったので、小津のページにも、加筆再録いたしました。だから、冒頭の先月というのは、2011年10月のことです。

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by mukashinoeiga | 2013-01-11 22:25 | 小津安二郎映画の正体小津漬の味 | Trackback | Comments(0)

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