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春原政久「七色の花」

 新潮ムック「原節子のすべて」付録DVDにて。50年、東横映画京都、配給=東京映画。
 東京映画といっても、カンパニー・ロゴは、磯岩に砕け散る、いや当時は、雲多い空が背景の、東映三角マーク。
 新潮45別冊の本体「原節子のすべて」には、オビの宣伝コピーに、

「美女」のそばには「怪物」がいた
 それは小津監督ではない。
 彼女は、別の<ある男>に呪縛されていたのだ。
 知りたくはなかった「永遠の処女」の真実。

引退、独身生活、土地売買、そして本当の恋人。
 謎に満ちた「伝説の女優」の真実が、今初めて明かされる。

という、いかにも、週刊新潮の会社らしい、えげつなさで。 
 というか、この付録をつけたいための、本体のキャッチーさという気もするのですが。制作映画会社にもフィルムセンターにもない、本作のプリントを、関西のコレクターから借りてDVD化とのこと。このコレクター氏、ほかにもっていないのか、隠し玉。
 さて、当年のキネマ旬報ベストテン第10位の本作。
 制作マキノ光雄、中山義秀の朝日新聞連載小説の映画化、いかにも連載小説らしい、行き当たりばったりのメロドラマだ。
 あるいは注目すべきは、共同脚本のメンツか。八木保太郎、新藤兼人、清島長利(この人だけ未詳)、船橋和郎という、単独脚本でも、豪華な実力派たち。脚本家協会記念の共同作業というところらしい。行き当たりばったりの、大勢の登場人物たち、その、それぞれの思わせぶりな<伏線>回収ゼロ。いかにも新聞連載メロドラマらしい。
 撮影は、のちの鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」永塚一栄、音楽伊福部明。

 驚くべきことに、主演(クレジットのビリング1位)ハラセツが、冒頭30分ほど、一度も姿を見せず。約100分の映画で、ハラセツは実質20~30分くらいしか、出ていないのではないか。詐欺やで。
 けれど、出ている瞬間瞬間のハラセツは絶美
 少し前に感想駄文の吉村廉「白雪先生と子供たち」と同年作だけに、ハラセツの美貌、絶対の全盛期だけのことは、ある。
そして、この映画、OLD映画ファン必見の要素が、満載なのだ。
 出番が少ない、ハラセツの代わり、後年、むんむんムレムレのセクシー熟女専門女優と化した、角梨枝子が、なんともキュートなヒロインぶり。
 今の女優でたとえれば、貫地谷しほりをめちゃくちゃ美人&キュートにした感じ。大きな目、コケティッシュな、くるくる変わる表情。
 回想シーンでは、セーラー服姿すら披露(笑)。
 復員兵の竜崎一郎に、セーラー服で抱きつき、
「あたしと、遊んでー」
「遊んでーって、君、いくつ?」
「あたし、十六よ」
「うそだろ?(どう見ても、サバ読んでるだろ)」
「ほんとは、十五なの」
 おいおい(笑)。でも、かわいいから許す、角梨枝子。

 最初の30分は角梨枝子が、ヒロインだが、全体を通してのヒロインは、なんと何と、杉村春子だ!
 人気作家・竜崎一郎は、絶美・ハラセツ、絶対キュート・角梨枝子をさしおいて、なんとなんと、杉村春子に、猫まっしぐら。
 まさかの、ハラセツよりツノリエより、杉村春子にむんむんムラムラ。
 おかしくない?
 しかも竜崎一郎とキスシーン二度も! まさかまさか、杉村春子のキスシーンを見ることになるとは(笑)。
 しかも、「いやあん、小萩、こわーい」などと、嬌声を上げる杉村春子。小萩とは、彼女の役名なのだが、会話上の主語を、自分の名前で言う女子を演じる杉村春子!
 いやあ、あまりの展開に、いかにコメディ監督春原政久とは、いえ(笑)。しかし、杉村春子は、いかなる意味でも、性的魅力を感じさせない。どんな演技力をもってしても、セクシーさ絶無。いや、演技力で盛ったとしても、年増おんなの性的魅力が、絶無。ひたすら、居心地は悪いが、コメディーとしてみれば、立派に、面白い?
 特に「パパさん」三島雅夫と、竜崎一郎、杉村のくだりは、エルンスト・ルビッチの艶笑コメディを思わせるというのは、ほめすぎか。
 ちなみに、三島雅夫、戦後より戦前のほうが、年をとってからよりは、まだ若い方が、髪の毛の量が少ないこと、滝沢修と双璧だが、本作の三島、つるっぱげパトロンを、地毛を生かして?快演す。
 キャストは、まだまだ東映プロパーの専属俳優がいないながらも、(現在の視点から見れば)なかなか豪華。新劇俳優が多い。
 青山杉作(木下恵介「お嬢さん乾杯」でもハラセツの父)、清水将夫、千秋実、井沢一郎(かなり苦しい学生役)、何故か丹阿見弥津子に関心を示す金子信雄、など、新劇系を中心にして、なかなか豪華なキャスティング。

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by mukashinoeiga | 2012-11-13 01:05 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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