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今井正「海軍特別年少兵」中村梅雀小川真由美地井武男

 三原橋にて。「生誕百年 今井正監督特集・第一部」特集。72年、東宝。
今井正「海軍特別年少兵」中村梅雀小川真由美地井武男_e0178641_3553833.png 14歳の少年たちが、日本全国から応募し、横須賀海軍基地に集められる。特別年少兵として訓練を受け、やがて、戦地に赴く。熱血・地井武男曹長指導の一斑は、硫黄島守備をにない、全滅していく。
 硫黄島を制圧したアメリカ兵は、彼らの遺体を見て、「まだ、子供じゃないか。ジャップは、こんな子供を兵隊にするなんて、なんて野蛮な奴らなんだ」という。
 それに対して、海軍特別年少兵の学科(座学)で英語を習っていた、主人公は、英語で「俺たちは子供じゃない。海軍特別年少兵だ!」とさけび、米兵に飛び掛り、射殺される。
 今も、世界中のあらゆる地域で、内戦を、あるいは対アメリカ戦を、あるいは対イスラエル戦を、あるいは対ロシア戦を、あるいは対中国戦を、十代半ばの少年たちが、戦っている。その先駆けともいうべき、子供たち。
(ぼくの乏しい記憶によれば)たしか海軍特別年少兵出身の脚本家、鈴木尚之が、同年の今井正「あゝ声なき友」(今回の同時上映)同様脚本を書き、「海軍特年兵会」(同窓会みたいなものか)が特別協力して、映画は作られた。

  映画は、横須賀での厳しい訓練を中心に描かれる。班の誰かが、学科で、実技で、劣った点を取ったり、失策をしたりすると、その班全体が、校庭何週かだったり、食事抜きだったり、全体責任を取らされる。いつもドジを踏む、間抜けな子がいる一斑はいつも、全体責任で、罰を受ける。
「あ~あ、何で俺はこんな班に入っちまったんだ」なんて、非難が、一身に、そのどじっ子に向けられる。
 連帯責任なんていう、おためごかしな<精神的管理主義>の、犠牲者は、やがて、その対応能力を超えて、<自死>を選ばざるを得ない。逃げ場のない残酷なシステム。
 ところでこのどじっ子少年の<スキのありすぎる顔>が、どう見ても、現役の某俳優にそっくり。俳優名の「中村まなぶ」も、むむむむ。
あとでネットで調べてみると、まさしく中村梅雀氏の、本名で。まさに「雀百まで」同じ顔。子役ながら、名演でありました。この子役演技と比べるのもおろか、父親役・加藤武氏の「駄演」ぶりも相変わらずで。
 「駄演」といえば、本作で、なんせ軍隊モノですから、男や少年やら、ヤロウばかりのなかで、ゆいいつの<紅一点><若い女>が、当然予想通りといえど、やはり、小川真由美というのも、ガックシ(笑)。「駄演」の上に、華がない、やはり左翼は、女を見る目が無いなあ(笑)。

 そして、本作で描かれる硫黄島の激戦。
 大部分の日本兵が死に、壊滅状態の兵たちが、大人の兵も年少兵も含めて、最後の敵陣攻撃。夜の闇の中、大声で勝どき吶喊の声を上げて、夜目にも目立つ白い鉢巻巻いて、敵陣に突っ込む。
 深夜の、弱小のゲリラ戦の最低の要諦は、敵に悟られずに、音も立てずに、敵の裏をカクことだろうが!
 むろん、第二次世界大戦中の、正規の日本軍の辞書に、<敵の裏をかくゲリラ戦>の、概念はなかったのかもしれないが。これでは、殺して貰うための突撃ではないか。戦術も戦略もあったものではない。
 <卑怯な戦争はするな>という、帝国日本軍の、馬鹿馬鹿しいまでの教えが、日本以外の世界中の国の<どんな卑怯卑劣な手を使っても、勝ちは勝ち>に、負けてしまうのも、むべなるかな。
 けっきょく、<近代戦>にも、昔ながらの<正々堂々の勝負>を持ち込んでしまった、大日本帝国軍の、負け戦。
 それは、時を経て、今の自衛隊にも、正々堂々?引き継がれ、もはやゲリラ戦「のみ」しかない地域に、PKO「活動」をしにいっても、<攻撃されてから、やっと初めて応戦できる><しかし、それは、最小限の自衛的応戦である><他国友軍・自国NGOが攻撃されても、自衛隊は応戦できない>という、タテマエ主義に毒されたものになっている。
 こういうタテマエ主義、マニュアル主義に「毒された」日本軍が、人口20万の南京市で、30万から40万の中国人を「虐殺」し、しかもその直後、南京市の人口は逆に増えているという「離れ業」を演じうるとは、もはや「曲芸」の世界ではないか。
◎追記◎いつもは、連帯責任を取らせる、地井武男教官が、演習で、「陛下が与えたもうた拝剣」(帝国日本軍では恩賜のタバコも武器も、全て陛下の与えたもうたものであり、それを粗末に紛失することは、陛下を軽んじる行為とみなされる)を、紛失した中村まなぶ少年兵、その同僚年少兵たちを、なんと、「連帯責任」を取らせず、帰宿させ、中村少年とふたりで、夜の暗闇の野っ原を、紛失銃剣を探して、捜索。しかし、懐中電灯はひとつしかないので、ふたりでの夜の捜索は無意味、と中村年少兵を、ひとりで、帰宿させる。追い詰められた彼をひとりで寄宿させることが、中村少年の自死に結びつく。この辺は、脚本上の作為とも思うが、うーん、ありがちなことだよなあ。
 「麒麟の翼・劇場版新参者」でも、教師・劇団ひとりの生徒に対する、判断ミスの温情が、悲劇を招く。

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by mukashinoeiga | 2012-03-04 01:14 | 今井正 青い左傾山脈 | Comments(0)

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