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三隅研次「狼よ落日を斬れ」

 神保町にて。「没後二十年 情念の女優 太地喜和子」特集。74年、松竹大船。
 しかし。あ゛あ゛あ゛、なんということ? 何、この、三隅らしからぬ、凡作ぶりは?

 井上梅次や鈴木清順が<90分の男>(イメージ)であるならば、三隅研次は<88分の男>(イメージ)である。
 彼と、大映京都の全盛期の、かくも濃密なドラマ、傑作の数々が、そのランニングタイムを確認してみれば、なんと90分以下。
 こんな濃密な、充実したドラマを、現代の凡庸な監督が撮れば、確実に二時間は越えるだろうという、そういうドラマを、<88分>(イメージ)に収めて、あっけにとられるほどの快作を作りうるとは。モチロンそうした資質は、大映プログラム・ピクチャア監督に共通している美質で、しかし特に、三隅は、突出していた。
 その三隅の遺作となった本作は、大映京都亡き後、松竹(しかも京都ではなく、大船のようだ)で撮られ、上映時間、なんと159分の「大作」。長時間映画が多くなった現在では、信じられないが、この3時間弱の映画でも、途中に休憩を挟む仕組み。
 インターミッションをはさんで、実質、幕末篇と、明治篇に分かれている。これは、やはり<90分の男>(イメージ)の井上梅次「妻あり子あり友ありて」61年、松竹京都、157分が、実質二本立てという構成だったこととも、呼応する。これまで<90分の男>(イメージ)だったイノウメや、ミスケンら、プログラム・ピクチャア作家たちが、長時間映画を作らねばならないときに、採用したお作法。前編、後編に分ければ、俺たちにも、<大作>は、撮れるんだぜー、と、いうような。
 
 しかし、
 あんなにもこんなにもタイトな、濃密充実した傑作を撮りつづけた三隅が、上映時間が延びたまんまの、こんな薄味の、密度の低い、スカスカな映画を撮るとは。
 まあ、大映オールスタアの一代記「釈迦」を撮ったときも、やはり、スカスカで。本作も、幕末から、明治・西南戦争までもの、年代的な映画。しかも、主人公・高橋英樹は、何か、傍観者の役割が濃いようなキャラ。


(以下、ネタバレ)


 幕末京都、杉虎之助(高橋)は、中村<人斬り>半次郎(のち陸軍少将・桐野秋武)の緒形拳、新撰組・沖田総司の西郷輝彦、彰義隊・伊庭八郎の近藤正臣らと、交流しつつ、幕末の動乱を生き抜き、いや、えんえんと生き抜くわけよ、159分。
 そりゃあ、スカスカになりますわな、と納得の不出来。
 なお、本特集の由来となった太地喜和子は、やくざに追われているのを高橋英樹に救われた訳ありの女から、高橋から借りた十両で京都に行き、なんと尼になる。もっとも太地喜和子の尼だから、相当に生臭く、早速緒形拳と、愛欲の日々。
 明治に変わって、東京に出てきて、髪も結っていると思ったら、らしゃめん(洋娼)になったか、エゲレスにわたって二度と日本には帰らないという。そういう変わり身の早い女を、妖艶に演じている。いわゆる、女の出世は、早いのね、という。
 対照的なのは、高橋の叔父、幕府御家人の佐野浅夫、維新後は、薩長の田舎侍におべっか使いのタイコもちに。器用なんだか不器用なんだか。
◎追記◎そういえば、そもそも、カッコはいいし語呂もいいが、意味不明のタイトルからして、なんだかなあ。落日なんか斬ったって、しょうがないだろ。高橋英樹、狼というには、少し肉がついてるし(笑)。

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by mukashinoeiga | 2012-11-02 00:31 | 三隅剣児女なみだ川と大魔剣 | Trackback | Comments(0)

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