人気ブログランキング |

千葉泰樹「美しき豹」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.4 大映篇-映画保存のための特別事業費による」特集。48年、大映東京。
 本作の前年作千葉泰樹「花咲く家族」で、きわめてまっとうなホームドラマを作った千葉が、やや毛色の変わったホームドラマを作った、それが本作。「花咲く家族」で「姑のお気に入りの嫁候補」を、ジミ~に、華もなく演じた相馬千恵子が、うって変わって、魅力的なあばずれ娘を演じるのも、面白い。
 老父・見明凡太郎と二人暮しの娘・相馬千恵子は、ちょっと気は強いが、いたってふつうの娘。とはいうものの、いったん仕事に出れば、河津清三郎社長の商事会社の社長秘書。この会社、闇物資を右から左に流して、利ざやを稼ぐ、いわゆる闇ブローカーの会社。相馬、社長秘書の枠に収まらず、自ら積極的に闇屋商売に才能を発揮する。
 男勝りに、裏ビジネスに精通し、肉食系クーガー女。海千山千の河津も舌を巻くくらいの、闇商売クイーン。父親や、子連れで出戻りの姉・花井蘭子も、あたしが、軽く、養ってあげるからさあ、とドヤ顔で。男性社員をあごで使い、昼日中から、酒色三昧、朝から会社でウィスキー、常に高額の現金を手元で管理している。
 家に帰れば、それなりに殊勝な、ふつうの娘、会社では、とても堅気には、見えない。この二面性を、相馬千恵子は、生き生きと演じて、「花咲く家族」の、鈍な「姑のお気に入りの、地味娘」と、同一人物とは、とうてい思えない華やかさ。素晴らしい。家庭では高い声、会社で部下の男性を叱咤するときは、低い声。この使い分け。いや、使い分けをしなければいけないというのは、まだまだ、女性が地位を確立していないということだろう。
 この時期の大映女優らしく、スタアオーラはないながら、主役オーラは、ちゃんとある。「花咲く家族」と違って、顔さえ、華やか。
 見明・相馬父娘の隣組・岡譲二(よい)の、娘役の女優が、これまた女優オーラのない、ほとんど一般人の風貌・オーラで、ここが当時の大映女優クオリティか。そのなかでは、相馬千恵子や花井蘭子の女優オーラさえもが、引き立って見えていく。

 ここで、あらためていっておきたいのは、父・見明凡太郎や、岡譲二の娘の婚約者・船越英二らの、素晴らしさ。いや、本作での船越は、特に見せ場はないのだが、見明や潮万太郎は、大映プロパーで、どんな大映プログラム・ピクチャアにも、必ず出ていて、どんなちいさな役でもこなすもんだから、有り難味が感じられなくて、演技賞でも、完全に対象外な感じなのだが、もしフリーであったら、ときに助演男優賞の対象になるべきだった名優なのだとおもう。主演スタアがさえなかった時代でも、大映は助演俳優は充実していたのだった。

 なお、蛇足だが、與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」が示唆するように、麻薬や武器など非合法商品が闇取引されるならともかく、本作のように、砂糖や、反物など、日用品が横流し、闇取引されて、それらを闇屋、ブローカーが扱うというのは、たしかに非合法なのだが、戦時中は軍(日本的社会主義)が、戦後はGHQ指揮下の日本傀儡政権の擬似社会主義政権が、再江戸時代化=社会主義化の、統制経済、食糧配給制を維持するため、自由主義経済下なら、当然合法的である民間取引すら、規制してしまったため、その法の範囲から、はずれてしまい、自由主義経済なら、当然の合法商法も、闇屋、ブローカー化してしまったのだという。
 つまり、現在の左翼・リベラル諸君が批判する戦中軍国主義および敗戦下の食糧不足、それら戦時統制経済が、彼らリベラル左翼諸君が信奉する社会主義そのものだったという、皮肉。まあ、それは別の話で。
(戦時国民総力戦体制とか、食糧配給制とかは、国家が国民の生活を全て面倒を見るという点において、究極の計画経済、つまり社会主義的そのものなのだという。つまり、左翼諸君が忌み嫌う軍国主義は、実は、左翼社会主義そのものだったのだ。なんと)

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★

by mukashinoeiga | 2012-04-27 00:33 | 千葉泰樹 ヤスキ節の愉しさ | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : https://mukasieiga.exblog.jp/tb/17865960
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
名前
URL
削除用パスワード